#4.
脳卒中疑い事例で学ぶ、大動脈解離是非、イメージしながら聞いてください
#5.
救急隊から連絡あり 60歳代女性
某年12月X日午後2時頃,自宅でトイレに行った際によろけてしまい,
右片麻痺と構音障害を来した後,呼びかけに反応しなくなったため救急
要請。約40分後に救急隊が接触した。
JCS III-200
HR 60, BP 146/91, RR 15, SpO2 97%(4L), 舌根沈下あり,
瞳孔径 5 mm/5 mm, 対光反射:両側とも鈍, 明らかな麻痺なし
#6.
さらっと、準備 連絡・招集すべき人員・部署
医師, 看護師の招集
放射線部:画像検査の準備, 血管内治療の準備
検査部:検査結果が早期に出るように
ME:血管内治療の準備
手術室:血管内治療 ないし 開頭手術の準備
薬剤部・資材:救急外来に無い薬剤・機器を準備するため
救急外来で準備するもの
末梢静脈留置針(20G), ラクテック:それぞれ2本
迅速クレアチニン測定器:造影CTを撮影するので
簡易血糖測定器:低血糖の除外
酸素とリザーバーマスク
モニター
薬剤の準備:e.g., ビムパット®︎, ペルジピン®︎, エダラボン, t-PA etc.
など
#7.
来院時所見 舌根沈下あり, 口腔内に唾液が多量に貯留
SpO2 89%(酸素4L マスク), 自発呼吸あり, RR 15
BP 105/79, HR 62, 橈骨動脈触知は良好
JCS III-200, 痙攣持続, 元から左上下肢拘縮あり, 右片麻痺あり,
瞳孔径 4.5 mm/4.5 mm, 共同偏視なし
体重:43 kg
#8.
初療室で行った介入 気道(AIRWAY)詰まりかけてる
安定化が必要!!
吸引
下顎挙上*
経鼻エアウェイ挿入*:末梢静脈路確保中で, 画像診断も
急がれたため
*あくまで緊急避難的な処置です。
※他に,痙攣収束のためビムパット®︎0.5 g点滴を実施
#9.
画像所見① − Perfusion CT −
#10.
画像所見② −3D CTA(原画像)− #1 胸部大動脈解離
#2 腕頭動脈解離
#3 左総頸動脈解離
#11.
初療経過 CT撮影完了後のバイタル:HR 63, BP 103/74, SpO2 95%
(酸素10L), 自発呼吸あり
撮影後も意識障害といびき音が持続し,ネーザルエアウェイ
内腔から血液の混じった分泌物が出続けている
#12.
初療室で行った介入② まだA(気道)が不安定…確実な気道確保が必要だ
薬剤・器具準備
鎮静薬:ドルミカム(1Aにつき2 mL/10 mg)を生食 8 mLへ溶解。
麻薬性鎮痛薬:フェンタニル(1Aにつき2 mL/0.1 mg)
筋弛緩薬:エスラックス(1Vにつき5 mL/50 mg)
〃 拮抗薬:ブリディオン(1Vにつき200 mg)
喉頭鏡, サクション, アンビューバッグ, EtCO2モニター,
気管チューブ, 気管チューブ固定用器具
十分な酸素化・患者状態監視の継続
薬剤投与:ドルミカム, フェンタニル, エスラックス
いざ挿管!(薬剤が効いてきたら)
チューブ固定とEtCO2モニター・聴診による確認
ブリディオン投与(神経症状確認が必要なので etc.) この間も患者状態
(i.e., バイタル)
の監視を継続! 1, 2は同時並行で
やります。
#13.
“AMPLE” −初療経過中に救急隊・キーパーソンから収集すべき情報 − Allergy(アレルギー):なし
Medication(内服薬):アトルバスタチン, シロスタゾール,
ビムパット, タケキャブ etc.
Past medical history(既往歴):17年前に脳腫瘍摘出術・
SAHで開頭ネッククリッピング術・脳室腹腔シャント術
(他院), 14年前に脳梗塞で入院(他院), 1年前に右大腿骨頸部
骨折で手術
Last meal(最終飲食):昼食?
Event:ここでは発症の経緯, 最終健常確認時間など
#14.
その後の経過 入院加療歴のある他院(心臓血管外科やICUあり)への転院を打診したが,
満床のため応需できず。
他の心臓血管外科のある施設にも相談したが,院内クラスター・満床のため
に応需不可だった。
当院で入院加療の方針となった。
挿管後暫くして意識レベル・神経症状は改善。
JCS 1桁:従命可能, 頷きで意思疎通可能, 刺激しなくても開眼
麻痺も認めず
全身麻酔下で解離部への血管内治療を予定したが,最初の造影で解離病変の改善
を認めたため治療せず終了。
病棟へ戻り,ABCD安定を確認後に気管チューブを抜管した。
その後著変なく経過し,入院5日目に他院(心臓血管外科あり)へ転院した。
#15.
大動脈解離とは 循環器内科の先生のご厚意で,スライドを作成して頂けました。
一部,○○○による改変あり。
#16.
大動脈解離 <定義> 大動脈壁が中膜の レベルで2層に剥離し,大動脈の走行に
沿ってある長さを持ち2腔になった状態で,大動脈壁内に
血流または血腫 (血流のある型がほとんどであるが,
血流のない=血栓化し た型もある)が存在する動的な病態
#17.
<分類> 1.解離の範囲からみた分類(右図)
e.g., Stanford分類, DeBakey分類
2.偽腔の血流状態による分類
・偽腔開存型:偽腔に血流があるもの。
部分的に血栓が存在する場合
大部分の偽腔が血栓化しているが, ULPから
長軸方向に広がる偽腔内血流を認める場合
も含む。
・ULP型:偽腔の大部分に血流を認めないが,tear近傍に
限局した偽腔内血流(ULP)を認めるもの
・偽腔閉塞型:三日月形の偽腔を有し,tear/ULP
及び偽腔内血流を認めないもの。
3.病期による分類
・急性期:発症後2週間以内.この中で発症48時間以内を
超急性期とする
・亜急性期:発症後2週間を超えて3ヵ月以内
・慢性期:発症後3ヵ月を超えるもの 解離が上行大動脈に
及んだ:A型
及んでない:B型
#18.
急性大動脈解離の臨床症状には,解離そのものによって生じる疼痛・失神と,
解離が生じたことによって起こる続発症(合併症)がある 血行動態が維持できないのであれば,
心嚢穿刺も考慮
とはいえ内科的にはやりようがないので、できるだけ
早期に手術へ(つまり心外科へ転院搬送)!!
#19.
経過中に合併症発症のリスク
あり。
従って,集学的治療が可能な
施設との連携が望まれる
#20.
胸部大動脈ステントグラフト内挿術(TEVAR) 大血管なので心外科で施行します。
循環器では手が出せません
#21.
大動脈解離の入院管理について −手術以外の治療の話− 『救急診療指針 改訂第5版』(日本救急医学会)
『2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン』
(日本循環器学会・日本心臓血管外科学会・日本胸部外科学会・日本血管
外科学会)
より
#22.
大動脈解離の急性期管理の原則 降圧
目標:「100~120 mmHg」(救急診療指針), 「130/80 mmHg未満」
(心臓血管外科etc.のガイドライン)
使用する降圧薬の例(持続点滴)
ペルジピン®︎(ニカルジピン:Ca拮抗薬)
ヘルベッサー®︎(ジルチアゼム:Ca拮抗薬)
ニトログリセリン(硝酸薬)
心拍数コントロールも必要:β遮断薬(e.g., オノアクト®︎)
鎮痛
痛みが強い場合に麻薬性鎮痛薬(e.g., フェンタニル, モルヒネ)
必要なら鎮静薬投与も(e.g., プレセデックス ®︎, ディプリバン ®︎ )
安静
#23.
まとめ ・大動脈解離は,基本的に心外科の手術のできる病院へ転院搬送
にも関わらず,心外のある施設が「受け入れ不能」はやはりまずい。
このような現状を是正すべく,地域〜国レベルの議論や対策が必要。
・搬送前(〜中)にやること
血圧管理
ABCの安定化・監視継続
・当院(=心外なし)で保存的にみるケースの例
超高齢and/or基礎疾患のため手術・血管内治療の適応がない
家族が緩和ケアを主とする保存的加療に同意した