テキスト全文
喀血の概要と対象者についての説明
#1. エビデンスをもとにエキスパートが解説 -研修医向け- 喀⾎ が 来 た 。 あなたならどうする︖ あなたの施設のBAE適応は 猛烈に時代遅れ? 岸和⽥リハビリテーション病院 喀⾎・肺循環センター ⽯川秀雄
#2. 本スライドの対象者 • • • • 研修医 喀⾎を診る機会のある救急医・総合診療科医 喀⾎が得意とはいえない呼吸器科医 喀⾎に少しでも関⼼のある医師・医学⽣ コンセプト 質量ともに世界⼀の喀⾎ハイボリュームセンターならではの、 ⾃施設の査読英語論⽂を主たる論拠として作成した almost-⾃施設-Evidence-Based Slidesです。 今回は喀⾎総論 基本編です。
#3. ⽬次 1. 2. 3. 4. 5. 6. 7. 8. 9. 喀⾎とは︖ 喀⾎の診断 喀⾎の基礎疾患 喀⾎の⾃然歴 喀⾎の疫学 喀⾎の分類 喀⾎の治療 Take Home Message 参考⽂献 左⼿に気管⽀鏡、右⼿にカテーテル
喀血の定義と診断方法
#4. 喀血 とは何か︖ 気道出血 である。 o m e h is s y pt d o o l b p u g n i h g Cou ⾎痰Hemosputumは和製英語
#5. 喀⾎と吐⾎の鑑別 喀⾎ 吐⾎ 症状 咳嗽とともに喀出、呼吸困難 嘔吐とともに吐出 前兆 咽頭違和感、臭い 悪⼼ ⾊調 鮮紅⾊ 暗⾚⾊ 性状 泡沫状、凝固しない 塊状、凝固する 混在物 喀痰、膿性痰 ⾷物残渣 持続 しばらく続く 短時間で反復する 糞便 ⿊⾊便少ない ⿊⾊便、タール便、下⾎ pH アルカリ性 酸性 他の症状 胸部所⾒、X線異常 腹部症状 ⽇本呼吸器学会,編:新 呼吸器専⾨医テキスト 改訂第2版. 南江堂, 2020,p37.より 引⽤
#6. 喀⾎ の診断 基礎疾患も出⾎部位もほぼCTで完結。
喀血の基礎疾患とその割合
#7. 気管⽀鏡 は診断に必要か︖ • 喀⾎を助⻑してしまう。 • 有益な追加情報があまりない。 気管⽀充填術などの治療時 と 、 左右の同定が必要なとき の み 有 ⽤ 。
#8. 喀⾎の 基礎疾患 その他 4% 肺結核 当院は癌の喀⾎を 治療対象としていない ので、癌が抜けている。 (selection bias) 7% 気管支拡張症 肺アスペルギルス症 34% 13% 特発性喀血症 18% 非結核性抗酸菌症 24% BAE⻑期成績論⽂ BMJ open 2017 n=489 (当院の単施設後ろ向き観察研究)
#9. 喀⾎の 基礎疾患 その他2% 肺結核 肺癌 DPCデータベースだと 肺癌が9 % に な る 6% 9% 特発性喀血症 30% 肺アスペルギルス症 10% 呼吸器感染症 19% 気管支拡張症 24% 脊髄梗塞(BAE合併症)論⽂ Radiology 2021 n=8563 (当院と東⼤康永研究室の共同研究)
喀血の自然歴と疫学的データ
#10. 非結核性抗酸菌症の比率(当院の場合) 29% 23% 19% ⾮結核性抗酸菌症は10 年で倍増したともいわれて いるが、それによる喀⾎は 2001→2011では 13% 4% 2001 5倍になっている 2006 2011 2016 2021年 ⽯川秀雄, ⼭⼝悠, ⼤町直樹 : ⾎管病変と肺病変 -⾎痰,喀⾎のoverview. 呼吸器ジャーナル 70 : 560-571, 2022. より改変して引⽤
#11. 喀⾎の⾃然歴 (気管⽀拡張症) BAE群と保存治療群との再喀⾎フリー率 ⽐較 n 1year 2year 3year 5year 98 64.0 52.8 44.1 37.0 BAE 118 79.2 68.1 62.8 57.6 BAE (当院) 166 87.6 85.1 参考値 conservative median follow-up time of 44.8 months (range, 2.4–83.6 months) 気管⽀拡張症における喀⾎の⾃然歴。 当院の治療成績も併記した(参考値) BAE: Bronchial Artery Embolization,気管⽀動脈塞栓術 Yan HT, et.al. Comparison of Bronchial Artery Embolisation Versus Conservative Treatment for Bronchiectasis-Related Nonmassive Haemoptysis: A Single-Centre Retrospective Study. Cardiovasc Intervent Radiol. 2023 Jan 19. P = 0.007
#12. 🇫🇷 対象年 2008-2012 2010July2017March 2016-2017 1976-2020 2013-2015 論⽂種別 Epidemiology Epidemiology Epidemiology Systematic review Single-center 基礎疾患 All All Bronchiectasis Aspergillosis (CPA) Aspergillosis (CPA) 20,000100,000/year 4,120/year 891pts/45yrs 206/2yrs 8.4% 2.1% 3.4% 2.4% 4.5% 5.1% (1) 喀⾎⼊院患者数 17,485/year BAE 院内死亡 2.4% 10% 🇯🇵 9% (2) 🇺🇸 🇬🇧 世界の喀⾎事情 (3) (4) (not limited to in-hospital death) (5) N.D. (1) Abdulmalak C, et.al. Haemoptysis in adults: a 5-year study using the French nationwide hospital administrative database. Eur Respir J. 2015 Aug;46(2):503-11. (2) Ishikawa H et.al. Spinal Cord Infarction after Bronchial Artery Embolization for Hemoptysis: A Nationwide Observational Study in Japan. Radiology. 2021 Mar;298(3):673-679. (3) Lim RK et. al. Evaluating hemoptysis hospitalizations among patients with bronchiectasis in the United States: a population-based cohort study. BMC Pulm Med. 2021 Dec 1;21(1):392. (4) Bongomin F,
喀血の重症度分類と治療法
#13. 喀⾎ は 極めて危険。 死亡率 10% 予想外に 多い。 (年間⼊院数2万-10万⼈) Photo by Hideo Ishikawa
#14. 喀⾎重症度分類 分類 喀血量による 定義 備考 入院加療 BAE 大量喀血 200ml/日以 上 (コップ一杯) または酸素飽 和度90%以下 絶対適応 絶対適応 中等量喀血 200ml/日未 満、15ml/日 以上 相対適応 相対適応 少量喀血 15ml /日未満 (大匙一杯) 外来レベル 適応なし ティシューで 処理できない 量 ティシューで 処理可能 ⽯川試案︓⾎管病変と肺病変 -⾎痰,喀⾎のoverview. 呼吸器ジャーナル 70 : 560-571, 2022.
#15. 喀⾎ の ⼤分類 ⽯川試案︓⾎管病変と肺病変 -⾎痰,喀⾎のoverview. 呼吸器ジャーナル 70 : 560-571, 2022.
特発性喀血症の特徴と治療
#16. 特発性喀⾎症 と は ︖ 特徴 単純CTで基礎疾患なし (出⾎所⾒以外は正常) 喫煙者が多い 呼吸器内科医でも知らない場合があり、ちょっと専⾨的ですが 喀⾎関連⾎管が気管⽀動脈にほぼ限定され、気管⽀動脈拡張も軽度で、 気管⽀動脈肺動脈シャントもないことが多いなど、特殊なclinical entityである。 BAEが最も有効な疾患で、5年⽌⾎率が95%以上である。 Cryptogenic Hemoptysis
#17. 喀⾎ の治療 呼吸管理 と ⽌⾎。 主たる死因 吐⾎︓出⾎性ショック 喀⾎︓窒息または呼吸不全
#18. 呼吸管理 基本 必要なら 酸素 投与。 患側を下 に側臥位。 通常の挿管⼈⼯呼吸で⼗分な酸素化ができない場合の残る治療選択肢 ⽚側挿管 気管⽀ブロッカー ECMO
喀血の治療法とBAEの適応
#19. ⽌⾎ ⽌⾎剤 点 滴 / 吸 ⼊ 意外に有効、死亡率低下 BAE 気 管 ⽀ 動 脈 塞 栓 術 EWS 気 管 ⽀ 充 填 術 ⼿術 肺 葉 切 除 第⼀選択治療 限定的効果 EWS(シリコン製プラグ)を気管⽀に詰める BAE不応例のみ、緊急⼿術はハイリスク
#20. トラネキサム酸は 院内 死亡を減少 12 ⇨7.6 % DPC study Tranexamic Acid % & Death Kinoshita T, et.al.. Effect of tranexamic acid on mortality in patients with haemoptysis: a nationwide study. Crit Care . 2019 Nov 6;23(1):347..
#21. BAE -気管⽀動脈塞栓術CIRSEの2022年ガイドラインでも、旧来の⼤量喀⾎に 対する緊急BAEだけでなく、⾎痰/少量喀⾎や慢性反復性喀⾎ に対する待期的カテもよい適応であることが⽰されたが、⼀部の IVR医は旧来の適応しか知らない。 あなたの施設のBAE適応は猛烈に時代遅れでは︖ 第⼀選択治療だが我が国では⼊院患者の8%、 ⽶仏では2%程度にしかまだ実施されておらず、普及が急務。
BAEの基礎疾患別止血率と症例
#22. BAEの基礎疾患別⽌⾎率 ( 当 院 ) もっとも恐れられてきた合併症である脊髄梗塞は1/500だが、 ⾦属コイルはゼラチンスポンジやNBCAなどの塞栓物質に ⽐べ有意に少ない。 BAE⻑期成績論⽂ BMJ open 2017 n=489 (当院の単施設後ろ向き観察研究)
#23. 世界で初めてのBAEガイドライン 重要なポイント ゼラチンスポンジは、短期間で溶解するので、BAEへの単独使⽤は推奨しない。 コイルによるBAEは、脊髄⾎流を保護するメリットがあり、再喀⾎にも使⽤可能である。 ⼤量喀⾎に対する緊急カテだけでなく、⾎痰・少量喀⾎であってもBAEの適応 慢性反復性喀⾎もBAEの適応(待期的BAE) ⽇本の逆ガラパゴス化現象 我が国ではエビデンスの脆弱なスポンゼルが70% も使⽤されている(国際的にみて異例である) Ishikawa H et.al. Spinal Cord Infarction after Bronchial Artery Embolization for Hemoptysis: A Nationwide Observational Study in Japan. Radiology. 2021 Mar;298(3):673-679. Kettenbach J,et.al... CIRSE Standards of Practice on Bronchial Artery Embolisation. Cardiovasc Intervent Radiol. 2022 Jun;45(6):721-732
#24. 症例 ( 特 発 性 喀 ⾎ 症 ) 単純CTでの出⾎像
Take Home Messageと重要な参考文献
#25. 症例 ( 特 発 性 喀 ⾎ 症 ) Platinum Coil CTangioと 術後胸部レントゲン
#26. Take Home Message • 意外に怖い喀⾎ー⼊院死亡率10% • トランサミンは意外に有効ー死亡率を下げる(12%→9%) • 第⼀選択は気管⽀動脈塞栓術ーでもまだ実施率は8% • 慢性反復性喀⾎もBAEのよい適応 • コイルBAEはもっとも安全(脊髄梗塞が有意に少ない)
#27. 参考⽂献 • Nishihara, T., Ishikawa, H., Omachi, N. et al. Prevalence of non-bronchial systemic culprit arteries in patients with hemoptysis with bronchiectasis and chronic pulmonary infection who underwent de novo bronchial artery embolization. Eur Radiol (2022). • Ishikawa H, Ohbe H, Omachi N, Morita K, Yasunaga H. Spinal Cord Infarction after Bronchial Artery Embolization for Hemoptysis: A Nationwide Observational Study in Japan. Radiology. 2021 Mar;298(3):673-679. • Omachi N, Ishikawa H, Hara M, et al. The impact of bronchial artery embolisation on the quality of life of patients with haemoptysis: a prospective observational study. Eur Radiol. 2021 Jul;31(7):5351-5360. • Ryuge M, Hara M, Hiroe T, Omachi N, Sakata Y, Ishikawa H, et al. Mechanisms of recurrent haemoptysis after super- selective bronchial artery coil embolisation: a single-centre retrospective observational study. Eur Radiol. 2019 Feb;29(2):707-715 • Ishikawa H, Hara M, Ryuge M, et al. Efficacy and safety of super
参考文献の詳細
#28. 参考⽂献 • ⽯川秀雄, ⼭⼝悠, ⼤町直樹 : ⾎管病変と肺病変 -⾎痰,喀⾎のoverview. 呼吸器ジャーナル 70 : 560-571, 2022. • ⽯川秀雄、⼭⼝悠、⻄原昂、⼤町直樹、蛇澤晶: 肺真菌症の治療 3)喀⾎に対する気管⽀動脈塞栓術. 呼吸器内科, 41(3)304-312,2022 • ⻄原昂; ⽯川秀雄40. 喀⾎ (特集 呼吸器救急と呼吸管理)--(呼吸器急性疾患 各論). 呼吸器ジャーナル, 2021, 69.4: 548555. • ⽯川秀雄, ⼤町直樹, ⼤邉寛幸, 康永秀⽣. (2021). Focus on 喀⾎の治療 気管⽀動脈塞栓術の最新動向: リアルワールドデー タを中⼼に. 内科, 128(4), 929-935. • ⽯川秀雄, ⼭⼝悠, ⻄原昂, ⼤町直樹. 気管⽀動脈蔓状⾎管腫. 別冊⽇本臨床 呼吸器症候群(第3版)Ⅱ 2021.09 Vol18 331-336 • ⼤町直樹,⽯川秀雄. 気管⽀動脈瘤. • 別冊⽇本臨床 呼吸器症候群(第3版)Ⅱ 2021.09 Vol18 337-339 ⽯川 秀雄, 服部 智明, 北⼝ 和志, 内科疾患の診断基準・病型分類・重症度(第1章)呼吸器 診断メモ 喀⾎・気管⽀動脈蔓状 ⾎管腫, 内科(0022-1961)127巻4号 Page544(2021.04) • *⽯川 秀雄, 中⾕ 幸造, 北⼝ 和志, 林 正幸,呼吸器救急 ⼤量喀⾎の治療戦略, 呼吸(0286-9314)33巻3号 Page252258(2014.03)