テキスト全文
インフルエンザUpDateの概要と自己紹介
#1. インフルエンザUpDate- 2019/2020シーズン - 神戸市立医療センター中央市民病院
感染症科 黒田浩一 2019年10月作成
#2. 自己紹介 医師11年目です
もともと愛知県の呼吸器内科医
昨年度まで亀田総合病院感染症科
現在は、神戸市立医療センター中央市民病院で感染症科(3人体制)
#3. COI開示発表者:黒田浩一 発表に関連し開示すべきCOI関係
にある企業などはありません
インフルエンザの罹患経験と医療機関受診状況
#4. インフルエンザに罹患した経験がある人はいますか?
#5. ツライですよね...高熱・咽頭痛咳・頭痛関節痛...
#6. インフルエンザを診断した経験がある人はいますか?
#8. 医療機関を受診する患者 国立感染症研究所ホームページより 1000-2000万人
インフルエンザの診断と治療に関する自信
#9. 罹患:4900万人入院:96万人死亡:79000人 Clin Infect Dis. 2019 Feb 2. doi: 10.1093/cid/ciz075
インフルエンザ迅速抗原検査の適応と目標
#14. 流行期(冬)の発熱は、とりあえず迅速検査して、陽性なら抗ウイルス薬(タミフル or ゾフルーザ)を処方します!
#17. 目標 以下を理解すること
- インフルエンザ迅速抗原検査の適応
- 抗インフルエンザ薬の適応と使い分け
- インフルエンザワクチンの重要性と適応
インフルエンザの疫学と流行時期
#18. お話する内容 疫学
症状
感染経路
診断 治療
予防・感染対策
休業日数
治癒証明書 インフルエンザとは?
#19. インフルエンザとは? インフルエンザウイルスによる急性気道感染症
A型(H1N1、H3N2)とB型
#21. 疫学 日本(温帯気候)では
- 流行は冬季
- 11月下旬から12月上旬から
- 1-2月がピーク
- 4-5月に収束する
流行状況の調査方法と海外の流行状況
#27. 流行状況の調べ方 インターネット検索(googleなど)
1. 「インフルエンザ流行レベルマップ」
→国立感染症研究所のホームページ
2. 「○○県 インフルエンザ情報」
→各都道府県の感染症情報センター
#28. ちなみに... 南半球:7-8月がピーク
熱帯地方:年中発生
海外渡航する場合は、念頭におきましょう
インフルエンザの症状と合併症リスク
#30. 症状 急性発症の発熱
頭痛
筋肉痛、関節痛
倦怠感
乾性咳嗽、咽頭痛、鼻汁
通常3-7日程度で自然に改善する MMWR 2011;60(1):1-25
#32. 非典型的なこともある 高齢者
発熱の頻度が低い
意識変容で受診する可能性がある
小児
下痢や吐き気の頻度が高い(10-20%) JAMA. 2005;293:987-97. Clin Infect Dis. 2019;68:e1-e47. Lancet. 2017;390:697-708. Pediatr Infect Dis J. 2009;28:372-5.
Clin Infect Dis. 2003;36:299-305.
#33. 重症化/合併症に注意!
肺炎(2次性細菌性肺炎、ウイルス性肺炎)
脳症、無菌性髄膜炎、脳炎
筋炎、横紋筋融解症、心筋炎 など MMWR 2011;60(1):1-25
#34. 合併症高リスク群 高齢者(65歳以上)
5歳未満の小児(特に2歳未満)
妊婦、出産後2週間以内
慢性疾患の既往
喘息、COPD、心疾患、悪性腫瘍
慢性腎不全、慢性肝疾患、糖尿病
血液疾患、神経筋疾患
免疫抑制状態(免疫抑制薬使用、HIV、移植後 etc)
BMI≧40
ナーシングホーム入所者 MMWR 2011;60(1):1-24. Clin Infect Dis. 2019;68:e1-e47.
2次性細菌性肺炎のリスクと原因
#35. 高齢者小児妊婦慢性疾患免疫抑制状態施設入所者 6グループ
#36. 重症化するのは高齢者入院:約70%死亡:約90% Clin Infect Dis. 2019 Feb 2. doi: 10.1093/cid/ciz075
#37. 2次性細菌性肺炎 もっとも頻度が高い合併症
入院・死亡の原因となる
#38. 2次性細菌性肺炎の頻度 健康成人:0.5%
高齢者/慢性心肺疾患のある患者:2.5%
全体の1-2%が肺炎を起こす JAMA. 2013;309:275-82. Int J Infect Dis. 2012;16:e321-31.
Arch Intern Med. 2003;163:1667-72. Intern Med J. 2012;42:755-60.
#40. 2次性細菌性肺炎の原因 肺炎球菌
黄色ブドウ球菌
インフルエンザ桿菌
A群レンサ球菌
など Lancet Respir Med 2014;2:750-763
JAMA. 2013;309(3):275-282
Clin Infect Dis 2005;40:1693–6
Intern Med J. 2012;42(7):755-60
Chest 2016;149(2):526-534
インフルエンザの感染経路と発症期間
#41. 喀痰グラム染色重要 黄色ブドウ球菌が関与しているかどうかで初期治療がかわる
#42. 2次性細菌性肺炎を疑う状況 重症の場合
呼吸不全、血圧低下、sepsis疑い
いったん改善した後に悪化した場合
治療開始後3-5日で改善しない場合
Clin Infect Dis. 2019;68:e1-e47.
#43. 感染経路 インフルエンザに
ならないために
うつさないために
#44. 感染経路 飛沫感染
気道分泌物(くしゃみ、咳)
6 feet=1.8m≒2.0m
気道分泌物で汚染された環境面からの接触感染する可能性がある PLoS One. 2011;6:e27932. Appl Environ Microbiol. 2016;82:3239-45.
Lancet. 2017;390:697-708. MMWR Recomm Rep. 2011;60:1-24.
Clin Infect Dis. 2003;37:1094-101.
#45. 曝露してしまった時「咳と痰を浴びてしまった…」
#46. どのくらいで発症? 潜伏期間:1-4日(平均2日)
- 曝露してから2日後に発症しやすい
- 4日越えたら安心できる MMWR 2011;60(1):1-24
インフルエンザの診断方法と検査の重要性
#48. 感染性がある期間 ウイルスの排泄
症状出現24-48時間前から
発症5-7日頃まで(ここまで注意!)
発症から2-3日以内の排泄量が多い
MMWR 2011;60(1):1-24. J Infect Dis. 2010;201:1509-16.
#50. 問題1:流行期の診断方法 ①症状から診断
②血液検査
③迅速抗原検査
④医療者としてのカン
⑤冬の発熱はとりあえずインフルエンザ
#52. 【重要】 流行期の
インフルエンザは
検査なしで
診断可能
#53. 臨床診断でよい 病歴
症状
曝露歴
地域でのインフルエンザの流行状況
身体所見
上記のみで十分な感度・特異度がある Arch Intern Med. 2000;160:3243-7. Clin Infect Dis. 2019;68:e1-e47.
#54. 流行期に
インフルエンザっぽい それはインフルエンザ!
#55. 保険診療上も インフルエンザの診断
抗インフルエンザ薬の投与
において
迅速抗原検査やPCR検査
の実施は必須ではない 2009年8月28日付 厚生労働省事務連絡
#56. インフルエンザ迅速抗原検査 - 感度62.3%
- 特異度98.2%
検査陰性でインフルエンザ除外できない Ann Intern Med 2012;156:500–511.
インフルエンザ治療の基本と抗ウイルス薬の適応
#57. 迅速検査の適応 原則、インフルエンザ流行期に限定
外来患者
結果がその後の方針に影響を与える場合
入院患者
なんらかの気道疾患を疑う場合 Clin Infect Dis. 2019;68:e1-e47.
#58. 外来における個人的な適応 インフルエンザと診断された場合に、そのほかの代替診断の精査が必要なくなるとき
#60. インフルエンザ濾胞 咽頭後壁の所見
“イクラサイン”
感度95%以上
特異度90%以上
複数の境界明瞭で丸くて半球状、直径1-2mm、赤紫色の濾胞で、インフルエンザ発症初期にみられる Gen Med. 2011;12(2):51-60. Postgrad Med J. 2016;92:560-1. 日大医誌 2013;72(1):11-18. DOI:10.2169/internalmedicine.2573-18
#61. インフルエンザの鑑別疾患 インフルエンザ様症状を呈する重篤な疾患の可能性を常に念頭に置きながら診察することが重要
詳細は、googleで「亀田感染症ガイドライン」を検索。最初に出てくるサイトの「インフルエンザ流行期にインフルエンザ以外の致死的な疾患を見逃さないための手引き」をご参照ください
抗ウイルス薬の効果と治療効果の評価
#67. 治療 対症療法
アセトアミノフェン
麻黄湯
抗ウイルス薬 Health 2011;3(5):300-303
#69. 問題2 ①全員
②重症化のリスクある人
③入院必要な人
④お金払える人
#70. 抗ウイルス薬の適応 全員治療ではない
入院症例
重症で、進行性の場合
重症化リスクがある場合
65歳以上、2歳未満、免疫不全
慢性呼吸器疾患、悪性腫瘍、妊婦 etc MMWR 2011;60(1):1-25
#73. 抗ウイルス薬の効果 主にタミフルとリレンザ
#74. 治療効果:外来患者 症状のある期間が約1日短縮する
入院が減少する「可能性」がある
肺炎※が減少する「可能性」がある BMJ. 2014;348:g2545, BMJ. 2014;348:g2547, Lancet 2015;385:1729-37 ○Ann Intern Med 2012;156:512-524, Lancet 2015;385:1729-37, Clin Infect Dis 2017;64:1328
× BMJ. 2014;348:g2545 ○Ann Intern Med 2012;156:512-524, Lancet 2015;385:1729-37, Clin Infect Dis 2011;:53(3):277-279
× BMJ. 2014;348:g2545 ※肺炎ではなく、COPD急性増悪も含めた「抗菌薬投与を必要とした下気道感染症」
#75. 治療効果:入院患者 入院期間の短縮
死亡の減少
48時間以内に治療
ICU患者では48時間以降でも効果あり
発症してから5日目以降だと効果なし
効果は発症から薬剤投与までの期間が短いほど高い MMWR 2011;60(1):1-25, Clin Infect Dis 2015;61:1807-14
J Infect Dis 2013;207:553, Lancet Respir Med 2014;2:395-404
Clin Infect Dis 2018;67:736, Clin Infect Dis. 2019;68:e1-e47
#76. 研究によって... 対象患者群が異なる
生来健康 or 基礎疾患あり or どちらも含む
インフルエンザ確定例 or インフルエンザ様疾患
治療開始のタイミングが異なる
発症から48時間以内 or 条件なし
下気道感染症の定義が異なる
メタ解析では、対象とした研究の範囲が異なる
多くの論争があり、真の効果について最終結論はでていない
#77. 確からしい効果 早期治療(48時間以内)で
- 症状改善が1日早まる
- 入院患者の死亡が減少
- 入院患者の入院期間が短縮
#78. 基本的には解熱薬!? 1日早く解熱するだけ.. 重症化高リスク群ではない外来患者では
抗ウイルス薬の種類と使い分け
#79. 外来の長い待ち時間を耐えてまでもらう価値はない(と思う)むしろ別の感染症をもらってしまうかも...
#81. 抗ウイルス薬 オセルタミビル(内服):基本薬
ザナミビル(吸入)
ラニナミビル(吸入)
ペラミビル(点滴)1回投与
バロキサビル(内服)
#87. オセルタミビル/タミフル® ノイラミニダーゼ阻害薬
ジェネリックあり:
2720円→1360円
2019.10現在の基本治療薬(第1選択)
1日2回 5日間内服
#88. ザナミビル/リレンザ® 効果はタミフルと同等
吸入薬であり、7歳頃から手技が可能
1日2回(1回2吸入) 5日間
乳製品に対して過敏症の既往歴がある患者では使用しない
小児での効果は期待できない可能性がある
COPDや喘息の患者で、気管支攣縮を起こすことがある
BMJ. 2014;348:g2547.
#89. ラニナミビル/イナビル® 吸入薬、高価(4280円)
1回投与(2吸入)、便利?
効果がない可能性がある
使用しないことを推奨する その他のラニナミビルの効果を検討した報告:J Infect Chemother. 2013;19:89–97.
Antimicrob Agents Chemother. 2010;54(6):2575–2582. Pediatrics 2012;129:e1431–e1436. オセルタミビルとの非劣勢試験では、対象者の65%がオセルタミビル耐性株
海外で行われた無作為比較試験で、placeboと同等
Clin Infect Dis. 2010;51(10):1167–1175. Lancet Infect Dis 2014;14:1136–49.
#90. ペラミビル/ラピアクタ® 唯一の点滴製剤
効果はオセルタミビルと同等
重症化高リスク群では600mg投与
1回投与(ICU症例では5日間まで)
高価(300mg 6216円, 600mg 12532円)
内服が困難もしくは腸管吸収が低下している患者に限定して使用する Antimicrob Agents Chemother. 2010;54:4568-74. Antimicrob Agents Chemother. 2011;55:5267-76.
Antimicrob Agents Chemother. 2011;55:2803-12. Clin Infect Dis. 2014;59:e172-85.
ワクチン接種の重要性と種類
#91. バロキサビル/ゾフルーザ® キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬
1回内服(成人:40mg)
臨床効果は、オセルタミビルと同等
高価(40mg 4789円:タミフルの1.76倍)
ウイルス感染価がオセルタミビルより早期に低下する(感染性の低下が早い可能性)
N Engl J Med 2018;379:913-23
Phase 3 Trial of Baloxavir Marboxil in High Risk Influenza Patients (CAPSTONE-2 Study). Presentation #LB16, IDWeek 2018
#92. ゾフルーザ®の欠点 耐性変異株の出現
コスト
多価陽イオン製剤と同時に摂取すると吸収が低下する可能性がある 米国のバロキサビルの添付文書 N Engl J Med. 2018;379:913-23.
Euro Surveill. 2019 Jan;24(3). doi: 10.2807/1560-7917.ES.2019.24.3.1800698
#93. 耐性化の懸念 A/H3N2(12-64歳)において、治療中に約10%が耐性変異株が出現。ウイルス排泄はオセルタミビル群より多く長い期間であり、そのような株が大勢を占めた場合、感染伝播拡大の危険性がある。A/H1N1では3.6%で耐性変異株が出現。
1から11歳の小児を対象とした臨床試験では、A/H3N2で、23.4%で耐性変異株が出現した N Engl J Med 2018;379:913-23 Clin Infect Dis. 2019 Sep 20. pii: ciz908. doi: 10.1093/cid/ciz908
#94. すでに実地臨床でも耐性変異株が検出されている 2018年3月から日本でバロキサビルが使用可能となった
2018年12月に横浜市内の小学校でインフルエンザoutbreak
- 4株のH3N2を解析:2株がバロキサビル耐性変異株(PA I38T耐性変異)
- どちらもバロキサビル投与後3日で採取された検体
- 2例とも投与後2日で解熱している(おそらく自然治癒)
さらに別の報告では、バロキサビル未投与患者からバロキサビル耐性変異ウイルスが検出された。バロキサビルを投与された患者からの感染伝播の可能性が想定される。
Euro Surveill 2019;24(3):pii=1800698 Euro Surveill. 2019 Mar;24(12). doi: 10.2807/1560-7917.ES.2019.24.12.1900170.
#97. その効果は...かなり限定的 しかし...
#98. 健康成人を治療すべきか? 利点
- 解熱が1日早くなる
欠点
- 10%弱で副作用
- コスト、受診の体力的な負担
私の方針:症状が強く内服希望があれば、上記説明の上、処方を検討する
#101. 就学期以降の小児・未成年者での対応 実際、積極的適応となる患児は少ない
投与する抗ウイルス薬に関わらず(または投薬しない場合でも)、少なくとも発熱から2日間は、異常行動とそれに伴って生じる転落等の重大事故に注意する必要があるため、保護者にそのリスクと防止対策について説明を行うことが重要。
インフルエンザワクチンの効果と接種対象
#103. インフルエンザ予防 ワクチン接種
抗ウイルス薬の予防内服
マスクの着用、咳エチケット、手洗い
院内感染対策(標準予防策/飛沫予防策)
#105. ワクチンの種類 4価の不活化ワクチン
- A型2株
- B型2株
日本で使用可能なものは1種類だけ
#107. WHO→厚生労働省 流行が予想される4種類のインフルエンザ株を、毎年世界保健機関(World Health Organization:WHO)が検討し、以下の時期に推奨案が作成される
- 2月:北半球の次回冬季(11月から4月)
- 9月:南半球の次回冬季(4-10月)
これをもとに厚生労働省と国立感染症研究所がワクチン製造株を選定する
#109. 適応知ってますか? 問題3
成人におけるワクチンの適応は?
#110. インフルエンザワクチン 対象:
6ヶ月以上のすべての人
特に接種が推奨される人:
インフルエンザ合併症の高リスク群
その家族や介護者、医療従事者 MMWR 2017;66:1-20
#111. 特に接種推奨される群 high risk groupとその濃厚接触者
6-59か月の小児、50歳以上
慢性肺疾患、慢性心疾患、腎疾患、肝疾患
神経疾患、DMなどの代謝性疾患、血液疾患
免疫不全状態(薬剤、HIVなどすべての理由)
妊婦、インフルエンザシーズンの妊娠予定者
18歳未満でアスピリン内服、施設入所者、BMI≧40の肥満
医療従事者、施設の職員(ナーシングホームなど)、それらの学生
上記high risk者の家族や世話をする人 MMWR 2017;66:1-20
集団免疫の概念と接種のタイミング
#113. ワクチンの効果 ワクチン株と流行株が一致するかどうかで効果が変わる
免疫の持続時間は、6-8か月
インフルエンザ発症を減らす(40-60%)
肺炎などのインフルエンザ関連合併症を減らす
インフルエンザに関連した入院を減らす
若年成人の休職期間を短縮
など MMWR Recomm Rep 2016;65:1-54, NEJM 1995;333:889-893
Cochrane Database Syst Rev. 2018;2:CD001269
Cochrane Database Syst Rev. 2018;2:CD004876
#114. ここ数年の米国のdata ワクチン株と流行株が一致した場合
- ワクチン効果は、40-60%
- 罹患者・受診者・入院・死亡が減少
小児>高齢者
A(H1N1)>A(H3N2) N Engl J Med. 2017;377:534-43, Clin Infect Dis. 2019 May 17;68(11):1798-1806
MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2019;68:135-9, Clin Infect Dis. 2019 Feb 2. doi: 10.1093/cid/ciz075
#115. 高齢者への効果 自宅に居住する高齢者(65歳以上)
- インフルエンザ発症率の低下
- インフルエンザまたは肺炎による入院の減少
- 全死亡の減少
ナーシングホームの高齢者
- インフルエンザ様疾患の発症率の低下
- インフルエンザまたは肺炎による入院の減少 Cochrane Database Syst Rev. 2018;2:CD004876
Cochrane Database Syst Rev. 2010:CD004876
#116. 肺疾患・心疾患 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者
- インフルエンザに関連した呼吸器感染症
- COPD急性増悪
が減少する
冠動脈疾患を持つ患者
- 心血管疾患による死亡率
- 心筋虚血イベント・入院
が減少する MMWR Recomm Rep 2016;65:1-54
#117. 学童への集団接種 インフルエンザワクチン接種量の低下によって、肺炎・インフルエンザによる超過死亡が増加した(1962年から1987年まで学童のインフルエンザワクチンは必須とされていた) N Engl J Med. 2001;344:889-96
#118. 小児への接種が重要 学童への集団接種(日本)1)
→高齢者の死亡を減らす
小学校の集団接種(米国)2)
→家族内のインフルエンザ発症を減らす
小児(5-16歳)に接種する(英国)3)
→社会全体のインフルエンザ発症/死亡を抑制 1) N Engl J Med. 2001;344:889-96. 2) N Engl J Med. 2006;355:2523-32.
3) PLoS Med. 2013;10:e1001527.
#119. 集団免疫(herd immunity) 小児へのワクチン接種
本人のため
周りの家族・高齢者など社会全体のため
#120. 集団免疫 多くの人が予防接種によって免疫を獲得することで、ウイルスや細菌による感染症の蔓延が防止できる間接的な予防効果のこと
インフルエンザ流行前に集団の予防接種率が上がり抗体ができると、流行そのものの山が低くなる
流行そのものが減ると、予防接種をしていない人もその疾患に罹患しにくくなる
#123. 重症化高リスク群だけでなく小児にも接種!
ワクチン接種の安全性と副反応
#126. 接種のタイミング 医療従事者は、10月終わりまでに
6か月から8歳(日本だと13歳)は、2回目を10月終わりまでに打てるように、ワクチンが利用可能になったらすぐに接種 MMWR 2017;66:1-20
#128. 接種方法 3歳以上:1回0.5mlを皮下注射
3歳未満:1回0.25mlを皮下注射
※諸外国では、局所の副反応などが少ないため、筋肉注射が基本
13歳未満では4週間以上間隔をあけてから2回目を接種する
※米国やWHOでは、9歳以上の小児では1回接種
他のワクチンとの同時接種は可能
Vaccine 2006;24:2395–2402 Microbiol Immunol 2010;54:81–88
#130. 安全性は高い MMWR Recomm Rep. 2016;65:1-54.
#131. 副反応 重度の副反応はほとんどない
最も頻度の高い副反応は、接種部の疼痛
局所反応は、通常2日以内に改善 MMWR Recomm Rep. 2016;65:1-54.
#132. ちょっとした懸念 他のワクチンとの同時接種は安全と考えられているが、6-23ヶ月の小児において、13価肺炎球菌結合型ワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種によって、接種日とその翌日の発熱が増加し、熱性けいれんが増加する可能性が報告されているため、注意が必要である。インフルエンザワクチン単独接種における熱性けいれんの増加はない。 MMWR Recomm Rep. 2018;67:1-21
#133. ワクチンを打ってはいけない人 過去にインフルエンザワクチンで重度のアレルギー反応の既往がある場合
明らかな急性発熱疾患罹患者
卵アレルギーの人は接種可能 MMWR Recomm Rep 2016;65:1-52
#134. 妊婦へのワクチン接種 全例で接種推奨(時期は問わない)
ただし妊娠第1期(14週まで)はdataは少ない
★効果
母体のインフルエンザ様疾患の発症の抑制
新生児のインフルエンザ発症の抑制
死産と早期産を減らす
★安全性
妊婦にワクチンの合併症が多いという報告はない MMWR 2013;62:1-43, MMWR Recomm Rep 2017;66:1-20
抗ウイルス薬の予防内服とその適応
#135. 免疫チェックポイント阻害薬使用中の安全性 免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ:オプジーボ®)投与中に、インフルエンザワクチンは安全に接種できるかどうか
irAE(immune-related adverse event:免疫関連副作用)が増加する可能性が指摘されたが1)、その後の報告では、安全に使用できたと報告された2-4) 1) J Immunother Cancer. 2018;6(1):40. 2) Eur J Cancer. 2018;104:182-187. 3) Clin Infect Dis. 2019 Mar 15. pii: ciz202. doi: 10.1093/cid/ciz202 4) J Oncol Pharm Pract. 2019 Aug 31:1078155219868758. doi: 10.1177/1078155219868758
#136. ESCMID 免疫チェックポイント阻害薬使用時
- ニボルマブ
- ペンブロリズマブ
- イピリムマブ etc
ワクチン接種は健常人と同様の対応 Clin Microbiol Infect. 2018;24 Suppl 2:S95-S107 ESCMID:European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases
#137. 常識的な予防法 咳エチケット
マスク・手洗い
→家庭内感染が減る Ann Intern Med 2009;151:437-446
#138. 咳エチケット 咳やくしゃみをする時
または、しそうになった時
手をすぐに洗う
ティッシュをすぐにごみ箱に捨てる ※手で口や鼻を覆ってはいけない
#139. 正しいマスクの使い方 マスクの表裏、上下を確認し、ノーズピースに折り目をつける
顔に装着しゴムひもを耳にかけ、ノーズピースを顔の形に合わせる
隙間ができないように、鼻から口・顎の先までマスクを広げる
マスクを着けたら表面には触らない
ゴムひもを持ってマスクを外し、最後に手指衛生
#141. 抗ウイルス薬の予防内服 曝露後予防
・曝露前予防であるワクチン接種に代わるものではない
・予防内服中でも発症することはある
(約70-80%予防するとされる)
・予防内服していて、臨床症状がでなくても、インフルエンザを伝播する可能性がある MMWR 2011;60(1):1-24
#142. 抗ウイルス薬の予防内服 曝露後予防
・インフルエンザ合併症のリスク、曝露状況、公衆衛生局・地方保健医療当局の推奨、臨床判断、によってケースバイケースで予防内服するかどうか決定する MMWR 2011;60(1):1-25
#143. 予防内服の適応 絶対的に決まった適応はない
よい適応
- 曝露後48時間以内
- 合併症発症の高リスク者 or 医療従事者
- ワクチン接種なし
のすべてをみたすもの MMWR 2011;60(1):1-25
Prevention of seasonal influenza with antiviral drugs in adults. UpToDate 2017
#144. 予防内服の欠点 消化器症状などの副作用
ウイルスの薬剤耐性化のリスク
コスト MMWR 2011;60(1):1-25
Prevention of seasonal influenza with antiviral drugs in adults. UpToDate 2017
#145. ワクチン接種していれば... 原則
抗ウイルス薬の
予防内服は不要!
#146. 抗ウイルス薬の予防内服 薬剤
タミフル® 75mg/日(1日1回)
リレンザ® 10mg/日(1日1回 1回2吸入)
期間
家庭内曝露の場合:10日間
その他:7日間 MMWR 2011;60(1):1-25
院内感染対策と職場復帰に関するガイドライン
#147. 院内・施設内でのoutbreak 定義:同じunitで72時間以内に2例以上発生
曝露した患者・入居者は、ワクチン接種状況に関わらず、早急に予防内服を開始する
予防内服は、そのunitごとに施行する
スタッフへの予防内服は「考慮」
予防内服期間は、14 日間、かつ、最終発症患者の症状出現から7 日以上 Clin Infect Dis. 2019;68(6):e1-e47.
#150. 院内感染対策 標準予防策
接触予防策?
飛沫予防策
発症から7日間 and 症状消失から24時間
MMWR 2011;60(1):1-25
#152. 実践すべきこと 仕事を休む
咳エチケット
手洗い
#156. 無駄が多い そもそも医学的に意味がない
病院に行くため、1日働ける日が減る
病院の待ち合いで、風邪をもらうかも
患者さんのお金の無駄(自己負担)
医療者も時間の無駄(でもお金は稼げる)
Take Home Messages: インフルエンザの重要ポイント
#158. Take Home Messages インフルエンザは、症状の強い感冒のようなものですが、中には重症化する人がいます
流行期の典型的症状であれば、検査は不要です
タミフル®は、全員に必要なわけではありません
ゾフルーザ®とイナビル®は使用しません
インフルエンザワクチンを毎年打ちましょう
ヒト(同僚・患者さん)にうつさないために、罹ったらお休みしましょう