テキスト全文
重症頭部外傷の定義と初期治療の注意点
#2. 目次 1.重症頭部外傷とは?
初期治療で注意すべき項目
2. ICP亢進を防げ!
頭部外傷で重要な概念
3.重症頭部外傷
ICUでの管理目標とは?
#3. 重症頭部外傷とは?
初期治療で注意すべき項目
重症頭部外傷のGCS分類と初期治療の目標
#4. 重症頭部外傷 ●頭部外傷の重症度はGCSで
分類されることが多い
●初期治療の目標
・二次的な脳損傷を防ぐこと
⇒低酸素・低血圧を防ぐ
・脳圧亢進を避ける
●GCS≦8で重症頭部外傷
早期に認識するのが大切
The Traumatic Coma Data Bank: design, methods, and baseline characteristics Foulkes MA, J Neurosurg. 1991;75:S8.
#5. 重症頭部外傷-JATECの観点から ●ABCDアプローチに準拠
D(意識)は『まいど』で評価
ま:麻痺
い:意識レベル(GCS)
ど:瞳孔所見
外傷初期診療ガイドラインJATEC改訂第5版
#6. ●切迫するD
・GCS8点以下/JCSⅡ-30点以上
・経過中にGCS2点以上低下
・脳ヘルニア徴候(+) ・ABCを安定化させながらすぐに脳外科コール
・気管挿管の適応を考慮
・Secondary Surveyの前に頭部CT撮影 切迫するDに注意!
外傷初期診療ガイドラインJATEC改訂第5版
重症頭部外傷における危険な所見と治療介入
#7. ●瞳孔不同/散大
●Cushing徴候(高血圧・徐脈)
●明らかな片麻痺
●除脳/除皮質硬直の所見 ●治療介入までpCO225-30mmHgの
一時的な過換気を考慮
●換気設定をFiO2 100%に
●マンニトール/高張食塩水の使用 手術適応の危険な所見
Guidelines for the Management of Severe TBI, 4th Ed.
#8. 重症頭部外傷-JATECの観点から ●トラネキサム酸の受傷後3時間
以内の投与は死亡率を下げる
①1g NSに混注し10分で投与
②1g NSに混注し8時間で投与
※GCS8-13点 8点以下は除外
Effects of tranexamic acid on death, disability, vascular occlusive events and other morbidities in patients with acute traumatic brain injury (CRASH-3): a randomised, placebo-controlled trial.
Lancet. 2019;394(10210):1713. Epub 2019 Oct 14.
#9. ICP亢進を防げ!
頭部外傷で重要な概念ICP・CPP
#10. 重症頭部外傷のICU管理 ●ICU管理の目標
・二次的な脳損傷を防ぐ
⇒低酸素・低血圧を防ぐ
・脳圧亢進を防ぐ
●特にICP、CPPを意識した管理
を心がける!
Management of acute moderate and severe traumatic brain injury Up To Date
ICPとCPPの関係及び脳虚血の進行
#11. ICP? CPP? 脳灌流圧(CPP)=平均動脈圧(MAP)ー頭蓋内圧(ICP) ●それぞれの正常値(mmHg)
CPP:60-80 MAP:70-90 ICP:10-15
●ある程度までは圧の自動調節能が働く
⇒ICPが亢進すると破綻(重症頭部外傷の1/3)
●頭蓋内圧亢進(ICP↑)の治療閾値(mmHg)について
・ICP≧15-20 日本重症頭部外傷のガイドライン
・ICP≧22 米国TBIガイドライン
#12. ICP亢進と自動調節能 ●頭蓋内容積の変化で調節能の限界を超える
⇒『脳コンプライアンスの低下』 正常時 ICP↑
#13. CPPとCBFの関係 閾値 脳虚血 ●CPPが50mmHg以下となると、血管拡張による
脳血流の維持が困難
⇒『脳虚血の進行』
ICPモニタリングの適応と段階的治療法
#15. そもそもICPってどこの圧? ●脳室内圧モニターはICP測定において最も
精度が高く、脳脊髄液のドレナージも行える 脳室内圧モニター 脳室実質圧モニター
#16. ICPモニタリングの適応 経皮的気管切開 ●重症頭部外傷(蘇生後GCS:3-8)
及び異常なCT所見を有する
救命しうるすべての患者
※異常なCT所見:血腫・挫傷・腫脹、
ヘルニア、脳室の圧排を認めるもの
●正常のCT所見だが、次のうち
2つを満たす場合
①40歳以上
②片側 or 両側の異常肢位
③SBP<90mmHg
#17. ICP亢進の段階的治療 経皮的気管切開 ●ICP>22mmHgは治療を推奨
ICP亢進時はまず基本的な管理を徹底 ●頭位30度・正中位
●適切な鎮静鎮痛
●pCO2:35-40mmHg 以降は重症度に伴い段階的に治療 staircase approach
#18. ICP亢進の段階的治療 経皮的気管切開 ●ルーチンでの過換気は推奨されず ①気管挿管 ②鎮静・鎮痛↑ ●BZ系より非BZ系を推奨 ③脳室ドレナージ ●圧:10-15cmH20 量:100-200ml/日
●抜去の時期は7-10日が目安
ICP亢進の治療法とICU管理の目標
#19. ICP亢進の段階的治療 経皮的気管切開 ●米国ではNS、マンニトール推奨
●グリセオールはリバウンド効果あり
推奨されていない ④浸透圧療法 引用:重症患者管理マニュアルp76 高調食塩水とマンニトールの使用法
#20. ICP亢進の段階的治療 経皮的気管切開 ●あくまでも一時的な緊急避難 ⑤過換気療法 ⑥低体温療法 ●生命予後・機能予後の有効性△ ⑦バルビツレート療法 ●大脳の電気活動、代謝を抑制
●低血圧をきたすことが多く、
CPPの低下に伴い効果が相殺されることも
#21. ICP亢進の段階的治療 経皮的気管切開 ●Large frontotemporoparietal DC
(12 x 15cm以上または直径15cm以上)を推奨 ⑧減圧開頭術
集中治療管理における各種目標と注意点
#23. 集中治療管理の目標 経皮的気管切開 ●循環(血圧管理)
50-69歳でSBP>100mmHg
15-49歳・70歳以上でSBP>110mmHg
※上限については記載なし
●呼吸(人工呼吸管理)
・低酸素を避けるpO2>60mmHg
・pCO2 35-40mmHg ※過換気を避ける
・15-20mmHg程度のPEEPは統計学的には
ICPの上昇に寄与しない
The Effect of Positive End-Expiratory Pressure on Intracranial Pressure and Cerebral Hemodynamics.
Boone MD, Neurocrit Care. 2017;26(2):174.
#24. 集中治療管理の目標 経皮的気管切開 ●神経
・ICP亢進に対する治療
・抗痙攣薬:受傷後1W以内の予防に有用
早期にレベチラセタムorフェニトイン
(Grade A)
●血液・凝固
・Hb>7g/dL
・抗凝固剤ヘパリン等は脳内出血リスク↑
リスクベネフィット評価しながら
#25. 集中治療管理の目標 経皮的気管切開 ●腎臓・電解質
・低Na血症を避ける(脳浮腫)
→生理食塩水等の細胞外液輸液
●消化器・栄養
・早期経胃空腸栄養を推奨(VAP予防)
・血糖コントロール(140-180mg/dL目安)
低血糖を避ける
●感染・体温
・抗菌薬
術後SSI予防:CEZ
髄膜炎疑い:CTRX
・高体温(38℃)を防ぐ 平温療法
予防的低体温は未推奨(48時間以内)
参考文献と医学情報の発信について
#26. 参考文献・資料 ●Guidelines for the Management of Severe TBI, 4th Ed.
●重症頭部外傷ガイドライン2017
●重症患者管理マニュアル
●他、各スライド引用文献