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市立長浜病院
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は免疫関連有害事象(irAE)が問題になります。症状からirAE病名を推定する「irAE逆引きマニュアル」は、時間外に受診する患者さんに対応する研修医・非専門医の先生方の参考になると確信しています。
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はじめに 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は患者さんの免疫力をあげてがん細胞を攻撃する、いままでの抗がん剤とは全く作用機序の異なる薬です。 さまざまながんに適応が追加されています。 一方、免疫力が上がりすぎることで、体のさまざまなところに免疫関連の副作用(irAE)が起こります。 免疫関連の副作用は早期発見が重要です。 そこで、患者さん・家族の人が症状から病名を推定するマニュアルを作成しました。 (元々は医療従事者用に作成したもの(irAE逆引きマニュアル)を、患者さん用に用語をわかりやすくしました) 内容の改変をしなければ、個人の使用は自由です。転載の際には出典を明示してください。
ICIの副作用として予測される症状 頭痛(下垂体機能障害、脳炎・髄膜炎、心筋炎、点滴時の過敏症反応) 意識障害(1型糖尿病、脳炎・髄膜炎) 口の中や喉が渇きやすい・多飲(1型糖尿病、下垂体機能障害) 歯ぐきや口内の出血(免疫性血小板減少性紫斑病) くしゃみ(点滴時の過敏症反応) 声のかすれ(甲状腺機能障害) くちびるのただれ(重度の皮膚障害) 咳(間質性肺疾患、心筋炎) 呼吸困難(間質性肺疾患、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、点滴時の過敏症反応、心筋炎、溶血性貧血、赤芽球癆など) 胸の痛み(心筋炎) 吐き気やおう吐(大腸炎、肝機能障害、肝炎、副腎機能障害、点滴時の過敏症反応、膵炎、脳炎・髄膜炎、1型糖尿病、心筋炎) 食欲低下(大腸炎、肝機能障害、肝炎、副腎機能障害) 手足の筋力低下(ギラン・バレー症候群、重症筋無力症) 手指のふるえ(甲状腺機能障害など) 眼の動きが悪い(ギラン・バレー症候群、重症筋無力症) まぶたのむくみ(甲状腺機能障害) 見え方の異常(下垂体機能障害、ぶどう膜炎) まぶたが重い・顔の筋肉が動きにくくなる(重症筋無力症) 全 身 発熱(間質性肺疾患、腎機能障害、1型糖尿病、重度の皮膚障害、心筋炎など) 疲れやすい・だるい(肝機能障害、肝炎、硬化性胆管炎、甲状腺機能障害、副腎機能障害、溶血性貧血、赤芽球癆など) 黄疸(肝機能障害、肝炎、硬化性胆管炎、膵炎、溶血性貧血) 発疹などの皮膚症状(点滴時の過敏症反応、重度の皮膚障害、腎機能障害、免疫性血小板減少性紫斑病、硬化性胆管炎など) 体重の減少(副腎機能障害、1型糖尿病など) 体重の増加(甲状腺機能障害) むくみ(腎機能障害) しびれ(ギラン・バレー症候群) けいれん(脳炎・髄膜炎) 月経がない・乳汁分泌(下垂体機能障害) 下痢(大腸炎、副腎機能障害など) ネバネバした便・血便(大腸炎) 便秘(甲状腺機能障害、副腎機能障害) 腹痛(大腸炎、膵炎、1型糖尿病、副腎機能障害、硬化性胆管炎) トイレが近い(下垂体機能障害、1型糖尿病) 尿量の減少(腎機能障害)
各ICIの適応病名(2020.12.25現在) ニボルマブ(オプジーボ®) 悪性黒色腫、切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、腎細胞癌、再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌、がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌、がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫、がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌、がん化学療法後に増悪した根治切除不能な進行・再発の食道癌 ペムブロリズマブ(キイトルーダ®) 根治切除不能な悪性黒色腫、PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、再発又は難治性の古典的ホジキンリンパ腫、がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮癌、がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る) 、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌、再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌 アテゾリズマブ(テセントリク®) 切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌、進展型小細胞肺がん、PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌 デュルバルマブ(イミフィンジ®) 切除不能な局所進行の非小細胞肺癌における根治的化学放射線療法後の維持療法 進展型小細胞肺癌 イピリブマブ(ヤーボイ®) 根治切除不能な悪性黒色腫、根治切除不能又は転移性の腎細胞癌、がん化学療法後に増悪した治癒切 除不能な進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する結腸・直腸癌、切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌
一貫して対応できるのが優秀なマニュアル irAE逆引きマニュアルの有用性 よくあるマニュアル 診断(病名) 検査 治療 逆引きマニュアル 通常のマニュアル 逆引きマニュアルと通常のマニュアルをあわせて活用 ここがわからないことが多い
irAE逆引きマニュアルのバージョンアップ履歴 2018.9.12 初版(ver1.0)。 2019.1.1 「セカンドキーワード」を青色で表示し、さらに時短を図りました(ver2.0)。 2019.1.1 重症筋無力症の症状に「複視」を追加しました(ver2.1)。 2019.12.15 irAE病名の順番を見直しました(ver2.2)。 2020.3.4 硬化性胆管炎、結核、血球貪食症候群、無顆粒球症を追加しました(ver2.3)。 2020.7.26 COVID-19を鑑別に入れました(ver.3.0)。 2020.12.13 患者向けのわかりやすい用語を採用し、レイアウトも見直しました(ver4.0)。
使い方 免疫関連の重要な副作用として、発熱、吐き気、意識レベル低下、だるさ、息苦しさ、腹痛、頭痛、手足の脱力を取り上げました。 これらの症状を感じたら、その他の症状がないか、表をチェックしてみてください。青字(下線)の症状は特に注意してチェックしてください。 あてはまる項目が多ければ、その病名である確率が高くなります。 いつもと違う症状があると感じたら、免疫関連の副作用かもしれません。治療を受けている病院を早めに受診してください。その際、このマニュアルを印刷して持っていくと医療者に伝わりやすいと思います。 薬の副作用ではありませんが、一番上に新型コロナウイルス感染の症状をあげています。まずは新型コロナを否定することが重要です。
免責事項 免疫関連の副作用の出方には個人差があり、 表に症状記載がなくても副作用がでている 可能性があります。 免疫関連の副作用は、後のページにあげる 病名がすべてではありません。 記載の症状がすべてでてくるとは限りません。 免疫チェックポイント阻害薬を使用している人は、 「いつもとちがう症状」を感じた場合、 このマニュアルに関係なく早めに受診してください。
発熱 以下の症状がないかをチェックしてください。 ©市立長浜病院呼吸器内科 野口哲男
吐き気 以下の症状がないかをチェックしてください。 ©市立長浜病院呼吸器内科 野口哲男
だるさ ©市立長浜病院呼吸器内科 野口哲男 以下の症状がないかをチェックしてください。
意識レベル低下 ©市立長浜病院呼吸器内科 野口哲男 以下の症状がないかをチェックしてください。
息苦しさ ©市立長浜病院呼吸器内科 野口哲男 以下の症状がないかをチェックしてください。
腹痛 ©市立長浜病院呼吸器内科 野口哲男 以下の症状がないかをチェックしてください。
頭痛 ©市立長浜病院呼吸器内科 野口哲男 以下の症状がないかをチェックしてください。
手足の脱力 ©市立長浜病院呼吸器内科 野口哲男 以下の症状がないかをチェックしてください。
ILD(間質性肺疾患) 説明 炎症などによって、肺胞(はいほう)という肺の一番奥の小さな袋(酸素を取り 入れる場所)の壁が厚くなって、酸素が取り込みにくくなる状態です。レントゲン写真、血液検査(KL-6)などで診断しますが、患者さん本人の自覚症状が早期発見に重要です。重症化すると命に関わることもあるため、早期発見で治療を開始することが重要です。副腎皮質ステロイド剤などで治療を行います。 主な症状 空咳(からぜき;痰のない咳)が出る 階段を登ったり、少しはやく歩いたりすると 息が苦しくなる 発熱する 参考
ギラン・バレー症候群 説明 免疫が神経系を攻撃することによって起きる病気です。症状、血液検査、髄液(ずいえき)検査などで診断します。早期に発見し、早期に治療を開始することで改善が望めますが、悪化すると重い不整脈など命に関わる症状が現れる場合があります。免疫グロブリン製剤で免疫を調整する治療や血液浄化(じょうか)療法で治療が行われます。 主な症状 両側の手や足に力が入らない 歩行時につまずく 階段 を上がれない 物がつかみづらい 手や足の感覚が鈍くなる 顔の筋肉がまひする 食べ物がのみ込みにくい 呼吸が苦しい 参考
赤芽球癆(せきがきゅうろう) 説明 免疫が赤血球や赤血球のもととなる細胞(赤芽球前駆(ぜんく)細胞)を攻撃することで起きる貧血の一種です。 主な症状 顔色が悪い 疲れやすい だるい 頭が重い どうき 息切れ 参考
血球貪食症候群(けっきゅうどんしょくしょうこうぐん) 説明 体内のウイルスや異物を食べて処理する免疫細胞のひとつ「マクロファージ」が白血球、赤血球、血小板といった血液の細胞を食べてしまう状態です。 主な症状 白血球減少⇒感染症に対する抵抗力の低下 赤血球減少⇒貧血 血小板減少⇒血が止まりにくい お腹が張る(脾臓(ひぞう)の腫れ(はれ)、腹水) 参考
点状出血 皮膚や粘膜の小さな血管(毛細血管)からの出血で、小さな赤い斑点(はんてん)ができる状態です。血小板が減るなどによる出血傾向のひとつです。 出血傾向の初期の症状として表れ、物理的な刺激が加わる手足に多くみられます。症状がひどくなるとかゆみや痛みを伴うこともあります。 説明 主な症状 参考
刺激で目を開く 刺激しても 目を開けない いつもと違う症状 (Ⅰ-1以降)で受診 しましょう 意識レベル低下時の受診の目安
謝辞 押川勝太郎先生 患者さん向けマニュアル作成の提案 YouTubeプラットフォームの提供 松原重征先生 症状、病名の解説スライドの作成 HSさん 患者さん向けアンケートの作成、助言 アンケートに答えていただいた方 YouTubeライブ配信のチャットで参加していただいた方
最後に がん免疫療法副作用の3分自己チェック法は、 がん患者さんや一般の人の意見を取り入れながら、 みんなで作成しました。 「がん患者さん向けのirAE(あいあーるえーいー)逆引きマニュアルをみ~んなでつくろうプロジェクト」、略して あいみ~んプロジェクト(iMP)で作り上げました。 追加、訂正、助言などは、resdoctorn@gmail.comまで。 み~んなの意見を取り入れながら、よりよいマニュアルになるようにバージョンアップしていきます。 ご支援よろしくお願いします。 PDFファイル入手先。https://bit.ly/3al86z9 2020年12月13日 ©市立長浜病院呼吸器内科 野口哲男
おまけ 呼吸器ドクターNとして情報発信しています! 呼吸器の総合サイト「呼吸器ドクターNのHP」 https://resdoctorn.jimdofree.com/ 呼吸器の最新論文の紹介「呼吸器ドクターNのブログ」 https://ameblo.jp/resdoctorn YouTube動画「呼吸器ドクターN」チャンネル https://www.youtube.com/channel/UCD0Wpzva_AdPJsRbFAXlCrQ 呼吸器ドクターN 🔍検索