テキスト全文
急性膵炎診療ガイドラインの概要と背景
#1. 急性膵炎診療ガイドライン 2015→2021 何が変わったの? 番場祐基
内科医(呼吸器内科・感染症科)、救急医
ブロガー(内科医のジレンマ)
#2. 内科医
専門は呼吸器領域と感染症ですが、とりあえずなんでも診る
島暮らしをきっかけにブログ活動をスタート
ブログ「内科医のジレンマ」同Facebookページ
Twitter:@LostphysicianYB
ひょんなことから救命センター勤務にひーひー言いながらICU/ERを駆け回る
番場 祐基 新潟大学医歯学総合病院 高次救命災害治療センター同 呼吸器・感染症内科
#3. 早速Antaaスライドテンプレートをつかってみました 先日行われた
スライド投稿者限定のウェビナーに
触発されて
急性膵炎ガイドライン改訂の主なポイント
#4. ガイドライン改訂 前回2015年から6年ぶりの改訂
ようやく時代にガイドラインが追いついてきた 【集中治療領域】
敗血症診療ガイドライン改訂(SSCG2016,2021)
Less is moreの概念
早期経腸栄養
【消化器領域】
感染性膵壊死に対する低侵襲治療のエビデンス この6年の間に・・・ まだ周知が不十分!
オンラインでの公開は2022年6月〜
#5. 急性膵炎ガイドラインの主な変更点を解説
輸液療法は過剰にならないようにモニタリングしながら行う
予防的抗菌薬は推奨されない
蛋白分解酵素阻害薬も非推奨
#6. ガイドラインの啓発!
急性膵炎の標準的なマネジメントを理解する
各施設の慣習的なプラクティスを見直そう
急性膵炎の基本知識と診断基準
#7. これから膵炎診療を勉強したい学生、研修医
急性膵炎診療に関わる医療スタッフ(特に急性期病棟・救命センター)
#8. 急性膵炎の基本知識
急性膵炎ガイドラインの主な変更点(特に治療)
急性膵炎診療フロー
#10. 10 Boxhoorn L, et al. Lancet,2020 疫学
高所得国では34人/10万人年 うち中等症〜重症:約20%
原因
ほとんどの高所得国では胆石(45%)とアルコール(20%)が最も多い原因である
その他:薬物療法、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)、高カルシウム血症、高トリグリセリド血症、感染症、遺伝、自己免疫、外傷 急性膵炎の基本知識
急性膵炎の重症度判定基準と評価方法
#11. 急性膵炎の基本知識〜診断基準〜 以下の3項目中2項目以上を満たし、他の膵疾患および急性腹症を除外したもの(➡️結局CTは必要) 11 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班, 2008年
CT画像はBoxhoorn L, et al. Lancet,2020から 膵特異性の高いものが望ましい(膵アミラーゼやリパーゼ) 超音波やCT 上腹部痛と圧痛 血中or尿中の膵酵素上昇 画像所見
#12. 急性膵炎の基本知識〜重症度判定〜 本邦では厚生労働省重症度判定基準を用いる 重症=予後因子3点以上、またはCT grade2以上
(予後因子は診断時+24時間以内+24-48時間以内に確認) 12 厚生労働省難治性膵疾患に関する調査研究班, 2008年 A 予後因子(各1点) BE≦-3mEq/L,or ショック(sBP≦80mmHg)
PaO2≦60Torr or 人工呼吸器を要する
BUN≧40mg/dL(or Cr≧2mg/dL),または乏尿
LDH≧基準値上限の2倍
Plt≦10万/mm3
総Ca≦7.5mg/dL
CRP≧15mg/dL
SIRS診断基準における陽性項目数≧3
年齢≧70歳 B 造影CT Grade 炎症の膵外進展度
膵の造影不良域1+2の合計スコア
急性膵炎診療における重要な変更点
#14. 14 Pancreatology. 2020; 20: 629-636 ガイドライン改訂の背景 全国調査の結果から、近年重症膵炎の予後はあまり改善していないことが判明した
エビデンスに基づく診療ガイドラインの遵守率向上が必要 重症膵炎の予後が改善していない
エビデンスの低い治療が未だ多く行われている
バンドル遵守率が高いと致命率も低い 現状 エビデンスに基づく治療の啓蒙
バンドル遵守率の向上
後期合併症の適切な管理
目標
#15. Pancreatitis Bundles 2015→2021 特に重要な変更点は6)輸液、8)予防的抗菌薬、10)ステップアップアプローチ の3つ 15 急性膵炎診療ガイドライン2015
急性膵炎診療ガイドライン2021 Bundles 2015 Bundles 2021
輸液療法と予防的抗菌薬の新しいガイドライン
#16. 輸液療法 IAP/APAガイドライン2013ではEGDTに準じたプロトコルが提唱されているが、
今回のガイドライン作成で行ったメタ解析では積極的輸液療法の優位性は示されなかった。 16 Working Group IAP/APA acute pancreatitis guidelines. Pancreatology 2013
急性膵炎診療ガイドライン2021 積極的輸液療法(初期は◯) 初期治療として、積極的輸液療法を行う
ただし、過剰輸液とならないようにモニタリングを行う
晶質液(緩衝液)を用いる Less is more! 複数の静的指標+動的指標の組み合わせ
#17. 予防的抗菌薬 腸管内からのtranslocationによる二次感染が問題となるが、
抗菌薬投与はこれを予防しない 17 急性膵炎診療ガイドライン2021 予防的抗菌薬 軽症膵炎に対して予防的抗菌薬投与は行わない
重症膵炎や壊死性膵炎に対する予防的抗菌薬投与の予後改善効果は証明されていない Less is more!
#18. 蛋白分解酵素阻害薬 FOY、フサン、アプロチニンの投与には強固なエビデンスなし
18 急性膵炎診療ガイドライン2021 蛋白分解酵素阻害薬 予後改善効果は証明されていない
蛋白分解酵素阻害薬や抗菌薬の動注療法の有用性も証明されていない
また、H2ブロッカーやPPIのルーチン投与も不要である Less is more!
感染性膵壊死への介入と治療アプローチ
#19. 栄養療法 ただし、PYTHON試験において24時間以内に経腸経管栄養を早期に行っても、 オンデマンド群(72h以降に栄養を開始)と比較して感染率や死亡率は低下しなかった。⇨急ぐほど良いというわけではないようだ 19 急性膵炎診療ガイドライン2021
Bakker OJ, et al. NEJM 2014 早期経腸療法 Bundleの中でも遵守率が高くない…
少量からでも48時間以内に開始することが推奨
合併症や死亡率上昇の可能性があり、TPNのルーチン使用は推奨されない。
#20. ACS診断・管理のための腹腔内圧測定 大量輸液、高い重症度、腎障害や呼吸障害の合併、CTで複数部位の液体貯留、高乳酸血症を認めた症例では、IAH/ACSを発症すると致命率が高くなることが報告されており、経時的なIAPの測定が必要である 20 急性膵炎診療ガイドライン2021
腹腔内圧(IAP)測定 ACS(Abdominal compartment syndrome)は、腹腔内圧亢進により後腹膜および腹腔内の臓器虚血と胸腔内圧の上昇による呼吸不全・循環不全を発症して予後不良となる
IAPのモニタリング(膀胱内圧)
予防
#21. 21 急性膵炎診療ガイドライン2021
Boxhoorn L, et al. Lancet,2020 感染性膵壊死への介入 内視鏡的ステップアップ法が好ましい治療法になってきているが、すべての患者で可能なわけではないかもしれない。理想的には内視鏡・手術の両方のアプローチに十分な経験を持つ集学的チームによって議論されるべき 膵・膵周囲液体貯留
急性膵周囲液体貯留(APFC)
急性壊死性貯留(ANC)
膵仮性嚢胞)PPC)
被包化膵壊死(WON) 感染性膵壊死 まずは保存的治療(抗菌薬など)を試みる
全身状態が保たれていれば、被包化してから(4w〜)インターベンションを行う
Step-up approach(低侵襲なドレナージ→段階的にネクロセクトミーに移行) インターベンション治療 4w 壊死 感染を合併する B or Dに感染を合併したもの
診断:画像検査を含めて総合的に判断
胆石性膵炎と急性膵炎診療フロー
#22. 胆石性膵炎
ERCP後膵炎については割愛
#23. 2015→2021急性膵炎ガイドラインの主な変更点 23 急性膵炎診療ガイドライン2021
輸液 初期はしっかり蘇生輸液
過剰にならないようにモニタリング 栄養 早期経腸栄養(〜48h)を目指す
ルーチンのTPNは行わない 予防的
抗菌薬 抗菌薬投与(特に軽症例)は非推奨 腹腔内圧
ACS ACSの予防(大量輸液は×)
重症例ではIAP測定・モニタリング 蛋白分解酵素
阻害薬 非推奨 感染性
膵壊死 Step-up approach
可能なら4w以降に 急性膵炎もLess is More !!
急性膵炎診療の基本方針と実践
#25. 急性膵炎の基本的診療方針 25 急性膵炎診療ガイドライン2021 急性膵炎の診断 重症度判定(造影CT、採血) 軽症 膵局所合併症に対する診断と治療 成因の検索
(胆石、高TG、自己免疫etc) 集中治療(輸液/栄養管理(早期EN)/ACS予防・管理) 1 2 3 XXXXX XXXXX 蘇生輸液、鎮痛 重症 転送の判断 インターベンション治療
Step-up approach
ドレナージ⇨ネクロセクトミー 感染or有症状 保存治療に抵抗
#26. 26 急性膵炎診療ガイドライン2021 急性膵炎診断時、診断から24h以内、および24-48時間に厚生労働省重症度判定基準の予後因子スコアを用いて重症度を繰り返し評価する
重症膵炎では診断後3時間以内に適切な施設への転送を検討する
診断後3時間以内に、膵炎の成因を鑑別する
胆石膵炎のうち、胆道通過障害の遷延を疑う症例では早期のERCP+ESTの施行を検討する
重症急性膵炎では初療後3時間以内に造影CTを施行し、CT Gradeによる重症度判定を行う
発症後48時間以内はモニタリングを行い、初期には積極的な輸液療法を実施する
疼痛コントロールを行う
軽症急性膵炎では、予防的抗菌薬は使用しない
重症急性膵炎では、禁忌がない場合には診断後48時間胃内に経腸栄養を少量から開始する
感染性膵壊死の介入を行う場合には、ステップアップ・アプローチを行う
胆石性膵炎で胆嚢結石を有する場合には、膵炎鎮静化後、胆嚢摘出術を行う
Pancreatitis Bundles 2021(再掲)
#27. 27 急性膵炎診療ガイドライン2021 急性膵炎診断時、診断から24h以内、および24-48時間に厚生労働省重症度判定基準の予後因子スコアを用いて重症度を繰り返し評価する
重症膵炎では診断後3時間以内に適切な施設への転送を検討する
診断後3時間以内に、膵炎の成因を鑑別する
胆石膵炎のうち、胆道通過障害の遷延を疑う症例では早期のERCP+ESTの施行を検討する
重症急性膵炎では初療後3時間以内に造影CTを施行し、CT Gradeによる重症度判定を行う
発症後48時間以内はモニタリングを行い、初期には積極的な輸液療法を実施する
疼痛コントロールを行う
軽症急性膵炎では、予防的抗菌薬は使用しない
重症急性膵炎では、禁忌がない場合には診断後48時間胃内に経腸栄養を少量から開始する
感染性膵壊死の介入を行う場合には、ステップアップ・アプローチを行う
胆石性膵炎で胆嚢結石を有する場合には、膵炎鎮静化後、胆嚢摘出術を行う
Pancreatitis Bundles 2021(重要な変更点)
#28. 重症膵炎診療も Less is More!
輸液療法は過剰にならないようにモニタリングしながら行う
予防的抗菌薬は推奨されない
蛋白分解酵素阻害薬も非推奨
急性膵炎診療ガイドラインのアプリと今後の展望
#29. 29 実はアプリも
あります 急性膵炎診療ガイドライン
#30. 過去に作成したスライドの転用など、今回使用したテンプレートの応用や改善点を模索してみようと思います。 Antaaスライドテンプレートの活用 ? 拙ブログもよろしくお願いします。