#4.
心不全における予防とは何か
#5.
心不全とは ◼ ガイドラインとしての定義では 心臓の構造・機能的な異常により,うっ血や心内圧上昇,および/あるいは心拍出量低下や組 織低灌流をきたし,呼吸困難,浮腫,倦怠感などの症状や運動耐容能低下を呈する症候群 ◼ 一般向けの定義では 心不全とは,心臓が悪いために,息切れやむくみが起こり,だんだん悪くなり,生命を縮め る病気です。
#6.
心不全のstageと予防 この表の心不全予防の視点から 言いたいことは ・縦軸のQOL運動耐容能のは改善する ・横軸の心不全のstageは戻らない だから急性心不全の治療も大事だが 心不全の発症予防(stageB→Cへの予防) 増悪・再入院予防(stageC→Dへの予防) が大事となる 心不全のどのstageでも心リハは大事
#7.
心不全の治療への考え方 ◼ 心不全の治療には4つのグループがる ①症状を軽くする治療 利尿薬、強心薬、硝酸薬、酸素吸入 ②心不全の原因を治す治療 冠動脈カテーテル治療、ペースメーカ-治療、冠動脈バイパス治療、弁 膜症手術、心臓移植 ③心筋や血管を保護する治療 β遮断薬、ACE阻害薬/ARB/ARNI、MRA、SGLT2I、スタチン、 食事療法、運動療法、禁煙 ④悪化のきっかけを取り除く 水分バランス管理、塩分制限、冠危険因子管理、アルコール制限、過労 治療 防止、感染予防、規則正しい服薬、消炎鎮痛薬連用禁止 心不全の治療は医師により決定されるが、 その中には患者様が自分でで実行できるものもある。 説明の際には意識的にそこを分けて説明するとわかりやすい。
#8.
心不全患者の生活習慣上の気をつけるポイント 1)入浴 • 高温長時間の入浴は、心拍数が増加し心負荷となる。 • 40℃程度でなるべく短時間に(10~15分)。 2)排便 • いきみで血圧が上昇する。緩下剤を用いる。 3)嗜好品 • アルコール:心拍数増加作用、大量では収縮力抑制作用あり。 • 重症例では禁止、軽症例では少量は可。 • タバコ:百害あって一利無し。全面禁止。 • コーヒー:心拍数増加作用あり。禁止ではないがなるべく控える。 4)日常動作 • 心臓に負担のかかる動作(重量物運搬、階段昇段、拭き掃除や浴槽洗い、洗車、子供を抱く)を 避けるか、または休み休み行う。 • 肉体作業・スポーツは長時間継続を避け、途中で休憩を。
#9.
5)風邪をひいたとき • 高熱や息苦しさがある場合は、市販薬ではなく医師を受診する。 • 抗ヒスタミン剤や咳止めは飲んでよい(心臓への影響は少ない)。 • 鎮痛薬・解熱薬(ボルタレン・ロキソニンなど)は尿量を減少させ、心不全悪化の 可能性。→連用を避け、頓用で必要時のみ服用。 6)自動車の運転 • 心臓病があっても近距離の低速運転は可能。 • 高速道路や追い越しの時に血圧、心拍数が上昇する。 • 不整脈や狭心症の発作が起きる人は、運転を避ける。 7)旅行 • 無理なスケジュールを避け、早めに宿へ入り、十分休養を取る。 • 暴飲暴食や夜ふかしをしない。 8)性生活 • 行為中に心拍数や血圧が上昇。階段昇降の運動に相当する。 • 心臓に負荷がかからない方法をパートナーと話し合う。
#10.
心不全予防にリハビリは“効く”のか
#11.
質問 ①心臓リハビリテーションは心不全再入院を減らすか ②心臓リハビリテーションはQOLを上げるか ③心臓リハビリテーションは運動対応能を上げるか ④心臓リハビリテーションは生命予後を改善させるか
#12.
心不全に対する外来心臓リハビリ参加の効果 入院した心不全患者105名を、心臓リハビリ参加群53名と通常治療群52名に均等に振り 分け。心臓リハビリ参加群は、「週1回の外来リハビリ+心不全専門看護師による指導+在 宅運動療法+電話相談」を3ヶ月間実施。 生活の質 6分間歩行距離(m) (点数が低いほど良好) 50 500 45 40 p<0.01 400 p<0.001 60 35 30 100 80 再入院率 (%) p<0.01 QOL 運動耐容能 再入院率 60 40 20 200 40 15 10 0 p<0.001 300 25 5 重症心不全比率 80 (NYHA III・IV, %) 20 100 通常 リハ 3ヶ月後 0 通常 リハ 1年後 0 を改善させる 20 通常 リハ 1年後 0 通常 リハ 1年後 (Davidson PM et al, Eur J Cardiovasc Prev Rehabil 2010;17:393-402)
#13.
心不全に対する運動療法・心臓リハ:メタアナリシス 心不全患者(HFrEF)に対する運動療法・心臓リハビリの前向き無作為割り付け試験 33文献(患者数4740人)におけるQOLと予後に対する効果のメタアナリシス 10 8 生活の質 (MLWHF) 13文献, n=1270 Cl -9.2- -2.4 あらゆる入院 1.2 1 6 4 0.8 2 0 15文献, n=1328 CI 0.62-0.92 1 0.75 心不全入院 1.2 1 12文献, n=1036 CI 0.46-0.80 1 0.8 1.2 1 死亡率 追跡1年以上の研究 6文献, n=2845 CI 0.75-1.02 1 0.88 0.8 0.61 0.6 0.6 0.4 0.4 0.4 0.2 0.2 0.2 0 0 0 0.6 死亡率に関しては 減少傾向にとどまる -2 -4 -6 -8 -10 通常 リハ 通常 リハ QOL 再入院は減らすが 通常 リハ 通常 リハ (Taylor RS et al, Cochran Library. Published Online 2019)
#14.
心臓リハビリのガイドライン上適応 慢性心不全患者HFrEF(HF reduced EF)において、自覚症状や運 動耐容能の改善、QOLの改善、再入院の減少をを目的とする運動 療法の適応はClass Ⅰ。 HFrEF生命予後の改善に関してはClassⅡa。 また、すべての心不全患者に対して多職種による包括的心臓リハビ リテーションプログラムを実施はClassⅠ。 HFpEF(HF preserved EF)においては、自覚症状と運動耐容の改 善が目的の運動療法はClassⅡa。 デコンディショニングが進んだ患者は、レジスタントも検討する。 JCS 2021心血管疾患におけるリハビリテーション
#15.
結論:心不全予防にリハビリは“効く” QOL、運動耐容能、心不全入院率を2-4割程度改善させる ただし生命予後に関しては、改善傾向にとどまる
#16.
心リㇵの実際 ◼ 心臓リハビリテーションでは、運動療法、個別指導、集団講義などを行っている ◼ 運動療法のみではなく、包括的な疾病管理・患者指導が大事である ◼ 医師のみならず、多職種でアプローチすることにより、心不全症状の早期の発見や細かい 指導が行える
#17.
心臓リハビリの実際:運動療法 有酸素運動 低強度レジスタント運動 当院ホームページより
#18.
心臓リハビリの実際:個別生活習慣指導 ◼ 自覚症状、体重増加、血圧を確認しな がら、医師や看護師が日常生活の注意 点について指導し、復職などの相談に も応じる ◼ 血液検査を開始時、3か月後に施行し て、冠危険因子やBNPの評価を行う。 当院ホームページより
#19.
心臓リハビリの実際:多職種スタッフによる集団講義 ◼ 講義 ・日常生活の注意事項 ・心不全予防のコツ ・心臓病と食事(塩分摂取・栄養バランス) ・コレステロールについて ・糖尿病ってどんな病気 ・狭心症と心筋梗塞の原因と予防 ・運動と不整脈 ・安全で効果的な運動療法のやり方 ・心臓リハビリでしっておくべき薬の知識 などを毎日講義形式で行っている 当院ホームページより
#20.
心肺運動負荷試験(CPX)より運動処方を決める
#21.
この質問答えられますか ◼ 退院した後、日常生活でどのくらいうごいいていいですか ◼ どの程度の強度のスポーツをしていいですか
#22.
慢性心不全の運動の種類 ◼ 歩行、自転車こぎ、軽いエアロビ、低強度レジスタンス ◼ ジョギング、水泳、高強度レジスタンはむかない 有酸素運動 低強度レジスタント運動
#23.
慢性心不全における運動の強度は 【開始初期】 ◼ 室内歩行 5-10分 自転車エルゴメーター 10-15W 5-10分程度 ◼ 緩徐に負荷を上げていく 【安定期】 ◼ CPXの結果より、軽中症はMaxの40-60%、重症は30-50%のHRを目標に ◼ CPXができないまたはHRが評価できない場合はBorg11-13程度を目標に ◼ AT値のHRを目標に なぜ心不全患者は30-60%の程度の強度設定なのか
#24.
運動負荷と事故発症頻度のイメージ 心疾患患者にとって適度な運動の強さとは? 運動効果 効 果 の 大 き さ 傷害発生率 0% 30% 50% 60% 運動強度 100% 60%超えると傷害増える割に運動効果が上がらない 心疾患患者にとって適度な運動強度は最大能力の50 ~60%である。 (重症心不全などの高リスク患者では30~50%)
#25.
強度を設定する方法①:CPX 心肺運動負荷試験(CPX:Cardiopulmonary Exercise Test) 呼吸気中の酸素や二酸化炭素をマスクで測定しながら、自転車エルゴ メータを体力の限界までこぐ検査 一般的に運動負荷に加え、呼気ガス分析を行い運動中の 心臓・肺機能を評価できる。 目的は ①運動耐容能・予後を評価する ②運動処方を立てる ③治療効果判定 ④労作時呼吸困難の原因検索
#26.
強度を設定する方法①:CPX ◼ 実際、「CPXは行ったけど、どこをみればいいのか、、、」と非常に様々な数値がでてく るためなかなか理解が難しい ◼ 運動処方に必要なところだけ、非常に簡単に説明していきます。 ◼ 運動処方において、必要なものは①安静時の脈拍②最大負荷時の脈拍③AT(嫌気性代謝閾 値)の際の脈拍です。
#27.
強度を設定する方法①:CPX 脈拍数で目標強度を設定していきます。 ①目標心拍数の式=安静時HR+目標負荷×[最大HR-安静時HR] これを「 Karvonenの式」と呼びます。 例えば LVEF 13% Sinusの心不全症例に対するCPXで、HR 60→160bpmまで上昇した 場合 もし、40%の負荷を目標にすると 60+0.4×(160-60)=100bpmとなり、目標心拍数は100bpm。 50%を目標としたら 60+0.5×(160-60)=110bpmとなる。 ②ATのときのHRを目標HRとする。 AT;筋肉内O2不足(有気性代謝→無気性代謝)になり、産生された乳酸が重曹(HCO3-)で 緩衝されるときにCO2が産生→VCO2の増加率が上昇(息が上がってきはじめる状態)
#28.
強度を設定する方法②:Borg指数自覚的運動強度 スコア 20 19 18 17 16 15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 自覚症状 (もうだめ) very very hard(非常にきつい) very hard(かなりきつい) hard(きつい) somewhat hard(ややきつい) fairly light (楽である) very light(かなり楽である) very very light (非常に楽である) (安静時) 脈拍が測れない場合にはBorg指数を目標に設定する。 大体Borg11-13ぐらいがATとなると言われている。 心不全なし:12~13点 心不全:11~12点
#29.
慢性心不全における運動の回数・時間は 【回数】 ◼ 軽中症は週5-7回、重症は週3-5回 【時間】 ◼ 30-60分/回 15-30分×2回に分けてもいい
#30.
運動療法の処方のまとめ 種類 ・歩行、自転車こぎ、軽いエアロビ、低強度レジスタンス ・ジョギング、水泳、高強度レジスタンはむかない 強度 【開始初期】 ・室内歩行 5-10分 自転車エルゴメーター 10-15W 5-10分程度 ・緩徐に負荷を上げていく 【安定期】 ・CPXの結果より、軽中症はMaxの40-60%、重症は30-50%のHRを目 標に ・CPXができないまたはHRが評価できない場合はBorg11-13程度を目標 に ・AT値のHRを目標に 回数 軽中症は週5-7回、重症は週3-5回 時間 30-60分/回 15-30分×2回に分けてもいい
#31.
まとめ ◼ 心不全における予防は大事であり、医師だけではなく多職種による包括ケアと患者様本人 の注意が大事 ◼ 心不全予防にリハビリは“効く” ◼ 運動負荷試験より安全な運動処方を決めていく必要がある