#4.
残余リスクの正体: TG・レムナント・ApoB・sdLDLの関係 LDL-Cを下げても動脈硬化が進む理由は、「血中にTGリッチなリポ蛋白が残る」ため TG高値の背景では… ① VLDL・レムナント(中間体リポ蛋白)が増える ② small dense LDL(sdLDL)が生成される ③ ApoBを含むアテローム原性粒子が過剰に残る 結果 酸化されやすく、血管内膜へ侵入しやすい粒子が増加 レムナントやsdLDLは血管内膜下に侵入しやすく、また酸化変性を受けやすい 炎症とプラーク形成を促進
#5.
TG代謝のメカニズム 1. 脂肪酸の肝臓への流入: ◦ 内臓脂肪組織からの脂肪酸の放出が増加する ◦ この増加した脂肪酸は門脈を通して肝臓へ流入する 2. TGの合成: ◦ 肝臓へ流入した脂肪酸を利用して、TGの合成が促進される 3. VLDLの生成と分泌: ◦ TG合成が促進される結果、肝臓からのVLDLの合成・分泌が促進される ◦ VLDLは、アポ蛋白B (apoB) を核として形成され、内部にTGやコレステロール などの脂質を含有した粒子として血中へ放出される 動脈硬化 ★ TG合成およびVLDL分泌は、インスリン作用の低下(インスリン抵抗性)過栄養、 肥満など、二次性脂質異常症の背景因子によって促進される
#6.
TG高値を疑うサイン 飲酒習慣(量・頻度・休肝日の有無) 食事パターン(夜食・高糖質・脂質摂取過多) 体重増加・内臓脂肪の蓄積 糖尿病・甲状腺機能・腎機能低下・薬剤使用歴 中心性肥満、皮下黄色腫 急性膵炎の既往
#7.
二次性高TG血症の鑑別 よくある原因 稀な原因 糖尿病・メタボリック症候群 Cushing症候群 アルコール多飲 末端肥大症 甲状腺機能低下症 LPL欠損症 ネフローゼ症候群 家族性高カイロミクロン血症 腎不全、慢性腎炎 ポルフィリア SLE タンジール病 妊娠 急性肝炎 薬剤:β遮断薬、利尿薬、ステロイ ド、エストロゲン、向精神薬、抗 HIV薬など
#8.
糖尿病・メタボとTGの関係 糖尿病・メタボは高LDL-C血症のほか、TGリッチリポ蛋白質の増加など、全ての リポ蛋白代謝の過程に変化をきたす 糖尿病ではインスリン作用低下により脂肪酸放出↑ → 肝TG合成↑ LPL(リポ蛋白リパーゼ)活性低下でVLDL分解↓ → TG上昇 脂質プロファイルの特徴は VLDL(超低比重リポ蛋白)、カイロミクロン、レムナントなどのTGリッチリポ 蛋白の増加 LDLの小型化(sdLDLの増加) HDL-Cの低下 血糖管理・肥満の改善でTGも低下する
#9.
非空腹時TGと検査のポイント 非空腹時TG:食後にTG値が異常に上昇し、そのピークが遅延・遷延する食後高TG 血症は動脈硬化性疾患のリスク 空腹時TGが基準値未満でも随時では高TG血症となる場合があるため、採血のタ イミングを変えて、食後高TG血症がないか確認する 併せて確認:non–HDL-C、ApoB、TG/HDL比 non-HDL-Cはレムナントの増減を反映するため、高TG血症との併存で心血管 リスクが上昇する 家族性Ⅲ型高脂血症のスクリーニング指標として、TC/アポB>2.4かつTG/ア ポB<8.85、またはnon-HDL-C/アポB>3などが提唱されており、non-HDLC/アポBが感度・特異度ともに優れている
#10.
生活習慣介入:最も効果があるのは? 減量: 体重あるいはウエスト周囲長の減少 アルコールの過剰摂取を控える(目安として 25 g/日以下) 糖質制限(炭水化物エネルギー比率の調整): 炭水化物エネルギー比率をやや低 めにし、糖質を含む菓子類、糖含有飲料、糖質含有量の多い果物の摂取を減らす 有酸素運動: 毎日30分以上中等度以上の有酸素運動を行う 家族性複合型高脂血症(FCHL)や家族性Ⅲ型高脂血症など、TG高値が関わる原 発性脂質異常症においても、食事療法・運動療法による生活習慣の改善や肥満是 正が最も重要であり、またこれらの疾患は生活習慣の改善に比較的よく反応する
#11.
薬物治療(国内の考え方) LDL-Cの管理が最優先: まずLDL-Cの管理目標値達成を目指す 糖尿病患者ではLDL-Cの管理目標が低いことに注意! 薬剤分類 主な効果(高TG血症関連) 特徴と適応 フィブラート系薬 TGを大きく低下(−30〜40%) 、HDL-Cを増加(+ 35〜45%) 、レムナントを減少 スタチンとの併用は横紋筋融解症のリスクがあるため慎重投 与(腎機能障害例では禁忌または慎重投与) 選択的PPARαモジュレーター(SPPARMα) TGを大きく低下(↓↓↓) 、HDL-Cを増加(↑↑) 、 レムナントリポ蛋白を減少させる フィブラート系薬と類似の作用を持つが、スタチンとの薬物 間相互作用が少ない。従来のフィブラートで見られる腎機能 障害(クレアチニン上昇など)などの副作用が少ない n-3系多価不飽和脂肪酸 TG↓ VLDL合成抑制による。スタチンとEPAの併用療法は動脈硬 化性疾患発症抑制に有効(JELIS研究) ニコチン酸誘導体 TGを低下(−20〜30%) 、HDL-Cを上昇、レムナント Lp(a)低下作用もある。副作用として顔面潮紅、頭痛、肝障 リポ蛋白を減少 害、インスリン抵抗性の悪化の可能性 スタチン LDL-C低下が主作用だが、TGも改善させる。LDL-C治療達成 TGを低下(10〜20%低下) 、弱いながらレムナント低 後、TGやnon-HDL-Cを二次目標としてスタチン増量を検討 下作用がある する場合も
#12.
海外のエビデンスと日本の違い REDUCE-IT試験 :EPA 4g/日 → CVイベント25%減 TG値の低下以外の代謝作用(抗炎症作用、抗酸化作用、抗血栓作用、プラー ク安定化作用など)かもしれない PROMINENT試験 :ペマフィブラート→TGは26〜28%低下したが、主要評価項 目は改善せず EPA以外のn-3脂肪酸製剤では、CVイベントの抑制効果はみられていない 日本では用量・対象の違いに注意しつつ、EPAを中心に応用 Bhatt DL et.al. REDUCE-IT Investigators. Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia. N Engl J Med. 2019 Jan 3;380(1):11-22. Das Pradhan A et.al. Triglyceride Lowering with Pemafibrate to Reduce Cardiovascular Risk. N Engl J Med. 2022 Nov 24;387(21):1923-1934.
#13.
専門医紹介のタイミング 1.遺伝性の高中性脂肪血症が疑われる場合 家族性複合型高脂血症(FCHL):約100人に1例程度と極めて高い Ⅱb型を基準とするが、Ⅱa型、Ⅳ型の表現型もとり得る アポB/LDL-C比>1 または small-dense LDLが存在することを証明 アキレス腱肥厚を含め黄色腫は認めない 若くして心筋梗塞を発症しやすい 家族性Ⅲ型高脂血症: 1万人に2~3人 non-HDL-C/アポB比>3 2. 重度の高TG血症および急性膵炎の既往がある場合 著明な高TG血症による急性膵炎のリスク: TGが500 mg/dL以上の場合には、急性膵炎の発症リスクが高い 原発性高カイロミクロン血症(LPL欠損症など)は、著明な高TG血症を呈し、しばしば 急性膵炎の原因となるため、厳重な脂肪制限(1日 15〜20 g以下)が必要
#14.
Take Home Message TG高値は心血管イベントのリスク因子(空腹時150 mg/dL以上および随時175 mg/dL以上) 二次性および原発性脂質異常症の原因特定 TG高値の背景には、二次性脂質異常症が高率に存在する 家族性複合型高脂血症、家族性Ⅲ型高脂血症など、TG高値を伴い動脈硬化性疾患のリ スクが高い原発性脂質異常症を見落とさず、早期に診断・治療 TGが500 mg/dL以上の場合、急性膵炎の発症リスクが高い 生活習慣の改善と継続の徹底 生活習慣の改善(食事療法・運動療法)は、TG高値治療の基盤 適正体重・炭水化物エネルギー比率・アルコール減量・有酸素運動 LDL-C管理が最優先: スタチン治療でLDL-C目標達成後もTG高値が残る場合は、フィブラー ト系薬、SPPARMα、EPAの併用