#4.
本日の主な資料 Umpierrez, Guillermo E., et al. "Hyperglycemic crises in adults with diabetes: a Consensus report." Diabetes care (2024) 参考文献記載のないスライドは上記文献より引用しております
#5.
高血糖緊急症の疫学 • 高血糖緊急症の入院内訳 DKA* - 38% HHS - 35% DKA&HHS - 27% *DKAの10%が正常血糖ケトアシドーシス(euglycemic DKA) • DKA、HHSの入院は近年増加傾向にある COVDI-19の流行 SGLT2阻害薬の流通
#6.
高血糖緊急症の疫学 • 高血糖緊急症の死亡率(本邦からの報告) DKA 3.3-5.7% HHS 13.2% DKA-HHS 5.3% J Diabetes Investig 2021;12:1359–1366 Diabetes Res Clin Pract 2021;171:108588 • 高血糖緊急症でなぜ死亡するのか?? ① 病態自体の悪化(重篤なアシドーシス, 誘因の不十分な管理) ② 治療の合併症 (溢水, 低K-不整脈, 脳浮腫, 低血糖) Diabetes Care 2009; 32:1335.
#7.
高血糖緊急症の病態
#8.
高血糖緊急症 診療のポイント • 救急外来で考えるべき・やるべき 4つのこと 1. 高血糖緊急症の診断 - DKAなのか、HHSなのか、両方なのか 2. どの病棟に入院させるのが適切か -重症度分類 3. なぜ高血糖緊急症になったのか - 誘因の検索 4. 初期治療
#9.
高血糖緊急症 診療のポイント 1. 高血糖緊急症の診断 - DKAなのか、HHSなのか、両方なのか 2. どの病棟に入院させるのが適切か -重症度分類 3. なぜ高血糖緊急症になったのか - 誘因の検索 4. 初期治療
#10.
DKAとHHS 臨床像の特徴 DKA HHS 時間〜日単位で進行 週単位で進行 意識保たれる 意識障害あり 嘔気, 嘔吐, 腹痛 クスマウル呼吸 共通:多飲、多尿、体重減少、dehydration 30%程度DKA〜HHS オーバーラップあり
#11.
DKAとHHSの診断 DKA 診断基準 血糖値* ケトーシス 代謝性アシドーシス Glucose≧ 200mg/dL or 糖尿病と診断済 β ヒドロキシ酪酸 ≧ 3.0mmol/L or 尿ケトン ≧ 2+ pH < 7.3 and/or HCO3 -濃度 < 18 mmol/L HHS 診断基準 高血糖 高浸透圧 ケトーシスなし アシドーシスなし Plasma Glucose ≧ 600mg/dL (全血ではない) 有効浸透圧 > 300, or 血漿浸透圧 > 320 (mOsm/kg) β ヒドロキシ酪酸 < 3.0mmol/L or 尿ケトン < 2+ pH ≧ 7.3 and HCO3- 濃度 ≧ 15 mmol/L
#12.
DKAの診断基準(本邦) 日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン 2024
#13.
HHSの診断基準(本邦) 日本糖尿病学会 糖尿病診療ガイドライン 2024
#14.
症例 28歳男性 当院搬送時 随時血糖 800mg/dL、HbA1c 12.2 %、 血漿浸透圧 実測なし pH 7.22、HCO3 14.2 mmol/L、AG 21.5 血中総ケトン5.2 mmol/L、尿ケトン 3+ DKA、HHSのオーバーラップ
#15.
コラム ケトン体の産生と測定方法 Diabetes Metab Res Rev 1999; 15: 412±426. 2024 腎臓学会 シンポジウム 北村先生スライド DKA診断において 感度 血中βヒドロキシ酪酸 = 尿ケトン 特異度 血中βヒドロキシ酪酸 > 尿ケトン Diabetes Care 2022;45:267–272
#16.
DKAとHHSを分ける意味はあるのか・・・ どちらも輸液、インスリン静注、電解質補正 診断つけても治療マネジメントに関わらない?? インスリン投与量が異なる(後述) マネジメントが変わるので、診断しましょう。 (DKA〜HHSのオーバーラップも多い)
#17.
高血糖緊急症 診療のポイント 1. 高血糖緊急症の診断 - DKAなのか、HHSなのか、両方なのか 2. どの病棟に入院させるのが適切か -重症度分類 3. なぜ高血糖緊急症になったのか - 誘因の検索 4. 初期治療
#18.
DKAの重症度分類 意識レベル Mild > 200mg/dL 3.0-6.0 mmol/L pH 7.25-7.3 HCO3- 15-18 Alert Moderate > 200 3.0-6.0 7.0-7.25 10-15 Alert/Drowsy Severe > 200 > 6.0 < 7.0 < 10 Stupor/Coma 推奨される病棟 ハイケア-HCU HCU HCU-ICU 血糖 β ヒドロキシ酪酸 アシドーシス 東京ベイ ver (案)
#19.
高血糖緊急症 診療のポイント 1. 高血糖緊急症の診断 - DKAなのか、HHSなのか、両方なのか 2. どの病棟に入院させるのが適切か -重症度分類 3. なぜ高血糖緊急症になったのか - 誘因の検索 4. 初期治療
#20.
高血糖緊急症の治療(急性期) 高血糖緊急症 電 解 質 補 充 イ ン ス リ ン 治療の4本柱 輸 液 原 疾 患 治 療
#21.
高血糖緊急症の誘因 DKA のうち1型糖尿病を初回指摘される割合は6-21% → その他は何かしらの誘因が存在している。 • 誘因 感染 14-58% 脳卒中、アルコール、膵炎、心筋梗塞、肺塞栓、外傷
#22.
高血糖緊急症の誘因 7I’s Infection :感染 Insulin :インスリン欠乏(中断、初発のDM) Ischemia :虚血(急性冠症候群、脳卒中など) Inflammation :炎症(膵炎など) Intoxication :中毒 Infant :胎児(妊娠を指す) Idiopathic :特発性 誘因の診断と治療が最重要課題
#23.
高血糖緊急症 診療のポイント 1. 高血糖緊急症の診断 - DKAなのか、HHSなのか、両方なのか 2. どの病棟に入院させるのが適切か -重症度分類 3. なぜ高血糖緊急症になったのか - 誘因の検索 4. 初期治療 → 入院後の治療も含めて解説 (救急外来〜HCU/ICUへ)
#24.
高血糖緊急症の治療(急性期) 高血糖緊急症 電 解 質 補 充 イ ン ス リ ン 治療の4本柱 輸 液 原 疾 患 治 療
#25.
輸液療法 まずは体液量の評価から
#26.
輸液療法の時間軸 2024 腎臓学会 シンポジウム 北村先生スライド 血行動態の 安定化 血清浸透圧の 安定化 体液量 0 1 6 ケトアシドーシスの 改善 12 24 (時間) Br J Anaesth. 2014 Nov;113(5):740-7. DKAは適切な管理で24時間以内に改善する Aust Crit Care. 2009 Nov;22(4):172-7.
#27.
輸液療法 〜最初の1時間〜 目的 • 血行動態の安定化 方法 • 生理食塩水を1L/hr or ボーラス投与 リンゲル液でもよい リンゲル>生食 – DKA早期回復、入院期間短縮の報告 JAMA Netw Open 2020;3:e2024596 明確な推奨はない Crit Care Explor 2022;4:e0613
#28.
輸液療法 〜1-6時間〜 目的と方法 ①血行動態の安定化 -細胞外液の投与を継続 輸液開始 2-4hr 500-1000 mL/hr ②浸透圧変化の安定化 -補正Na値を確認(補正Na:実測Na+1.6(血糖値-100)/100 ) 高値:1/2 生理食塩水への切り替え 低値:細胞外液の継続
#29.
輸液療法 〜6-12時間〜 目的と方法 • 血行動態の安定化 -体液過剰になっていないか評価 • 浸透圧変化の安定化 -補正Na値を確認、輸液の組成を検討 • Anion Gapの改善 -AG > 12 → ブドウ糖含有液を併用、インスリン静注を継続 *ただし、DKA改善をAGのみで判断する訳ではない
#30.
輸液療法 〜12-24時間〜 目的と方法 • 血行動態の安定化 -体液過剰になっていないか評価 輸液は漫然と継続せずに中止を検討 • 24時間での血漿浸透圧、Na値の変化に注意 (特にHHSのマネージメントにおいて) -Na値 24時間で10mmol/L未満の変化 -血漿浸透圧 3-8mOsm/kg/hr未満の変化 Diabet Med 2023;40:e15005
#31.
高血糖緊急症の治療(急性期) 高血糖緊急症 電 解 質 補 充 イ ン ス リ ン 治療の4本柱 輸 液 原 疾 患 治 療
#32.
インスリン療法 まずは重症度分類から
#33.
インスリン療法 Mild DKA • HCUで管理の場合 速効型インスリン 血糖 250mg/dL未満 0.1 単位/kg/hr 持続静注 0.05単位/kg/hrへ減量 • やむなく一般床ハイケアで管理の場合 超速攻型インスリン 血糖 250mg/dL未満 0.1単位/kg 皮下注 1時間毎 0.2単位/kg 皮下注 2時間毎 0.1単位/kg 皮下注 2時間毎 Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jan 21;2016(1): CD011281.
#34.
インスリン療法 Moderate ~ severe DKA • HCU以上で管理 速効型インスリン 0.1 単位/kg/hr 持続静注 血糖 250mg/dL未満 0.05単位/kg/hrへ減量 + 5-10%の糖入り補液 血糖 200mg/dL 前後での血糖管理を目標 ケトアシドーシスが改善するまで持続静注を継続
#35.
ケトアシドーシス改善の定義 Anion Gapが閉じればよいか?? The anion gap should not be used as a criterion, as it may be misleading because of the presence of hyperchloremic metabolic acidosis caused by large volumes of 0.9% sodium chloride solution. 血漿中 ケトン < 0.6 mmol/ pH > 7.3 or HCO3- >18 mmol/L
#36.
改善の定義を満たせばもう安心・・・? 患者さんを診察しましょう(私見) ジェネラルはどうか 消化器症状は改善したか 食事は食べれるか?(経口カロリー確保は可能か) 改善していなければ再燃リスクあり
#37.
インスリン療法 HHS • HCU以上で管理 速攻型インスリン 血糖 250mg/dL未満 0.05 単位/kg/hr 持続静注 さらに減量 *明らかに高ケトン血症を合併している場合 例)βヒドロキシ酪酸> 3.0mmol/L、尿ケトン >2+ pH < 7.3、HCO3- < 18 → 速攻型インスリン 0.1 単位/kg/hr 持続静注
#38.
HHS 改善の定義 明確なものはない。参考として・・・ 血漿浸透圧 < 300 mOsm/kg 意識レベルの改善 尿量 > 0.5 mL/kg/hr 高血糖の改善(血糖 < 250 mg/dL)
#39.
インスリン治療で意識すること(私見) ➢ インスリン感受性 やせ 肥満/炎症 ➢ インスリンの排泄遅延 腎不全 ➢ 感受性よさそう。低血糖注意。 0.05U/kg/hr開始検討、インスリン減量、糖入り補液 感受性悪そう。0.1単位/kg/hrでも大丈夫 排泄悪い、インスリン効果の遷延注意 糖新生の能力 肝硬変 アルコール サルコペニア (腎不全) 低血糖注意。インスリン減量、糖入り補液
#40.
高血糖緊急症の治療(急性期) 高血糖緊急症 電 解 質 補 充 イ ン ス リ ン 治療の4本柱 輸 液 原 疾 患 治 療
#41.
電解質補充 まずは腎機能の確認
#42.
高血糖緊急症の電解質補充 • カリウム(インスリン開始時) K 3.5 mmol/L 未満 → まず10-20 mEq/hr 補正 (インスリンiv 中は 5 mmol/L未満での補充も検討) Diabet Med 2023;40:e15005 K 3.5 mmol/L ↑ 2時間毎にフォロー → インスリン開始
#43.
高血糖緊急症の電解質補充 • リン リンも細胞内シフトで低下する。 ルーティン補充は不要 1.0 mmol/L 未満は補充 - 筋力低下, 呼吸筋麻痺, 心機能低下etc リン 20-30 mmoL 補充 (リン酸Na 1Vial 10mmoL)
#44.
コラム メイロンの適応って・・・ • 基本的には投与推奨なし • 投与によるデメリット -高Na血症 -低K血症 -CO2貯留 → 呼吸代償の破綻 -組織への酸素供給↓、乳酸産生↑ • それでも投与が考慮される場合- pH< 7.0など
#45.
急性期治療中の合併症 • 低血糖 • 低カリウム血症 • AG正常代謝性アシドーシス -生理食塩水によるCl負荷 -ケトンを体外へ排泄する過程でHCO3-喪失 → 時間経過で改善するので、慌てて重曹投与など不要!! • 脳浮腫 -大人は稀、0.1%未満(小児は注意)、ただし致死的合併症 -稀だがHHSでは特に注意
#46.
高血糖緊急症の治療(ユニット → 一般病棟へ) インスリン持続静注 → インスリン皮下注へ 何を重視してインスリン皮下注へ切り替えるか Anion Gapが閉じること? ケトンの消失? アシドーシスの改善? 血糖の改善?
#47.
切り替えの際に重視していること 患者さんを診察しましょう(私見) ジェネラルはどうか 消化器症状は改善したか 食事は食べれるか?(経口カロリー確保は可能か)
#48.
症例 28歳男性 インスリン切り替え 174cm、82.9kg、BMI 27.3 食事は全量摂取できている。 入院前のインスリン使用歴なし HCU退室6時間前のインスリン静注量 3.8 – 4.8 U/hr → 平均 4.333 U/hr → 104 U/day → 皮下注は80%、80単位/日 → 半量 持効型インスリン → トレシーバ®︎ 40単位開始 !? 参考)総合内科病棟マニュアル (青本)
#49.
静注〜皮下注へ切り替え時の着眼点 低血糖リスク (腎不全、肝硬変、アルコール、フレイル、高齢) (インスリン感受性、インスリン排泄、糖新生) 栄養摂取状況の確認 ブドウ糖投与下でのインスリン静注であったか
#50.
インスリンブリッジ インスリン皮下注が効果を発揮するまで 1-2時間 その間はインスリン持続静注を併用 1-2(時間)
#51.
インスリン皮下注射の単位数決め方 1. 体重換算 2. 入院前のインスリン使用量 3. 静注インスリン量から換算
#52.
体重換算(個人的にはこちらを使用してます) •1日総インスリン量(持効型+超速効型の総量) 0.5-0.6 単位/kg 低血糖リスクがある場合には0.3 単位/kg *欧米でのインスリン量であることを意識(私見) - やせ型の日本人高齢者ではさらに減量を検討 - 若年、肥満、感染(or 炎症)あり 0.5単位/kg
#53.
静注インスリンからの換算 退室6時間前のインスリンから換算 Limitation 糖毒性が存在する時点での使用量 ブドウ糖含有の輸液併用では換算困難 食事摂取も既に開始になっていた場合には換算困難 Limitation要素を鑑みて実施すべき (過量になる可能性)
#54.
持効型インスリン量の決め方 総インスリン量の40-60%を持効型 と記載してありますが・・・ 持効型:超速効型 = 1:2 程度で投与することも多い
#55.
症例のインスリン切り替え 〜振り返り〜 体重換算(82.9kg)→ 総インスリン量 40-50単位 (50%:持効型 20-25単位) インスリン静注換算 → 総インスリン量 80単位 (50%:持効型 40単位) 考慮すべき患者背景(本症例の場合) 肥満、炎症(咽頭痛)→ インスリン抵抗性↑ 食事は全量摂取、インスリン持続静注中にブドウ糖含有補液なし → 結果的に静注換算で低血糖は生じなかったが、各背景要素まで検討していなかった。 (仮に糖入り補液が同時に繋がっていた時のCVII静注換算だとすると、皮下注が過量に なっていた可能性がある) 患者背景も考慮した皮下注の単位数決定が必要
#56.
Take home message • DKAとHHSのオーバーラップは多い • 重症度を分類して管理病棟を決めましょう (基本的にはHCU以上ですが、例外もあるので相談) • 輸液とインスリン治療は患者背景で個別化が必要 • インスリン静注 → 皮下注への切り替えも個別化を