臨床研究立ち上げから英語論文発表まで最速最短で行うための極意

1/38

原 正彦

原 正彦

大阪市立大学大学院医学研究科 循環器内科学講座 客員研究員

28330views

若手臨床医へ向けた臨床研究の立ち上げ方、その英語論文化の最速最短で行うためのノウハウ大阪市立大学の原正彦先生がお伝えします! 若手臨床医向けに研究を成功させるコツ(マインドセット、研究課題の見つけ方、研究デザイン、データ収集、解析、解釈、共著問題、論文として報告する、という一連の流れをお伝えします!

臨床研究立ち上げから英語論文発表まで最速最短で行うための極意

1. 臨床研究立ち上げから英語論文発表までを最速最短で行うための極意 日本臨床研究学会(JSCR) 代表理事 大阪市立大学大学院医学研究科 客員研究員  原 正彦(MD, PhD) 2017年5月15日(月) Antaa主催 臨床研究塾
2. アジェンダ 自己紹介(臨床医としての軌跡) 臨床研究でのキャリア形成 日本の現状と課題 研究を成功させるコツ(極意) プロジェクト紹介(アカデミア) 6. 医療機器開発でのキャリア形成 7. プロジェクト紹介(機器開発) 8. Take Home Message 2017年5月15日(月) Antaa主催 臨床研究塾
3. 原 正彦 (35歳) 1981年 兵庫県宝塚市生まれ1996年 兵庫県立宝塚西高等学校 1999年 島根大学医学部医学科入学 2005年 神戸赤十字病院(初期研修)2007年 大阪労災病院(後期研修)2010年 大阪大学医学部付属病院 循環器内科 2011年 大阪大学大学院医学系研究科 大学院生 2015年 大阪大学医学部附属病院 未来医療開発部 2016年 大阪市立大学大学院医学研究科 循環器内科(客員研究員) 循環器専門医、認定内科医、日本医師会認定産業医TOEIC 855点   1. 自己紹介 (臨床医としての軌跡) 〜後期研修中〜 American Heart Association 2題(2008 oral, 2009 poster) American Collage of Cardiology 1題(2010 oral) Original Research Paper 5 編 Case Report 3 編
4. 患者さんによりよい医療を提供したい! 臨床系英語論文 44編 (筆頭著者20編) 若手研究員奨励賞 国内外 9回受賞 ~世界で最も権威のある学会~ American Heart Association/American College of Cardiology 世界の若手Top5に3年連続4度選出 (臨床&From Japan) 1. 自己紹介 (臨床医としての軌跡)
5. 2. 臨床研究でのキャリア形成 ガイドラインは 守破離の守 守(守るべき基本の型) 専門医なら破(新しい術式、治療方法 etc) →ここで臨床研究が必須!! Evidenceを作って初めて本物の臨床医 ※ 専門医試験の受験資格で臨床研究(原著論文)が 必須条件になってきている。
6. 2. 臨床研究でのキャリア形成 <臨床研究とは> 「自分の臨床上の疑問を確かめるための作業」 →真面目に臨床していたら必ず皆思い当たるはず!! <得られる物> 「エビデンスの客観的評価能力が格段に向上」 →本を読むだけでは無理 (研修医が現場で何もできなのと同じ)  日本のエビデンスの大家は偽物が多い! (PubMedで名前を検索してみて!)  論文を読んでわかった気になっているだけ! 臨床能力が劇的に向上する!!
7. 2. 臨床研究でのキャリア形成 <臨床研究は難しい?> 「コツを理解すれば誰でも可能」 →2017年の査読英文誌 5 編(JSCR支援案件のみ)  すべてSingle Center Retrospective Study  Clinical Implicationが大きければnは問題でない Mizutani K. Circ J. 2017;81:748-754. IF 4.12 (n=20) Ishikawa H. BMJ Open 2017;7:e014805. IF 2.56 (n=489) Fujino A. JACC Cardiovasc Imaging in press. IF 7.82 (n=205) Yokoi K. Am J Cardiol. 2017;119:1518-1524. IF 3.15 (n=19) Shimomura Y. Bone Marrow Transp in press. IF 3.63 (n=101)
8. <2017年度実績>  査読英文誌 5 編 Revision中 7 編(受理直前)  In submission 3 編(研究終了)  進行中のプロジェクト 15 演題 (※大学より高いパフォーマンス) 準備中 10 演題 「合計 35 プロジェクト」  支援 20 施設/ 11 診療科/ 25 人  (※ selectionあり ) 日本臨床研究学会 2. 臨床研究でのキャリア形成
9. 3. 日本の現状と課題 臨床論文数日本の国際順位 ex)   日本人の査読者は(悪い意味で)世界一厳しい 臨床研究の指導者がいない 臨床論文数日本vs国際平均 G7平均 日本
10. 3. 日本の現状と課題 ディオバン研究不正問題(※意図的にデータを改竄)UNDER-ATP(※物凄く低いクオリティー) ( Eur Heart J. 2015;36:3276-87 ) 2000人の患者 侵襲的治療のRCT 動的割付プログラムのミス(※一番やってはダメなミス) モニタリングで気付かず研究終了時にプログラムミスが判明 <臨床なら…汗> 循環器内科専門医がKClを患者にショットで静注レベル
11. <世界最先端で戦ってきて気づいたこと> ・日本の権威が出る杭を打つ習慣  (アイデアの新規性・進歩性を理解できない)  (やる気のある若者をどんどん潰していく) vs アメリカにおける実力評価の公平性 “頑張った人が報われる”モデルを日本で構築するため研究支援を開始 3. 日本の現状と課題
12. 以下の6点を意識する (1)マインドセット (2)研究課題を見つける (3)研究をデザインしデータを集める (4)解析・解釈する (5)共著問題をクリアーする  (6)論文として報告する 4. 研究を成功させるコツ・極意 臨床研究立ち上げから英語論文発表までを最速最短で行うための極意 取り組み~投稿:3カ月 投稿~受理:6カ月
13. 4-1. マインドセット ・行動力はあるか?  → 能動的に情報を取得する能力   例)SNS恐怖症?(それじゃ薬も使えない:メリット最大化&リスク最小化)  → 能動的に関係を構築する能力  例)支援者の9割は突然連絡(断られても0:マイナスじゃないよ!) ・自己投資できるか?  → 臨床医にとって時間が一番貴重   → お金を使えるか?   例)英会話のオンラインスカイプレッスン    (月5000円の自己投資 vs 焼肉1回1万円?) ・謙虚になれるか?  → プライド高い人は支援が非常に難しい (専門医への紹介と同じ=互いにリスペクト)
14. 特に能動的に情報を取得する能力 4-1. マインドセット 権威や資格に騙されないように  エビデンスの大家、MPHホルダー  各種臨床研究ワークショップから継続的に  論文が出ていますか?(業績のある人と組む)
15. 「クリニカル(リサーチ)クエッション」  ・ 自分が日々の臨床で感じている疑問を選ぶ   例)皆10個以上リスト化してくれる     なければ臨床経験が少なすぎる!!  ・ 人から与えられたテーマは基本ダメ   (上司は提案まで)  ・ 突き詰めれば大抵のことはエビデンスなし   (確認するだけでも価値あり→新しい発見)  ・ なかなかアイデアが浮かばない場合は   Uptodate、Review論文、ガイドライン  ・ 3つ種を蒔いて1つ収穫できるイメージ 4-2. 研究課題を見つける
16. 戦略は次の3種のキーーワードを意識すること World Trend × World Niche   × Strength of Japan BLUE OCEAN ~臨床研究で世界で勝ち続ける戦略~ <臨床研究のFINER> Feasible:実行可能である Interesting:興味深さ New: 新規性 Ethical:倫理性 Relevant:社会的な必要性 → Clinical Impact 例)AHAで初めて受賞した演題 Propensity analysis✖ARBの効果✖長期フォロー 4-3. 研究をデザインしデータを集める
17.  ・ 最初は2群比較の観察研究からやってみる   一番多いデザインでシンプルだから   ex) 治療した vs しなかった群      治療が成功した vs 失敗した群  ・ 日本独自の強みを取り入れる   ex)画像診断、バイオマーカー(hs-CRP)  ・ 30例が一つの目安(根拠なし)  ・ 倫理審査は必ず通して下さい   (簡単だから!!) 4-3. 研究をデザインしデータを集める
18.  ・医学統計が一番のネック   (と思い込んでいる=本当は論文全体の1割)  ・解析ソフトは「R(EZR)」を使う  (聞いたことがない=情報弱者確定)  ・医学統計はやり方だけ学ぶ   (理論を学ぶ?=殆ど意味ない) 無料 高い信頼度 すべての解析可 etc 4-4. 解析・解釈する
19. 理論に頼らない統計学の使い方 大阪市立大学大学院医学研究科 医療統計学講座 新谷 歩 教授(YouTuber!) 無料の講義ビデオ http://blog.livedoor.jp/shintaak/ 4-4. 解析・解釈する
20. 統計は相手を説得するための手段 =正解は一つではない ※多くの人はある方法に固執して是が非でもそれをやろうとするが手持ちの武器で戦えばよい。 治療前  治療後 治療薬A 治療薬B 血圧 mmHg 例) 1. 治療後の数値の比較 2. 治療前後の差の比較 3. ターゲットを達成 した割合の比較 目標値 4-4. 解析・解釈する
21. RCT vs 傾向スコアマッチング 傾向スコア= Propensity Score (PS) 傾向スコアは治療を割り当てられる確率 患者集団 治療 プラセボ 確率50% 確率50% 50% 99% 75% 35% ・ ・ 75% 59% 80% 35% ・ ・ Aさん Bさん Cさん Dさん aさん bさん cさん dさん 治療 非治療 4-4. 解析・解釈する
22. 4-5. 共著問題をクリアーする <共著問題について知っておくべき事項>  先生が業績を出すと困る人が邪魔します  (先輩、上司、同僚 etc)   →トップを文章で抑えておきましょう  JSCRの支援が許可される可能性 大学 20% 市中病院 50%  上司の見当ハズレな助言で研究頓挫も   →「無視するか従うか」腹を括りましょう   → 年間原著論文3編が指導者としての最低ライン  日本的マインドでgift authorship → ✖ ICMJE(国際ガイドライン) 
23. Introduction(9割) 4-6. 論文として報告する 何故今回の研究が必要か?を書くだけ エビデンスのパズルのピースを意識(Uptodate) 例)心筋梗塞後の二次予防としてのスタチン治療   研) 「心筋梗塞後の二次予防にスタチンは有効!」 指) 「白人で高用量が有効だから     日本人で低用量もある程度有効だと思う」
24. 4-6. 論文として報告する Introduction(9割) Methods Results Discussion Conclusion 他の研究者が研究を再現できるような情報を書く Selection Flow - 情報 - Statistical Analysis   全部は書かない。コアとなる部分のみ。 Primary Endpointは詳細に、他はザルでOK   各バズルのピースのエビデンスと比較考察 要約 – 各ピース – 臨床応用 - Limitation  客観的事実のみ端的に(言い過ぎない)
25.  ・とにかく投稿しまくって経験を積む!  ・発表は0、論文にして初めて1になる  ・Reviewerの話は話半分に聞く 例) Circulation Journal(日本循環器学会英文誌) 3ヵ月待ってコメントが・・・ (1) 症例数が少ない。 (2) このような極少数例で統計学的な検討を行うことにそもそも 意味があるのか? (3) 過去の論文と比較して新しい知見はなし。 → 全否定(笑)でも諦めない! 4-6. 論文として報告する JSCRのサポートで一番精神的に救われた とするコメントが多い部分がココ
26. Reviseテクニックが重要 ・相手を尊重しながら「自分の主張を上手く通す」 (日本人は全部いうことを聞くか、むやみに反抗する人が多い) シンジケートに入り込む!! ・世の中コネで動いている ・留学の主な目的はコネ!!  (リサーチ不足で気づかない人が9割)  (海外で論文を量産したDrが帰国後は…) ・実力 3〜5倍 = コネ  (JSCRの評価は留学しているDr程高い) ・白人第一主義  (差別の存在を意識する)  → 世の中綺麗事ダケじゃないですよ 4-6. 論文として報告する
27. 医局のルール 上司の許可 学術ヒエラルキーによる 非能力主義 <思考停止状態> 5. プロジェクト紹介 (アカデミア) 日本臨床研究学会 による研究支援
28. Hungovercome試験 5. プロジェクト紹介 (アカデミア) ・ロキソニンは二日酔いの症状緩和に有効? ・日本初のnationwide physician’s study ・プラセボ対象二重盲検試験(RCT) ・研究はpositiveでもnegativeでも意味あり   positive→世界初の知見 negative→NSAIDs潰瘍の減少 是非ご参加下さい! 日経メディカル協力 2015/9/16 記事より抜粋 有効回答数2,739人
29. <プロジェクト>  医療用画像シェアのためのSNS型  電子医学雑誌の運営 シェアリング World Trend 医療画像 World Niche 主治医制 Strength of Japan <FINER> Feasible Interesting New Ethical Relevant 5. プロジェクト紹介 (アカデミア)
30. 症例 ID142 上腸間膜動脈塞栓症 症例 ID160 急性骨髄性白血病 5. プロジェクト紹介 (アカデミア)
31. 静止画像枚数の推移 経過月 2015年5月16日 Β版ver1.0 発表 5. プロジェクト紹介 (アカデミア) <発表時点実績> 症例数:204 静止画像:62,935枚 動画:579 ユーザー数:476 Β版 ver2.0
32. JTMIVの症例集の引用掲載 5 英文誌(パンフレット) 日経メディカルCadette.jp連載開始 5. プロジェクト紹介 (アカデミア) Ichiba T, et al. Impact of noninvasive conservative medical treatment for symptomatic isolated celiac artery dissection. Circ J. 2016;80:1445-1451. <引用症例> J Typ Med Images Video 2016: Case ID 89, 92, 93, 95, and 96
33. <キーワード> 医師として本物の実力者に! (これが大前提) Only One になる 上司の助言は参考まで マルチタスク、計画的偶発性 <追加コメント> キャリア形成に掛け算の概念 実力 1/10(0.1) 統計 1/100(0.01) 英語 1/10(0.1) =1/1万人 =日本中の同学年のDrで1人 オススメの本紹介 ちょっとおまけ
34. 6.医療機器開発でのキャリア形成 産学連携の時代 ※科研費取得に際し、特許を持っているかどうかが   非常に重要なBranding材料になり得る。 医療アイデアをプロダクトに落とし込むと… 1.研究成果が患者に届く!!   (目の前の患者さんがよくなる) 2.学術的にも経済的にも報われる!! 3.世界でやれば実力勝負!   (日本の権威を無視できる、笑) 臨床医
35. 株式会社 mediVR <プロジェクト>  VR技術を応用したリハビリプログラムの開発 Virtual Reality World Trend リハビリ定量評価 World Niche Gamification Strength of Japan <FINER> Feasible Interesting New Ethical Relevant ※MindMaze 10億ドルの評価額 7. プロジェクト紹介 (機器開発)
36. 株式会社 Doctor Lab <プロジェクト>  家庭用呼吸機能検査機器 Chespi 開発 家庭用医療機器 World Trend 呼吸機能検査 World Niche (※マーケットがまだ小さい) 精密小型機器 Strength of Japan <FINER> Feasible Interesting New Ethical Relevant エコー 採血 7. プロジェクト紹介 (機器開発)
37. 7. プロジェクト紹介 (機器開発) 株式会社 Research Mind <プロジェクト>  個人における薬の効果判定アルゴリズム 無作為化割り付け試験   Drug vs Placebo (N of 1 randomization) ヘルスケア産業 World Trend 臨床統計/臨床試験 World Niche 真面目な性格 Strength of Japan 米国国立衛生研究所 NIH 年間予算は約300億ドル(約3.5兆円) 費用を1割削減=3500億円の価値 ※米Apple社のResearchKit/CareKit ※特許取得済み
38. 8. Take Home Message 臨床医としての能力を活かして From Japanで世界にイノベーションを ショーペンハウエル ドイツの哲学者 物事が成功するまでには3段階ある 第1段階は「嘲笑される」 第2段階は「反対される」 第3段階は、笑いものにしたり、反対したりしていた人がいつの間にか『同調する』 そうして初めて物事は成功する。 ※イチロー、本田圭佑