#4.
01. 妊娠糖尿病とは p.6-7… 定義 p.8… 妊娠中の血糖変動 AGENDA 目次 p.9… 妊娠糖尿病のリスク因子 p.10-11… 妊娠糖尿病の予防 p.12-13… 妊娠糖尿病の診断方法 p.14… 妊娠糖尿病の合併症 p.15… 妊娠糖尿病の血糖管理指標と管理目標
#5.
妊娠糖尿病ってなんですか? 妊娠中にはじめて見つかる耐糖能異常で、 元々の体質や妊娠中のホルモンの変化が 影響して発症します
#6.
妊娠糖尿病とは <定義> 妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病に至っていない耐糖能 異常(糖尿病合併妊娠や妊娠中の明らかな糖尿病は含めない) 妊娠前に既に診断されている糖尿病、および 妊娠前に診断されていなかったが確実な糖尿病網膜症*があるもの *:すでに合併症が進んでいる=診断されていなかっただけで実は以前から糖尿病 空腹時血糖 126mg/dl 以上、または HbA1c 6.5% 以上 を満たすもの 妊娠前に発症し見過ごされていた糖尿病と妊娠中に発症した耐糖能異常を含む
#7.
血糖(mg/dL) 妊娠中と非妊娠時で血糖変動は大きく異なる 正常妊婦8例 インスリン拮抗ホルモンの 影響で食後血糖上昇 135 117 • 胎児のエネルギー消費による空腹時血糖低下 99 • 胎盤性ラクトゲン、プロラクチン、プロゲステロンなどインスリン拮抗ホル 81 モンが上昇し、インスリン抵抗性上昇、食後血糖上昇、インスリン分泌増加 非妊婦8例 63 インスリン拮抗ホルモンの 影響で食後血糖上昇 血糖(mg/dL) 135 正常妊婦8例 13時 18時 23時 8時 インスリン(mmol/L) 食後血糖上昇に伴う インスリン分泌増加 12 117 8 99 81 63 8時 4 非妊婦8例 8時 (食事) 13時 (食事) 胎児エネルギー消費による空腹時血糖低下 0 インスリン(mmol/L) 18時 (食事) 23時 8時 8時 (食事) 13時 (食事) 18時 (食事) 23時 8時 DR Hadden. Semin Fetal Neonatal Med. 2009 食後血糖上昇に伴う DR Hadden. Semin Fetal Neonatal Med. 2009 ホルモン変化に伴う血糖上昇に対して十分なインスリン分泌ができない インスリン分泌増加 またはインスリン分泌は十分だがインスリン抵抗性が高いと妊娠糖尿病を発症する 8 12
#8.
妊娠糖尿病のリスク因子 • 肥満 • 2型糖尿病の家族歴 • 多嚢胞性卵巣症候群 • 巨大児分娩の既往 • 妊娠糖尿病の既往 • 高齢出産 • 多胎妊娠
#9.
妊娠糖尿病にならないためには どうしたらいいですか? 適切な食事や運動により 妊娠糖尿病のリスクが下がるかもしれません
#10.
妊娠中にできる妊娠糖尿病の予防 食事療法や運動療法により妊娠糖尿病のリスクは20-30%低下する1,2) 食事療法の例 • • • • 1) Tsironikos GI. J Clin Med. 2023、2) Takele WW. Commun Med (Lond). 2024. 積極的に野菜や果物などの食物繊維を多く含む食品を摂る 高GI食品は避けて低GI食品を摂取する(GIについては後ほど説明) ジュースやファストフードは避ける 高飽和脂肪食品(肉、お菓子など)は避ける 運動療法の例 • 週3-5日の有酸素運動(エアロビクスやエルゴサイクルなど) • 軽いレジスタンス運動 • グループセッション(個人セッションよりも有効?) 食事・運動による妊娠糖尿病予防効果がないとする報告もあり、最適な予防方法は不明 元々の体質(遺伝)による影響が大きく、完全に予防するのは難しいと思われる
#11.
妊娠糖尿病の診断方法 ①スクリーニング • 妊娠初期:随時血糖が95mg/dL以上または100mg/dL以上 • 妊娠中期(24~28週): 随時血糖 100mg/dL以上 または 50gグルコースチャレンジテスト 140mg/dL以上 ※ 50gグルコースチャレンジテストの方がスクリーニング手法としては優れている1)が、手間がか かるため、妊娠中期も随時血糖法で検査する施設も多い ※ その他、妊娠糖尿病の既往、肥満、糖尿病家族歴、尿糖持続陽性などの耐糖能異常を疑う病歴 がある場合にも診断検査の実施を考慮しても良い(私見) 1) Tomimoto M. J Diabetes Investig. 2024 ②診断検査(75gOGTT) 空腹時血糖92mg/dL以上、1時間血糖180mg/dL以上、2時間血糖153mg/dL以上 のいずれか一つ以上を満たす場合に妊娠糖尿病の診断 ※ 妊娠初期随時血糖高値の場合は必ずHbA1cと空腹時血糖を測定し、妊娠中の明らかな糖尿病 の可能性がないか確認する
#12.
妊娠初期に診断される妊娠糖尿病(最近の話題) • 診断基準の根拠であるHAPO study1)は妊娠 24〜32 週にOGTTを実施して おり、妊娠初期のOGTTにこの基準値を当てはめてよいか議論がある。 • 特に空腹時血糖は妊娠中後期に低下するため、空腹時血糖のカットオフ値は妊娠初期と 妊娠中期、後期で異なる可能性がある • 大規模RCT:TOBOGM試験 • 妊娠初期診断の妊娠糖尿病への治療介入による周産期合併症のリスク低下が示された2)。 • 一方、妊娠初期に妊娠糖尿病と診断された症例に対し、治療介入せずに妊娠 24~28 週に 再度OGTT を実施すると、約30%は正常耐糖能(正常化群)であった。さらに、正常化群 と妊娠糖尿病と一度も診断されない症例は周産期アウトカムに差がなかった3)。 妊娠初期に診断される妊娠糖尿病には、早期の治療介入が奏功する症例と 早期の介入が不要な症例があるが、現状それらを明確に区別する方法はない 1) HAPO study Cooperative Research Group. N Engl J Med. 2008、2) Simmons D. N Engl J Med. 2024、3) Simmons D. Diabetes Care. 2024
#13.
妊娠糖尿病に関連する合併症 母体 児 巨大児・在胎出生過体重児 周産期合併症 流産・死産 低出生体重児・在胎不当過小児 早産 肩甲難産に伴う分娩時外傷 妊娠高血圧症候群 新生児低血糖 羊水過多症 新生児呼吸促拍症候群 肩甲難産 新生児低カルシウム血症 新生児黄疸 将来の合併症 2型糖尿病 糖代謝異常、高血圧症、肥満など 適切な血糖管理により、周産期合併症のリスクを低下できる
#14.
妊娠糖尿病の血糖管理指標と管理目標 管理指標 管理目標値 特徴・注意点 SMBG 空腹時 95mg/dL未満 食後1時間 140mg/dL未満 食後2時間 120mg/dL未満 妊娠中の血糖管理におけるゴールドスタンダードだが、測定時点の血糖 値しか分からない。穿刺時に痛みを伴う。 OGTT1点陽性かつ非妊時BMI25未満の場合は保険適用外。 CGM 目標値は定まっていない SMBGで把握できない血糖変動が把握できる。誤差が出る場合も多く、 必ずSMBGを併用する。 6.0-6.5%未満 血糖以外の要因に影響を受ける(鉄欠乏に伴う偽高値や赤血球代謝亢進 による偽低値など)ため、妊娠中の血糖管理状況を正確に反映できない 可能性がある。ただしHbA1cが高いと周産期合併症のリスクが上昇する ことは明らかであり(初期6.5%以上なら先天異常リスク、中後期 6.0%以上なら在胎出生過体重児のリスクなど)、測定は推奨する。 15.8%未満? 鉄欠乏や赤血球代謝に影響を受けないことから、HbA1cより有用という 意見もある。ただし肥満により偽低値を示す。 HbA1cに比べエビデンスは少ない。 HbA1c グリコ アルブミン 妊娠中はホルモンの影響で食後血糖が上昇しやすく、食後血糖の管理が難しい
#15.
Take Home Massage • 妊娠中と非妊娠時は血糖変動が大きく異なる • 妊娠中の血糖スクリーニング検査が陽性であれば、妊娠中の明ら かな糖尿病でないか確認し、OGTTを実施する • 妊娠糖尿病は様々な合併症のリスクが高いが、適切な管理により 周産期合併症のリスクを低下できる