テキスト全文
#1. 症例で学ぶ! 「神経診療の基本を症例を通じてマスターする」
テーマ:変な脳梗塞の鑑別 Daisuke Yamamoto
Department of Neurology, Shonan Kamakura General Hospital
#3. 55歳
男性 三か月前に一過性失語のエピソードあり。
今回は、突発発症の失語と右上下肢麻痺を発症し、救急搬送。
MRIでは脳梗塞は指摘されず。
TIAの可能性を考慮して、アスピリン内服での入院対応となった。
来院時E4V3M6 =>発症後2時間でE4V5M6に改善した。
来院時右不全片麻痺 =>ERで麻痺所見は消失した。
既往歴:高血圧症 内服薬:降圧薬2剤内服
濃厚な喫煙歴あり。
家族歴は特記事項なし。
#4. 55歳
男性 Perfusion MRI(MTT) DWI
#6. 追加病歴 脳梗塞:心房細動示唆する病歴?
脳梗塞:動脈硬化のリスク管理はどうだった?
てんかん: 一過性意識障害の病歴?反復性?発作後意識障害の遷延?
#7. 55歳
男性 MRI所見はなく、粗大な神経症状の改善があり。
ただし、入院後も軽度の意識障害の遷延あり。
TIAでは説明困難なため、髄液検査も追加された。
#9. 脳梗塞についての検討は?
行う検査は?
まずはオーソドックスな検討から。 QUESTION
#10. discusssion 普通の脳梗塞の検討。 ラクナ梗塞
アテローム血栓性脳梗塞 :頸動脈エコー
心原性脳塞栓症 :心エコー・ホルターECG
#11. 脳梗塞についての検討は?
行う検査は?
次は、レスコモンな検討。 QUESTION
#12. discusssion レスコモンな脳梗塞の検討。 奇異性脳塞栓症 :DVT+卵円孔開存と肺血管奇形の評価
発作性心房細動 :埋め込み型心電計
ESUS :何も原因が指摘できなければ。
トルソー症候群 :悪性腫瘍検索+Dダイマー検索
感染性心内膜炎 :心エコー・血液培養
#13. 脳梗塞の
コモン~レスコモンまでの鑑別フロー 植込み型心電図記録計の適応となり得る潜因性脳梗塞患者の診断の手引き 一通り、ESUSの診断に至るまでの検査については理解する。
#14. それでは、脳梗塞を
きたしうるアンコモンな背景疾患は? QUESTION
#16. 55歳
男性 入院後アスピリンはTIAの可能性を考慮し継続した。
DAY2以降は目だった神経症状はなし。
てんかんの可能性も考慮され、脳波検査を施行するもおおむね正常。
TIA、てんかん、脳炎 などが鑑別として検討されたが、
評価は判然としなかった。
DAY5に意識障害と右片麻痺を新たに認めた。
#17. 55歳
男性 DAY5に左側頭葉皮質下出血を認めた。血腫拡大があり、開頭血腫除去術が施行された。
#18. 追加検査① 先天性血栓性素因:なし
全身CT:悪性腫瘍なし
以下疾患を示唆する所見なし。
血管炎・炎症性疾患
血液疾患
#19. 追加検査② 全身CTでは脾腫の指摘あり。
sIL-2R 3462 U/mL
骨髄検査:特記事項なし
PET-CT:悪性リンパ腫を示唆する所見はなし。
#20. 開頭血腫除去の時に採取、提出した病理検体によって、血管内リンパ腫の病理診断となった。
#21. 反省 キーワードからは悪性リンパ腫を想起できたのだが。 脾腫、sIL-2R、LDHのキーワードからは悪性リンパ腫を考慮。
PETまでやったが、証拠は得られなかった。
血管内リンパ腫が想起できなかった。
幸い、脳出血時の病理で診断にたどり着けた。
血管内リンパ腫:病理診断が推奨。脳生検 OR ランダム皮膚生検。
#23. discusssion 脳梗塞の鑑別の順番を理解する。まずは、基本病型。 三大病型の確認:ラクナ・アテローム・心原性
それぞれの検査:頸動脈エコー・心エコー・ホルターECG
この三つにあてはめられなければ、次のステップへ。
#24. discusssion レスコモンな脳梗塞の鑑別を理解する。 奇異性脳塞栓症:DVTによる脳梗塞
発作性心房細動:埋め込み型心電計までやるかどうか
トルソー症候群:悪性腫瘍の検索
感染性心内膜炎:CRPが高い脳梗塞。重要。
ESUS :どうしても原因が同定できなければこれ。
#25. discusssion IVLについて IVLにみられた神経症候の種類と頻度は多発脳梗塞(76%)、腰仙髄障害(38%)、意識障害・痙攣(27%)、脳神経障害(21%)、視力低下・、網膜動脈閉塞(16%)、単・多発単ニューロパチー(5%)、ミオパチー(3%)であり、一般的に亜急性、進行性の経過を示す。
TIAや脳出血はまれだが報告はある。
血管障害をきたしうる悪性腫瘍、という想起しにくいものである。
#26. discusssion IVLについて IVLは血管外の腫瘤形成や末梢血でのリンパ腫細胞が検出されないため非常に診断が難しいことが特徴で、予後は非常に悪い。PETの陽性率も低い。
LDH、可溶性IL-2R、β2ミクログロブリンなどの増加が80%以上の例で認められる。
IVLを強く疑った場合には、病理診断を追求することが重要。脳の臓器障害の頻度は高く、病理診断の診断的意義は非常に高い。 BRAIN and NERVE 2014; 66:927-946
HematolOncol 2006; 24:105-112
#28. 一過性の機能障害:TIAとてんかん はコモンな鑑別。
脳梗塞のコモンについて知る。
脳梗塞の、レスコモンの鑑別行動について知る。
特殊な脳梗塞(アンコモン)もある。
疾患を広く知っておくことは重要だ。