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マクロライド耐性百日咳に対する抗菌薬の有効性
#2. マクロライド耐性百日咳に対して有効性が期待される抗菌薬 抗菌薬 文献1 MIC90 (mg/L) PMID: 33021592 文献2 MIC90 (mg/L) PMID: 36061393 < 0.016 < 0.016 0.75 0.50 アンピシリン 0.19 0.25 セフトリアキソン 0.19 0.094 セフタジジム 0.25 0.19 メロペネム 0.094 0.125 ピペラシリン ST合剤 臨床データは限られるがマクロライド耐性百日咳の治療にはPIPCとST合剤の使用が考慮される
#3. 頻脈性心房細動に対するマグネシウム投与は有効か?~LOMAGHI試験~ https://doi.org/10.1111/acem.13522 研究の概要 前向き二重盲検RCT ERで管理される頻脈性AFに対し 標準的な房室結節抑制薬に加え Mgを投与した場合のレートコン トロール効果を比較 房室結節抑制薬は主にジゴキシ ンを使用 治療反応の定義 ベースの心室レート(VR)≦90bpm ベースラインVRが20%以上低下 4時間後治療反応率 24時間後治療反応率 低用量より副反応多い 低用量Mg 高用量Mg 生食100ml+MgSO4 4.5g 生食100ml+MgSO4 9.0g 64.2% RR=2.31, p<0.05 59.5% RR=1.89, p<0.05 43.6% 97.9% 94.1% 83.3% RR=9.74, p<0.05 RR=3.22, p<0.05 プラセボ 生食100ml 頻脈性心房細動患者に対して、標準的な房室結節抑制薬に加えて硫酸マグネシウム4.5gを投与すると 有害事象が増加することなく、プラセボと比較して有意にレートコントロール達成率が改善する
ICUにおける経腸栄養のガイドライン
#4. ICUにおける経腸栄養ガイド~10 expert tips~ Question 経腸栄養を開始可能 Answer いつ始めるか? ICU入室後24-48時間以内 昇圧剤を使用中の対応は? 少量から経腸栄養を開始 蘇生期や状態不安定であれば増量しない 腸管への投与方法は? 4週以内: 経鼻胃管 (必要時先端を幽門以降に留置) 幽門以降留置の方が肺炎リスクが低い可能性あり 4週以上: 胃瘻, 腸瘻 投与カロリー量は? 開始後4-7日目: カロリー制限 (70%未満 or 6kcal/kg/d) 4-7日目以降で必要消費カロリーに近づける カロリー密度の高い栄養剤は いつ使用? 消化管蠕動不全のある場合 (投与量を減量可) 輸液蘇生が必要な場合 状態が安定し経口栄養に移行する場合 タンパク投与量の目安は? 病初期: 0.8g/kg/day 状態に応じて1.2g/kg/day以上に増量する 高タンパク栄養剤はいつ使用? 腎機能や酸塩基平衡をみながら状態安定時に考慮 微量栄養素は何をいつ使用? チアミンは早期から補充 その他(亜鉛や鉄など)は不足量次第で補充 リフィーディング症候群の対応は? 経腸栄養開始後1週間以内に1回はリンを測定 経腸栄養量を減らし、チアミンやリンを補充する 低カリウム・低マグネシウムにも注意 腸管蠕動障害の評価は? 経腸栄養を開始できない背景 ショック, 低酸素, アシドーシス 上部消化管出血, 腸管虚血/閉塞 胃蠕動障害(6時間で500ml以上逆流) 腹部コンパートメント症候群 etc 少量から経腸栄養を開始 蠕動不全の徴候がないか観察する https://doi.org/10.1186/s13054-021-03847-4 胃蠕動不全の徴候あり No Yes 1. 2. 3. 経腸栄養中止 or 量や速度を落とす 蠕動改善薬を投与 幽門部以降に栄養剤を投与 小腸蠕動不全の徴候あり No Yes 胃蠕動不全の徴候 嘔吐, 胃残量が500ml以上 腹痛, 胃拡張, 腹腔内圧上昇 小腸蠕動不全の徴候 嘔吐, 腸管拡張, 腹腔内圧上昇 1. 2. 3. 経腸栄養中止 or 量や速度を落とす 腹腔内圧測定を考慮 緩下剤や蠕動改善薬を投与 1. 2. 3. 量や速
MRSA菌血症のマネジメントと治療戦略
#5. MRSA菌血症マネジメント 治療失敗時の抗菌薬 ✓ VCM→DAPに変更 ✓ DAP 10mg/kgに増量 ✓ ceftaroline併用 (海外) VIRSTA score (3点未満で経食道心エコーを省略可) 脳 or 末梢塞栓 +5 持続菌血症 +3 髄膜炎 +5 椎体炎 +2 心内デバイス or IEの既往 +4 市中 or 施設関連 +2 静注薬物使用者 +4 重症敗血症 +1 既存の弁膜症 +3 CRP> 19mg/dL +1 3-5日後 持続する MRSA菌血症 No 1-2日後 Yes 複雑性菌血症として 血液培養 陰性化? 血液培養陽性 治療開始 28-42日間治療 Yes Yes 複雑性菌血症のリスク ✓ 免疫抑制者 ✓ 播種性合併症 ✓ 血管内デバイスあり 0 1 No 血液培養 陰性化? 複雑性菌血症 リスクあり? No 非複雑性菌血症: 以下の基準をすべて満たす場合 IEなし、植込みデバイスなし、2~4日で菌血症が陰性化 72時間以内に解熱、転移巣なし 2 治療失敗 ソースコントロール 抗菌薬変更 抗菌薬併用を考慮 3 14日間治療 主な感染巣 骨関節 (14.4%)、血管内感染 (17.8%)、肺 (5.9%) 尿路感染症は稀、尿中S. aureusは菌血症要鑑別 4 5 https://doi.org/10.1093/cid/ciac364 doi:10.1001/jama.2025.4288
ランソプラゾールとPPIの併用リスク
#6. doi:10.1001/jamanetworkopen.2023.39893 ランソプラゾール n=3747 その他PPI n=27405 aRR adjusted risk difference 74.0歳 71.4歳 組入時の血清K値異常 45.5% 42.4% ICU入室者 18.5% 16.8% 誤嚥性肺炎 11.2% 2.6% 心室性不整脈または心停止 COVID-19 3.8% 1.6% 入院全死亡 キノロン併用 4.3% 2.9% マクロライド併用 2.9% 2.0% 3.4% 1.2% 19.9% 101% 年齢 心室性不整脈 or 心停止 入院全死亡 NNH ランソプラゾールとCTRXを併用すると ランソプラゾール以外のPPIとCTRXを 併用した場合と比べて のリスクとなり可能性があり 併用を避けたほうがよいかもしれない 2.2 (1.7-2.7) 1.6 (1.5-1.7) 1.7 7.4 58.8 (1.1-2.3) 13.5 (6.1-8.8)
菌血症患者における抗菌薬投与期間の比較
#7. BALANCE • • • • trial 多施設RCT (非劣性試験) ICUを含む菌血症入院患者を対象 抗菌薬投与期間: 7日間 vs 14日間 90日死亡率を評価 除外基準 重度の免疫機能低下 人工弁 or 合成血管グラフト使用 IE・骨髄炎・関節炎・ドレナージ未 の膿瘍や人工物関連感染といった 長期治療が必要な感染性疾患 コンタミネーション例 S. aureus or S. lugdunensisが陽性 カンジダ or 他真菌が陽性 結論 菌血症の入院患者に対して 7日間の抗菌薬治療は 14日間の抗菌薬治療と比べて 90日死亡率は非劣性だった DOI: 10.1056/NEJMoa2404991 7days 14days difference noninferiority margin=4% 1814人 1794人 設定期間より抗菌薬長期使用 23.1% 10.7% ICU症例 55.0% 55.1% 感染巣の制御でデバイス使用 43.8% 46.1% 尿路感染症 41.7% 42.7% 腹腔内 or 肝胆道系 18.6% 19.1% 大腸菌 44.4% 43.3% クレブシエラ属 15.0% 15.6% 原因菌がGNR単独 71.6% 70.4% 90日死亡率 (ITT) 14.5% 16.1% -1.6 (-0.4 to 0.8) 90日死亡率 (per protocol) 13.0% 15.0% -2.0 (-4.5 to 0.6) 症例数 感染源 原因菌