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【わかりやすいCCU】〜心原性ショックと Impella~ 症例から考える

投稿者プロフィール
常見勇太

札幌ハートセンター/聖路加国際病院

420

1

投稿した先生からのメッセージ

CCU で心原性ショックの患者を初めて受け持つとき、自分が知りたかったことをまとめました。DanGer Shock の結果は、STEMI に伴う心原性ショックの、条件に合う患者でのものです。「全員に早く入れる」ではなく、誰に入れると得をするのか、入れたあとに何を見るのかを考える材料にしていただければ幸いです。

概要

これから CCU を回る君へ。カテ室で「誰に・いつ入れるか」から、ICU・CCU で「入れたあとに何を見るか」まで、3つの症例も交えた62枚。

カテ室で血圧が戻らない。ノルアドレナリンを上げても足りない。そのとき、IABP か、VA-ECMO か、Impella か。

心原性ショックの補助循環のランダム化比較試験は、IABP も VA-ECMO も、ほとんどが「ルーチンで入れても死亡は減らない」という結果でした。その中で DanGer Shock は、STEMI に伴う心原性ショックの選ばれた患者(意識が戻らない院外心停止の後の人は対象外)で、Impella CP が 180 日死亡を減らしました。一方で、大出血や下肢虚血などの合併症も増えています。

この講義では、問いを「Impella を使うか」から「誰に・いつ・何と組むか」に置き換え、入れる前に確かめること、VA-ECMO との組み合わせ、入れたあとの波形の読み方までを扱います。

【目次】

01 Impella は何をしているのか:「流す」と「抜く」、PV loop、IABP・VA-ECMO との比較、日本で使える機種と適応

02 臨床試験で分かったこと:心原性ショックの RCT、DanGer Shock(試験の設計・患者背景・結果の読み方・出血・サブ解析)、STEMI-DTU(パイロットから本試験まで)、CHIP-BCIS3、2025 年 ACC/AHA ガイドライン

03 誰に入れるか:入れる前に確かめる3つ(左室・低灌流・脳)、効き方の差、日本の J-PVAD、入れてはいけない人

04 いつ入れるか、何と組むか:SCAI 分類、あとから補助を上げた人の転帰、Golden hour(講演より)、Impella か VA-ECMO か両方か(ECPELLA)

05 Case で考える:aVR の ST 上昇を伴うショック/VA-ECMO のあとに左室が張ってきたとき/ICU に戻った直後のサクション

06 入れたあとに見るもの:コンソールの3つの波形、サクションへの対応の順番、位置の確認、パージと離脱

【こんな方へ】

・カテ室や救急外来で、心原性ショックの初期対応に関わる研修医・専攻医の先生

・Impella を入れる判断や、VA-ECMO との使い分けを整理したい循環器の先生

・ICU・CCU で Impella の管理に関わる先生

【お断り】

・症例はすべて、講義のために構成した架空の症例です。

・表紙と試験の扉のデバイス、PV loop、デバイス選択、SCAI 分類のピラミッドの図は、演者が作成した模式図です。

・実際の運用は、施設のプロトコルを優先してください。

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医/専門医

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テキスト全文

心原性ショックの概要と重要性

#1.

#2.

CARDIOLOGIST 常⾒ 勇太 つ ね み ゆ う た | Yuta Tsunemi, MD 医療法⼈ 札幌ハートセンター 札幌⼼臓⾎管クリニック 循環器内科 前・聖路加国際病院 内科チーフレジデント 第1位 ⺠間医局コネクトセミナー ⼼電図 45 万回 Antaa Slide 累計閲覧 SAVE-J ECPR の多施設研究(Ⅲ) 2024 年 年間⼈気ランキング スライドを継続して公開 研究関係者として参加 循環器の考え⽅と、論⽂の要点を発信しています @yt_cardiology tnmyt1208 papercruxy.com

#3.

A NIGHT IN THE CATH LAB ある夜の、緊急カテーテル室 「⾎圧 78 です。ノルアドレナリンを上げても戻りません。 IABP にしますか︖ それとも…」 KEY MESSAGE そのショックに、いま何を⾜すか 前壁の STEMI。乳酸は 6 mmol/L、エコーで⾒た EF は 25 % くらい。意識はある。 この講義は、その場で「何を・いつ・どこまで」を⾃分で決めるためのもの。 ※ 典型的な組み合わせとして構成した架空の場⾯です。実在の患者ではありません。 03

Impellaの機能と臨床試験

#4.

WHY IT MATTERS 補助循環の RCT で、⽣存を延ばした試験は少ない ⼼原性ショックの RCT は、IABP も VA-ECMO も「ルーチンで⼊れても死亡は減らない」だった。 ほとんどは中⽴ 例外がひとつ IABP-SHOCK II(IABP) DanGer Shock(2024) ECLS-SHOCK・ECMO-CS(VA-ECMO) STEMI のショックで Impella CP が IMPRESS(Impella vs IABP、48 例) 180 ⽇死亡を減らした KEY MESSAGE 問いは「Impella を使うか」から、「誰に・いつ⼊れるか」へ 効く⼈には効く。合わない⼈では、得るものが⼩さく合併症は残る可能性がある。 04

#5.

AGENDA 05 この講義で扱うこと 01 Impella は何をしているのか 「流す」と「抜く」を PV loop で 02 臨床試験で分かったこと RCT・DanGer Shock・ガイドライン 03 誰に⼊れるか 効く⼈、効きにくい⼈、⼊れてはいけない⼈ 04 いつ⼊れるか、何と組むか SCAI 分類・タイミング・ECPELLA 05 Case で考える 3 つの場⾯で判断をたどる 06 ⼊れたあとに⾒るもの 波形・サクション・位置・離脱

#6.

01 Impella は何をしているのか 流量を⾜すだけのデバイスではない

Impellaと他デバイスの比較

#7.

TWO JOBS AT ONCE Impella は、2 つのことを同時にしている 左室に置いた⼩さなポンプが、左室から⾎液を吸い、上⾏⼤動脈へ吐き出す。 ① 流す(順⾏性の流量補助) ② 抜く(左室の減負荷) 左室から⼤動脈へ、前向きに⾎液を送る。 左室から直接吸い出すので、 平均⾎圧が上がり、臓器と冠動脈の灌流が増える。 左室の容積と拡張末期圧が下がる。 左⼼の負荷は増やさない。 壁張⼒が下がり、⼼筋の酸素需要が減る。 KEY MESSAGE VA-ECMO は「流す」はできるが、「抜く」はできない VA-ECMO は⼤腿動脈から逆向きに送るので、左室にとっては後負荷が増える。ここが Impella との⼤きな違い。 村上堅太, ⻘⼭英和. 医機学 2022;92(3):290-300 07

#8.

PRESSURE-VOLUME LOOP PV loop で⽐べると、デバイスの性格が分かれる ループの⾯積(PVA)は、⼼筋の酸素消費と正相関する。補助で PVA が増えるか減るかを⾒る。 KEY MESSAGE Impella は PVA を減らし、VA-ECMO は PVA を増やす ⼼機能が低いほど、VA-ECMO では左室の拡張末期の圧と容積が増える。だから ECMO に Impella を⾜す(ECPELLA)。 ※ 図は模式図です(数値は実測ではありません) / 朔啓太, ⻄川拓也. 循環制御 2019;40(2):95-100 / Suga H. Am J Physiol 1979;236:H498-505 08

#9.

DEVICE COMPARISON 09 3 つの補助循環を、同じ物差しで並べる IABP VA-ECMO Impella 補助の仕⽅ 圧補助 逆⾏性に送⾎ 順⾏性に送⾎ 補助の⼤きさ ⼼拍出の 10 – 20 % 全⾝を⽀えられる CP 3.7/5.5 型 5.5 L/分 左室の負荷 少し下がる 増える 下がる 酸素化 できない できる できない ⼼停⽌中 効かない 使える ⼗分に回らない 右⼼不全 ̶ ⽀えられる 左⼼⽤なので弱い Impella の弱点は「酸素化」「⼼停⽌」「右⼼不全」。ここが VA-ECMO を選ぶ、または⾜す理由になる。 村上・⻘⼭ 医機学 2022 / JCS/JSCVS/JCC/CVIT 2023 フォーカスアップデート版(PCPS/ECMO/循環補助⽤⼼内留置型ポンプカテーテル)

#10.

IMPELLA FAMILY 10 ⽇本で使える Impella 2.5 CP(SmartAssist) 5.5 SmartAssist 最⼤の流量 2.5 L/分 3.7 L/分 5.5 L/分 太さ(最⼤) 12 Fr 14 Fr 21 Fr ⼊れ⽅ 経⽪的(穿刺) 経⽪的(穿刺) 外科的(カットダウン) ⼊れる場所 腋窩・鎖⾻下・⼤腿 腋窩・鎖⾻下・⼤腿 腋窩・鎖⾻下 ⽇本での承認 2016 年 2019 / 2020 年 2022 年 経⽪的に⼊れられるのは 2.5 と CP(CP の想定使⽤期間は数⽇間)。5.5 は外科的に⼊れる。 JCS 2023 フォーカスアップデート版 表3(5.0 は省略)。適応はいずれも「⼼原性ショック等の薬物療法抵抗性の急性⼼不全」

日本におけるImpellaの適応

#11.

INDICATION IN JAPAN ⽇本の適応は「薬で戻らない急性⼼不全」 ⽶国の使い⽅(予防的に⼊れる⾼リスク PCI)は、⽇本では適応にない。 適応 使わないこと ⼼原性ショック等の、薬物療法抵抗性の急性⼼不全。 左⼼不全が主体の循環不全が続いている症例。 PCI 中だけの補助には使わない。 ROSC のない⼼停⽌、強く疑われる低酸素脳症など、 予後が極めて不良な例は除外も考える。 使える施設 認定施設のみ。全例を J-PVAD に登録する施設にだけ供給される。 KEY MESSAGE 「⼊れられる施設」は限られる。送る側の判断も、成績を左右する ⾃施設で⼊れられないなら、いつ・どこへ送るかを決めておくことが、Impella の適応判断の⼀部になる。 補助⼈⼯⼼臓治療関連学会協議会 インペラ部会「IMPELLA 適正使⽤指針」第3版(2019年3⽉改訂) 11

#12.

02 臨床試験で分かったこと ⽣存を延ばした試験は少ない。だから、その1本を正しく読む

#13.

RANDOMIZED TRIALS ⼼原性ショックの RCT︓差が出たのは DanGer Shock だけ 各試験の主要評価項⽬(補助あり vs なし)。ECMO-CS は複合評価項⽬、ほかは死亡。 IABP-SHOCK II(IABP、30 ⽇死亡) IABP 39.7 % なし 41.3 % ECLS-SHOCK(VA-ECMO、30 ⽇死亡) VA-ECMO 47.8 % 標準 49.0 % ECMO-CS(VA-ECMO、複合評価項⽬ ※死亡ではない。30 ⽇死亡は 50.0 vs 47.5 %) VA-ECMO 63.8 % 保存的 71.2 % DanGer Shock(Impella CP、180 ⽇死亡) Impella 標準 45.8 % 58.5 % Thiele H. N Engl J Med 2012;367:1287-1296 / Thiele H. N Engl J Med 2023;389:1286-1297 / Ostadal P. Circulation 2023;147:454-464 Møller JE. N Engl J Med 2024;390:1382-1393 / IMPRESS(48 例、Impella vs IABP、30 ⽇死亡 46 vs 50 %)も差なし︓Ouweneel DM. J Am Coll Cardiol 2017;69:278-287 13

DanGer Shock試験の設計と結果

#15.

DANGER SHOCK ── DESIGN DanGer Shock は、こういう試験だった 2013 – 2023 年、デンマーク・ドイツ・英国の施設。ショックと診断したらすぐに割り付けた⾮盲検の RCT。 対象 STEMI + ⼼原性ショック。乳酸 ≧ 2.5 mmol/L、 除外 院外⼼停⽌のあと、昏睡のままカテ室に着いた⼈。NSTEMI は対象外。 ⽐べたもの Impella CP + 標準治療 vs 標準治療だけ(試験の⼿順として PCI の前に留置) 収縮期 < 100 mmHg か昇圧薬、EF < 45 % 主要評価︓180 ⽇の全死亡 KEY MESSAGE 設計時の想定は「死亡 60 % → 42 %」。そこまで⼤きな差を⾒込んでいた 検出⼒ 80 % で、死亡の相対リスク 0.70・絶対差 18 ポイントを⾒込んだ設計。 Møller JE. N Engl J Med 2024;390(15):1382-1393 / Udesen NJ. Am Heart J 2019;214:60-68(試験デザイン)/ 期間︓Mangner N. J Am Coll Cardiol 2026;87(6):704-719 対象・除外・設計の数値︓Tomasino M. CJC Open 2026;8(4):448-456(原著からの引⽤) 15

#16.

DANGER SHOCK ── PATIENTS 16 ⼊ったのは、ここまで重いショックの⼈たち 355 例の背景 年齢(中央値) 歳 67 男性 % 多枝病変 % 79 左主幹部のみ 例 72 35 最初の 100 例の中央値(2019 年の設計論⽂。2018 年 6 ⽉までの 100 例) 乳酸 mmol/L 5.5 収縮期⾎圧 mmHg 76 EF % 20 乳酸 5 台・⾎圧 70 台・EF 20 %。迷うほど重い⼈が対象で、軽いショックに同じ効果が出るとは限らない。 年齢・男性 79.2 %︓Møller JE. N Engl J Med 2024 / 男性 281/355︓Mangner N. J Am Coll Cardiol 2026 多枝病変 256/355(左主幹部のみ 35 例を含む)︓Marquard JM. EuroIntervention 2026 / 最初の 100 例︓Udesen NJ. Am Heart J 2019;214:60-68

#17.

DANGER SHOCK ── RESULT 17 180 ⽇死亡は、58.5 % から 45.8 % へ 355 例を Impella CP + 標準治療と、標準治療だけに割り付けた。 180 ⽇の全死亡 Impella CP 標準治療 45.8 % 58.5 % 10 年の⻑期追跡(事後) Impella CP 標準治療 52.5 % 68.8 % HR 0.74 95 % CI 0.55 – 0.99(P = 0.04) 10 年は HR 0.70(0.54 – 0.92) NNT 約 8 絶対差 12.7 ポイント 8 ⼈に⼊れて 1 ⼈の死亡を防ぐ KEY MESSAGE RCT で初めて、補助循環が⽣存を延ばした(STEMI の⼼原性ショック) 10 年でも差は縮まなかった。対象は「STEMI・左室・昏睡なし」に絞られている(15 枚⽬)。 Møller JE. N Engl J Med 2024;390(15):1382-1393 / 10 年︓Møller JE. N Engl J Med 2025;393(10):1037-1038(数値は TCTMD 2025 の報道より)

DanGer Shockの合併症とリスク

#18.

DANGER SHOCK ── THE PRICE 18 その代わり、重い合併症は 4 〜 5 倍に 安全性の複合(⼤出⾎・下肢虚⾎・溶⾎・デバイス不具合・⼤動脈弁逆流の悪化)と、腎代替療法。 安全性の複合 Impella CP 標準治療 24.0 % 安全性の複合(2.36 – 9.55) 24.0 % vs 6.2 % 6.2 % 腎代替療法(RR 1.98) 41.9 % Impella CP 標準治療 RR 4.74 26.7 % KEY MESSAGE 8 ⼈に⼊れて 1 ⼈の死亡を防ぎ、約 6 ⼈に 1 ⼈で合併症が増える 腎代替療法の RR は 1.98(1.27 – 3.09)。両⽅を説明できてはじめて、適応を語れる。 Møller JE. N Engl J Med 2024;390(15):1382-1393 6 ⼈に 1 ⼈ 差 17.8 ポイント 約 6 ⼈に⼊れて 1 ⼈で増える

#19.

DANGER SHOCK ── HOW TO READ 効果は「ほぼ確か」、⼤きさは「まだ不確か」 HR 0.74 の上限は 0.99 と 1 に近い。同じデータをベイズ法で読み直した解析(計画外。値は前提をほぼ置かない場合)。 その効果がある確率 少しでも減る 99 % 絶対差 2 ポイント以上 98 % ⼤きく減る(RR<0.70) 15 % 絶対差 18 ポイント以上 17 % KEY MESSAGE 「⽣存を延ばす」はほぼ確か。「劇的に延ばす」はまだ⾔えない 前提を変えても「少しでも減る」確率は最低 98 %。DanGer の対象に近い患者に限った話。 Tomasino M. CJC Open 2026;8(4):448-456(DanGer Shock の公表データを使ったベイズ再解析) 12.8 pt 絶対差の⾒込み(中央値) 95 % 信⽤区間 3.0 – 21.6 19

#20.

DANGER SHOCK ── BLEEDING 補助を受けた⼈の出⾎の半分は、抜いたあとに起きている 重い出⾎(BARC 3 – 5)を詳しく⾒た解析。 重い出⾎の頻度 Impella 群 標準治療群 OR 27.4 26.3 % 15.3 % Impella + VA-ECMO (補助なしと⽐べて) いつ起きたか ── 補助を受けた 210 例の出⾎ 74 件の内訳(合計 100 %) 74 件 補助中 47 % 抜いたあと 50 % カテ室 3 % OR 4.94 Impella だけ (VA-ECMO だけは 8.06) KEY MESSAGE 抜去したあとまでが、Impella の管理 腎代替療法と VA-ECMO への追加も、重い出⾎を予測する因⼦だった。 Sørensen R. JACC Cardiovasc Interv 2026;19(3):302-312(P < 0.001) 20

STEMI-DTU試験の結果と考察

#21.

DANGER SHOCK ── SUBGROUPS 早い⼈、左主幹部の⼈で、差が⼤きく⾒えた どれも副次の解析(性別は事前に決めた解析)。交互作⽤は有意ではない。「仮説」として読む。 発症から割付までの時間 短い 3/4︓OR 0.51(0.31 – 0.84) ⼥性 180 ⽇死亡 64.9 %(男性 48.8 %) 左主幹部だけが責任病変 35 例と少ない。調整 OR 0.17(0.03 – 0.99) 遅い 1/4(651 分超)︓OR 0.92(0.38 – 2.22)。遅い⼈ほど⾼齢・⼥性が多い ⾼齢で、発症から割付まで男性の 2.2 倍の時間。性別と効果の交互作⽤はなし 「効果がありそう」という信号にとどまる KEY MESSAGE ショックの患者は、早く⾒つけて早く運ぶ 時間の解析は「遅い⼈ほど元々重い」も含み、この解析だけで証明されたわけではない。 Jensen LO. Circ Cardiovasc Interv 2026;19(3):e015718(時間)/ Mangner N. J Am Coll Cardiol 2026;87(6):704-719(性別) Marquard JM. EuroIntervention 2026;22(19):e1036-e1047(左主幹部) 21

#23.

STEMI-DTU ── IDEA STEMI-DTU︓「⼊れてから、30 分待つ」という発想 ショックのない前壁 STEMI で、先に左室を休ませてから再灌流すれば、梗塞が⼩さくなるのでは ── という仮説。 動物実験では パイロット試験(2019) 再灌流の前に負荷を抜くと、梗塞が 前壁 STEMI 50 例。全員に Impella CP ⼩さかった。30 分の減負荷で すぐ PCI vs 30 分待って PCI 再灌流障害が抑えられると考えられた door-to-balloon 72 vs 97 分 梗塞サイズ 15 vs 13 %(差なし) KEY MESSAGE パイロットは「待っても安全か」の確認。Impella なしとは⽐べていない 30 ⽇の主要⼼脳⾎管イベントは 8 vs 12 %(P = 0.99)。この結果を受けて、本試験に進んだ。 Kapur NK. Circulation 2019;139(3):337-346. PMID 30586728 23

#24.

STEMI-DTU ── RESULT 本試験︓30 分待っても、梗塞は⼩さくならなかった 6 か国 55 施設、527 例。発症 1 – 6 時間の前壁 STEMI(ショックなし、⼼筋梗塞の既往なし)。 梗塞サイズ(左室重量に対する割合、MRI・3 – 5 ⽇) 30 分減負荷 → PCI 30.8 % すぐに PCI 31.9 % P = 0.50 差 ­1.1 ポイント (­4.2 – 2.0) 出⾎ ↑ ⼤出⾎・⾎管合併症が多い (P 値は抄録に記載なし) KEY MESSAGE ショックのない STEMI では、PCI を遅らせてまで⼊れない 総虚⾎時間は Impella 群で⻑くなった。平均 61 歳、男性 79.1 %。 Kapur NK. J Am Coll Cardiol 2026;88(1):76-90. PMID 42029358 24

Impellaの適応と使用基準

#25.

STEMI-DTU ── WHY(講演より) なぜ差が出なかったのか ── 研究者側の読み 本試験の筆頭著者の Kapur 先⽣(J&J MedTech 所属)が CVIT2026 で⽰した⾒⽅。事後の解析と⼝頭の数値を含む。 待った分、遅れた 対照の door-to-balloon は 56 分。総虚⾎時間 165 分 vs 212 分 ⾎圧が⾼かった 対象の平均収縮期⾎圧は 140 次の試験へ 計画どおり治療された⼈で虚⾎時間をそろえると 30.0 vs 34.6 % (PCI は平均 40 分ほど遅れた) 演者の⾒⽅では、後負荷が⾼いと負荷を抜く効果が出にくい (事後の解析)。次の試験(DTU2)を検討中 KEY MESSAGE 本試験の結論は「差なし」。⾔い分は、次の試験で確かめられるまで仮説 演者はメーカー所属。数値は講演の⼝頭で、原著とは照合していない。 〈講演より〉Kapur N. CVIT2026 共催セミナー(Abiomed/J&J MedTech) 25

#26.

CHIP-BCIS3 26 予定の⾼リスク PCI でも、効果は⽰されなかった ⾼度の左室機能低下+予定の complex PCI(300 例)。ポンプを予定で使う 148 例 vs 標準治療 152 例。 主要評価(win ratio) 0.85 複合評価、12 か⽉以上 95 % CI 0.63 – 1.15 P値 0.30 差は⽰されなかった KEY MESSAGE 予防的に⼊れる⾼リスク PCI は、⽇本ではもともと適応外 出⾎・⾎管合併症は差なし。⽇本の適応は「⼼原性ショック等の薬物療法抵抗性の急性⼼不全」。 Perera D. N Engl J Med 2026;394(18):1779-1789. PMID 41910380 / 適応︓JCS 2023 フォーカスアップデート版 全死亡(副次的) 32 / 22 % 47/148 vs 33/152 例 HR 1.54(0.99 – 2.41)、1 をまたぐ

#27.

GUIDELINES DanGer Shock のあと、⽶国ガイドラインが変わった 2025 年 ACC/AHA の急性冠症候群ガイドライン。 Impella 選ばれた AMI の⼼原性ショックで Class 2a に引き上げ IABP(ルーチン) Class 3(No benefit)に引き下げ VA-ECMO(ルーチン) 引き下げ(ECLS-SHOCK の結果を反映) (microaxial flow pump として) KEY MESSAGE 「選ばれた患者に」── 推奨の主語は、全員ではない 同時に、⾎管アクセスと離脱の⼿順を決めて、出⾎や下肢虚⾎を減らすことが求められている。 ⽇本では JCS 2023 フォーカスアップデート版が、各デバイスの適応と管理を⽰している。 Rao SV. J Am Coll Cardiol 2025;85(22):2135-237 / 推奨クラスの要約︓Safiullah Z, Hollenberg SM. ACC.org「Cardiogenic Shock and MCS: Year in Review 2025」(2026) 27

#28.

03 誰に⼊れるか 効く⼈、効きにくい⼈、⼊れてはいけない⼈

日本における実臨床のデータ

#29.

THREE QUESTIONS ⼊れる前に、3 つだけ確かめる STEMI のショックで、DanGer Shock の対象に近いかをベッドサイドで確かめる。 ① 左室が原因か STEMI で、EF が低い。 ② 低灌流があるか 乳酸が⾼い、尿が出ない、四肢が冷たい、意識がぼんやり。 ③ 脳を救えるか ⼼停⽌後に昏睡のまま、ROSC がない ── では、 右⼼不全や機械的合併症が主体ではない(演者の追加項⽬) ⾎圧だけでショックと決めない。 Impella が⽣存を延ばした根拠はない。 KEY MESSAGE STEMI で 3 つとも「はい」なら、DanGer Shock の対象に近い どれかが「いいえ」なら、別のデバイス、別の順番、あるいは⼊れないことを考える。 29

#30.

WHO BENEFITS MOST 同じ STEMI のショックでも、効き⽅には差がある DanGer Shock の事後解析。ショックを 3 つの型に分けて、Impella の効き⽅を⽐べた。 うっ⾎のない型(41 %) 180 ⽇死亡 33 %。Impella で死亡が少ない︓OR 0.51(0.28 – 0.91) ⼼腎型(11 %) 180 ⽇死亡 47 %。差ははっきりしない︓OR 0.91(0.35 – 2.34) ⼼代謝型(48 %) 180 ⽇死亡 69 %(最も悪い)。差ははっきりしない︓OR 0.81(0.57 – 1.16) KEY MESSAGE 臓器障害が進みきる前、が Impella のいちばん効く場⾯かもしれない 交互作⽤の P = 0.43。事後解析なので「仮説」として読む。 Zweck E, ..., Møller JE. J Card Fail 2026(Online ahead of print). doi:10.1016/j.cardfail.2026.02.015 30

#31.

FAST RECOVERY Impella なしで、すぐ良くなる⼈もいる DanGer Shock の事後解析。標準治療群の 29 % は 3 ⽇以内に⽣きて CCU を出た(Impella 群は 15 %)。 すぐ良くなった⼈ でも、最初には⾒分けにくい 180 ⽇死亡は 9 % と低かった カテ室に⼊った時点の情報で予測しても、 若い、EF が⾼め、⼼拍数が低め、乳酸が低め 判別の精度(AUROC)は 0.74 にとどまった KEY MESSAGE すぐ良くなる⼈に⼊れたときの得失は、まだ分かっていない ここが Impella の適応判断が難しい理由。早く回復する⼈を最初に⾒分ける⽅法は、まだ精度が⾜りない。 Beske RP, ..., Møller JE. Eur Heart J Acute Cardiovasc Care 2026;15(8):618-621 31

#32.

REAL WORLD IN JAPAN 32 ⽇本の実臨床では、3 分の 2 が DanGer の外で使われている J-PVAD 登録︓2020 – 2023 年に Impella を使った AMI の⼼原性ショック 3,975 例。 条件に合う STEMI 全体の 35.6 %。30 ⽇死亡 37.6 % 院外⼼停⽌ 30 ⽇死亡 51.3 %(ROSC なしでは 63.4 %) 機械的合併症 30 ⽇死亡 39.8 % NSTEMI 30 ⽇死亡 33.3 % KEY MESSAGE 条件の外で使うなら、その⼈ごとにリスクを読む 条件に合わない STEMI の 30 ⽇死亡は 27.6 %。ただし⾼齢・腎機能低下・VA-ECMO 併⽤・⼼室性不整脈・敗⾎症で上がった。 Arai R, Kojima K, Fukamachi D, Okumura Y. Eur Heart J 2026;47(4):472-486

SCAIショック分類とその重要性

#33.

WHEN NOT TO USE ⼊れてはいけない⼈、⼊れても効きにくい⼈ ⼊れられない ⼤動脈弁位の機械弁、中等度以上の⼤動脈弁逆流(弁をまたいで置くため) 注意して検討 左室内⾎栓、⼤動脈解離、⼼室中隔⽋損・穿孔、⼤動脈弁狭窄(事前に評価) 効きにくい 右⼼不全が主体のショック、低酸素⾎症(酸素化できない)、 ⼼停⽌中(左室に⾎が戻らない) KEY MESSAGE ⼊れる前のエコーで、弁・⾎栓・右室を⾒ておく ⼤動脈弁(機械弁・逆流・狭窄)、左室内⾎栓、右室の⼤きさを確認する。 村上・⻘⼭ 医機学 2022 / JCS 2023 フォーカスアップデート版 4.2 33

#34.

04 いつ⼊れるか、何と組むか ⼊れる時期と、組み合わせ⽅

#35.

SCAI SHOCK STAGES SCAI 分類︓ショックの重さを 5 段階で共有する チームで「いまどの段階か」を同じ⾔葉で⾔えるようにする分類。昏睡を伴う⼼停⽌には「A」を付ける。 KEY MESSAGE B と C の境⽬は「低灌流があるかどうか」。⾎圧が保たれていても、低灌流があれば C Naidu SS. J Soc Cardiovasc Angiogr Interv 2022;1(1):100008(SCAI SHOCK 分類 2022 年改訂)/ ※ 図は演者による模式図 35

#36.

SCAI SHOCK STAGES ── FINDINGS 36 段階ごとに、何を⾒ればよいか 段階 診察 乳酸・検査 ⾎⾏動態 A At risk 温かく、意識も正常 乳酸は正常 SBP ≧ 100(または普段どおり) B Beginning 温かい。頸静脈怒張・ラ⾳ 乳酸は正常 SBP < 90、MAP < 60、または 普段より 30 以上低下。HR ≧ 100 C Classic 冷たく湿った⽪膚、意識の変化 尿量 < 30 mL/時 乳酸 ≧ 2 mmol/L CI < 2.2、PCWP > 15 (右⼼カテを強く推奨) D Deteriorating C の所⾒が、治療しても悪化 (または改善しない) 乳酸が上がり 2 を超えたまま 昇圧薬の増量・追加 補助の追加が必要 多くは意識なし、脈がほぼ触れない 乳酸 ≧ 8、pH < 7.2 最⼤限の補助でも⾼度の低⾎圧 E Extremis 2022 年版 Table 3 の「典型的な所⾒」と「よくある所⾒」の要約。1 つの数値だけで決めない。段階は時間とともに動く。 Naidu SS. J Soc Cardiovasc Angiogr Interv 2022;1(1):100008 の Table 3(Typically includes / May include)を演者が要約

補助循環のタイミングとデバイス選択

#37.

SCAI SHOCK STAGES ── MORTALITY 37 段階が上の⼈ほど、死亡は多い CICU に⼊院した 10,004 例。2019 年版の基準で、⼊院時のデータから後ろ向きに分類した院内死亡(調整前)。 院内死亡 A B Beginning C D At risk Classic Deteriorating E Extremis 3.0 % 3 倍超 7.1 % 12.4 % 40.4 % 67.0 % ⼊院時 C と D 12.4 % → 40.4 % KEY MESSAGE ⼊院時に D だった⼈の死亡は、C の 3 倍超。いまの段階を⾔葉にする 段階が上の⼈ほど死亡が多い関係は、調整後も同じだった(A と⽐べて調整 OR 1.53〜6.80)。⼼停⽌の調整 OR は 3.99。 Jentzer JC. J Am Coll Cardiol 2019;74(17):2117-2128. PMID 31548097(単施設・後ろ向き)

#38.

TIMING あとから補助を上げた⼈の死亡は、⾼かった DanGer Shock の事後解析。途中で別の補助(VA-ECMO など)へ上げた⼈を⾒た。 上げた⼈の割合 Impella 群 14 % 上げるまでの時間 Impella 群 12 時間 180 ⽇死亡 標準治療から上げた⼈ 80 % / / 標準治療群 20 % 標準治療群 0.7 時間 / Impella から上げた⼈ 60 % KEY MESSAGE 1 時間以内に上げても、標準治療から上げた⼈の死亡がいちばん⾼かった 観察的な⽐較で、上げた⼈はもともと重症だった可能性がある。⼊れる時期(PCI の前か後か)は RCT で決まっていない。 Schrage B, ..., Møller JE. Eur Heart J Acute Cardiovasc Care 2026;15(6):466-474 / 時期が未確⽴︓Safiullah Z, Hollenberg SM. ACC.org 2026 38

#39.

GOLDEN HOUR 〈講演より〉診断から 60 分以内に、治療を始める 2 ⼈の演者(Mangner・O'Neill)が強調したのは、治療を始めるまでの時間だった。 60 分以内を⽬標に ショックと診断してから 60 分以内に、特定の治療を始めることを⽬標にする。 早く集めるもの ベッドサイドのエコー、その場の乳酸、早い⾎圧測定、 ⽶国の登録データ Impella を使った 804 例を補助開始までの時間で 4 群に分けると、 治療の遅れは悪い転帰と関連する。 ショックチームでの短い話し合い、病院前からの連携 0〜1 時間の群で死亡が最も低かった(観察研究。時間の起点は講演では不明) KEY MESSAGE ショックの診断から治療開始までの時間を、短くする 時間と転帰の関係は観察研究から。RCT で確かめられたものではない。 〈講演より〉Mangner N(JCS2026 共催セミナー)/ O'Neill W(同)。Abiomed(J&J MedTech)共催セミナーの⼝頭の内容で、スライドの数値は原著と照合していない 39

#40.

WHICH DEVICE Impella か、VA-ECMO か、両⽅か 決め⼿は「⼼停⽌」「右⼼と酸素化」「左室が主役か」の 3 つ。 KEY MESSAGE Impella の弱点を、VA-ECMO が補う。VA-ECMO の弱点を、Impella が補う ECPELLA でも肺が悪いうちは ECMO を主体に、Impella は低流量に(North-south 症候群を避けるため)。 ※ 図は演者が作成した模式図(DanGer Shock の対象と JCS 2023 フォーカスアップデート版の記載から整理)。施設のプロトコルを優先してください 40

ケーススタディによる実践的アプローチ

#41.

ECPELLA VA-ECMO に Impella を⾜すのは、左室が張ってきたとき こんなときに⾜す ⾜したあとの注意 ⼤動脈弁が開かない ECMO に準じた抗凝固。溶⾎と出⾎は増える 左室が拡張し、肺うっ⾎が進む Impella を上げると North-south 症候群 左室内の⾎流が滞る(⾎栓の危険) → 右上肢の⾎液ガスと SpO2 を⾒る KEY MESSAGE 離脱は ECMO から。Impella が吸い付かずに流せるなら、ECMO を外す ECMO を減らしても Impella にサクションが起きず⼗分な流量が出れば、VA-ECMO を離脱する。 JCS 2023 フォーカスアップデート版(North-south syndrome・ECPELLA の項)/ 村上・⻘⼭ 医機学 2022 / Abiomed 教材(Impella 5.5 と VA-ECMO) 41

#42.

05 Case で考える 同じ「ショック」でも、⾜すものは違う

#43.

CASE 1 ── PRESENTATION 72 歳男性 43 胸痛と息苦しさで救急搬送 1 時間前から。ノルアドレナリン投与下、酸素 10 L。 12 誘導⼼電図 aVR で ST 上昇 ほかの誘導で ST 低下 ⼼エコー EF 25 % 広範な壁運動低下 右室・⼤動脈弁は正常 そのほか 乳酸 6.8 mmol/L ⼿⾜が冷たい 意識清明、⼼停⽌なし ※ モニター画⾯は作図(模式図)です。症例は講義のために構成した架空のもので、実在の患者ではありません。

#44.

CASE 1 ── QUESTION 44 PCI の前に、何を⾜しますか︖ A 何も⾜さず PCI B IABP C Impella CP D VA-ECMO KEY DATA ⾎圧 乳酸 EF SpO2 意識 65/40 6.8 25 % 88 % 清明 ※ 症例は、講義のために構成した架空のものです。実在の患者ではありません。

流量管理とサクションの重要性

#45.

CASE 1 ── DECISION 45 Case 1 は、3 つともそろっていた CHECK 1 左室が原因か COURSE 補助 挿管で酸素化を保ち、減負荷で肺うっ⾎が改善 EF 25 %、右室は保たれる。低酸素は肺うっ⾎ 2 低灌流があるか PCI 脳を救えるか 左主幹部 → 前下⾏枝 補助下でステント留置 乳酸 6.8、四肢冷感、昇圧薬でも戻らない 3 PCI の前に Impella CP 離脱 意識清明、⼼停⽌なし 3 ⽇⽬に P2 で安定 抜去。乳酸は正常化し、歩いて退院 KEY MESSAGE STEMI で 3 つがそろい、DanGer Shock の対象に近かった DanGer では PCI の前に留置(前後を⽐べた RCT はない)。aVR の ST 上昇+広範な ST 低下は左主幹部・多枝病変を⽰唆。 ※ 症例は、講義のために構成した架空のものです。実在の患者ではありません。

#46.

CASE 2 ── PRESENTATION 58 歳男性 46 ⽬撃のある院外⼼停⽌ 初期波形は⼼室細動。バイスタンダー CPR あり。除細動を重ねても ROSC なし。 経過 倒れてから 45 分で VA-ECMO を開始 その後の除細動で洞調律に ⼼エコー ⼤動脈弁が開かない 左室は拡⼤ もやもやエコー 胸部 X 線 両側の肺うっ⾎が進⾏ ※ モニター画⾯は作図(模式図)です。症例は講義のために構成した架空のもので、実在の患者ではありません。

#47.

CASE 2 ── QUESTION 47 この時点で、何を⾜しますか︖ A ECMO の流量を上げる B IABP C Impella(ECPELLA) D 外科的ベント KEY DATA 脈圧 ⼤動脈弁 左室 肺うっ⾎ なし 開かない 拡⼤ 進⾏ ※ 症例は、講義のために構成した架空のものです。実在の患者ではありません。

#48.

CASE 2 ── DECISION Case 2 は、ECMO の「抜けない」が表に出た ここでの Impella は左室を抜くための追加。DanGer Shock の適応(昏睡なし)とは別の話。 CHECK 1 COURSE 左室は張っていたか 監視 右橈⾻動脈の⾎液ガスで確認 ⼤動脈弁が開かない、左室拡⼤、もやもやエコー 2 肺と酸素化 原因 流量の配分 ECMO を主体に、Impella CP は低流量 前下⾏枝の閉塞 ECMO 下で PCI。肺うっ⾎は改善 肺うっ⾎が進⾏。右上肢の SpO2 を監視 3 North-south 症候群 離脱 ECMO が先 3 ⽇⽬に ECMO、5 ⽇⽬に Impella KEY MESSAGE ECMO は「流す」だけ。左室を「抜く」ために Impella を⾜す 肺が悪いうちに Impella を上げすぎると、酸素化の悪い⾎液が冠動脈と脳へ出る。 ※ 症例は、講義のために構成した架空のものです。実在の患者ではありません。 48

Impellaの位置と管理のポイント

#49.

CASE 3 ── PRESENTATION 68 歳⼥性 右冠動脈 #1 ⼊⼝部の STEMI ショックで Impella CP を⼊れて PCI。ICU に戻った直後から、サクションが鳴り続ける。 来院時 ICU で ⾎圧 80/50、⼼拍 52、II・III・aVF で ST 上昇 サクションが反復。尿に⾊が付いてきた 乳酸 4.5 mmol/L、EF 35 %(下壁の低下) PA 圧・CVP はスワンガンツカテーテルで測定 ※ 患者モニターと Impella の画⾯は作図(模式図)で、実機の画⾯ではありません。症例は講義のために構成した架空のものです。 49

#50.

CASE 3 ── QUESTION 50 なぜ、流量が出ないのでしょうか︖ A 循環⾎液量が⾜りない B 右⼼不全 C 位置が悪い D Impella が⼩さすぎる KEY DATA 流量 CVP PA 圧 サクション 尿 1.2 L/分 18 28/18 反復 ⾊の変化 ※ 症例は、講義のために構成した架空のものです。実在の患者ではありません。

#51.

CASE 3 ── DECISION 51 Case 3 は、右から⾎が来ていなかった CHECK 1 前負荷 COURSE 次の⼿ 全⾝の流量(systemic flow)を担う CVP 18 と⾼い。前負荷の不⾜ではない 2 右室 次の⼿ 位置 輸液と強⼼薬 輸液は反応を⾒ながら、強⼼薬を併⽤ PAPi 0.56(≦ 0.9)、右室拡⼤・中隔扁平 3 VA-ECMO を追加 学び 3.5 cm で正常。尿の⾊は溶⾎による 右室梗塞を疑えたか ⼊れる前に右室と CVP を⾒る KEY MESSAGE Impella は左⼼のポンプ。右から⾎が来なければ回らない CVP が⾼いのに流量が出ないときは右⼼不全。VA-ECMO で全⾝の流量を取り、輸液と強⼼薬で右室を⽀えるしかない。 PAPi=(肺動脈収縮期圧 ­ 拡張期圧)÷ 右房圧。≦ 0.9 の⽬安︓Korabathina R. Catheter Cardiovasc Interv 2012;80(4):593-600 ※ 症例は、講義のために構成した架空のものです。実在の患者ではありません。

#52.

06 ⼊れたあとに⾒るもの 流量の数字より、波形を読む

離脱時の注意点と管理

#53.

THREE WAVEFORMS コンソールの 3 つの波形で、位置と負荷を読む 53 正しい位置なら、吸⼊⼝は左室、吐出⼝は⼤動脈。2 つの圧の差でモーターの電流が揺れる。 KEY MESSAGE 流量が出ていても、モーター電流が平坦なら補助できていない 平坦なまま位置のアラーム(Position in Aorta / in Ventricle)が出たら、P2 まで下げてエコーで位置を⾒る。 画⾯は正しい位置での作図・模式図(数値は説明⽤の例)。うか(臨床⼯学技⼠)「Impella 波形の⾒⽅まとめ」note 2026-05-19 / Abiomed 教材(VA uncoupling は Kapur N の解説)

#54.

SUCTION サクションが出たら、まず前負荷を疑う 吸い込む⾎液が⾜りないと、吸⼊⼝が左室の壁や組織に吸い付く。溶⾎の原因にもなる。 1 前負荷 脱⽔・出⾎・利尿のしすぎはないか。CVP・尿量を⾒る 2 右⼼ CVP が⾼いのに流量が出ない → 右⼼不全を疑う 3 位置 深すぎ・壁に接触していないか。エコー・X 線・波形で確認 4 P レベル 吸引が強すぎるなら下げる。輸液で前負荷を補う 5 溶⾎ LDH だけで決めない。⾎漿遊離 Hb が最も特異的 KEY MESSAGE 「流量が出ない」を、P レベルを上げて解決しようとしない 吸う⾎がないのに回転を上げると、サクションと溶⾎が悪化する。繰り返すなら、前負荷・右⼼・位置を⾒直す。 うか(臨床⼯学技⼠)note 2026-05-19 / 村上・⻘⼭ 医機学 2022 / 溶⾎の⽬安(24 時間で⾎漿遊離 Hb > 40 mg/dL が 2 回)は Abiomed 教材 54

#55.

POSITION 位置は、⼤動脈弁から吸⼊⼝まで 3.5 cm エコー(傍胸⾻または⼼尖部の左室⻑軸像)と透視を併⽤して確認する。 正しい位置 吸⼊⼝は⼤動脈弁から 3.5 cm 左室側(5.5 は約 5 cm) エコーでの⾒え⽅ 2 本の平⾏線=カニューラ(railroad tracks) 管理中に⾒直す 減負荷で左室が⼩さくなり、僧帽弁に当たることがある 先端は⼼尖部を向く。吐出⼝は⼤動脈弁より上 涙のしずく形=吸⼊⼝(teardrop)、細い線=pigtail(CP のみ) 溶⾎が出たら、吸⼊⼝と吐出⼝が壁や弁に当たっていないか⾒る KEY MESSAGE ⼊れたときに正しくても、左室が縮めば位置は変わる ⼤動脈弁逆流は、傍胸⾻像ではアーチファクトで⾒にくい。⼼尖部アプローチか経⾷道エコーで。 JCS 2023 FU 版 3.6.2 / エコーでの⾒え⽅︓Abiomed 教材 / pigtail は深さに含めない︓Bandini M. J Clin Med 2026 ※ 3.5 cm の起点は資料で違う︓Abiomed=teardrop まで約 3.5 cm、CIT 2023=吸⼊⼝の中央 3.5 cm(teardrop 4 cm)、JCS=「吸⼊部」 55

#56.

PURGE AND WEANING パージを⽌めない。離脱は P2 で確かめてから パージ 離脱 モーターに⾎液が⼊らないよう、 P レベルを 1 – 2 ずつ下げる ヘパリン加ブドウ糖液で圧の壁を作る 300 – 1,100 mmHg を保つよう、 2 – 30 mL/時で⾃動調整 パージ流量に応じて全⾝ヘパリンを追加 P2 で⾎⾏動態が安定することを確認 左室から抜去する 抜いたあとも右⼼カテで監視し、 ショックの再燃がないか⾒る KEY MESSAGE パージ圧・流量・モーター電流の上昇は、ポンプ停⽌の前ぶれ 経時的に記録して、急な変化を⾒逃さない。CP の想定使⽤期間は数⽇間。 JCS 2023 フォーカスアップデート版 4.5.1・離脱の項 / 村上・⻘⼭ 医機学 2022 56

まとめと今後の展望

#57.

SUMMARY 57 Take Home Message 01 流して、抜く Impella は「流す」と「抜く」を同時に⾏う。 02 STEMI・左室・昏睡なし 補助循環の RCT で⽣存を延ばしたのは DanGer Shock。 03 合併症も増えた DanGer で安全性の複合 24.0 % vs 6.2 %。 04 後から上げると死亡が⾼い 観察的な⽐較。もともと重症だった可能性がある。 05 弱点は VA-ECMO で補う ⼼停⽌・右⼼不全・低酸素には弱い。 06 ⼊れたら、波形を読む サクションは 前負荷 → 右⼼ → 位置 の順に確かめる VA-ECMO は「流す」だけ 対象はこの 3 つの条件 軽い段階での得失は、まだ分かっていない PCI の前か後かは RCT で未確⽴ そこは VA-ECMO と組む 「誰に・いつ・何と組むか」を、⼊れる前に⾔葉にしておく

#58.

REFERENCES 参考⽂献 ① 1 58 試験と解析 DanGer Shock 9 Møller JE. N Engl J Med 2024;390(15):1382-1393. PMID 38587239 2 DanGer Shock の試験デザイン Thiele H. N Engl J Med 2012;367(14):1287-1296 10 Udesen NJ. Am Heart J 2019;214:60-68. PMID 31176289 3 DanGer Shock ⻑期成績 ⻑期成績の数値(報道) 11 ショックの型別の効果 12 早く回復する⼈ 13 補助の追加(escalation) 14 J-PVAD︓DanGer の条件と成績 Arai R. Eur Heart J 2026;47(4):472-486. PMID 41078250 2025 ACC/AHA ACS ガイドライン Rao SV. J Am Coll Cardiol 2025;85(22):2135-2237. PMID 40013746 15 Schrage B. EHJ Acute CV Care 2026;15(6):466-474. PMID 41607344 8 SCAI SHOCK 分類(2022 年版)と院内死亡(2019 年版の基準) Naidu SS. JSCAI 2022;1:100008/Jentzer JC. JACC 2019;74:2117. PMID 31548097 Beske RP. EHJ Acute CV Care 2026;15(8):618-621. PMID 41873805 7 ECLS-SHOCK Thiele H. N Engl J Med 2023;389(14):1286-1297 Zweck E. J Card Fail 2026(早期公開). PMID 41785958 6 ECMO-CS Ostadal P. Circulation 2023;147(6):454-464 TCTMD(2025)DanGer Shock 10 年の記事. tctmd.com 5 IMPRESS in Severe Shock Ouweneel DM. J Am

#59.

REFERENCES 参考⽂献 ② 17 ⽣理・管理・国内資料・講演 PV loop から⾒た Impella 24 朔啓太, ⻄川拓也. 循環制御 2019;40(2):95-100 18 PVA と⼼筋酸素消費 Impella の概要・実際と課題 25 JCS/JSCVS/JCC/CVIT 2023 FU 版(2023年3⽉発⾏/2024年7⽉更新) 26 IMPELLA 適正使⽤指針 第3版(2019) 27 PAPi と右⼼不全 28 ショックと MCS の 2025 年の総括 Safiullah Z, Hollenberg SM.(2026-08-04)acc.org 〈講演より〉⽶国の AMI-CS と Impella O'Neill W. JCS2026 共催セミナー(Abiomed/J&J MedTech) 29 Korabathina R. Catheter Cardiovasc Interv 2012;80(4):593-600 23 〈講演より〉DanGer Shock 後の欧州 Mangner N. JCS2026 共催セミナー(Abiomed/J&J MedTech) 補助⼈⼯⼼臓治療関連学会協議会 インペラ部会. j-pvad.jp/guidance 22 Impella 5.5 と VA-ECMO Abiomed 教材(メーカー資料). heartrecovery.com PCPS/ECMO/ポンプカテーテルの適応・操作. j-circ.or.jp 21 位置とコンソール(AIC)/溶⾎ FAQ Abiomed 教材(メーカー資料). heartrecovery.com 村上堅太, ⻘⼭英和. 医機学 2022;92(3):290-300 20 Impella 波形の⾒⽅まとめ うか(臨床⼯学技⼠). note(2026-05-19)note.com/novel_yeflo Suga H. Am J Physiol 1979;236:H498-H505 19 59 Impella の位置とエコー評価 Bandini M. J Clin Med 2026;15(6):2404 30 Impella の挿⼊と位置決めのコツ Cardiac Interventions T

#60.

REFERENCES 参考⽂献 ③ 31 DanGer Shock と STEMI-DTU の解析 DanGer Shock のベイズ再解析 35 Tomasino M. CJC Open 2026;8(4):448-456. PMID 42007184 32 発症から割付までの時間 Marquard JM. EuroIntervention 2026;22(19):e1036-e1047. PMID 42837204 36 Jensen LO. Circ Cardiovasc Interv 2026;19(3):e015718. PMID 41521915 33 出⾎(BARC 3 – 5) Sørensen R. JACC Cardiovasc Interv 2026;19(3):302-312. PMID 41672689 34 性別による違い Mangner N. J Am Coll Cardiol 2026;87(6):704-719. PMID 41222528 冠動脈病変の複雑さ・左主幹部 DTU-STEMI パイロット試験 Kapur NK. Circulation 2019;139(3):337-346. PMID 30586728 37 〈講演より〉今後の展望(STEMI-DTU の読み⽅) Kapur N. CVIT2026 共催セミナー(Abiomed/J&J MedTech) 60

#61.

MORE 補助循環と論⽂を、もっと詳しく 毎⽇の発信、じっくり読める解説、そして論⽂をまとめて追える場所 Paper Cruxy @yt_cardiology note.com/tnmyt1208 papercruxy.com/antaa 循環器の考え⽅と セミナーで話しきれない 医学⽣・研修医・上級医のための 論⽂の要点を投稿 詳しい解説をまとめています 論⽂解説 スマホで読み取れます スマホで読み取れます このスライドが役に⽴ったら、Antaa でフォローしていただけると嬉しいです 常⾒ 勇太 / 札幌ハートセンター 札幌⼼臓⾎管クリニック 循環器内科 スマホで読み取れます

#62.

明⽇から、ひとつだけ Impella を必要とする⼈を⾒極める。 躊躇はしない。 STEMI で「左室・低灌流・脳」の 3 つがそろえば、Impella を早めに検討する。そろわなければ、別の⼿を考える。 ご清聴ありがとうございました 常⾒ 勇太 / 札幌ハートセンター 循環器内科

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