1/11
総合病院
小児の頭部外傷の診療時に考えることをまとめました。
◆頭部打撲の小児が受診したときのチェックポイント
◆問診でのチェックポイント
◆実際の虐待症例(ntkが初診で発見したケース)
◆身体所見のチェックポイント
◆小児頭部CT撮影の留意点
◆小児頭部CT撮影基準
◆PECARNのCT撮影基準
◆PECARN のCT基準を適用するときの留意点
◆小児の頭部打撲患者を帰宅させるときのポイント
授乳婦への薬の処方 何に気をつけるべきか?
#産婦人科 #産科 #小児科
39
8,372
-慢性硬膜下血腫に対する穿頭ドレナージ術- 脳外科ローテの第一歩!
#脳神経外科 #慢性硬膜下血腫 #穿頭ドレナージ術 #穿頭血腫除去術 #皮膚切開 #骨膜切開
41
10,020
軽症頭部外傷のCT
#プライマリケア #意識障害 #CT #頭部外傷 #CCHR #EFNS #失神 #ポリファーマシー
126
26,266
重症頭部外傷のまとめ【2017年米国・日本治療ガイドラインを中心に】
#プライマリケア #外傷初期診療 #外傷 #救急外来 #救急 #ICU #集中治療 #脳外科 #頭部外傷
116
165,191
小児科頻用薬について〜救急外来はこれで十分?〜救急担当 研修医必見!
#溶連菌 #救急外来 #吸入薬 #小児科 #抗ヒスタミン薬 #アセトアミノフェン #初期研修医 #浣腸 #アモキシシリン #ホームケア指導
269
55,637
急性期脳梗塞 初期診療
#プライマリケア #初期対応 #神経内科 #研修医 #脳梗塞 #総合内科 #脳卒中 #脳神経外科 #脳神経内科 #知識をつなぐ2020
233
170,131
救急外来に発熱の赤ちゃんが来られましたー どう対応しますか? ー
#予防接種後発熱 #Step-by-Step法 #うつ熱 #3か月以降の発熱
67
10,782
肘内障
#回外法 #整復 #回内法
57
7,268
【デキレジは“こう動く”】NIHSSースコアの覚え方・つけ方ー
#救急外来 #ER #神経内科 #研修医 #脳梗塞 #脳神経内科 #デキレジ #t-PA #NIHSS
279
82,944
こどもの診察〜救急外来で泣かれないコツ?〜 診察時の心構え!
#救急外来 #PALS #小児科 ##初期研修医 #乳児 #腸重積 #母子手帳 #PAT法
54
8,348
熱性けいれんの対応ー救急での対応と家族への説明ー当直の前に一度確認!
#救急科 #小児科 #ミダゾラム ##初期研修医 #熱性けいれん #乳幼児用JCS #間代性けいれん #家族説明 #部分発作 #ダイアップ坐剤
168
43,779
-慢性硬膜下血腫に対する穿頭ドレナージ術- 脳外科ローテの第一歩!
#脳神経外科 #慢性硬膜下血腫 #穿頭ドレナージ術 #穿頭血腫除去術 #皮膚切開 #骨膜切開
41
10,020
【2020年最新ガイドライン参照】成人BLSの改訂点まとめ
#BLS #AED #救急外来 #研修医 #CPR #心肺蘇生教育 #心肺蘇生 #みんなの救命救急科 #死戦期呼吸 #除細動
31
22,665
抗菌薬を使用する前に培養をとろう!尿培養編
#感染症 #尿路感染症 #尿沈渣 #腎盂腎炎 #尿培養 #尿定性 #前立腺炎 #膀胱炎
43
10,330
歴史から学ぶ関節リウマチ診療
#関節リウマチ #間質性肺炎 #皮膚筋炎 #リウマチ膠原病
14
6,842
アルコールの問題を抱える患者さんにであったら
#精神科 #コンサルテーション #アルコール依存症 #飲酒量低減治療 #SBIRT #CAGE #AUDIT-C #ブリーフ・インターベンション #陰性感情 #飲酒日記
17
4,940
諦めないで、その痛み 緩和ケアに役立つ放射線治療
#緩和ケア #放射線科 #オピオイド #癌性疼痛 #骨転移 #緩和的放射線治療 #Oncologic Emergency #緩和照射 #ラジウム223
23
5,300
女性の鼠径部ヘルニア、どうします?〜女性の鼠径部膨隆を見たら何を考えるか〜
#産婦人科 #消化器外科 #鼠径ヘルニア #鼠径部ヘルニア #Nuck管水腫 #鼠径部子宮内膜症
21
5,516
救急外来に発熱の赤ちゃんが来られましたー どう対応しますか? ー
#予防接種後発熱 #Step-by-Step法 #うつ熱 #3か月以降の発熱
67
10,782
【公式】Antaa Slideの投稿方法
#お知らせ
35
62,679
小児の頭部外傷について ntk@脳神経外科 脳神経外科専門医、小児神経外科学会認定医
◆頭部打撲の小児が受診したときのチェックポイント 問診 どのような状況で頭を打ったのか、詳細を聴取する 症状と合致しない受傷ではないか? 看護師さんなど他職種の人からも病歴を聞いてもらう 診察 神経学的異常所見をチェックする 頭以外に打撲痕、熱傷瘢痕はないか、全身の視診を行う 検査 PECARNの撮影基準を参考に、CTを撮影するか判断する 帰宅 帰宅後の注意点を伝えて、帰宅させる
◆問診でのチェックポイント 頭部打撲を契機に発見される虐待症例は非常に多い。 第三者の目撃がないものでは、虐待の否定ができるかを念頭に問診する。 ⇒ 症状が少し前からあるのに受診していない。 受傷機転など病歴に一貫性がない。 医療スタッフに対し非常に攻撃的である。 病歴と異なる部分に打撲痕がある。 などをチェック! 子供を大声で怒鳴りつけている、子供が親の顔色をうかがうなど、いわゆる 典型的な虐待を疑う反応をする子供は少なく、児童相談所などがあらかじめ 介入しているケースも多い。
◆実際の虐待症例(ntkが初診で発見したケース) 文字にすると明らかにおかしいが、 ➢病歴に一貫性がない 意識的に何度も聞かないとわからない 「ベッドから1時間前に落ちた」 ⇒「ベッドから落ちた音は聞いたが、落ちたところは見ていない」 ⇒「気づいたらベッドの下にいたが、落ちたのかはわからない」 ⇒「ベッドの下ではなく階段の下だった」 CTで複数個所の硬膜下血腫があり、日常的な虐待が疑われた。 ➢身体診察を嫌がる 「頭をぶつけただけなのに、なんで身体も見るんですか?」 背部に熱傷瘢痕があった。 男性医師に女児の裸を見られたくない だけという可能性もあり、判断は難しい
◆身体所見のチェックポイント 全身の視診をしっかりと行い、打撲痕や熱傷痕などがないか確認する 虐待ではないと判断したうえで、 ・四肢をしっかり動かしているか ・ペンライトをチカチカさせて、追視するか ・お気に入りの動画や人形に反応しているか ・両親から見ていつもと違う症状がないか 患児の年齢、発達に 合わせて診察 小児のGCS、発達などを覚えるのは大事。 でも実際には、活気があるか、元気かどうかが一番大事。
◆小児頭部CT撮影の留意点 ① 小児は成人よりも放射線感受性が高い。 Eckerman K, Harrison J, Menzel HG, Clement CH. ICRP Publication 119: Compendium of dose coefficients based on ICRP Publication 60. Annals of the ICRP. 2012;41 Suppl 1:1-130. ② 小児は平均余命が長く、放射線障害が発現する機会が多い。 ・頭部CTを2-3回受けると脳腫瘍の発生リスクは約3倍 Pearce MS, Salotti JA, Little MP, et al. Radiation exposure from CT scans in childhood and subsequent risk of leukaemia and brain tumours: a retrospective cohort study. Lancet (London, England). 2012;380(9840):499-505. 成人以上に、小児の頭部CT撮影にはリスクがある!!
◆小児頭部CT撮影基準 小児頭部打撲に対する臨床診断アルゴリズムを検証した大規模な報告は3つ アメリカ(PECARN)、カナダ(CATCH)、イギリス(CHALICE) このうちPECARNは日本でも特に2歳以上の症例で有用であったという報告が あるため、とりあえずPECARNの基準で判断すればOK! Ide K, Uematsu S, Tetsuhara K, Yoshimura S, Kato T, Kobayashi T: official journal of the Society for Academic Emergency Medicine. 2017;24(3):308-314. ☆撮影基準自体はその時に調べれば、覚えなくてよい☆ Kuppermann N, Holmes JF, Dayan PS, et al. Identification of children at very low risk of clinically-important brain injuries after head trauma: a prospective cohort study. Lancet (London, England). 2009;374(9696):1160-1170.
◆PECARNのCT撮影基準 2歳未満 2歳以上 以下の項目があれば、頭部CT撮影を勧める ①GCS 14以下 ①GCS 14以下 ②意識変容 ②意識変容 ③頭蓋骨骨折の触知 ③頭蓋底骨折のサイン パンダの目徴候など 以下の項目があれば頭部CTの撮影ないし一定時間の経過観察を勧める ④前頭部以外の皮下血腫 ④意識消失 ⑤5秒以上の意識消失 ⑤嘔吐 ⑥高エネルギー受傷(※1) ⑥高エネルギー受傷(※2) ⑦親から見て、いつもと様子が違う ⑦強い頭痛 ※1: 0.9m以上からの転落や、歩行者や自転車乗車中に車と衝突した場合など ※2: 1.5m以上からの転落や、歩行者や自転車乗車中に車と衝突した場合など 実臨床ではこれら がCT撮影の理由 になることが多い
◆PECARN のCT基準を適用するときの留意点 この論文では、外科手術が必要になる頭部打撲や2日以上の入院が 必要になった頭部打撲を見つけられるかという点で評価している。 入院での保存的加療が必要になる軽微な外傷性くも膜下出 血や頭蓋骨骨折は考慮されていないことに注意。 特に虐待例では陽性率が低くなるため、虐待を疑ったらCT撮影を ためらわない。
◆小児の頭部打撲患者を帰宅させるときのポイント 頭部CTを撮影し問題がなかった場合でも、致死的な出血を起こすことがある。 頭部CTを撮影しなかった場合でも、脳出血が見つかることがある。 ムンテラ定型文です 現在は問題ないようですが、この後麻痺や痙攣、2-3回嘔吐を繰り返したりすることが あります。 その時には検査が必要になったり、入院・手術が必要になったりすることがあります。 24時間ほどはしっかりと、普段と様子が違っていないか確認してください(1歳未満で は48時間)。 何か心配なことがあったらすぐに連絡してくださいね。 帰る前にフォローの言葉を忘れず、カルテにも記載する!!
Take Home Message 1: 虐待の可能性はないか? 詳細な病歴聴取と全身の視診を忘れずに! 2: 小児頭部打撲のCT撮影基準を確認しよう!