#4.
咳嗽の分類 急性咳嗽︓3週未満 遷延性咳嗽︓3週-8週未満 慢性咳嗽︓8週以上 疫学 1)⽇本呼吸器学会,咳嗽・喀痰の診療ガイドライン 咳が出る︕という主訴が来た場合にまず確認することは、「その症状はいつからですか︖」 発症期間から3つに分類し、こうすることで原因をある程度推測できます。 急性咳嗽の期間では感染症(特にウイルス感染症)が圧倒的に多く、さらに期間が伸びると感染 症以外の可能性が⾼くなります。
#5.
咳嗽・喀痰の診療ガイドラインから学ぶ 疫学とフローチャート
#6.
原因疾患の頻度 特に頻度の⾼い疾患 咳喘息 アトピー咳嗽 副⿐腔気管⽀症候群(SBS) 1)⽇本呼吸器学会,咳嗽・喀痰の診療ガイドライン ガイドラインに記載されている、原因疾患の頻度の抜粋になります。 急性咳嗽や慢性咳嗽の原因疾患の内訳は国によって異なっております。⽇本では、咳喘息、ア トピー咳嗽、副⿐腔気管⽀症候群(SBS)が多いです。また、逆流性⾷道炎(GERD)も国内外 問わず原因疾患として認められますが、頻度は論⽂ごとに差がある印象です。
#7.
急性咳嗽 多くがウイルス感染症 ⾮定型感染症を忘れない 経過が⻑い場合には精密検査を︕ 急性咳嗽については 本スライドでは簡潔にしております 急性咳嗽の原因疾患で、臨床的に遭遇する頻度がもっとも ⾼いのはウイルス性の普通感冒です。この場合ピークを過 ぎていれば対症療法です。 急性咳嗽でも、やや経過が⻑い場合や特徴的な咳が認めら れる場合には、⾮定型感染症や細菌性肺炎を鑑別とした精 密検査を⾏いましょう。
#8.
遷延性・慢性咳嗽 フローチャートからいえることは ・容易に原因が特定できるものから除外する 肺炎、⼼不全、間質性肺炎、悪性腫瘍、喘息、 COPD →必要があれば専⾨医に紹介 ・喀痰の有無 →副⿐腔炎、気管⽀拡張症がないか →副⿐腔気管⽀症候群(SBS) ・頻度の⾼い疾患から疑い、診断的治療を検討する 咳喘息、アトピー咳嗽や喉頭アレルギー、 胃⾷道逆流症、感染後咳嗽 呼吸器学会のフローチャートです。原因がはっきりす るものから鑑別し、原因がはっきりしない場合は喀痰 の有無で分け、副⿐腔気管⽀症候群を調べます。それ でもはっきりしない場合には、頻度の⾼い疾患から鑑 別しつつ診断的治療を検討します。
#9.
遷延性・慢性咳嗽の鑑別 容易に診断がつかない時の進め⽅
#10.
遷延性咳嗽・慢性咳嗽の鑑別 予想され る原因が 判明 慢性 咳嗽 治療介⼊ 喀痰症状の有無を確認 改善 せず 病歴 ⾝体所⾒ X線 原因が はっきり しない 薬 (ACE阻害薬) 喫煙 治療介⼊ 中⽌ 指導 あり ・副⿐腔気管⽀症候群 なし ・上気道咳症候群 ・アトピー咳嗽 ・咳喘息、気管⽀喘息 ・逆流性⾷道炎 など 改善 治療介⼊ 改善せず ・24時間⾷道pH モニタリング ・嚥下内視鏡 ・上部消化管X線造影 ・HRCT ・副⿐腔画像評価 ・環境の評価 ⼤まかな流れです。American College of Chest Ohysicians(ACCP)と⽇本呼吸器学会からのガイドラインが あります。⽇本呼吸器学会のガイドラインは先ほど載せましたが、喀痰症状の有無で鑑別が進みます。また、喀 痰症状がある場合には、可能な限り喀痰細胞診や培養検査も提出することを提唱されています。
#11.
遷延性咳嗽・慢性咳嗽の鑑別 問診での聴取内容から鑑別する 咳が出るタイミングを意識する 咳以外の症状に着⽬する フローチャートを意識して鑑別を進めるも、疑わしい疾患がはっきりしない場合、上の3つのテーマから考 えてみましょう︕先ほどのフローチャートで「原因がはっきりせず、喀痰症状もなく、何が疑われるか⾏き ⽌まってしまった状態」とします。
#12.
遷延性咳嗽・慢性咳嗽の鑑別 問診での聴取内容から鑑別する 喫煙歴 →COPD、肺癌など悪性腫瘍 ペットの飼育や居住・仕事環境 →アレルギー咳嗽、喘息、過敏性肺炎 ACE阻害薬を服⽤している →薬剤誘発性咳嗽 化学療法や新規に始まった薬があるか →薬剤性肺障害 カルテを記載する上で喫煙歴、ペットの飼育や居住・仕事環境を追求して聴取してみましょう。また、常⽤ 薬の確認ではACE阻害薬など咳を誘発するような内容がないか意識しましょう。化学療法や新規薬剤がある 場合には、いつから始まったかも確認しましょう。
#13.
遷延性咳嗽・慢性咳嗽の鑑別 咳が出るタイミングを意識する 夜間から明け⽅・寒い時 →気管⽀喘息・咳喘息・アトピー咳嗽 アレルギー関連のエピソード →喉頭アレルギー・アトピー咳嗽 臥位 →⼼不全・逆流性⾷道炎 ⾷後、前屈みの姿勢 →逆流性⾷道炎(GERD) 「どのようなタイミングで咳が悪化するか」というのは⾮常に重要です。特定の条件で咳が出る場合には、 そこから鑑別を優位に進めることができます。
#14.
遷延性咳嗽・慢性咳嗽の鑑別 咳以外の症状に着⽬する 酸っぱいものが込み上がる 胸焼けがする →逆流性⾷道炎 浮腫、起座呼吸 →⼼不全 喘鳴の聴取 →気管⽀喘息、⼼不全 後⿐漏、⿐閉、頭重感 →副⿐腔気管⽀症候群(SBS) 体重減少 →悪性腫瘍、結核や⾮結核性抗酸菌感染症 fine cracklesを聴取 →間質性肺疾患
#15.
まとめ① Ø 急性咳嗽は3週未満、遷延性咳嗽は3週-8週未満続く咳 Ø 慢性咳嗽は8週以上続く咳 Ø 慢性咳嗽で多いのは、咳喘息、アトピー咳嗽、副⿐腔気管⽀症候群 Ø 慢性咳嗽を鑑別する際は、まず容易に原因が特定できるものを除外する Ø 喀痰症状の有無を確認し、有る場合は副⿐腔気管⽀症候群を精査する Ø 喀痰症状がなく、診断に悩む場合には 「問診での聴取内容から鑑別する」 「咳が出るタイミングを意識する」 「咳以外の症状に着⽬する」 のテーマを意識して診断に導く 次項から、⾼頻度疾患の⼀部をみていきます
#16.
主要な各疾患について 副⿐腔気管⽀症候群(SBS)
#17.
副⿐腔気管⽀症候群(SBS) 定義 慢性、反復性の好中球性気道炎症が上気道と下気道に合併した病態 2) Greenberg SD. South Med J 59:64-74, 1996 上気道の炎症性疾患︓慢性副⿐腔炎 下気道の炎症性疾患︓慢性気管⽀炎(CB)、気管⽀拡張症(BE)、びまん性汎細気管⽀炎(DPB) SBSに含まれる疾患 DPB、原発性絨⽑機能不全(PCD)、免疫グロブリン低下症、⻩⾊⽖症候群 Young症候群、嚢胞性線維症 2) Greenberg SD. South Med J 59:64-74, 1996 ここでの慢性気管⽀炎は、「副⿐腔炎を伴わない喫煙が原因である病態」とは区別されます。
#18.
副⿐腔気管⽀症候群(SBS) 臨床症状・⾝体所⾒ 慢性の湿性咳嗽、慢性副⿐腔炎による⿐閉感、後⿐漏 聴診でcoarse cracklesやrhonchiを聴取 進⾏例では慢性の労作時呼吸困難がみられます。 また、気道の粘液産⽣の亢進により、慢性気道感染を反映して様々な程度の膿性痰となり、喀 痰量も変化します。
#19.
副⿐腔気管⽀症候群(SBS) 診断基準 3) Kohno S. Respirology :11 Suppl 4: S135-86. 2006 4) Fujimura M. Respirologyz :10: 201-7. 2005 ①8週間以上続く呼吸困難発作を伴わない湿性咳嗽 ②次の所⾒のうち 1つ以上を認める ・後⿐漏、⿐汁、咳などの副⿐腔炎様症状 ・敷⽯状所⾒を含む⼝腔⿐咽頭における粘液性あるいは粘膿性の分泌液 ・副⿐腔炎を⽰唆する画像所⾒ ③14・15員環系マクロライド系抗菌薬や喀痰調整薬による治療が有効 診断には、上気道と下気道における好中球性気道炎症の存在を確認することが重要です。 ⿐汁や喀痰塗沫の好中球の増加を認めることも参考になります。CBやDPBでは、気管⽀鏡検査 Braman SS. Chest ;129 (1 Suppl):104S-15S. 2006 6) Azuma A. Respirology: 11:249-61.2006 (BALF)の好中球増加も特徴的です。 5) 7) Kadota J. Am Rev Respir Dis; 147:153-9. 1993
#20.
副⿐腔気管⽀症候群(SBS) 治療 少量マクロライド療法が第⼀選択 エリスロマイシン(EM)600mg/⽇ または クラリスロマイシン(CAM)400mg/⽇ 投与後 4~8 週間で⿐症状や呼吸器症状の改善状態を判断する︕ EM投与2-4週間後より、朝の喀痰量が減少したと報告されています。また、DPBを除く SBSに 対するEMあるいはCAM投与後4週⽬に、線⽑輸送機能の改善、咳嗽と喀痰量、⿐閉感や頭重感 などの⿐症状の有意な改善が認められています。 8) Fujimura M. Respirology;7:317-24. 2002 9) ⻄耕⼀. ⽇胸疾会誌; 31:1367-75.1993 10) ⻄耕⼀. ⽇胸疾会誌; 33:1392-400.1995 別スライドの「気管⽀拡張症のいろは」では、気管⽀拡 張症や、その周辺病態について詳しく解説しています。 SBSとも深く連動した範囲であり、是⾮ご参照下さい。
#21.
主要な各疾患について 咳喘息
#22.
咳喘息 定義 喘鳴や呼吸困難を伴わない咳嗽、気道過敏亢進、気管⽀拡張薬の有効性を 特徴とする喘息の亜型 咳だけを症状とする喘息 本邦における慢性咳嗽の約半数を占める最多の原因疾患︕ アレルギーの関与 約60%で外因性抗原への感作が証明される 外因性抗原へのⅠ型アレルギーが⼀部の患者では関与します。また、個々の抗原での陽性率や 総IgE値は気管⽀喘息よりは低いです。 11) Takemura M. Clin Exp Allergy;37:1833-9. 2007
#23.
咳喘息 臨床症状・⾝体所⾒ 喘鳴(wheeze)は⾃・他覚的に認めない 夜間から明け⽅にかけて悪化しやすい 症状に季節性があることも 気管⽀喘息との違い ・喘鳴(wheeze)を認めない ・呼吸機能検査で異常を認めない ことも多い ・気道過敏性が軽い傾向がある 増悪因⼦ 上気道炎、冷気、運動、受動喫煙を含む喫煙、⾬天、湿度の上昇、 花粉や⻩砂の⾶散など 12) Fujimura. J Asthma;31:463-72. 1994
#24.
咳喘息 診断基準 次の3つ全てを満たす ①喘鳴の伴わない咳嗽が8週間以上続く ②聴診上wheezeを認めない ③気管⽀拡張薬が有効である 参考所⾒ (1)末梢⾎・喀痰好酸球増多、FeNO 濃度⾼値を認めること がある(特に後2 者は有⽤) (2)気道過敏性が亢進している (3)咳症状にはしばしば季節性や⽇差があり,夜間〜早朝優 位のことが多い β2刺激薬で咳が改善することが診断の上で特異的所⾒とされます。しかし、慢性閉塞性肺疾患 (COPD)の咳に対しても有効であり、喫煙例では留意します。 また、参考所⾒の通り、喀痰好酸球増多やFeNO⾼値は補助診断として有⽤です。 1)⽇本呼吸器学会,咳嗽・喀痰の診療ガイドライン
#25.
咳喘息 治療 軽症 ・毎⽇症状がない ・⽇常⽣活や睡眠の妨げが週1回未満である ・夜間症状が週1回未満である 中⽤量の吸⼊ステロイド薬(ICS) 使⽤できない場合にはロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA) 治療は、気管⽀喘息と同様にICSが主体です︕ 軽症においては、中⽤量のICSで治療を開始します。製剤毎に特徴があり、患者に合う咳が惹 起されない薬剤を選択します。吸⼊でかえってむせたりする場合には、他のICS製剤への変更 も検討してみましょう。アドヒアランス不良や、局所副作⽤の問題でICSが使⽤できない場合 には、単剤での短期的有効性が確認されているLTRAを代替薬とします。 13) Dicpinigaitis PV. J Asthma;39:291-7. 2002 14) Spector SL. Ann Allergy Asthma Immunol;93: 232-6. 2004
#26.
咳喘息 治療 中等症以上 ・毎⽇症状がある ・⽇常⽣活や睡眠の妨げが週1回以上ある ・夜間症状が週1回以上ある 中-⾼⽤量のICS+⻑時間作⽤型β2刺激薬(LABA)や⻑時間作⽤ 型吸⼊抗コリン薬(LAMA) LTRAや抗アレルギー薬を併⽤することも考慮する 中-⾼⽤量のICSを中⼼とし、LABAやLAMAなども併⽤します。ICS以外の⻑期管理薬の優先順 位は確率はされておりませんが、ICS/LABA配合剤が使⽤されることも多いです。個々の薬剤 に対する副作⽤にも注意しましょう。
#27.
咳喘息 発作時 悪化時は短時間作⽤型β2刺激薬(SABA)の頓⽤を⽤いる 上気道炎等での悪化時や、ICS吸⼊で咳嗽が誘発される、睡眠障害など症状が 強い場合、経⼝ステロイド薬の短期間併⽤を検討する プレドニゾロン20-30mg/⽇を3-7⽇間、最⼤14⽇以内にとどめます︕
#28.
咳喘息 予後について 多くは治療により速やかに改善し薬剤を減量できるが、中⽌により再燃しやすい 治療が不⼗分な場合には、約30%で気管⽀喘息に移⾏する 再燃しやすいため、⻑期間の治療が必要になることも多く、服⽤のアドヒアランスも⼤事です。 治療のやめ時は 14) Spector SL. Ann Allergy Asthma Immunol;93: 232-6. 2004 15) Fujimura M. Thorax;58:14-8. 2003 16) Matsumoto H. J Asthma;43:131-5. 2006 ⼀定の季節だけ症状がある場合には、季節が過ぎれば⽌めて良い 通年性の場合には、2-3ヶ⽉毎に評価する ICS以外の薬から1剤ずつ減らし、 さらにICSを半減する 最低⽤量のICSで無症状が1年以上続く場合は中⽌を考慮して良い
#29.
咳喘息 患者への指導 喘息への移⾏を予防するため、治療継続の重要性を指導する 特異的IgE抗体が陽性である場合は、感作抗原からの回避も重要である また、喘息と同じで⾔えることとして 治療のやめ時は ・禁煙 ・マスク着⽤ などによる、回避可能な増悪因⼦を回避させることが重要︕︕
#30.
まとめ② Ø 副⿐腔気管⽀症候群は、好中球性の上気道病変(副⿐腔炎)と下気道病 変(CB、BE、DPBなど)を確認する Ø 副⿐腔気管⽀症候群は、少量マクロライド療法が第⼀治療 Ø 咳喘息は、喘鳴を⾃・他覚的に認めないことが気管⽀喘息との違い Ø 咳喘息の治療はICSが主体であり、その他LABAやLTRA等を併⽤する Ø 咳喘息は治療中⽌により再燃しやすい Ø 咳喘息の治療が不⼗分であると、約30%で気管⽀喘息へ移⾏する Ø 咳喘息患者への指導として、治療継続の重症性、感作抗原や増悪因⼦か ら回避させるよう伝える 最後まで⾒ていただきありがとうございました。