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劇症1型糖尿病

投稿者プロフィール
けー@代謝内科

総合病院(私立)

2,500

21

概要

劇症1型糖尿病の定義、病態、生物学的背景や最新の疫学に関する知見を紹介したスライドです。

急速な膵β細胞の破壊がもたらす症状、高齢者における発症パターンや特有のMRI所見、免疫チェックポイント阻害薬との関連性など、従来の1型糖尿病との違いに焦点を当てました。実際の事例を通して、見落としがちな症例の診断基準や適切な対応策についても詳しく解説しています。今後の診療に役立てていただければ幸いです。

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医/専門医

参考文献

  • 劇症1 型糖尿病全国調査 今川彰久 日内会誌102:1829~1835,2013

  • 抗ヒトPD-1/PD-L1抗体投与後に発症する1型糖尿病に関する疫学調査 第67回糖尿病学会総会 シンポジウム39

  • 劇症1型糖尿病診断基準 (2012年改訂)

  • 劇症1 型糖尿病の発症早期における膵臓MRI 所見に関する調査報告 糖尿病61(12):840~849,2018

  • 妊娠関連発症劇症1 型糖尿病の臨床的特徴とHLA 解析 糖尿病49(9):755~760, 2006

  • Kawabata Y et al. A genome-Wide Association Study Confirming a Strong Effect of HLA and Identifying Variants in CSAD/lnc-ITGB7-1 on Chromosome 12q13.13 Associated with Susceptibility to Fulminant Type 1 Diabetes. Diabetes 68: 665-675, 2019

  • 見逃してはいけない糖尿病の特殊型―劇症1 型糖尿病 花房俊昭 日内会誌97巻第9 号

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テキスト全文

劇症1型糖尿病の概要と目次

#1.

All about Fulminant Type 1 diabetes melitus 劇症1型糖尿病 Facts, knowledge, and take-home messages 三笘 けい

#2.

スライドの内容 Presentation Outline 劇症1型糖尿病とは 遺伝的背景について 基本的な病態 疫学 過去の事例 診断基準 他の1型糖尿病との違い インスリン分泌 急性期のMRI所見 特殊な条件下での発症 免疫チェックポイント阻害薬 妊娠 Take-home Messages

劇症1型糖尿病の基本病態と疫学

#3.

劇症1型糖尿病とは 基本的な病態 ・1型糖尿病のなかでも特に急速に膵β細胞が破壊され、ケトーシスやケトアシドーシ スで発症する ・発症時には既にインスリン分泌能が枯渇している ・1週間程度で、正常な血糖値から著名な高血糖に至るため、血糖値の上昇に追いつか ずHbA1cが低値にとどまる ・95%で膵島関連自己抗体(GAD抗体、抗IA-2抗体など)は陰性 ・70%以上の例で発症前の前駆症状(発熱・咽頭痛などの感冒様症状や上腹部痛などの 腹部症状)がある ・98%で血清アミラーゼなどの膵外分泌酵素の上昇が見られる

#4.

劇症1型糖尿病とは 疫学 ・ケトーシスあるいはケトアシドーシスで急性に発症する1 型糖尿病の15~20% を占める ・発症年齢でみた場合、90% 以上が20 歳以上で発症している。高齢発症でも80歳未満 ・発症に男女差はない ・妊娠中に発症する1 型糖尿病の多くは劇症1 型糖尿病である ・近年、免疫チェックポイント阻害薬による発症が増加している ・COVID-19感染やCOVID-19ワクチン接種に関連した発症も報告されている 劇症1 型糖尿病全国調査 今川彰久 日内会誌102:1829~1835,2013 抗ヒトPD-1/PD-L1抗体投与後に発症する1型糖尿病に関する疫学調査 第67回糖尿病学会総会 シンポジウム39

劇症1型糖尿病の診断基準とインスリン分泌の違い

#5.

劇症1型糖尿病とは ※ 劇症1型糖尿病診断基準 (2012年改訂)

#6.

他の1型糖尿病との違い インスリン分泌 ・発症時にすでに内因性インスリン分泌能が枯渇している ・急性発症1型糖尿病で、症状出現から糖尿病診断までにかかる期間は平均5週間で あるが、劇症1型糖尿病では4日と短い ・ハネムーン期 がないので、早期からインスリンポンプ導入となることが多い ・2型糖尿病患者であっても、劇症1型糖尿病を発症することがある 1型DM発症の初期段階で適切かつ十分な血糖コントロールを行うと、インスリンの 自己分泌能がある程度まで回復し、一時的にインスリン注射が不要になったり、 インスリン注射の需要量が大きく減少したりする時期が来ることがある。 これをハネムーン期という そ そり うゃ よ

急性期のMRI所見と特殊な発症条件

#7.

他の1型糖尿病との違い 急性期のMRI所見 ・劇症1型糖尿病の急性期では、MRIの拡散強調画像 (DWI)において膵臓のADC値が 低値となる ・この画像変化は、急性期を過ぎると消失する ・ADC値と血糖値、動脈血pHは相関しており、劇症1型糖尿病症例における代謝異 常の重症度を反映していると考えられる 劇症1 型糖尿病の発症早期における膵臓MRI 所見に関する調査報告 糖尿病61(12):840~849,2018

#8.

他の1型糖尿病との違い 特殊な条件下での発症 ・免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の使用により急性発症1型糖尿病・劇症1型糖尿病を 発症する場合がある ・ICI関連1型糖尿病は遅発性に生じうるため、 ICI投与終了後であっても注意を要する。 ・妊娠に関連して発症する例があることが知られている ・妊娠に関連して発症する劇症1型糖尿病の発症は妊娠後期(第3半期)に集中している ・妊娠に関連して発症する劇症1型糖尿病は、より重篤で児予後もきわめて不良 妊娠関連発症劇症1 型糖尿病の臨床的特徴とHLA 解析 糖尿病49(9):755~760, 2006

劇症1型糖尿病の遺伝的背景

#9.

遺伝的背景 ・HLA-DR/HLA-DQ遺伝子型では、DRB1*04:05-DQB1*04:01 DRB1*09:01-DQB1*03:03 と が疾患感受性を示す ・12番染色体(12q13.13)のCSAD/lnc-ITGB7-1領域の関与が知られている 感度50.2%、特異度74.2%、陽性的中率55.3%、陰性的中率70.1% 感度40.1%、特異度73.8%、陽性的中率49.4%、陰性的中率65.9% (2011年度厚生労働省多施設共同研究:劇症1型糖尿病の診断マーカー同定と診断基準確立) Kawabata Y et al. A genome-Wide Association Study Confirming a Strong Effect of HLA and Identifying Variants in CSAD/lnc-ITGB7-1 on Chromosome 12q13.13 Associated with Susceptibility to Fulminant Type 1 Diabetes. Diabetes 68: 665-675, 2019

過去の事例から学ぶ劇症1型糖尿病の危険性

#10.

過去の事例 事例1 不十分な問診で精神的問題と考えられ心肺停止に至ったが、救命された30 歳代前半の男性 【経過】2 日前から出現した強い全身倦怠感を主訴に、近くのA開業医を受診した。精神安定薬 (セルシン)を投与される。翌日、全身倦怠感が増強する一方であったため同医を再受診した が、診察待合室で心肺停止となる。A医師により直ちに心肺蘇生が開始され蘇生した。 蘇生後の検査所見では、血糖値1400mg/dL、尿ケトン(2+)、HbA1c (NGSP) 6.2%であった。 蘇生後にあらためて問診をしたところ、2 日前から全身倦怠感とともに強い口渇・多飲があった と判明した. 見逃してはいけない糖尿病の特殊型―劇症1 型糖尿病 花房俊昭 日内会誌97巻第9 号

#11.

過去の事例 事例2 開業医にも救急外来担当医にも2 型糖尿病と診断され、死に至った40 歳代前半の男性 【経過】金曜日の夜から口渇、多尿が出現。翌日(土曜日)の午前、近くのB開業医を受診した。そこで 血糖値が測定され、440mg/dLであった。B医師は,グリベンクラミド(2.5mg)1錠,塩酸ブホルミン (50mg)1 錠、ボグリボース(0.2mg)1 錠を処方し、患者を帰宅させた。 患者は帰宅後口渇がさらに悪化し、一晩中嘔吐し続けた。その翌日(日曜日)の午前5 時、患者は近く のC総合病院の救急外来を妻の介助を受けて受診した。そこで血糖値が再度測定され、640mg/dLであっ た。しかしC病院の救急外来担当医師は「近医の内服薬を服用しておくこと。明日午前に糖尿病専門医が 来るので、その診察を受けて入院すること」と指示し、患者を帰宅させた。帰宅後、患者は傾眠状態で 家族が話しかけると「うんうん」とのみ返事していた。翌日(月曜日)朝、病院へ行くため妻が起こそ うとしても起きなかったので人手を借りて車に乗せC病院へ行った。病院ではストレッチャーに乗せられ 診察室へ運ばれた。直ちに入院となり、病室で糖尿病性昏睡との説明を受け治療が開始されるも、午後7 時に永眠した。 見逃してはいけない糖尿病の特殊型―劇症1 型糖尿病 花房俊昭 日内会誌97巻第9 号

#12.

過去の事例 事例3 感冒および急性胃炎と判断され投薬・点滴がなされたが自宅で死亡し、剖検で初めて著明な 高血糖が判明した40 歳代後半男性 【経過】感冒症状および嘔吐・下痢のため近くのD開業医を受診し、投薬・点滴を受けたが症 状はまったく軽快しなかった。その後何カ所か受診した医療機関においても,投薬・点滴をさ れるのみで血液検査や尿検査はされなかった。 患者は発症から5 日目の朝、自宅で死亡している状態で家族に発見された。 警察は病死と判断したが、家族の強い希望によりE大学の法医学教室で解剖を受けた。 その結果、剖検担当医から「血糖値が600mg/dL以上で測定不能であった.。劇症1 型糖尿病で 死亡した可能性が考えられる」との説明を家族は受けた。 見逃してはいけない糖尿病の特殊型―劇症1 型糖尿病 花房俊昭 日内会誌97巻第9 号

劇症1型糖尿病の重要なメッセージ

#13.

Take-home Messages 劇症1型糖尿病では、急激にインスリン分泌が枯渇し、 発症から数日で死に至る場合がある 免疫チェックポイント阻害薬や妊娠に関連して発症す る場合がある 高血糖の患者に対しては、常に劇症1型糖尿病の可能性 を考えて対応するとよい

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