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The Mount Sinai Hospital
リンパ節腫脹の診療で悩んだことありませんか?25歳女性のケースを元に、リンパ節腫脹を学びましょう。
1:正常リンパ節の構造
2:病歴聴取のポイント
3:身体診察のポイント
4:鑑別疾患
5:検査と経過観察
制作:@Ko_Harada 原田 洸/岡山大学病院/ @YujiY0402 山田 悠史/Mount Sinai Hospital/
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リンパ節腫脹を 極める 原田 洸/岡山大学病院 山田 悠史/THE Mount Sinai Hospital
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まず敵を知る!正常リンパ節の構造 径1cm以下(指1本分) 一箇所に2-10個 全身に600個程度 リンパ球増生、細菌や異物を貪食する場所 鼠径リンパ節は正常でも触知することが多い Am Fam Physician. 1998;58(6):1313. https://www.rinpasyu.jp/
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症例:25歳女性発熱、頸部リンパ節腫脹 5日前から39度の発熱が持続。 左頸部のリンパ節が腫れていることを自覚し、救急外来を受診した。 注意して聞くべき病歴は?
病歴聴取のポイント 発症時期と経過:日単位、月単位、年単位 局所の症状:疼痛や熱感 いわゆるB症状:発熱、体重減少(6ヶ月10%)、盗汗 既往歴:アトピー、結核 内服薬:後述 喫煙歴:頭頸部癌のリスク 海外渡航歴、ペット、恋人・性交渉歴:感染症リスク Am Fam Physician. 1998;58(6):1313.
症例:25歳女性発熱、頸部リンパ節腫脹 発症時期と経過:5日 局所の症状:疼痛と熱感あり B症状:発熱あり、体重減少や盗汗なし 既往歴:アトピーや結核の既往なし 内服薬:なし 喫煙歴:なし 海外渡航歴なし、ペットなし、性交渉歴なし
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症例:25歳女性発熱、頸部リンパ節腫脹 5日前から39度の発熱が持続。 左頸部のリンパ節が腫れていることを自覚し、救急外来を受診した。 身体診察では何に気をつける?
身体診察のポイント①リンパ節の何をチェックするか? かたさ 大きさ 可動性 圧痛 辺縁 分布 Am Fam Physician. 1998;58(6):1313.
かたさ 炎症 リンパ腫 癌
大きさ Semin Oncol. 1993;20(6):570. 1cmより小さいものはひとまず様子を見よう! 2cmだったらアクションを!
可動性 正常のリンパ節はよく動く 固定されたリンパ節は異常 ・癌が周囲に浸潤しているか ・炎症後線維組織で固定されているか Am Fam Physician. 1998;58(6):1313.
圧痛 炎症があることを意味する 圧痛≠感染症 自発痛は最近急速に大きくなってきたサイン! Am Fam Physician. 1998;58(6):1313.
辺縁 整:炎症、リンパ腫 Am Fam Physician. 1998;58(6):1313. 不整:固形がん
分布 局在 VS 全身 Am Fam Physician. 1998;58(6):1313.
頸部リンパ節 頤下 顎下 耳介前 耳介後 後頸・後頭 浅頸・深頸 鎖骨上窩
その他のリンパ節 腋窩 鼠径
身体診察のポイント②口の中も見よう!
身体診察のポイント③肝脾腫、腹腔内もチェックしよう!
症例:25歳女性発熱、頸部リンパ節腫脹 左頸部(顎下、耳介前・後部、前頸部・後頚部) に1~3cmのリンパ節を複数触知。 圧痛あり、可動性は良好、やや硬い、辺縁は整。 鼠径や腋窩のリンパ節は触知せず。 口腔内は咽頭発赤や扁桃腫大なし。 肝脾腫なし。
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症例:25歳女性発熱、頸部リンパ節腫脹 5日前から39度の発熱が持続。 左頸部のリンパ節が腫れていることを自覚し、救急外来を受診した。 挙げるべき鑑別診断は?
局在したリンパ節の鑑別疾患 鑑別疾患を把握するために、リンパ管のドレナージについて知っておこう! 全身疾患が局在したリンパ節腫脹というプレゼンテーションで発症することもある。
頸部リンパ節 頭頸部の感染症、EBV/CMV、頭頸部癌 後頸部にあったら、細菌感染で犯されにくいので、ウイルス、結核、菊池病、頭頸部癌などを鑑別に考慮する 結核性リンパ節炎は頸部単独が多い Mymensingh Med J. 2011;20(2):233.
鎖骨上窩リンパ節 約半数が悪性腫瘍 特に40歳以上で注意 右:縦隔、肺、食道 左:腹腔内腫瘍 (Virchow’s node) Br J Cancer. 2003;88(3):354.
腋窩リンパ節 上肢、胸壁、乳房から 上肢に感染がない場合には悪性腫瘍を考慮 シリコンの植え込みにも注意 猫にも注意 (猫ひっかき病) Ann Surg. 1973;178(1):25.
鼠径リンパ節 通常でも1cm以上に腫大していることがある 【頻度】 1位:下肢の感染症 (通常片側) 2位: STDs (片側or両側) 3位: 悪性腫瘍 (片側or両側) Cancer. 1978;41(3):919.
全身のリンパ節腫脹の鑑別疾患 感染症 悪性腫瘍 薬剤性 膠原病(SLE)、血管炎 内分泌疾患(橋本病、アジソン病) 良性疾患、その他
感染症 ウィルス:EBV、CMV、HIV 細菌:腸チフス、エルシニア 抗酸菌 寄生虫:トキソプラズマ スピロヘータ:梅毒、ライム病 Am J Med. 2007;120(10):911.e1.
悪性腫瘍 大学病院などの紹介先となる病院では、原因の60%を占める。 プライマリケア医のクリニックでは、20%弱。 固形癌 vs 血液腫瘍 Br J Cancer. 2003;88(3):354.
薬剤性 抗菌薬 抗けいれん薬 アロプリノール
その他 菊池病 Castleman病 Still病 サルコイドーシス アミロイドーシス
症例:25歳女性発熱、頸部リンパ節腫脹 後頚部リンパ節腫脹を認めたため伝染性単核球症、菊池病、結核、 悪性リンパ腫などを鑑別に挙げた
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検査のポイント 身体所見までで示唆される鑑別に合わせた血液検査を 血液検査単独で診断に寄与する検査はない 全身リンパ節腫脹であれば、 → CBC, LDH, sIL-2R, 全身の造影CTを考慮 → HIV, HTLV-1
画像検査の有用性 触知可能なリンパ節の画像 → 多少構造の違いがわかる程度 → 嚢胞との鑑別に有用 以下には有用 胸腔内、腹腔内のリンパ節評価 悪性腫瘍のステージング AJR Am J Roentgenol. 2001;176(4):1019.
経過観察の重要性 局所のリンパ節腫大で、病歴や身体所見から鑑別が困難なケースでは経過観察が重要となる。 3-4週間後にフォローとする。
抗生物質による治療的診断 細菌感染症の可能性が極めて高い場合以外は推奨されない。 成人では基本的に不要なプロセス。 Curr Infect Dis Rep. 2009 May;11(3):183-9.
いつリンパ節生検をするか? 悪性腫瘍を疑わせる全身症状。 1ヶ月経過観察したが改善がない。大きい。 増悪傾向。 基本は針生検ではなく、Open biopsy!! (ただし太い針を用いるなどcase by caseなので柔軟に…) 細菌、抗酸菌培養やリンパ腫検査へ提出
いつリンパ節針生検をするか? 癌の再発の診断 好まれない理由: 偽陽性は少ないが、偽陰性が多い 組織構造がわからない → リンパ腫の組織診断は困難。 → FNAではどんなに頑張っても27%しか診断 できなかったという報告もある。 J Clin Oncol. 2004;22(15):3046.
症例:25歳女性症例の経過 NSAIDsで経過観察したが2週間経っても症状の改善が乏しく、リンパ節腫脹が増大傾向であったため、頸部リンパ節のbiopsyを施行した。 リンパ節の病理所見では広範に広がる壊死巣を認め、菊池病の診断となった。 PSL 30mg/日を開始したところ症状は改善した。
TAkeaways 炎症は果汁グミ、リンパ腫はスーパーボール、癌はゴツゴツした岩 2cmより大きいリンパ節にアクション 体表リンパ節だけでなく肝脾腫、腹腔内のチェックを 画像は診断に寄与しないことが多い 抗菌薬の試験投与は成人ではほとんど寄与しない 生検は基本的にOpen Biopsy