テキスト全文
内科医のための脳出血とくも膜下出血の概要
#1. 内科医のための脳出血 と くも膜下出血 東京医科大学病院 脳神経内科
菊野 宗明
#2. Take Home Message
脳出血は先ず、収縮期血圧<140mmHgに降圧し血腫拡大を予防!
くも膜下出血は先ず、降圧・鎮痛・鎮静で再破裂を予防!
解剖学的な理解と主要な臨床試験から、手術適応を考える!
#3. 出血性脳卒中への苦手意識? 重症な患者さんが多く、初期対応に自信がない…
手術適応がわからず、脳神経外科へのコンサルトがつらい…
脳卒中の種類とその頻度
#4. 脳卒中 stroke, apoplexy 「脳卒中」 …脳血管が破れたり詰まったりして、血流が急激に途絶え、脳が障害される病気。
「卒中」 …突然邪気や邪風に中る。
“stroke” …一撃を与える。
“apoplexy” …殴られて倒れる。
#5. 脳卒中 脳梗塞
脳血管が詰まって、脳細胞が死ぬ病気。
脳出血
脳血管が破れて、脳内に出血する病気。
くも膜下出血
動脈瘤が破れ、脳周囲のくも膜下に出血する病気。 出血性
脳卒中 虚血性
脳卒中
#6. 病型ごとの頻度 『日本脳卒中データバンク報告書 2018 年』より 多いのは脳梗塞…
脳出血とくも膜下出血の予後と初期対応
#7. 脳出血の予後 脳梗塞より悪い! 『日本脳卒中データバンク報告書 2018 年』より 最重症病型の心原性脳塞栓症
と比べても悪い
#8. くも膜下出血の予後 最も悪い! 『日本脳卒中データバンク報告書 2018 年』より 退院時に4人に1人が亡くなり
最終的に3人に1人が亡くなる
#9. 出血性脳卒中への苦手意識? 重症な患者さんが多く、初期対応に自信がない…
手術適応がわからず、脳神経外科へのコンサルトがつらい…
初期治療の目標や手術適応など
ポイントがわかれば怖くない!
救える患者も増やせる筈!
脳出血の初期治療とガイドライン
#10. 脳卒中 脳梗塞
脳血管が詰まって、脳細胞が死ぬ病気。
脳出血
脳血管が破れて、脳内に出血する病気。
くも膜下出血
動脈瘤が破れ、脳周囲のくも膜下に出血する病気。
#11. 脳出血の初期治療の目標 血腫の拡大予防!
#12. 本邦、米国のガイドライン 脳出血急性期に可及的速やかに収縮期血圧<140mmHgに降圧することはガイドライン上、本邦で妥当(推奨度B、エビデンスレベル中) 、米国では安全(Class Ⅰ, Level A) で予後改善に有用(Class Ⅱa, Level B)とされる。
脳出血後の収縮期血圧の高値は、血腫拡大や神経学的増悪、死亡と要介護に関連する。
Zhang Y, et al. J Hypertens. 2008; 26:1446-1452
Rodriguez-Luna D, et al. Eur J Nerol. 2013; 20:1277-1283
降圧治療のエビデンスと注意点
#13. 降圧基準のエビデンス ATACH-2 INTERACT-2 SAMURAI-ICH Anderson CS, et al. Stroke. 2015; 46:291-295
Sakamoto Y, et al. Stroke. 2013; 44:1846-1851 目標SBP 110-139 目標SBP 140-179 90日後mRS4-6 38.7% vs 37.7%
HR1.04 (95%CI 0.85-1.27) Qureshi AI, et al. N Eng J Med. 2016;375:1033-1043
Anderson CS, et al. N Eng J Med. 2013;368:2355-2365 目標SBP <140 目標SBP <180 90日後mRS3-6 52.0% vs 55.6%
HR0.87 (95%CI 0.75-1.01) SBP <130mmHgが最も良好な結果
#14. 降圧 と 急性腎障害 ATACH-2において、intensive treatment群で腎機能障害が優位に多かった(9% vs 4%, P=0.002)。
サブ解析では、130 mmHg未満への降圧で血腫拡大が減る一方、心腎関連の合併症の増加が指摘される。
また収縮期血圧220mmHg以上の患者、90mmHg以上の降圧で腎障害が増加するとの報告もある。 Qureshi AI, et al. N Eng J Med. 2016;375:1033-1043
Toyoda K, et al. Ann Neurol. 2019;85:105-113 Burgess LG, et al. J Am Heart Assoc. 2018; 7:e008439
Hewgley H, et al. Neurocrit Care. 2018; 28:344-352 → SBP 220mmHgを超えるような患者では、SBP150程度の降圧を許容する方が、急性腎障害は減らせるかもしれない。
#15. 止血薬と抗浮腫薬 高血圧性脳出血にトラネキサム酸を投与することはガイドライン上、本邦で可(推奨度C、エビデンスレベル中) とされる。
ガイドライン上、頭蓋内圧亢進を伴う脳出血急性期に高張グリセロールを投与することは可(推奨度C、エビデンスレベル低)、マンニトールを進行性に頭蓋内圧が亢進したり、周辺組織の圧排で臨床症状が増悪する場合に投与することも可(推奨度C、エビデンスレベル中)とされる。
→ マンニトールは反跳現象もあり、実臨床では脳ヘルニア徴候の可逆性の確認や、手術までの時間を稼ぐ目的で用いられることが多い。
脳出血の手術適応と解剖学的理解
#16. 脳出血の手術適応 被殻出血 皮質下出血 小脳出血 視床出血 脳幹出血 脳室内出血 条件に応じ
手術を考慮 血腫除去術の適応は、原則なし 血腫≧31ml
中等症
意識障害 深さ≦1cm 直径≧3cm
水頭症
#17. 血腫量の概算 Zhao B, et al. Stroke. 2020; 51:193-201 Kwak R, et al. Stroke. 1983; 14:493-500 血腫量が大きくなる程に誤差も大きくなるが、臨床研究などでも
最も頻用され、脳神経外科へのコンサルトにも充分に有用。 血腫量の計算式 楕円体の体積の計算式 A B 1/2×A×B×C (cm3) *C=高さ
=CTのスライス厚×スライス数 4π/3×a×b×c =4π/3×A/2×B/2×C/2
=4π/24×A×B×C
≒1/2×A×B×C
#18. 解剖学的な理解 脳の深部ほどアプローチ困難で手術侵襲が大きく、重要な機能を担う部位も多い。 皮質下出血 小脳出血 視床出血 脳幹出血 被殻出血
STICH試験と神経内視鏡手術の可能性
#19. STICH と STICH 2 Mendelow AD, et al. Lancet. 2013;382:397-408 Surgical Trial in Intracerebral Haemorrhage (STICH) では 、テント上の脳出血1033例を対象に、早期の血腫除去群と保存治療群で6ヶ月後の転帰良好に差は認めなかった(26% vs 24%, OR:0.86, 95%CI:0.66-1.19, p=0.414)。
STICH 2ではSTICHで比較的良好な転帰であった脳表から1cm以内、血腫量10-100ml、発症48時間以内などの条件を満たすテント上の脳出血601例を対象としたが、早期の血腫除去群と保存治療群で6ヶ月後の転帰不良に差はなかった(59% vs 62%, OR:0.86, 95%CI:0.62-1.20, p=0.367)。 Mendelow AD, et al. Lancet. 2005;365:387-397 → とりあえず手術すれば良い訳では決してなく、症例を選択することが大事!
#20. 神経内視鏡手術 神経内視鏡を用いれば、内と外が反転するように脳深部にもアプローチは可能。
転帰に寄与するかはエビデンスが少なく、本邦でも臨床試験が行われている。 視床出血 オリンパス株式会社ホームページより
#21. 特殊な脳出血 脳アミロイド血管症 70代男性、脳出血と認知症の既往あり、全介助のADLで前医に入院中、左共同偏倚と左前頭葉の新規の皮質下出血あり、当院に転院となった。
降圧療法を行うも入院中も脳出血が再発し、脳アミロイド血管症の診断となった。 【頭部CT】 【頭部MRI T2*】
特殊な脳出血の診断と治療
#22. modified Boston criteria による診断 皮質の微小出血 脳表の鉄沈着 脳アミロイド血管症を疑う患者についても、近年は降圧療法は妥当とされる。 Arima H, et al. Stroke. 2010;41:394-396 Greenberg SM, et al. Stroke. 2018;49:491-497
#23. 特殊な脳出血 脳腫瘍 80代女性、半年前から認知症が進行、自宅で倒れており、意識障害で、当院に搬送となった。
頭部CT、造影MRIでリング状の造影効果を伴う腫瘤性病変からの出血あり、摘出術を行い病理で膠芽腫の診断となった。 【頭部CT】 【頭部造影MRI T1】
#24. 特殊な脳出血 抗凝固薬 70代女性、大腿骨骨折で入院中、深部静脈血栓症に対して新規経口抗凝固薬を内服、今朝からの意識障害でコンサルト。
頭部CTで右被殻出血、脳室穿破も伴い、血腫は数時間で増大して、内視鏡的な血腫除去術を施行した。 【頭部CT 発見時】 【頭部CT 2時間後】
抗凝固薬と脳出血の管理
#25. 人プロトロンビン複合体製剤 CSLベーリング株式会社ホームページより 3 IU/kg/分、210 IU/分を超えない速度で投与。
10分で作用発現、1時間でINR正常化。直ぐにINR再検を。
過体重患者などでの過剰投与は、血栓症の報告もある。
ケイツー®︎20mg静注の併用も推奨されるが、作用発現に3−6時間かかるため術中出血を減らすにはケイセントラ®︎ を積極的に用いる。
#26. イダルシズマブ と andexanet α ベーリンガーインゲルハイム株式会社ホームページより Siegal DM, et al. N Engl J Med. 2015;373:2413-2424 プラザキサ®︎には、プリズバインド®︎が使用可能。
Ⅹa阻害剤には、andexanet αが本邦でも承認待ち。
#27. 特殊な脳出血 硬膜動静脈瘻 60代男性、職場で倒れ意識障害で当院に搬送、頭部CTで右被殻と視床の混合性出血あり。
造影CTAではGalen大静脈にシャントを有する硬膜動静脈瘻があり、シャント部の開頭クリッピング術を行った。 【頭部CT】 【頭部造影3D-CTA】
もやもや病とその治療法
#28. 硬膜動静脈瘻の病態 正常な毛細血管網 硬膜動静脈瘻
dural arteriovenous fistula 動静脈奇形
arteriovenous malformation 正常な毛細血管網を介さず直接、動脈と静脈がシャントする疾患 病的血管であるNidusを介して動脈と静脈がシャントする疾患 静脈圧上昇等で後天的に生じる 先天的な疾患
#29. Borden分類とCognard分類 血管内治療、外科治療、放射線治療による積極的治療考慮 皮質静脈逆流を伴うと、出血リスクが増加する。
酷い耳鳴り等の症状を伴うType Ⅰ、Type Ⅴも積極的治療が考慮され得る。
#30. 特殊な脳出血 もやもや病 40代女性、脳出血、もやもや病の既往あり、自宅で倒れて意識障害で当院に搬送、頭部CTで右放線冠周囲から脳室穿破を伴う出血あり。
造影CTAでは両側内頚動脈は終末部で閉塞し、前脈絡槽動脈に瘤を伴うもやもや血管あり、血管内治療で瘤の塞栓を行い、開頭血腫除去術を施行した。 【頭部CT】 【頭部造影3D-CTA】
全身管理と症候性てんかんの治療
#31. 鈴木分類 と JAM trial Miyamoto S, et al. Stroke. 2014;45:1414-1421 Japan Adult Moyamoya trialでは、出血発症のもやもや病80例について、バイパス術群で5年間の有害事象が有意に減少。再出血も減った(HR:0.355, 95%CI:0.125-1.009)。
サブ解析からも後方循環の出血での脈絡槽動脈の吻合の関与など、重要な知見がある。 Funaki T, et al. J Neurosurg. 2018;128:777-784
#32. 全身管理 深部静脈血栓 ガイドライン上、急性期脳卒中患者に対する深部静脈血栓の予防として、間欠的空気圧迫法は本邦でも(推奨度A、エビデンスレベル中)、米国でも(Class Ⅰ, Level A)勧められ、弾性ストッキングは本邦でも(推奨度E、エビデンスレベル低)、米国でも(Class Ⅲ, Level A)有益性がなく行うべきでないとされる。
抗凝固療法については、本邦では脳出血には他の予防法を行うべきとされるが(推奨度A、エビデンスレベル低)、米国では止血が確認された後、発症翌日以降の体動のない患者では低分子ヘパリンや未分画ヘパリンを用いることを考慮しても良いとされる(Class Ⅱb, Level B)。 → 脳出血患者では凝固亢進もあり、特に麻痺側にDVTができやすい。
#33. 全身管理 症候性てんかん ガイドライン上、脳卒中患者への抗てんかん薬の予防的投与は、本邦でも(推奨度D、エビデンスレベル低)、米国でも(Class Ⅲ, Level B)勧められていないが、本邦では高齢者の皮質下出血については予防的治療を考慮しても良い (推奨度C、エビデンスレベル低) 、米国では意識変容を伴って脳波で、てんかん波が検出された患者では抗てんかん薬が勧められるとされる(Class Ⅰ, Level C) 。
→ こうした脳出血急性期の全身管理は、内科医の腕の見せ所が少なくない!
くも膜下出血の初期治療とガイドライン
#34. 脳卒中 脳梗塞
脳血管が詰まって、脳細胞が死ぬ病気。
脳出血
脳血管が破れて、脳内に出血する病気。
くも膜下出血
動脈瘤が破れ、脳周囲のくも膜下に出血する病気。
#35. くも膜下出血の初期治療の目標 再破裂の予防!
#36. 本邦、米国のガイドライン 緊急疾患であり、ガイドライン上はCTで判断がつかない場合、腰椎穿刺を行うことは本邦で妥当(推奨度B、エビデンスレベル中)、米国で推奨され(Class Ⅰ, Level B) 、MRIを行うことは本邦で妥当(推奨度B、エビデンスレベル低)、米国で考慮しても良い(Class Ⅱb, Level C) とされる。
発症直後は再出血を予防するため、安静を保ち侵襲的な処置や検査を避けることは本邦で妥当(推奨度B、エビデンスレベル中)、十分な鎮痛、鎮静を施すことも妥当(推奨度B、エビデンスレベル低)、軽・中等症では収縮期血圧を160mmHg未満に降圧することが、本邦で妥当(推奨度B、エビデンスレベル高)、米国では脳灌流圧とのバランスを考慮した上で、妥当(Class Ⅱa, Level C)とされる。 → 破裂急性期は、実臨床ではより積極的に降圧することが多い。
再出血予防の手術と治療法
#37. 鎮痛薬 と 鎮静薬 鎮痛薬 処方1例 (体重50kg程度の患者で)
ソセゴン®️ 15mg静注
フェンタニル®️ (0.01mg/mlの組成で) 0.1-0.3mg静注、0.1-0.2mg/時で持続投与
鎮静薬 処方1例 (体重50kg程度の患者で)
プロポフォール®️ (10mg/mlの組成で) 50mg静注、15-150mg/時で持続投与
ドルミカム®️ (1mg/mlの組成で) 5-10mg静注、2.5-10mg/時で持続投与
#38. 気管挿管をどうするか? 血圧上昇などのバイタル変動を来たすことなく挿管できなければ、救命科や麻酔科の挿管技術に長けた先生に応援を要請してでも、とにかく再破裂を避けた方が良い。
気道や呼吸が促迫している場合、当然より迅速な対応を要する。
#39. 再出血予防の手術 破裂脳動脈瘤では再出血予防が重要であり、ガイドライン上、開頭による外科治療あるいは血管内治療を行うことが、本邦でも(推奨度A、エビデンスレベル低)、米国でも(Class Ⅰ, Level B) 勧められ、いずれの治療を行うかはそれぞれの専門家が患者や瘤の所見に基づき総合的に決定することが、本邦でも(推奨度B、エビデンスレベル中)、米国でも(Class Ⅰ, Level C)推奨される 。
再出血予防処置は、重症度分類Grade Ⅰ-Ⅲでは早期(発症72時間以内)に行うことは妥当(推奨度B、エビデンスレベル中)、Grade Ⅳでは患者の年齢や瘤の部位などを考え適否を考慮しても良い(推奨度C、エビデンスレベル低)、Grade Ⅴでは原則として適応は乏しいが、状態の改善が見られれば考慮しても良いとされる (推奨度C、エビデンスレベル低)。
WFNS分類と手術方法の選択
#40. WFNS分類 と Hunt and Kosnik分類 72時間以内の再破裂予防を考慮 → 来院時Grade Ⅴも、特に若年などでは社会復帰する例もあり、状態の変化に応じて、治療可能性は常に考慮する! 再破裂予防を考慮
#41. 手術方法 コイル塞栓術 開頭クリッピング術
#42. 解剖学的な理解 【左内頚動脈撮影】 【左椎骨動脈撮影】 中大脳動脈瘤は脳表に近く、
開頭術でのアプローチは容易。 一方で血管内治療を行うには
末梢であり、カテーテル操作が
容易でないこともあり得る。 脳底動脈瘤は脳深部にあり、
開頭術でのアプローチは困難。 一方で血管内治療を行う上では、
直線的走行で比較的、カテーテル
操作は容易。 *前交通動脈や内頚動脈では、瘤の
形状や部位も参考に治療を選ぶ。
くも膜下出血の合併症とその治療
#43. ISAT Molyneux AJ, et al. Lancet. 2005;366:809-817 → ほぼ同等の成績であり、患者や瘤の特徴に応じて治療法を選択する。 International Subarachnoid Aneurysm trialでは、頭蓋内の破裂脳動脈瘤2143例を対象に、血管内治療群で外科治療群に比べ、1年後の死亡もしくは要介護が少なかった(23.5% vs 30.9%, OR:0.76, 95%CI:0.66-0.87, p=0.0001)。
10年後の自立下生存についても、血管内治療群で多かったが(68.2% vs 61.7%, OR:1.34, 95%CI:1.07-1.67)、治療した動脈瘤からの再出血による死亡、要介護はごく少数ではあるが、血管内治療群で多かった。 Molyneux AJ, et al. Lancet. 2015;385:691-697
#44. くも膜下出血の合併症 脳血管攣縮 水頭症 再破裂を含め、3つの関門を超えなければいけないイメージ!
#45. 合併症の治療法 エリル®︎動注療法
バルーンによる血管形成術 脳室-腹腔シャント術
腰椎-腹腔シャント術 → ドレナージ術やファスジル、オザグレル静注、Triple H(循環血液量増加、血液希釈、人為的高血圧)療法なども治療としては有用。
特殊なくも膜下出血の症例と管理
#46. 経頭蓋超音波 と 脳血管攣縮 Kumar G, et al. J Neurosurg. 2016;124:1257-1264 経頭蓋超音波による脳血管攣縮の診断に関する17の研究のメタアナリシスによると、2870人の患者を対象に平均血流速度≧120 cm/秒を診断基準とし、経頭蓋超音波は感度90%、特異度71%、陽性的中率57%、陰性的中率92%で遅発性脳虚血を予測した。
経頭蓋超音波による脳血管攣縮の診断を、脳血管撮影をゴールデンスタンダードとした7つの研究のメタアナリシシスでは、中大脳動脈については感度67%、特異度99%、陽性的中率97%、陰性的中率78%と有用であった。 Lysakowski C, et al. Stroke. 2001;32:2292-2298 → ベッドサイドで超音波ができる内科医がいれば、診断の一助になり得る!
#47. 特殊なくも膜下出血 外傷性 80代男性、飲酒し自転車から転倒して頭部打撲で当院に搬送、頭部CTで脳皮質に沿って僅かな、くも膜下出血を認めた。
1泊の経過観察入院を行い、血腫の消退を確認し、翌日に自宅退院となった。外来で慢性硬膜下血腫の併発ないか、経過観察した。 【頭部CT】 【頭部CT】
#48. 特殊なくも膜下出血 unknown SAH 30代女性、数日前からの頭痛、嘔吐で当院を受診、頭部CTで中脳の脚間槽に限局した、くも膜下出血を認め、緊急入院となった。
頭痛は徐々に改善、脳血管撮影を繰り返し行うも、明らかな動脈瘤や解離、静脈灌流異常などは認めなかった。 【頭部CT】 【頭部MRI FLAIR】 【頭部MRI T2*】 【頭部MRA】
脳動静脈奇形とその治療法
#49. 特殊なくも膜下出血 椎骨動脈解離 40代男性、数日前からの頭痛と、今朝からの意識障害で当院に搬送、頭部CTでは脳幹周囲から鞍上槽にびまん性に、くも膜下出血を認めた。
造影CTAでは両側椎骨動脈に解離性の動脈瘤を認め、血管内治療による塞栓術を行った。 【頭部CT】 【頭部造影3D-CTA】 【右椎骨動脈撮影】 【左椎骨動脈撮影】
#50. SCADS-JAPAN 2009年に行われた本邦の脳動脈解離の実態を探るSpontaneous Cervicocephalic Arterial Dissections Study Japanでは、本邦では頭蓋内椎骨動脈解離が多いこと、その31%が出血発症であること、出血発症例では発症7日以内の再出血が6.3%と少なくないこと、脳動脈解離全体の予後は良好だが、出血発症例に限ると19%が死亡し36%が退院時mRS4以上と転帰不良であることが指摘された。
出血発症例の椎骨動脈解離の治療については開頭術によるtrapping、近位閉塞、clippingや血管内治療によるinternal trappingなどがある。 松岡秀樹ら、『脳動脈解離診療の手引き』より
#51. 特殊なくも膜下出血 AVM 50代男性、今朝からの強い頭痛で当院に搬送、頭部CTで鞍上槽から左Sylvius裂にくも膜下出血を認めた。
造影CTAでは左前頭葉に5cm大のnidusを有する脳動静脈奇形を認め、待機的に血管内治療による塞栓術を行った後、開頭摘出術を行った。 【頭部CT】 【左内頚動脈撮影】
脳出血の最新治療と今後の展望
#52. Spetzler-Martin分類 外科治療も考慮 外科治療、血管内治療も考慮 実際は脳出血が寧ろ多く、年間出血率は3.0%、出血例では4.5%と報告される。
Spetzler-Martin分類は、外科治療の難易度とよく相関し、治療適応に用いられる。 Gross BA, et al. J Neurosurg. 2013;118:437-443
#53. ARUBA Mohr JP, et al. Lancet. 2014;383:614-621 Mohr JP, et al. Lancet. Neurol. 2020;19:573-581 A Randomized trial of unruptured Brain Arteriovenous Malformationでは、18歳以上の未破裂脳動静脈奇形を対象に、内科治療単独と介入治療との併用を比較したが、223例の段階で内科治療単独群で、死亡や脳卒中が有意に少なくなり(10.1% vs 30.7%, OR:0.27, 95%CI:0.14-0.54, p=0.0001)、試験は早期に中止された。
5年後までのフォローアップでも、内科治療単独群で、死亡や脳卒中が有意に少なかった(OR:0.31, 95%CI:0.17-0.56) 。
軽症例で外科治療が少ないこと等の問題点は指摘される。 → 内科治療に勝る成績が得られていないため、介入は症例選択が重要!
#54. 脳出血の最新治療 国立循環器病研究センターホームページより 脳出血超急性期患者への遺伝子組換え第Ⅶ因子投与の有効性と安全性を検証する研究者主導国際臨床試験(rFⅦa for Acute Hemorrhagic Stroke administered at Earliest Time Trial)が、発症2時間以内の血腫量2−60mlの脳出血を対象として、本邦を含む5カ国で860例登録を目標に予定されており、脳梗塞に於けるtPAのように転帰を改善し得る薬剤として、外因性凝固経路の開始因子であり血友病治療薬であるノボセブン®︎が期待されている。 ノボノルディスクファーマ株式会社ホームページより
モバイルストロークユニットの可能性
#55. 近未来のmobile stroke unit 救急車内でCTを撮って梗塞ならtPAや脳保護薬、出血なら止血薬や降圧薬を投与し、
血管内治療や外科手術のできる、包括的な脳卒中センターに搬送! 田辺三菱製薬株式会社ホームページより
#56. くも膜下出血の最新の予防治療 テルモ株式会社ホームページより FRED®︎ WEB®︎ 日本メドトロニック株式会社ホームページより Pipeline TM Flex®︎ 脳動脈瘤を血流制御により治療する新規デバイス群
(破裂急性期の適応は現時点ではWEB®︎のみ)
#57. Flow diverter stent 60代女性、右内頚動脈海面静脈洞部の未破裂動脈瘤16mm、数年間でサイズが増大し、今回治療を希望。
血管内治療によりPipeline TM Flex®︎ 4.25*18mmを右内頚動脈に留置、直後より瘤内に造影剤の鬱滞によるeclipse signを認め、半年程での瘤の血栓化が見込まれた。 【治療前 右内頚動脈撮影】 【ステント留置】 【治療後 右内頚動脈撮影】 【3D high-resolution CT】
Take Home Messageとスライド作成者の紹介
#58. Take Home Message
脳出血は先ず、収縮期血圧<140mmHgに降圧し血腫拡大を予防!
くも膜下出血は先ず、降圧・鎮痛・鎮静で再破裂を予防!
解剖学的な理解と主要な臨床試験から、手術適応を考える!
#59. No Medicine, No Surgery
#60. このスライドをつくったひと 東京医科大学病院 脳神経内科 助教
東京医科大学病院 脳神経外科 脳血管内治療班
日本神経学会 神経内科専門医
日本脳卒中学会 脳卒中専門医
日本脳神経血管内治療学会 専門医
日本脳神経超音波学会 認定検査士・評議員
医学博士 より良い脳卒中診療の実践と普及を目指しています!
東京医科大学脳卒中センターの紹介
#61. 東京医科大学 脳卒中センター 患者様の御紹介や病院見学、お待ちしてます! 脳神経外科 救命センター 脳神経内科 高齢診療科 血管内治療
脳卒中の外科 抗血栓療法
病態・病型診断 総合診療
脳卒中後認知症 救急初期対応
集中治療