テキスト全文
熱傷診療の目次と概要
#2. 目次 ①面積/重症度評価
②初期輸液の量/種類
③気道損傷(気道熱傷)
④感染症治療
⑤術後管理+α
#3. 目次 ①面積/重症度評価
②初期輸液の量/種類
③気道損傷(気道熱傷)
④感染症治療
⑤術後管理+α
熱傷面積と重症度の評価方法
#4. 熱傷面積評価
熱傷診療ガイドライン 改訂第3版 2021 引用 ●TBSA(total body surface area)
全体表面積に対する%で表現
●熱傷面積の測定
9の法則,5の法則,手掌法
手掌法…本人の手掌と全指腹➡1%
※ Ⅰ度は熱傷面積として換算しない
●熱傷深達度 受傷当日のみでは正確な分類ができない
➡ 深度は2~3日で進行 経時的な変化を評価
#5. 重症度評価
熱傷診療ガイドライン 改訂第3版 2021 引用 ●熱傷指数(Burn Index: BI)
BI = 1/2×Ⅱ度熱傷面積(%)+Ⅲ度熱傷面積(%)
10~15以上を重症
●予後熱傷指数(prognostic burn index: PBI)
PBI = 熱傷指数+年齢(歳)
70以下は生存可能性が高い
100以上は予後不良の重症
#6. DispositionはArtzの基準を参考に ●Artzの基準
重症熱傷(総合病院,熱傷専門病院で入院加療)
・Ⅱ度 30%TBSA 以上 ・Ⅲ度 10%TBSA 以上
・顔面,手,足のⅢ度熱傷 ・気道損傷の合併
・軟部組織の損傷や骨折の合併 ・電撃傷
中等度熱傷(一般病院での入院加療)
・Ⅱ度熱傷面積15〜30%
・Ⅲ度熱傷面積10%以下(顔,手,足をのぞく)
軽症熱傷(外来で治療可能)
・Ⅱ度熱傷面積15%以下・Ⅲ度熱傷面積2%TBSA以下
初期輸液の適応と計算方法
#7. Pitfall ! 本当に熱傷だけですか…? ●閉鎖空間での火災 + 頭痛・意識障害
➡一酸化炭素中毒を疑いCO-Hbを測定
●高乳酸血症・代謝性アシドーシスの遷延
➡シアン化中毒の可能性も考慮
#8. 目次 ①面積/重症度評価
②初期輸液の量/種類
③気道損傷(気道熱傷)
④感染症治療
⑤術後管理+α
#9. 初期輸液
熱傷診療ガイドライン 改訂第3版 2021 引用 ●初期輸液の適応 ~日本皮膚科学会 熱傷ガイドライン(2017 年版)参考
成人15%TBSA 程度以上 小児10%TBSA 以上
それ以下であっても全身状態を評価し適応を考慮
●初期輸液製剤
バランス晶質液(リンゲル液など)などの細胞外液が1st
●推奨輸液量の計算法
・Baxter法(別名Parkland法)
成人:受傷から24時間[ml]=4×熱傷面積[%]×体重[kg]
小児:受傷から24時間[ml]=4×熱傷面積[%]×体重[kg] (+維持輸液)
最初の8時間で半分 残りは16時間で投与 上記はあくまで目安 熱傷深達度,気道熱傷の有無により異なる
過剰な輸液負荷を避けることが大切(以降スライド参照)
小児における初期輸液の注意点
#10. 小児は維持輸液も計算 体重10kgまで…4ml/kg/時投与
体重10kg-20kgまで…2ml/kg/時追加
体重20kg以上…1ml/kg/時追加
例) 25kg の小児の場合
併用する維持輸液量=10×4+10×2+5×1=65ml/時
#11. 過剰な初期輸液を避ける戦略 ●過剰輸液の害…気道浮腫, 静水圧性肺水腫, 臓器うっ血 etc…
●モニタリング指標…バイタルサイン, 尿量(0.5-1.0ml/kg/hr), Lac
●初期輸液設計の工夫~米国熱傷学会 熱傷ガイドライン参考
Baxter法での設計は過剰である可能性
➡2mL/kg/熱傷面積(%)の輸液量が推奨
●初期輸液でのアルブミン製剤の使用を考慮
成人おける明確な適応なし
(受傷後12時間以降,血液濃縮の改善後などが好ましいと報告あり)
15〜45%TBSAの1-12歳の患者➡弱く推奨
引用)熱傷診療ガイドライン 改訂第3版 2021 初期輸液量が計算値と大幅に乖離(増加) or 高容量の昇圧薬が必要
➡早期の感染の可能性 デブリードマン要否を検討
#12. 目次 ①面積/重症度評価
②初期輸液の量/種類
③気道損傷(気道熱傷)
④感染症治療
⑤術後管理+α
気道損傷の診断と管理
#13. 気道損傷の診断
熱傷診療ガイドライン 改訂第3版 2021 引用 ●代表的な臨床所見
口腔・咽頭内のススの付着,嗄声,顔面熱傷,咽頭痛
鼻毛消失,呼吸困難
●診断は気管支ファイバースコープ
気管・気管支のススの付着,粘膜の浮腫などを評価
#14. 気道損傷の管理・治療
熱傷診療ガイドライン 改訂第3版 2021 引用 ●気道熱傷単独では予防的気管挿管の適応なし
・気管支ファイバースコープを用いた継時的な観察
➡気道閉塞症状,低酸素血症,頻呼吸,意識障害を伴う場合 挿管も考慮
●抗菌薬予防投与,ステロイド投与は推奨されない
●ARDSを呈する場合は肺保護換気を
●ヘパリンやN-アセチルシステインの吸入療法も考慮
#15. 目次 ①面積/重症度評価
②初期輸液の量/種類
③気道損傷(気道熱傷)
④感染症治療
⑤術後管理+α
感染症治療のための培養と抗菌薬
#16. 培養採取のタイミング・採取すべき検体 ●創部所見や全身の炎症所見,臓器障害の進行
感染が疑われる場合➡創部培養を採取
※創部の拭い× 組織培養の採取が望ましい
●敗血症が疑われる場合➡血液培養も採取
#17. 抗菌薬投与の判断 ●抗菌薬の予防的投与は実施しない
感染症,敗血症と判断➡各種培養提出後に抗菌薬を投与
●抗菌薬の選択
創部培養,既往歴,保菌(MRSAなど)の有無を参考に
●周術期抗菌薬の投与期間
・感染を伴わない,十分なデブリードマンが完了している場合
➡短期間(2〜3日間)が原則である
・感染を伴う場合
➡創部所見や全身状態を参考に投与期間を決定
※抗菌治療によっても改善が認められない場合
➡デブリードマン不足の可能性を考慮
#18. 目次 ①面積/重症度評価
②初期輸液の量/種類
③気道損傷(気道熱傷)
④感染症治療
⑤術後管理+α
術後管理と皮膚生着の重要性
#19. 術後管理≒皮膚生着との戦い ●創部安静が不要であれば早期に抜管
●背部や臀部の分層植皮術後は以下を考慮
➡人工呼吸管理の継続
側臥位や腹臥位などの体位管理
※創部安静と植皮部のずれを回避するため
●安静の期間は専門科と相談
※長期間の安静維持は廃用のリスク↑
#20. その他 知っておくと良いポイント① ●溶血によるヘモグロビン尿➡ハプトグロビン
●四肢や体幹部に全周性のDDB以上の熱傷
➡減張切開を考慮
コンパートメント症候群・胸郭コンプライアンス低下の懸念
●臀部熱傷・褥瘡➡フレキシシール(便ドレナージ)考慮
●水治療(ハバード浴)
➡耐性菌による院内感染のリスク↑ 基本避ける
熱傷処置における感染予防のポイント
#21. その他 知っておくと良いポイント② ●熱傷処置の感染予防
・清潔操作(滅菌ガウン,滅菌手袋,生理食塩水)が有効かも
・感染のリスクが高い場合…未滅菌手袋,未滅菌洗浄ボトルの
使用は回避した方がいいかも
●電撃症
➡心電図異常・コンパートメント症候群に注意