#4.
チェックすべき持病① B型肝炎キャリア/既往感染
抗がん薬開始に伴い、B型肝炎の再活性化が起こるリスクがあります。
治療経過でステロイドを使うことも多く、同様にB型肝炎の再活性化のリスクがあります。
後ほど、詳しく説明します。
#5.
チェックすべき持病② 慢性呼吸器疾患
間質性肺炎(IP):IPがあると手術を契機に増悪する可能性、放射線治療が困難、使える抗がん薬に制限がかかるなど、非常に治療制限があります。
COPD:特に重症のCOPDの場合、手術を縮小手術にする必要、あるいは手術困難という可能性もあります。また経過中に気胸が起こるリスクも高いです。
#6.
チェックすべき持病③ 自己免疫疾患
肺がんでも免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用する機会が増えています。
自己免疫疾患があると、免疫関連有害事象(irAE)が出やすく、重症度も高くなりがちなので、治療前にリウマチ因子や抗核抗体の検査をしておくことが望まれます。
自己免疫疾患で加療中の場合、膠原病内科の医師との連携が必須です。
#7.
チェックすべき臓器機能① 心機能
抗がん薬によっては、心機能が悪化する可能性が報告されています。
たとえばアムルビシンによる心毒性、オシメルチニブによるQT延長などが有名です。
また特にICI使用患者において、心筋炎が稀に起こることがあり、その場合は緊急対応を要します。
#8.
チェックすべき臓器機能② 腎機能
腎機能が悪い場合は、抗がん薬の使用制限、減量が必要になります。
たとえばCDDPではCCrが46~60mL/分では75%に減量、31~45mL/分では50%に減量、≦30mL/分では原則禁忌となっています。
またS-1では80>Ccr≧60mL/分では必要に応じて1段階減量、60>Ccr≧40mL/分では原則として1段階減量、40>Ccr≧30mL/分では原則として2段階減量、そしてCcr<30mL/分では投与不可となっています。
#9.
チェックすべき臓器機能③ 肝機能
抗がん薬は肝臓で代謝されるものがほとんどで、肝機能が悪いと抗がん薬の調整が必要です。
肝機能が悪い時は、抗がん薬を減量したり、投与間隔を延長したりする必要があります。
投与中には肝機能を慎重にモニタリングする必要があります。
特に黄疸、倦怠感、食欲不振などが出現した場合はすぐに受診するように指導します。
#10.
チェックすべき臓器機能④ 肺機能
肺機能が悪いと十分な手術ができない可能性があります(縮小手術)。場合により手術が無理と判断されることもあります。
特に間質性肺炎(IP)がある場合は、手術による増悪に注意が必要、胸部への放射線治療は原則不可、抗がん薬の種類にも制限がかかります。
抗がん薬(特に分子標的薬、ICI)による間質性肺疾患(ILD)の発症には十分注意し、早期発見に努めるようにしましょう。
#11.
B型肝炎とは? B型肝炎とは?
B型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされる肝臓の炎症(感染)です。
感染経路は、血液や体液の接触が主なもので、母子感染、性交渉、医療行為などによって感染が広がります。
#12.
B型肝炎の疫学 B型肝炎ウイルスは、全世界で20億人が感染し、そのうち約3億5,000万人が持続感染していると言われます。
そのうち日本では約130~150万人(およそ100人に1人)が感染していると推定されています。 日本肝臓学会ホームページより
#13.
B型急性肝炎の経過① 感染して1~6ヶ月の潜伏期間を経て、全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、褐色尿、黄疸などが出現します。
症例の中には、肝炎の程度が軽くて自分では気が付かないうちに治ってしまう例もあります。
中には激しい肝炎を起こして生命を維持できない状態(肝不全)となる、いわゆる劇症肝炎になることもあります。
劇症化に至らない場合には、通常数週間で肝炎は極期を過ぎ、回復過程に入ります。
発症時にはHBc抗体、HBs抗原、HBe抗原が陽性となりますが、1~2ヶ月でHBs抗原、HBe抗原は陰性化し、その後HBe抗体、HBs抗体が順次出現します。
しかし、治癒してもHBe抗体やHBs抗体が陽性にならない症例も時々みられます。 参考:国立国際医療研究センター肝炎情報センターホームページ
#14.
B型慢性肝炎の経過② 出産時ないし乳幼児期にHBV感染すると、持続的にウイルスが存在し続ける状態(持続感染)に移行します。
感染したHBVは排除されずに体内で共存しており、この状態を無症候性キャリアと言います。
思春期を過ぎるとリンパ球がHBVを体内から排除しようとする攻撃を始め、肝炎が起こり始めます。
一般に10~30歳代に一過性に強い肝炎を起こし、HBe抗原陽性のウイルス増殖の高い状態からHBe抗体陽性の比較的ウイルスが少ない状態に変化します。 参考:国立国際医療研究センター肝炎情報センターホームページ
#15.
B型慢性肝炎の経過③ HBe抗体が陽性になるということは、体がウイルスに対してある程度抵抗力を備えたということを意味します。
HBe抗体陽性となった後は、多くの場合肝炎はおさまっていきます(非活動性キャリアと言います)。このように思春期以降に一過性の肝炎を起こした後は、そのまま肝機能が一生安定する人がおよそ80~90%ですが、残りの10~20%の人は肝炎の状態が持続します(慢性肝炎)。 参考:国立国際医療研究センター肝炎情報センターホームページ
#16.
HBc抗体 セロコンバージョン HBe抗原 HBe抗体 HBs抗体 HBs抗原 10 20 30 感染 B型慢性肝炎の経過イメージ (年) 国立国際医療研究センター肝炎情報センターホームページを元に作図
#17.
B型慢性肝炎から肝硬変、肝がんへの進展
慢性肝炎の20%~30%で、20~30年かけて炎症を修復する際に線維化(コラーゲン沈着)が起こり、肝臓が硬くなっていきます(肝硬変)。2018-2021年のデータでB型慢性肝炎は肝硬変の原因の8.1%を占めました。
(Enomoto H, et al. J Gastroenterol. 2020 Mar; 55(3):353-362.)
肝硬変になると、年に5~8%程度に肝がんが発生するとされています。
(日本肝臓学会 B型肝炎治療ガイドライン第4版 2022年6月)
#18.
B型肝炎キャリア B型肝炎キャリアは、HBVが完全にいなくなったわけではなく、患者さんの免疫力が低下した際に、HBVが再活性化するリスクがあります。
具体的には、抗がん薬、ステロイド投与、免疫抑制薬投与などがきっかけに再活性化する可能性があります。
このため、このような免疫を抑える治療をする前に、B型肝炎の有無、またどのような状態かを確認することが重要です。
(日本肝臓学会 B型肝炎治療ガイドライン第4版 2022年6月)
#19.
B型肝炎治療ガイドライン 日本肝臓学会
肝炎診療ガイドライン作成委員会 編
B型肝炎治療ガイドライン第4版
2022年6月
#20.
日本肝臓学会
肝炎診療ガイドライン作成委員会 編
B型肝炎治療ガイドライン第4版 資料3
2022年6月
#21.
B型肝炎スクリーニング 抗がん薬やステロイド、免疫抑制薬を長期使用するような患者は、もしもB型肝炎キャリアあるいは既往感染があると、投与を契機にB型肝炎再活性化、場合により劇症肝炎となるリスクがあります。
したがって、上記の患者さんには全例B型肝炎スクリーニングを行うのが望ましいです。
まずは、HBs抗原、HBc抗体、HBs抗体を測定します。
HBs抗原が陽性のキャリアか、
HBs抗原が陰性でHBs抗体、HBc抗体のいずれかあるいは両者が陽性の既往感染かを判断します。 日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会 編
B型肝炎治療ガイドライン第4版 資料3 2022年6月
#22.
日本肝臓学会
肝炎診療ガイドライン作成委員会 編
B型肝炎治療ガイドライン第4版 資料3
2022年6月 B型肝炎
キャリア B型肝炎
既往感染 B型肝炎
感染なし
#23.
B型肝炎キャリアの場合 スクリーニングでHBs抗原が陽性の場合、B型肝炎キャリアとして、HBe抗原、HBe抗体、HBV-DNA定量をオーダーします。
並行して、消化器内科医・肝臓専門医にコンサルトします。
専門医にて核酸アナログ製剤が開始されます。 日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会 編
B型肝炎治療ガイドライン第4版 資料3 2022年6月
#24.
日本肝臓学会
肝炎診療ガイドライン作成委員会 編
B型肝炎治療ガイドライン第4版 資料3
2022年6月 B型肝炎
キャリア
#25.
B型肝炎既往感染の場合 スクリーニングでHBs抗原が陰性だが、HBc抗体またはHBs抗体が陽性の場合は、B型肝炎既往感染。
HBV-DNA定量をオーダーします。
20 IU/mL以上の時は、消化器内科・肝臓専門医にコンサルトし、核酸アナログ製剤治療を開始します。
20 IU/mL未満の時は、1~3か月ごとにHBV-DNA定量のオーダーを繰り返し、20 IU/mL以上になれば消化器内科・肝臓専門医にコンサルトし、核酸アナログ製剤治療を開始します。
B型肝炎既往感染のウイルス再活性化による肝炎は de novo B型肝炎と言います。 日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会 編
B型肝炎治療ガイドライン第4版 資料3 2022年6月
#26.
日本肝臓学会
肝炎診療ガイドライン作成委員会 編
B型肝炎治療ガイドライン第4版 資料3
2022年6月 B型肝炎
既往感染
#27.
核酸アナログ製剤 強力なHBV DNA増殖抑制作用を有し、ほとんどの症例で抗ウイルス作用を発揮し、肝炎を鎮静化させます。
下記のような薬剤があります。
エンテカビル(ETV)
テノホビル(TDF)
ベムリディ(TAF)
変異出現率が極めて低いです。経口薬であるため治療が簡便であり、短期的には副作用がほとんどないことも利点です。
投与中止による再燃率が高いため長期継続投与が必要です。
日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会 編
B型肝炎治療ガイドライン第4版 資料3 2022年6月
#28.
まとめ B型肝炎は、日本で約130~150万人が感染しています。
母子感染、性交渉、医療行為など、血液、体液の接触を通じて
感染します。
B型肝炎のキャリア、既往感染は抗がん薬や免疫抑制療法によってHBVの再活性化リスクがあります。
上記治療前に、まずはスクリーニングでHBs抗原、HBc抗体、HBs抗体のスクリーニングを行います。
アルゴリズムにしたがって、HBe抗原、HBe抗体、HBV DNA定量などを追加し、消化器内科医・肝臓専門医にコンサルトしましょう。