#4.
貧血の定義 Blood. 2020 Aug 13;136(7):773-774. 細網内皮系 赤血球の貪食 鉄を放出 エリスロポエチン 肺→全身臓器にO2提供 貧血では末梢血の赤血球成分が低下し,十分な酸素を供給できなくなる
#5.
貧血の病態と鑑別 造血不全 溶 血 出 血 希 釈 造血細胞の異常:白血病,骨髄異形成症候群,サラセミア,遺伝性鉄芽球性貧血
造血環境・免疫の異常:再生不良性貧血,赤芽球癆,自己免疫性疾患に合併する血球減少,
多発性骨髄腫,固形癌の骨髄浸潤
造血因子不足:鉄欠乏,慢性疾患に伴う貧血,葉酸欠乏,亜鉛欠乏,銅欠乏,腎性貧血,
無トランスフェリン症
その他:甲状腺機能異常,肝障害,アルコール多飲,低栄養 赤血球の異常:遺伝性球状赤血球症,鎌状赤血球症,サラセミア,赤血球酵素異常症,
発作性夜間へモグロビン尿症
自己免疫・薬剤:温式AIHA,寒冷凝集素症,発作性寒冷ヘモグロビン尿症,薬剤性溶血性貧血
機械的刺激:人工弁,狭窄弁,大動脈瘤,人工血管
微小血管異常:血栓性血小板減少性紫斑病,溶血性尿毒症症候群,血管炎症候群
体外からの外力:行軍ヘモグロビン尿症
脾腫:門脈圧亢進症,Gaucher病等 外傷・手術,消化管,性器,肉眼的血尿 輸液,妊娠等 血液内科専門医テキスト 改訂第4版
#6.
貧血の病態と鑑別:common is common 造血不全 溶 血 出 血 希 釈 病 態 病態予測 基本的な鑑別 網状赤血球産生指数<2.5
(RPI)
他系統の血球減少 LDH,間接Bil上昇
尿中ウロビリノゲン上昇
血清ハプトグロビン低下 出血エピソード
急性経過のHb低下 大量輸液,妊娠
急性経過のHb低下 鉄欠乏,ACD,腎性貧血,
vitB12/葉酸欠乏,アルコール,
甲状腺機能低下,低栄養,MDS
血液悪性疾患,再生不良性貧血 自己免疫性溶血性貧血,
血栓性血小板減少性紫斑病,
脾腫,人工弁置換術後 消化管出血,性器出血,肉眼的血尿,外傷 大量輸液,妊娠
#7.
貧血の病態予測の脳内縮図例 貧血の鑑別を一個一個つぶしていたら日が暮れてしまうので,
手持ちの情報を適切に解釈して,病態→原因検索へと繋げる 45歳 女性 慢性経過 2型糖尿病 汎血球減少 MCV 100
RDW-SD 65 RPI 1.2 フェリチン 10
TIBC 400 Spoon nail
Romberg+ メトホルミン LDH 750 ギリ大球性で,RDWは開大しているからサイズはバラバラ
RPI的には造血能落ちてそう
年齢的には鉄欠乏はアリ,MDSの可能性は下がる
汎血球減少,高LDH血症は無効造血(±溶血)を疑う
メトホルミン内服して,Romberg陽性でvitB12欠乏?
⇒鉄・vitB12欠乏による造血不全 MDS vitB12欠乏 鉄欠乏 造血不全
#8.
貧血の病態と病歴 急性か慢性か;過去に貧血の指摘はあるか(健診も含む).慢性の場合はHb 7-8 g/dL以下になるまで貧血症状(立ち眩み,動悸,息切れ,倦怠感等)に乏しいので注意.
出血エピソードがないか;黒色便・鮮血便(健診の便潜血も),不正性器出血, 肉眼的血尿,繰り返す鼻出血等
若年~中年女性の場合は,過多月経や生理不順の有無を確認
アルコール多飲や食事の偏り(菜食主義はvitB12欠乏リスク)も重要
悪性腫瘍や血液悪性疾患を疑う場合は,体重減少,発熱,盗汗の有無も確認
貧血の鑑別の上で薬剤は非常に重要なので必ず確認 (例えば,PPIは多くの人が内服しているが,鉄欠乏やvitB12欠乏のリスクにもなる)
#9.
貧血の身体所見 HEENT:眼瞼結膜蒼白,眼球結膜黄染(溶血),青色強膜(鉄欠乏),
Hunter舌炎(vitB12欠乏),口腔内出血(血小板減少)
Neck:リンパ節腫大(リンパ腫・固形癌),甲状腺腫大,
頸静脈怒張(心不全),静脈コマ音(重度貧血)
Heart/Lung:Ⅲ/Ⅳ音(心不全),心雑音(弁膜症,機械弁)
Abd:肝脾腫(白血病,溶血性貧血),直腸診(消化管出血)
Ext:手掌の皺の蒼白,紫斑(血小板減少),下腿圧痕性浮腫(心不全)
spoon nail(鉄欠乏),Romberg徴候(vitB12欠乏),
Raynaud現象・網状皮斑(寒冷凝集素症・症候群)
#10.
貧血の身体所見 J Gen Intern Med. 1997;12(2):102-6. J Gen Intern Med. 2015;30(7):1034. 眼瞼結膜蒼白 手掌の皺の蒼白 貧血 正常 貧血 正常 N Engl J Med. 2018;379(9):e13. 青色強膜 spoon nail Cleve Clin J Med. 2022;89(10):549-550. Hunter舌炎 BMJ Case Rep.
2022;15(8):e251810.
#11.
貧血の病態と血液検査 必須項目+α 【必須項目】
血算:白血球(分画),赤血球(MCV,RDW),網状赤血球,血小板
生化学:AST,ALT,γ-GTP,LDH,D/I-Bil,Cre,eGFR,TSH/freeT4
鉄動態:Fe,TIBC,フェリチン
凝固:PT,APTT,Fib(慢性炎症・凝固異常),(FDP:DIC評価)
【+α項目(ルーティンで出さない)】
大球性貧血・汎血球減少:ビタミンB12,葉酸,(ホモシステイン:保険適応外)
溶血性貧血:ハプトグロビン,直接Coombs試験
破砕赤血球+血小板減少(TTP/TMA疑い):ADAMTS13活性
蛋白/アルブミン解離(MM疑い):血液・尿蛋白分画,IgG/A/M
#12.
貧血の病態と血液検査 MCV MCV:Mean Corpuscular Volume(平均赤血球容積) MCV (in fL) = Hematocrit (%)/RBC×(万/μL)×1000 赤血球1個あたりの平均サイズ 小球性(MCV <80):鉄欠乏・利用障害やサラセミアによるヘモグロビン合成障害
正球性(MCV 80~100):溶血,急性貧血,ACDや鉄欠乏性貧血の早期,
再生不良性貧血が代表鑑別
大球性(MCV >100):ビタミンB12・葉酸欠乏によるピリミジン合成障害で
赤血球が分裂をやめて肥大化
非巨赤芽球性貧血は肝不全や慢性アルコール中毒が代表原因 Mean Corpuscular Volume. 2024 Jul 27. In: StatPearls [Internet].
#13.
貧血の病態と血液検査 RDW Red Blood Cell Distribution Width 赤血球のサイズの ばらつき
RDW-SD(標準分散)
正常:38~46 fL
RDW-CV(MCVで補正)
正常:11.9~14.5 % 『やさしくわかる 貧血の診かた』
#14.
貧血の病態と血液検査 網状赤血球 骨髄から放出されて間もない赤血球
通常は全赤血球の1-2%を占める
MCVは93~115と若干大きめ 網状赤血球産生指数(RPI) 造血機能が保たれていれば,貧血開始10日以内に赤血球産生は2-3倍に亢進 Clinical Chemistry and Laboratory Medicine. 2006;44(5):616-22. 『ハリソン内科学 第5版』 RPI≧2.5:造血機能正常 ⇒ 溶血・出血の鑑別
RPI <2.5:造血機能低下 ⇒ 造血不全の鑑別
#15.
貧血の病態と血液検査 汎血球減少 鑑別上位 高緊急性 『ハリソン内科学 第5版』 骨髄腫瘍(骨髄癌腫症含む)/再生不良性貧血
巨赤芽球性貧血(ビタミンB12,葉酸)
全身性エリテマトーデス
ウイルス感染(HIV,パルボ,肝炎 etc.)
薬剤性(アロプリノール,抗菌薬, 抗てんかん薬,抗甲状腺薬,NSAIDs etc.) 急性白血病
血球貪食症候群
DICを合併した敗血症 急速な汎血球減少
LDH・フェリチン高値
凝固異常の合併
#16.
貧血の病態と血液検査 鉄動態 血清鉄:トランスフェリンに結合して循環する鉄の量
総鉄結合能(TIBC):循環しているトランスフェリンの間接的な測定値
トランスフェリン飽和度(TSAT):血清鉄/TIBC×100 (%) 鉄欠乏では20%未満
血清フェリチン:定常状態下における貯蔵鉄の指標
+α:Mentzer index:MCV(fL)/RBC(×106/μL) 13以下はサラセミアを疑う 『ハリソン内科学 第5版』 貧血をみたら鉄動態は必ずチェック!!
#17.
貧血の病態と血液検査 鉄欠乏とACD フェリチン低下の原因は鉄欠乏のみ
フェリチン<30 ng/mL or TSAT<20%で鉄欠乏と判断 ⇒鉄を含む食事をして9時間以内は
TSAT測定非推奨
慢性炎症ではTSAT<20%が有用だが,CKDの時は25-30%でも鉄欠の可能性
鉄補充して1週間後に網状赤血球が上昇しない場合は他の要因も考慮 Hematology Am Soc Hematol Educ Program. 2020 Dec 4;2020(1):478-486. JAMA. 2025 May 27;333(20):1813-1823. TSAT 骨髄で鉄欠確認
#18.
腎性貧血 貧血の病態と血液検査 腎性貧血の原因 CKD stage 1,2(eGFR >60) ⇒貧血は稀で,CKD以外の原因検索
CKD stage 3a,b(eGFR 30~59) ⇒Hb < 12 g/dLは42%,Hb < 10 g/dLは6%
CKD stage4(eGFR 15~29) ⇒Hb < 12 g/dLは54%,Hb < 10 g/dLは11%
CKD stage5(eGFR <15, 非透析) ⇒Hb < 12 g/dLは75%,Hb < 10 g/dLは50%
KDIGOガイドラインでも診断目的のEPO測定は非推奨 安易に腎性貧血と判断せず,他要因の除外が必要 Blood. 2020 Aug 13;136(7):783-789.
#19.
貧血の病態と血液検査 溶血性貧血 溶血所見:網状赤血球増加,間接ビリルビン上昇,LDH上昇,尿中ウロビリノゲン上昇
溶血を疑ったら:ハプトグロビン,直接Coombs試験
薬剤性溶血性貧血:セフトリアキソン,ピペラシリン,PPI,H2ブロッカー etc.
機械的要因(血管内溶血):人工血管,弁置換術後,DIC,TTP,HUS 広範囲直接Coombs 直接Coombs
IgG±C3d 直接Coombs
C3d 寒冷凝集素価
≧ 64倍 Donath-Landsteiner試験 温式AIHA 寒冷凝集素症 発作性寒冷
ヘモグロビン尿症 (+) (+) (+) (+) (+) (-) (+) (-) 自己免疫性溶血性貧血診療の参照ガイド 令和 4 年度改訂版
#20.
貧血の病態と血液検査 ビタミンB12・葉酸 Am Fam Physician. 2017;96(6):384-389 ビタミンB12の70-90%はハプトコリン結合型10-30%のトランスコバラミン結合型が機能性
メチルマロン酸やホモシステインはビタミンB12欠乏の90%以上で上昇(感度の高い指標)⇒vitB12欠乏に対しては保険適応外
間接Bil・LDH上昇等の溶血所見を伴うが, 溶血性貧血と違い網状赤血球は正常~低下
葉酸欠乏を診断する際はビタミンB12欠乏を除外(葉酸補充による神経障害悪化リスク) JAMA. 2025 May 27;333(20):1813-1823
#21.
貧血の病態と血液検査 末梢血所見 正常造血 破砕赤血球 赤血球大小不同
赤血球中央のcentral pallor 重症鉄欠乏性貧血 微小血管障害(TMA, DIC等)
人工弁置換術後,MDS等 『ハリソン内科学 第5版』
『血液内科専門医テキスト 改訂第4版』
#22.
貧血の病態と血液検査 末梢血所見 過分葉好中球 偽Pelger核異常 巨赤芽球性貧血,MDS MDS,急性骨髄性白血病 無顆粒好中球 『血液内科専門医テキスト 改訂第4版』
#23.
貧血の鑑別の進め方 貧血単独 2系統以上の
血球減少 高齢者では悪性腫瘍検索
⇒上部/下部消化管内視鏡
⇒泌尿器/婦人科診察も考慮 MCV<80 MCV≧80 鉄動態評価 RPI<2.5 RPI≧2.5 溶血,出血 MCV≦110 MCV>110 vitB12,葉酸
⇒正常or補充で改善なし⇒骨髄検査 造血不全の鑑別 MCV<80 鉄動態評価 小球性貧血の鑑別
+α系統減少の鑑別 MCV≧80 汎血球減少の鑑別
⇒骨髄検査を考慮
※緊急度高
・急速に進行する血球減少
・LDH/フェリチンの上昇
・凝固異常の合併
#24.
おまけ:高齢者の貧血 ・65歳以上では男性 11%,女性 10%で貧血
・85歳以上では男性 26%,女性 20%で貧血 65歳以上では,33%がunexplained anemia
MDSっぽいのを差し引いても25%程度はUA 鉄,vitB12,
葉酸欠乏 Blood. 2004 Oct 15;104(8):2263-8.
#25.
Take Home Message 貧血の病態は,造血不全,溶血,出血,希釈の4つのみ
高齢者は特に,複数要因が重なって貧血が起き得るので, 病歴・身体所見・血液検査から得られる情報を適切に解釈する
高齢者の貧血では必ず悪性腫瘍からの慢性出血を考慮
末梢血スメアは意外と情報が豊富なので是非検査室に足を運びましょう 複雑な患者ほど,基本に忠実に病態の解釈に努めましょう