テキスト全文
心房細動の総論とER編の概要
心房細動の心電図波形と救急外来での対応
#4. 心房細動(Af) ●心臓の上室系でたくさんの信号が不規則に出現
●房室結節が数回に1回の割合で心室に伝達 引用) レジデントのためのこれだけ心電図 日本医事新報社
#5. Afの心電図波形 ●心室の不規則な収縮➡QRS波も不規則(RR不整)
●上室由来なのでQRS幅は狭く(narrow QRS)
●心房の細動➡f波(細動波)として反映 引用) レジデントのためのこれだけ心電図 日本医事新報社
#7. まずは心電図波形診断から… ●SVT(SupraVentricular Tachycardia)上室性頻拍 引用) 救急外来, ここだけの話 医学書院
#8. Narrow QRS Tachycardiaの鑑別 引用)増刊レジデントノート COMMON DISEASEを制する!
#9. Wide QRS Tachycardiaの鑑別 引用)増刊レジデントノート COMMON DISEASEを制する!
#10. 救急外来でのAf対応のポイント ①まずは循環動態の評価
②過去の心電図・心エコー確認
③原因検索と検査
④基本的治療戦略はrate control
⑤入院?抗凝固?
心房細動の電気的除細動と原因検索
#11. Afの電気的除細動 ●血行動態が破綻➡1st は電気的除細動
QRS同期下に100J以上で直流除細動で施行
・ショック状態の遷延
・心不全症状の増悪で呼吸状態が悪化(NPPV等使用)
・心筋虚血が遷延している場合
※器質的心疾患あり…アミオダロン急速飽和(125mgを10分で)考慮
●電気的除細動に伴う血栓症のリスクは1~5%
Naccarelli GV,et al :Am J Cardiol 85:36D-45D,2000
・事前に約3週間以上の抗凝固療法 or 経食道心エコー
での血栓有無の評価が推奨だが… 必要な場合は速やかに行う
#12. 除細動中にCPA…? ●除細動が必要=ショック!
●鎮静鎮痛を用いる前に…
・気道確保(気管挿管も考慮)
・昇圧剤の投与/準備
#13. 除細動時の抗凝固 ●発症から48時間未満…
ヘパリン2500-5000単位投与
●48時間以上経過…
経食道エコーで心房内血栓がないことを確認
または
経口抗凝固薬を3週間以上効かせる
※本人の自覚症状なし、発症時期不明
➡48時間以上経過しているものとして対応 引用) 救急外来, ここだけの話 医学書院
#14. 過去の心電図・心エコーがあれば比較 ●危険な心電図の既往がないか確認
・洞不全症候群・房室ブロック等の徐脈性不整脈
・副伝導路の有無〔特にWPW症候群 △波〕
➡薬剤での致死性不整脈や心停止の危険を回避
●左心機能の低下が無いかどうか(EFなどを確認)
・Ca拮抗薬の投与➡陰性変力作用での血圧低下
#15. 原因検索と検査 引用) medicina 救急診療好手と悪手 医学書院 ●心房細動を確認したら常に原因検索を
●診断後すぐに不整脈治療を開始しない
心房細動の治療戦略と入院基準
#16. 治療の初手はrate control ●多くの試験でrhythm controlと比較し有意差なし
●急性期治療の目標は安静時HR<110
参考)EuropeanSocietyofCardiology (ESC)2020ガイドライン
#17. 治療の初手はrate control ●EF>40%
〈静注〉
・ベラパミル塩酸塩(ワソラン)
・ジルチアゼム塩酸塩(ヘルベッサー)
・ランジオロール塩酸塩(オノアクト)
〈内服〉
・ビソプロロールフマル酸塩(メインテート)
・メトプロロール酒石酸塩(セロケン)
●EF<40%
第一選択として最少量のβ遮断薬を開始
(日本のガイドラインではEF≧25%の条件付き)
血行動態を評価しながらの漸増が推奨
極度の心機能低下や血行動態が不安定の場合、
またはβ遮断薬でのコントロールに難渋
➡アミオダロン塩酸塩(アンカロン)も推奨
参考)EuropeanSocietyofCardiology (ESC)2020ガイドライン
#18. 結局、どう使い分ければいいの…? ①若年・基礎疾患なし・48時間未満・循環動態安定
➡ベラパミル/ジルチアゼム div +ベラパミルp.o処方
※rhythm controlを考慮してもOK(後日洞調律になることも多い)
②その他循環動態の安定している
βB/ジルチアゼム
★陰性変力作用:ベラパミル>ジルチアゼム
★コントロール良好の喘息・COPD➡βB使用可能
引用)
増刊レジデントノート COMMON DISEASEを制する!
救急外来, ここだけの話 医学書院
#19. 帰宅 or 入院 ●動悸や胸苦しさを主訴に来院
➡多くの場合処置の後に帰宅
【入院を考慮】
・血行動態が不安定
・Rate controlができない
・原疾患の治療が必要
・受診前後で失神などを疑う所見がある
・救急外来でのrate control中に
高度徐脈やpauseを認める場合
心房細動における抗凝固療法の考慮
#20. Afの抗凝固 ●弁膜症性なのか?腎機能はどうか?で決定する
引用) 救急外来, ここだけの話 医学書院
#21. 抗凝固する?しない? ●高齢者ではフレイルが予後規定因子になるとの報告もあり
Heart Lung CirC 25:551-557,2016
➡転倒に伴う出血リスク、認知症などを考盧し
高齢を理由に抗凝固療法を開始しないという判断も妥当か?
●日本では85歳以上では40%以上で抗凝固療法を
行っていないことが報告されている
・85歳以上で塞栓イベントは有意に増える
・出血リスクの有意差なし
TheFushimi AF Registry. Chest 149 :401-412,2016
●CHADS2スコア 高齢は他の項目と比べて塞栓リスクが2倍
Nation wide cohort study. BMJ 342:d124, 2011 患者さんの意向・ADL・生活内容・社会的サポートの有無を考慮した抗凝固療法を
ICUにおける新規心房細動の対応と予後
#23. ICUでよく見かける新規のAfの対応 引用)増刊レジデントノート COMMON DISEASEを制する!
洞調律復帰効果有➡長時間持続Afで注意 約50%は48-72時間以内に洞調律に復帰
#24. ICUでよく見かける新規のAfの対応 引用)増刊レジデントノート COMMON DISEASEを制する!
洞調律復帰効果有➡長時間持続Afで注意 約50%は48-72時間以内に洞調律に復帰
#25. みんなどうしている…?
日本の32のICUを対象(423人) 新規発症のAF患者 引用) J Crit Care. 2020;59:136-142 ●40%で抗凝固療法が導入
●3%で出血性合併症
●6%は1週間後もAF
●脳卒中発症は4.5%
※入院中の死亡は26%と総じて予後不良
#26. 本当に必要? 敗血症×Afの抗凝固
引用) JAMA Cardiol. 2016 Sep 1;1(6):682-90 脳卒中のリスク:抗凝固有(1.3%)・抗凝固無(1.4%)➡有意差なし
出血の合併症:抗凝固有(8.6%)・抗凝固無(7.2%)➡有意に増加
抗凝固をするデメリット>メリット