#4.
すみません、先⽇提出した喀痰培養の検体で 抗酸菌塗沫(Z-N染⾊)陽性でした 排菌ありの状態︕(活動性肺結核の可能性がある) ただ、結核菌か⾮結核性抗酸菌かはまだ不明 結核菌PCRの結果を待つ 外来患者なら⾃宅待機、⼊院患者なら陰圧個室管理
#5.
喀痰培養 異なる⽇の3⽇連続で提出する 塗沫検査 排菌しているかを確認する PCR検査 結核菌かが判明する 培養検査 最終的な菌名の同定、そして薬剤感受性が判明する 喀痰抗酸菌培養では塗沫検査、PCR検査、培養検査を⾏います。 異なる⽇で3⽇連続提出します。塗沫検査が陽性の場合は排菌状 態ですが、まだ結核か⾮結核性抗酸菌かわかりません。PCRで結 核菌と判明したら確定診断です。また、培養検査では最終的な菌 名だけでなく、薬剤感受性がわかります。 いずれの検査も全て⾮常に重要です︕
#6.
⾎液検査 IGRA(結核特異的全⾎IFN-γ遊離測定法) Ø 結核感染の有無を評価する QFTとT-SPOTがある Ø 排菌状態の活動性結核におけるIGRAの感度は90-95%、特異度は98-99% Ø BCG接種や多くの⾮結核性抗酸菌の影響を受けない Ø ⽋点として、活動性感染か潜在性感染または既感染の区別はできない 現在ツベルクリン反応は⽤いず、IGRAが主流(既知と思います)。 QFTとT-SPOTどちらでも良いが、違いは以下に記載。 QFT︓3種類の結核菌群特異抗原で⾎液を刺激し、産⽣された IFN-γの総量をみる T-SPOT︓2種類の結核菌群特異抗原で⾎液を刺激し、INF-γを産⽣ した細胞数をみる
#7.
結核治療 治療開始前に 発熱 Ø 感受性が出るまでは時間がかかり、empiric therapyとなる Ø 結核感染という指定感染症に対する患者への病状や治療⽅針について、また公費等に関する説明を⾏う Ø 初回治療か、既治療例かを確認する Ø 既治療例の場合、過去の治療歴と薬剤感受性を確認する(必要があれば取り寄せる) Ø 以下に該当する患者は薬剤耐性である可能性があることを頭に⼊れておく ・耐性結核患者と接触歴がある ・過去の治療内容が不規則であったり、中断されている ・1975年より前に結核の治療歴があり、再発している
#8.
結核治療 First-line drugs (a)(b) Second-line drugs Multi-drug resistant tuberculosis drugs 治療薬の分類を知りましょう︕︕︕
#9.
結核治療 First-line drugs (a)(b) Ø (a) 最も強⼒な抗結核作⽤を有する抗菌薬で、必須の薬剤 リファンピシン(RFP) リファブテン(RBT) イソニアジド(INH) ピラジナミド(PZA) Ø (b) (a)との併⽤で効果がある薬剤 エサンブトール(EB) (静菌的) ストレプトマイシン(SM) (殺菌的) これらが主要薬剤です︕抗結核作⽤が強いです。 また、RBTはHIV合併などでRFPが使⽤できない場合に使⽤します。
#10.
結核治療 Second-line drugs Ø First Line Drugsより抗菌⼒は劣るが、多剤併⽤で効果が期待される レボフロキサシン(LVFX) カナマイシン(KM) エオチナミド(ETH) エンビオマイシン(EVM) パラアミノサリチル酸(PAS) サイクロセリン(CS) Multi-drug resistant tuberculosis drugs Ø 多剤耐性結核のみに使⽤する デラマニド(DLM) ベダキリン(BDQ) Second-line drugsは、薬剤耐性結核に限り使⽤します。 ニューキノロン系薬剤でLVFXは認可されており、副作⽤で使⽤できない場合にはシ プロフロキサシン(CPFX)・モキシフロキサシン(MFLX)のみ使⽤できます。
#11.
結核治療 標準治療 原則PZAを含むA法 Ø 初期治療(2ヶ⽉) RFP+INH+PZA+EB or SM Ø 維持治療(4ヶ⽉) RFP+INH ⾼齢者でも、肝硬変など重篤な肝障害がない、痛⾵がなければPZAを併⽤する 以下の場合には治療期間を3ヶ⽉延⻑し、9ヶ⽉とする ・再治療例 ・治療開始時が重症である(広汎空洞、粟粒結核、結核性髄膜炎など) ・2ヶ⽉の初期値治療終了時に喀痰抗酸菌培養が陽性 ・HIV、糖尿病、じん肺など免疫低下を伴う背景疾患がある ・免疫抑制作⽤を起こす治療を受けている(ステロイド、免疫抑制剤) 結核.2018;93:61-8
#12.
結核治療 標準治療 PZAが使えない場合のB法 Ø 初期治療(2ヶ⽉) RFP+INH+EB or SM Ø 維持治療(7ヶ⽉) RFP+INH ⾼齢者、肝硬変など重篤な肝障害がある、痛⾵がある場合はB法を⾏う 以下の場合には治療期間を3ヶ⽉延⻑し、12ヶ⽉とする ・再治療例 ・治療開始時が重症である(広汎空洞、粟粒結核、結核性髄膜炎など) ・2ヶ⽉の初期値治療終了時に喀痰抗酸菌培養が陽性 ・HIV、糖尿病、じん肺など免疫低下を伴う背景疾患がある ・免疫抑制作⽤を起こす治療を受けている(ステロイド、免疫抑制剤) 結核.2018;93:61-8
#13.
結核治療 薬剤感受性結果が出るまで 治療開始してから1-2ヶ⽉ほどして感受性結果がわかる。 INHとRFPに感受性があれば、標準治療継続でOKです。その際にEBなどは 中⽌可能となる。 INHまたはRFPに耐性が確認されたら、専⾨医療機関に相談︕︕ INHまたはRFPへの耐性が確認されたら、治療困難となる可能性が⾼いので、専⾨医 療機関に相談しましょう。 また、培養が陰性の結核の場合はINHとRFPの感受性が良好と仮定して治療継続しま すが、臨床所⾒や画像経過を確認しましょう。悪化している場合は薬剤耐性を疑い、 喀痰培養を頻回に⾏います。 結核.2018;93:61-8
#14.
薬剤耐性結核 多剤耐性結核(MDR-TB) INHとRFPの両剤に耐性である結核 超多剤耐性結核(XDR-TB) 多剤耐性結核のうち ・ニューキノロン系の1種類以上に耐性 かつ ・AMK、KM、カプレオマイシンの1種類以上に耐性 薬剤耐性結核のうち、上記を満たすと多剤耐性結核(MDR-TB)や超多剤耐性結核 (XDR-TB)と⾔います。
#15.
薬剤耐性結核 治療 専⾨医療機関に相談する 薬剤耐性結核で、INHまたはRFPに耐性がある、MDR-TB、XDR-TBであっ た場合、すぐに専⾨医療機関に相談する。 専⾨医療機関から治療⽅針の指⽰を仰ぐことが重要。 多剤耐性結核は頻繁に遭遇しませんが、私⾃⾝も遭遇した際に⾃⼰判断で治療完 結は絶対にしません。必ず分かった時点で専⾨医療機関に症例相談を⾏い、治療 ⽅針のアドバイスを頂きます。 即︕相談︕絶対︕ ですが、簡単にどのような治療戦略を⽴てるか、次項からまとめます。 結核.2018;93:61-8
#16.
多剤耐性結核 治療 ⽇本での従来の考え⽅ INH>RFP>PZA>SM>EB>LVFX>KM>ETH>EVM>CS>PAS Ø リストの上位から感受性あるものを順番に選択し使⽤する Ø 注射薬であるSM,KM,EVMは同時使⽤できない 例えばMDR-TBの場合 PZA>SM>EB>LVFX>KM>ETH>EVN>CS>PASの順となります しかし、2019年に発表された「WHO」や「ATS/CDC/ERS/IDSA」の多剤耐 性結核の新しい治療ガイドラインでは、従来の本邦での治療法と異なる推奨が 記載されており、臨床現場に混乱が⽣じました。 ⽇本結核病学会治療委員会: 「結核医療の基準」2018, 結核.2018;93:61-8
#17.
多剤耐性結核 治療 WHOの新ガイドライン WHO consolidated guidelines on drug-resistant tuberculosis treatment ,2019 第1選択︓LVFX、BDQ、リネゾリド(LNZ) 第2選択︓クロファミジン(CFZ)、CS 第3選択︓EB、PZA、SM or AMK、MEPM or IPM/CS、PAS 4剤での治療で、治療期間は6-7ヶ⽉ ATS/CDC/ERS/IDSA Am J Respir Crit Care Med.2019;200(10):93-142 治療 ATS/CDC/ERS/IDSAのガイドライン 第1選択︓LVFX or MFLX、BDQ 第2選択︓LZD、CFZ、CS or テリジドン 第3選択︓EB、PZA、SM or AMK、MEPM or IPM/CS、PAS 5剤での治療で、治療期間は培養陰性から5-7ヶ⽉ ※XDR-TBの場合は培養陰性から15-24ヶ⽉
#18.
多剤耐性結核 ⽇本における薬剤別治療成績への寄与 ⽇本において、個々の薬剤や治療成績への寄与を調べた報告によると、 LZD、LVFX、EB、PZAは治療成績に寄与し、ETH、KMは効果が認められな かったとされています。 吉⼭ 祟: 結核.2017;92:529-34 また、前項のWHOやATS/CDC/ERS/IDSA新ガイドラインには、基礎となって いる治療成績の報告(個々の薬剤の有効性について多変量解析を⽤いて検討した もの)があります。 それによると、薬剤感受性が確認できた薬剤で治療した場合の治療成功が⾼い 第1選択薬はLVFX or MFLX、BDQ、LZDでした。ついで、CS or テリジドン、 CFZでした。この結果からこれらを推奨とされています。 Collaborative Group for the Meta-Analysis of Individual Patient Data in MDR-TB treatment. Lancet.2018;392(10150):821-34
#19.
多剤耐性結核 治療 ⽇本における新薬の承認 BDQとDLM 2018年より使⽤可能︕ Ø MDR-TB、XDR-TBのみに⽤いる! Ø 適格性確認システムが導⼊されている(使⽤する場合には適応委員会に 許可を申請し、承認が必要) 2018年にMDR-TB、XDR-TBのみに使⽤できる 薬剤として、ベダキリン(BDQ)とデラマニド (DLM)が承認されました。 現在のところ⽐較的耐性が少ない薬剤であり、 感受性が良好であれば優先される薬剤の⽴場に なっております。 2020年時点で、登録は200例を超えており、極めて重篤な 副作⽤報告は上がっていません。 副作⽤として、BDQとDLMの併⽤でQT延⻑の発⽣率が⾼ まるとの報告があり、個々の症例でも⼼電図測定による慎 重な経過観察をすべきです。 結核.2017;92:47-50 結核.2017;93:71-4
#20.
多剤耐性結核 治療 ⽇本での現在の考え⽅ LVFXとBDQを基本的な薬剤として使⽤する 抗結核薬としての殺菌効果からLZD、感受性を確認しEB、PZA、DLM、CFZ、CS Ø 上記8剤から5剤を⽤いて、菌陰性から18ヶ⽉まで治療を⾏う 注意点 ・CSは重篤な有害事象を起こしうる(精神症状による⾃殺企図)ことを考慮する必要がある ・CFZはQT延⻑、⽪膚への着⾊が必発であり、抑鬱状態となることがある ・LZD、CFZなど⽇本で保険承認されていない薬は、優先度を低くするべきかもしれない 結核.2020;95(2):79-84
#21.
多剤耐性結核 治療 ⽇本での現在の考え⽅2 WHOの推奨する9-11ヶ⽉レジメンを⾏っても良い Ø LVFX or MFLX+PZA+EB+CFZ+BDQ+INH+TH 4ヶ⽉ →LVFX or MFLX+PZA+EB+CFZ+BDQ 2ヶ⽉ →LVFX or MFLX+PZA+EB+CFZ 3ヶ⽉ Ø LVFX or MFLX+PZA+EB+CFZ+AMK+INH+TH 4ヶ⽉ →LVFX or MFLX+PZA+EB+CFZ 5ヶ⽉ 他2種類 計4レジメンの提⽰ WHOでは、9-11ヶ⽉治療が⻑期治療と遜⾊ないことが確認され、そのことから⽇本でも 短期レジメンを使⽤することを推奨しても良いという⾒解になっております。 しかし、そのためには、LVFX、BDQ、AMK、CFZ、TH、LZDなどが使⽤し続けられるこ とが必要条件となっております。 WHO consolidated guidelines on tuberculosis. Modure 4,2002
#22.
多剤耐性結核 治療 ⽇本における今後の課題 本邦未承認の抗結核薬は公費負担の対象外である Ø AMK、LZD、CFZ、IPM/CS、MEPM LZD、CFZ、IPM/CS、MEPMは結核に対する保険診療での使⽤が認められない Ø 適応外使⽤で有害事象が発⽣した場合、医薬品医療機器救済制度の対象外 BDQ、DLM、LZDなどの抗結核薬への耐性が課題になる⽇が来ると想定される Ø これら薬剤への獲得耐性の報告がある
#23.
補⾜ 潜在性肺結核(LTBI) 潜在性肺結核(LTBI) Ø Ø Ø Ø 活動性結核の症状に⽋き周囲への感染性はないが、結核に感染している状態 画像で肺陰影がないこと IGRAが陽性である 診断した場合には保健所への届出が必要 治療対象者 <勧告レベルA> ・HIV/AIDS ・臓器移植例 ・珪肺 ・慢性腎不全/透析 ・⽣物学的製剤使⽤ ・2年以内の結核感染 ・胸部X線で線維結節影(未治療の陳旧性結核病変) <勧告レベルB> ・ステロイド使⽤ ・免疫抑制剤使⽤ ・コントロール不良の糖尿病 ・低体重、喫煙、胃切除後 <勧告レベルC> ・医療従事者 潜在性結核感染症治療指針より
#24.
補⾜ 潜在性肺結核(LTBI) 治療 1︓INH 2︓INH+RFP 3︓INF+RPT(週1) 4︓RFP 6ヶ⽉間または9ヶ⽉間 3-4ヶ⽉間 3ヶ⽉間 4ヶ⽉間 INH+RFP3-4ヶ⽉療法は、INF6または9ヶ⽉療法と同様の発病予防効果があり、副作⽤も 相違ないことから治療レジメンの1つとなりました。また、RFP4ヶ⽉療法はINHが使えな い場合における代替療法であることが原則とされています。 結核.2019;94(10):515-8 WHO,Geneva,2018. Licence: CCBY-NC-SA 3.0 Stagg HR. Ann Intern Med.2014;161:419-28
#25.
最後に Ø 結核は空気感染で2類感染症で現在⽇本は低蔓延国 Ø 喀痰塗沫、PCR、培養検査を⾏い、IGRAはQFTとT-SPOTがある Ø 治療薬にFirst-line drugs、Second-line drugs、Multi-drug resistant tuberculosis drugsの分類がある Ø 感受性良好な結核はA法、PZA使⽤できなければB法 Ø MDR-TBはINHとRFP両⽅に耐性、XDR-TBではさらにニューキノロン かつAMK or KM or カプレオマイシンに耐性 Ø 薬剤耐性結核は専⾨医療機関に相談する Ø BDQとDLMは2018年から使⽤可能なMDR-TB,XDR-TBに対する治療薬 で、使⽤の際に適応委員会の承認が必要 Ø MDR-TBに対し、現状はLVFXとBDQを優先した8剤のうち5剤で菌陰性 から18ヶ⽉まで治療するが、WHO推奨の短期間レジメンもある 最後まで⾒ていただきありがとうございました。