総合病院
誰でもできる!カーボカウント<実践編>
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最終更新:2023年2月6日
誰でもできる!カーボカウント<導入編>
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最終更新:2023年2月6日
症状なくても気をつけろ!高Ca血症のマネジメント
#PHPT #原発性副甲状腺機能亢進症 #ビタミンD #MEN #多発性内分泌腺膿症
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漢方薬初めの一歩~なんとなく使い勝手のわからないそんなあなたへ~
#甘草 #芍薬甘草湯 #葛根湯 #補中益気湯 #麻黄 #猪苓湯 #不定愁訴
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簡単!はじめてのインスリン導入(外来編)
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最終更新:2022年8月17日
【5分で学べる】ERでの低血糖治療のまとめ【ER頻用薬シリーズ】
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妊娠糖尿病 〜妊娠中・出産後の管理の全て〜 専攻医・専⾨医向け izumip@糖尿病内分泌内科
本スライドの対象者 Ø 糖尿病に興味がある初期研修医、専攻医の先⽣ Ø 妊娠糖尿病の診療にいまいち⾃信が持てない 糖尿病内科・産婦⼈科の先⽣ 妊娠糖尿病の診療経験豊富な糖尿病専⾨医が エビデンスを交えて分かりやすくお伝えします︕
⽬次 1. 妊娠糖尿病はなぜ問題︖ • 診断基準 … スライド 6 • 診断にあたっての注意点 … スライド 5〜7 2. 妊娠糖尿病の管理の実際 • ⾷事療法 … スライド 8〜10 • 運動療法 … スライド 11 • インスリン治療 … スライド 12〜14 • ⾎糖管理状況の評価 … スライド 15〜18 • 体重管理 … スライド19〜20 3. 妊娠糖尿病のその後 • 産後のフォローの流れ … スライド 21〜22
4.
妊娠糖尿病はなぜ問題︖ 1. 妊娠糖尿病はなぜ問題︖ Ø 健常妊婦と⽐較して、巨⼤児、在胎出⽣過体重児、在胎不当過⼩児、 妊娠⾼⾎圧症候群、⼦宮内胎児死亡、新⽣児低⾎糖、⻩疸などの 周産期合併症の頻度が⾼い Ø 巨⼤児や在胎出⽣過体重児、在胎不当過⼩児は、児の将来の肥満や 2 型糖尿病のリスク因⼦ Ø 適切な⾎糖管理を⾏うことで、これらの合併症のリスクを 減らすことができる
5.
妊娠糖尿病とは 1. 妊娠糖尿病はなぜ問題︖ 定義 Ø 妊娠中にはじめて発⾒または発症した糖尿病に⾄っていない耐糖能異常 (妊娠中の明らかな糖尿病や糖尿病合併妊娠は含めない) 空腹時⾎糖 126mg/dl 以上、または HbA1c 6.5% 以上 を満たすもの ・妊娠前に発症し⾒過ごされていた糖尿病と妊娠中に発症した耐糖能異常を含む ・妊娠中の明らかな糖尿病は妊娠糖尿病に⽐べて周産期合併症の頻度が⾼く1,2)、 注意が必要 1) T.Sugiyama. Diabetes Res Clin Pract 2014 2) L Mane. Gynecol Endocrinol 2019
6.
診断基準 1. 妊娠糖尿病はなぜ問題︖ 診断 Ø 75g OGTT で以下のいずれか 1 つを満たす ① 空腹時 92 mg/dl 以上 ② 1 時間値 180 mg/dl 以上 ③ 2 時間値 153 mg/dl 以上 注1 OGTT の結果が 200 mg/dl を超える場合、妊娠中の明らかな糖尿病の基準を 満たさないか確認する 注2 OGTT の基準値の根拠である HAPO study は、妊娠 24〜32 週に OGTT を 実施しており、妊娠初期の OGTT による妊娠糖尿病の診断の妥当性について は議論がある
7.
1. 妊娠糖尿病はなぜ問題︖ 診断基準 診断 Ø 75g OGTT で以下のいずれか 1 つを満たす ① 空腹時 92 mg/dl 以上 ② 1 時間値 180 mg/dl 以上 ③ 2 時間値 153 mg/dl 以上 注3 つわり中の随時⾎糖は⾼くなる1,2) 切迫流産・早産などでリトドリン投与中の場合、薬の副作⽤で⾎糖が上昇する つわり中、リトドリン投与中のOGTTの結果の解釈には注意が必要 → 初期(特につわりの時)に随時⾎糖⾼値であった場合、OGTT をすべきかは議論の余地が あるが、少なくとも HbA1c は測定 し、妊娠中の明らかな糖尿病でないかの確認 は必要 1) R.Ohara. Int J Gynaecol Obstet. 2016 2) Bayraktar B. Prague Med Rep. 2021
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2. 妊娠糖尿病の管理の実際 ⾷事療法(治療の⼤前提) ① 摂取エネルギーの⽬安(健常妊婦と同じ) 理想体重(BMI 22)× 30 kcal + 付加量* *付加量 … 妊娠前 BMI ≧ 25 なら付加なし 妊娠前 BMI < 25 なら表の通り 厚⽣労働省 「⽇本⼈の⾷事摂取基準」(2015) 産科診療ガイドライン(2014) 初期 中期 後期 50 kcal 250 kcal 450 kcal 200 kcal Ø 診断時点で体重が増えすぎている場合は付加量を少なくする、など 臨機応変に対応する
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⾷事療法(治療の⼤前提) 2. 妊娠糖尿病の管理の実際 ② 分割⾷ Ø ⾷後の⾼⾎糖を防ぐには炭⽔化物の摂取量を減らせばよい Ø しかし、過度な制限はケトーシスを引き起こし、児への悪影響 (2 歳時点での IQ の低下1))も報告されているため、勧められない 1) Rizzo T. NEJM. 1991 そこで、分割⾷︕
10.
⾷事療法(治療の⼤前提) 2. 妊娠糖尿病の管理の実際 ② 分割⾷ Ø 1 ⽇ 5〜6 回に分けて⾷事を摂る Ø 分割⾷は ⾷後⾎糖上昇の抑制に有効 Ø 各⾷事の主⾷を 1 単位(80 kcal)減らし、2〜3 時間後に減らした分の 1 単位(付加⾷)を摂取する、というのが簡単。 ⽬標⾎糖 ⽬標⾎糖 ⾎糖 1 度にパンを 2 つ⾷べると ⽬標⾎糖を超えてしまう ⾎糖 分割して⾷べることで、必要な量を摂りつつ、 ⾎糖値が⽬標内に抑えられる︕
11.
2. 妊娠糖尿病の管理の実際 運動療法も有⽤ Ø 糖尿病妊婦が運動療法を実施することにより、 空腹時⾎糖や⾷後⾎糖の改善が報告されている1) 1) Brown J. Cochran Database Syst Rev 2017 Ø 「運動しながら負担なく会話できる程度」の運動 → 強度の運動は⼦宮⾎流の低下を来す可能性があり、勧められない Ø ウォーキング、ヨガ、⽔泳、エアロビクスなどの有酸素運動が望ましい → 腹部が圧迫されたり、転倒の危険があるものや、相⼿と接触したりする ものは避ける 前置胎盤、切迫早産、頸管無⼒症、妊娠⾼⾎圧症候群などの 産科的な問題がある場合は実施しないこと︕
12.
インスリン治療 2. 妊娠糖尿病の管理の実際 いつ始める︖ Ø ⾷事療法、運動療法で ⽬標⾎糖が達成できなかった場合 は インスリン治療を開始する Ø 何パーセント⽬標⾎糖を超えたらインスリンを開始すべき、などの 明確な指標はない ・個⼈的には、⾷後⾎糖が半分以上⽬標値を上回っている場合、⾷事療法を強化するように指導、 それでもだめなら超速効型インスリン導⼊としています ・空腹時⾼⾎糖については⾷事療法や運動療法で改善しづらいので、早めに基礎インスリンを 導⼊しています
13.
インスリン治療 2. 妊娠糖尿病の管理の実際 インスリン製剤の選択 Ø 以前は FDA カテゴリー B に該当する以下から選択していたが、 2014 年 12 ⽉に カテゴリー分類が廃⽌ → 医師がそれぞれのインスリン製剤の 利点・⽋点を評価 し、 使⽤するインスリンを選択する p ヒトインスリン(ヒューマリンR ®など) p インスリンリスプロ(ヒューマログ®) p インスリンアスパルト(ノボラピッド®) p インスリンデテミル(レベミル®) ・個⼈的には、ヒューマログ、ノボラピッド、レベミルを使⽤することが多いです ・フィアスプも添付⽂書上 OK で、⾷後⾎糖を速やかに低下させられるので良く使います
14.
インスリン治療 2. 妊娠糖尿病の管理の実際 実際の管理のポイント Ø インスリンに抵抗のある妊婦さんも多い 「胎盤はほぼ通過しないのでインスリンを打って⾚ちゃんが低⾎糖になることはない」 「産後は中⽌できる」 など、説明しておく Ø 超速効型インスリンを増量しても⾷後⾎糖が下がらない場合 → ⾷直前でなく、⾷事 10〜15 分前に⽪下注することで、 ⾷後⾎糖が抑えられることも多い Ø 分割⾷をしているとき、付加⾷に対してはインスリンは不要 (付加⾷は量が少ないので⾃⼰分泌で代償できるはず) Ø 分娩後は直ちにインスリンを中⽌する
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2. 妊娠糖尿病の管理の実際 ⾎糖管理状況の評価 ⽬標 「可能な限り健常妊婦の⽇内変動に近づける」 ① SMBG ü 空腹時 95 未満、⾷後 1 時間 140 未満、⾷後 2 時間 120 未満が⽬標 ü ただし OGTT で 1 点のみ陽性かつ妊娠前 BMI 25 未満の症例は保険適応なし ② CGM ü リブレは妊娠糖尿病でも使⽤可能 ü ⾎糖変動が把握できるが、SMBG 実測値と誤差が⽣じることが多い ü インスリン治療中の場合は、リブレではなく実測値を評価してインスリン量の 調整をすべきである ü Time in Range の⽬標値は定まっていない。 ⽬標⾎糖内(63〜140 mg/dl)にある時間
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2. 妊娠糖尿病の管理の実際 ⾎糖管理状況の評価 ⽬標 「可能な限り健常妊婦の⽇内変動に近づける」 ③ HbA1c ü 糖尿病学会の定める⽬標は 6.0〜6.5% だが、健常妊婦は 4.4〜5.7%1) と低い ü ⾎糖変動を反映せず、低⾎糖による偽低値や妊娠後期の 偽⾼値 がある ④ グリコアルブミン 鉄⽋乏による2) ü 健常妊婦は 11.5〜15.7%1) ü 鉄代謝の影響は受けないが、肥満者で低値となるので注意 1) Y.Hiramatsu. Endocr J. 2012 2) K.Hashimoto. Diabetes Care. 2008 妊娠中は、HbA1c、グリコアルブミンを同⽉に算定可能
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⾎糖管理状況の評価 2. 妊娠糖尿病の管理の実際 実際の管理例 SMBG の保険適応がある症例 ※ OGTT 2 点以上陽性 or 1 点陽性 + 妊娠前 BMI 25 以上 p SMBG(±リブレ)で⽇常の⾎糖変動を評価しつつ p ⽉に 1 回 HbA1c、グリコアルブミンの測定 SMBG の保険適応がない症例 p ⽉に 1 回 HbA1c、グリコアルブミンを測定 → 数値が上昇傾向、もしくは⾎糖コントロール悪化を⽰唆する状況がある 場合は⾃費で SMBG 開始を検討 推定児体重が基準値をはるかに超えて⼤きい、など
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⾎糖管理状況の評価 2. 妊娠糖尿病の管理の実際 実際の管理例( SMBG を実施する場合) 例1 p 空腹時 + 毎⾷後 2 時間の⾎糖測定を 2 週間実施 p 基準値を超える頻度が⾼いポイントは連⽇測定、超えないポイントは 週に 1 回測定 例2 p 曜⽇によって測定時間帯を変更 → 休⽇は⼣⾷の量が多くなるから⼣⾷後を測定、平⽇は昼⾷の炭⽔化物の 摂取量が多くなるから昼⾷後を測定 SMBG のタイミングに決まりはなく、個々の状況に応じて実施
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2. 妊娠糖尿病の管理の実際 体重管理(ちょっと余談) Ø 2021 年、妊娠中の体重増加基準が変更になった → ⽇本は低出⽣体重児が欧⽶の約 1.5 倍と多く、体重増加量を制限しすぎて いることが要因である可能性があり、⽬標体重増加量を全体に引き上げた 妊娠前の体格 健やか親⼦ 21 (2006) ⽇本産婦⼈科学会 (2021) やせ(BMI < 18.5) 9〜12 kg 12〜15 kg 標準(18.5 ≦ BMI < 25) 7〜12 kg 10〜13 kg 1 度肥満(25 ≦ BMI < 30) 個別対応 7〜10 kg 2 度肥満(BMI ≧ 30) 個別対応 個別対応 ※個別対応は上限 5 kg を⽬安
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体重管理(ちょっと余談) 2. 妊娠糖尿病の管理の実際 Ø 糖尿病診療ガイドライン 2019 には、妊娠糖尿病は「健やか親⼦ 21」の 基準を⽬安に体重増加指導することとなっているが、新しい基準を 適応していいかは結論が出ていない Ø 体重増加量が多すぎると 巨⼤児 や 在胎出⽣過体重児 のリスクが⾼くなる (妊娠糖尿病も巨⼤児や在胎出⽣過体重児のリスク因⼦である) p 妊娠糖尿病を新基準に従って管理すると、巨⼤児や在胎出⽣過体重児のリスクが さらに増す可能性があり、新基準を適応して良いかどうかについては慎重な意⾒が多い p ただし、過度な体重制限は低出⽣体重児のリスクを⾼める ため、増やさなければ いいという訳ではない 現状、妊娠中の体重管理についてコンセンサスは得られていません 少なくとも健常⼈よりも増やしていいとはならないと思われます
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3. 妊娠糖尿病のその後 産後のフォロー 無事出産、めでたしめでたし…ではない︕ Ø 妊娠糖尿病は周産期合併症のリスクが⾼いだけでなく、 将来の 2 型糖尿病のリスク因⼦ Ø ⽇本⼈を対象に⾏った研究1)によると、分娩後 5 年で 20% が糖尿病を発症 妊娠前・分娩後の肥満が最⼤のリスク因⼦ 1) 和栗雅⼦.平成26年度厚⽣労働科学研究費補助⾦分担研究報告書. p 産後 6〜12 週に OGTT 再検︕ (正常であっても、定期的にフォローが必要) p 産後すぐに OGTT のためだけに来院は難しい場合も多く、 産後 1 か⽉健診に合わせて実施するのも⼀⼿
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産後のフォローの流れ 3. 妊娠糖尿病のその後 出産後の定期フォローについて Ø ⾷事⽇本⼈⼥性は約半数が⾮正規雇⽤や無職であり、健康診断を受ける 機会が少ない。また、健診が義務付けられている正規雇⽤でも、 40 歳までは採⾎検査は必須ではない → 気づかない間に糖尿病を発症し、合併症が進⾏してしまう恐れがある p 可能なら⾃施設でフォロー するが、難しければ他の医療機関へ紹介する p 特に 次⼦希望の場合 は綿密なフォローが望ましい (GDM 再発率が⾼い・次⼦妊娠までに DM 発症することがある) p 40 歳以上なら 特定健診(HbA1c と⾎糖検査あり)を受けるように指⽰する
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3. 妊娠糖尿病のその後 産後のフォローの流れ 産後の⾷事療法・運動療法の有⽤性 Ø ⾷事療法や運動療法によって 2 型糖尿病発症リスクを低下させる ことができる1,2) 1) Ratner RE. J Clin Metab. 2008 2) Yang J. BMJ. 2022 Ø 特に妊娠前肥満、分娩後肥満の症例に有⽤とされる 産後フォローの重要性をまず医療者側が認識し、 患者に啓蒙する必要がある
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Take Home Message 1. 妊娠糖尿病はなぜ問題︖ Ø 様々な周産期合併症のリスクが上がります Ø それだけでなく、⺟体は将来の 2 型糖尿病発症リスクが⾼いです Ø 巨⼤児や低出⽣体重児で産まれた場合、児の将来の 2 型糖尿病や肥満の 発症リスクも⾼くなります 2. 妊娠糖尿病の管理の実際 Ø ⾷事療法、インスリン治療の実際、⾎糖値の評価指標について Ø 分割⾷は結構有効です 3. 妊娠糖尿病のその後 Ø 出産したら終わり、ではない︕ 産後のフォローが重要です