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改めて意識障害のメカニズムを考える:JCS・GCSで深掘りしてみよう

投稿者プロフィール
三谷雄己
Award 2023 受賞者

広島大学病院

9

0

投稿した先生からのメッセージ

オンライン学習コミュニティ「Qラボ」で、2026年10月に配信したアーカイブセミナーのスライドです。テーマは意識障害の基本と、JCS・GCSのつけ方と使い分けです。

Qラボでは10月24日に、この続きとなるリアルタイムセミナー(90分)を行います。興味がある方は、Qラボへの入会をご検討ください。公式LINEからは、そのほかのセミナー動画などもご覧いただけます。

10月30日(金)20:00〜22:00には、柴﨑俊一先生(ひたちなか総合病院 総合内科 救急センター長)をお招きして「引き際を考える輸液管理:VExUSを添えて」を開催します。詳細・お申し込みは、スライド最後のURLをタップしてご覧ください。

▼Qラボ公式LINE

https://lin.ee/cFNFoeg

概要

意識障害を評価する前にABCを安定させる理由、意識の2つの要素と失神との違い、本当に意識障害かを確かめる3点を整理し、JCSとGCSのつけ方と迷いやすいところ、2つの使い分けを症例で確認します。Qラボ 2026年10月のアーカイブセミナーのスライドです。

本スライドの対象者

医学生/研修医

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テキスト全文

72歳女性の意識障害症例

#1.

-

#2.

症例 72歳女性 左片麻痺 当直明けの朝 救急搬送 ✓ 朝7時頃  ベッド上で動けないところを家族が発見 ✓ 前日22時に就寝するまでは普段どおり ✓ 救急隊接触時 左片麻痺の疑い    けいれんや外傷はなし ✓ 既往:慢性心不全 認知症    糖尿病 高血圧 救急隊 接触時 JCS Ⅰ-3 体温 36.5℃ 血圧 134/80 脈拍 76/分 呼吸数 16/分 SpO2 室内気 96% 脳卒中らしいから CT室へ直行でよい? 当たりがつきそうなときも まずは第一印象とPrimary surveyから

意識障害の評価とABC

#3.

今日の内容 1 Dを評価する前に 意識の評価より先に 確認しておきたいこと 2 意識障害とは 意識の2つの要素 起こる仕組み 失神との違い 3 JCSとGCS つけ方のポイントと 2つの使い分け

#4.

Dの評価は ABCが安定してから 酸素が取り込まれて脳に届くまで A 気道 B 呼吸 C 循環 D 意識 ✓ ABCに大きな異常があると  脳の酸素需給バランスも崩れている可能性が高い ✓ 脳に明らかな障害がなくても  低酸素で二次的に意識の異常をきたすことがある ✓ ABCに異常があれば まずはABCの安定化を優先する ABCが安定したら Dをもう一度評価する 最初の意識の評価は 低酸素の影響を受けているかもしれない

意識の要素と異常の原因

#5.

「意識」は2つの要素からなる 覚醒度 呼びかけや刺激に 対する反応 脳幹にあるARASが担う 見当識 日時や場所など  周囲の状況を把握する力 大脳皮質全体が担う どちらか一方 または両方の異常で意識障害が起こる 覚醒は ARASからの刺激が大脳皮質に届くことで保たれる

#6.

意識障害は どこの異常で起こる? 1 脳幹(ARAS)の機能不全 脳卒中や脳腫瘍など 脳幹に限局した器質的異常 2 大脳皮質の機能不全 脳全体に及ぶ器質的異常 低酸素・代謝障害・薬物など 代表的な原因 器質的異常 脳卒中 脳腫瘍 感染症(髄膜炎・脳炎など) 血管炎 水頭症 てんかん 機能的異常 薬物性 アルコール 鎮静薬 睡眠薬 抗うつ薬 抗精神病薬 麻薬 一酸化炭素 機能的異常 代謝性 体温異常 血糖異常 電解質異常 酸塩基平衡異常 肝障害 ビタミン欠乏 内分泌疾患(甲状腺機能異常など)

意識障害と失神の違い

#7.

その意識障害 失神かもしれない 意識障害 低下が続く 原因が解除されるまで 一過性意識障害 ゆるやかに戻る 発作・低血糖・中毒など 失神 短時間で元に戻る 脳血流の一過性の低下 心原性失神は見逃したくない 目撃者に 持続時間・そのときの体勢・意識レベルの変化を聞く

#8.

本当に意識障害? 確かめたい3点 1 普段との比較 普段の意識レベルと比べてどうか 家族や施設の職員に聞く 2 経時的な変化 突然か ゆっくりか すぐに普段の状態へ戻ったか 3 失語の可能性 発語がなくても 意識障害とは限らない 意識障害かどうかは 来院してから確かめる JCSやGCSで異常があっても それが問題になるかは普段の意識レベル次第

JCSとGCSの基本概念

#9.

意識レベルは モニターに映らない ✓ 呼吸や循環には SpO2や  心電図のような客観的な指標がある ✓ 意識レベルを映すモニターは  救急外来にはない SpO2 96 HR 76 BP 134/80 意識 ? そこで使う2つのスケール JCS Japan Coma Scale 日本で作られたスケール 病院前や病棟で広く使われている GCS Glasgow Coma Scale 1974年にTeasdaleらが発表 世界で広く使われている

#10.

JCS 開眼の状態で3段階 ✓ まず開眼の状態で3つに分け 会話や反応でさらに細かく評価する ✓ わかりやすく簡便な反面 評価者によってばらつきやすい

JCSの評価基準と注意点

#11.

JCS 一覧 Ⅰ 刺激なしでも 覚醒している 1桁 1 意識清明とはいえない 2 見当識障害がある 3 自分の名前 生年月日が言えない Ⅱ 刺激すると 覚醒する 2桁 10 普通の呼びかけで容易に開眼 20 大きな声または体を揺さぶることにより開眼 30 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼 Ⅲ 刺激をしても 覚醒しない 3桁 100 痛み刺激で払いのけるような動作をする 200 痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめる 300 痛み刺激に全く反応しない

#12.

JCS 迷いやすいところ 1 開眼が続くか 開眼の評価が いちばん大切 開眼を15〜20秒ほど保てる Ⅰ桁 会話中は開眼するが すぐ閉じる Ⅱ桁 2 Ⅰ-2 と Ⅰ-3 質問の内容で 分ける 変わる内容を間違える 日付 場所など Ⅰ-2 変わらない内容を間違える 名前 生年月日など Ⅰ-3 3 Ⅲ-200の中身 区別したい所見が 同じ点数になる 除皮質硬直 GCSではM3 Ⅲ-200 除脳硬直 GCSではM2 Ⅲ-200

GCSの評価方法と覚え方

#13.

GCS E・V・Mを別々に評価 ✓ Eは4点 Vは5点 Mは6点が満点 合計は3〜15点 ✓ 開眼で大きく変わるJCSに比べ 評価者によるばらつきが少ない

#14.

GCS 一覧 E 開眼 Eye opening 4 自発的に 3 呼びかけで 2 痛みで 1 反応なし V 最良言語反応 Verbal response 5 見当識が保たれる 4 混乱した会話 3 不適切な会話 2 意味のない発語 1 反応なし M 最良運動反応 Motor response 6 命令に従う 5 疼痛部位認識 4 逃避 3 異常屈曲位 2 異常伸展位 1 反応なし E+V+M の合計 3〜15点 気管挿管中のVは「T」と書く 言語の評価ができないため 1点と同じ扱いにする

#15.

VとMは 体操で覚える 文章での暗記は大変 体を動かして覚える 見分けたいところ M4 逃避 肘がひらく M3 異常屈曲位 除皮質硬直 M2 異常伸展位 除脳硬直 V3 不適切な会話 Word 単語のみ V2 意味のない発語 Voice 発声のみ

患者の意識評価の実例

#16.

この患者さんの JCS・GCS は? 来院時の様子 ✓ 呼びかけると目を開ける ✓ 話しかけている間は  開眼しているが 数秒で目を閉じる ✓ 名前を尋ねても「う……」   はっきりした発語はない ✓ 右手は 握る・離すの指示に応じる 見るところ E 開眼は続いている? V 言葉になっている? M 指示に従える?

#17.

JCS Ⅱ-10 GCS E3V2M6(11点) 最初の評価 JCS Ⅰ-3 GCS E4V2M6(12点) 見直した評価 JCS Ⅱ-10 GCS E3V2M6(11点) 開眼は「続くかどうか」まで見る ✓ 話している間は開眼していても 数秒で目を閉じてしまう ✓ 自発的な開眼ではなく 呼びかけで開眼と  評価する(Ⅱ-10 E3) ✓ 発語は「う……」のみ(V2) 指示には応じる(M6) 救急隊接触時のJCS Ⅰ-3より下がっている 経時的に悪くなっているなら Dの評価を急ぎたい

#18.

EとVの差が大きいとき 失語を考える ✓ 意識障害では EとVがそろって下がりやすい(例:E1V1M4) ✓ 失語では開眼が保たれ EとVに差が出やすい(例:E4V2M5) 言葉の指示が通らなくても 身ぶりで伝われば失語を疑う 失語を意識障害と判断すると 脳梗塞への治療介入が遅れるおそれがある

JCSとGCSの使い分け

#19.

JCSとGCSの使い分け JCS その場の緊急性の判断に ✓ 短時間で評価しやすい ✓ 救急隊や病棟と共有しやすい △ 評価者によってばらつきやすい GCS 来院後の経時的な変化の評価に ✓ 評価者によるばらつきが少ない ✓ 連続した数値で比べられる ✓ 世界で広く使われている どちらも意識レベルの評価に必要 それぞれの特徴を知ったうえで 場面に合わせて使う

#20.

まとめ ✓ 意識の評価より まずはABCの安定化を優先する ✓ 意識障害は 脳幹(ARAS)か大脳皮質の機能不全で起こる ✓ 本当に意識障害かを 普段・経過・失語の3点で確かめる ✓ JCSは開眼が続くかまで見る  GCSはE・V・Mを別々に評価する ✓ その場の緊急性はJCS 経時的な変化はGCSが使いやすい 次回 Dの異常 ② 切迫するDと 早めに治療に入りたい意識障害

参考文献とセミナー案内

#21.

参考文献 1 三谷雄己(著)志馬伸朗(監修). みんなの救命救急科. 中外医学社; 2022. 2 Edlow BL, et al. J Neuropathol Exp Neurol. 2012;71(6):531-46. 3 Traub SJ, Wijdicks EF. Emerg Med Clin North Am. 2016;34(4):777-93. 4 Shen WK, et al. Circulation. 2017;136(5):e60-e122. 5 太田富雄, ほか. 脳神経外科. 1974;2(9):623-7. 6 Teasdale G, Jennett B. Lancet. 1974;2(7872):81-4. 7 安心院康彦. 日本臨床救急医学会雑誌. 2008;21. 8 Polverino P, et al. J Clin Neurosci. 2019;67:129-33.

#22.

Qラボ リアルタイムセミナーのご案内 10月24日(土) リアルタイムセミナー(90分) Dの異常 脳梗塞の初期診療アップデート 今回のアーカイブの続きとして、同じ症例を追いながら 再灌流療法・けいれんの初期対応・病型診断と地域連携を扱います。 興味がある方は、Qラボへの入会をご検討ください。 公式LINEから、そのほかのセミナー動画などもご覧いただけます。 https://lin.ee/cFNFoeg 詳細はこちら

#23.

セミナーのお知らせ 10月30日(金)20:00〜22:00 引き際を考える輸液管理 VExUSを添えて 講師 柴﨑俊一先生 ひたちなか総合病院 総合内科 救急センター長 Qラボ会員は参加費無料。 お申し込み・詳細は Qラボ公式LINEからどうぞ。 https://lin.ee/cFNFoeg 詳細はこちら


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