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アミラーゼの基本情報と意義
#1. コンサルテーションシリーズ アミラーゼが高いと言われたら? くるとん@消化器内科 twitter:@Dr_Claude_Japan
急性膵炎の診断基準と重要性
#2. アミラーゼとは 主に膵臓,唾液線から分泌される消化酵素で, 糖質(デンプン等)のグルコシド結合を加水分解する. 膵型(P型)と唾液線型(S型)に大別される. 血液中から腎臓で濾過され,尿中に排出される. 膵臓,唾液線の炎症などで血液中への酵素の逸脱が増加すると,高値を呈する. アミラーゼが高いと言われたら,急性膵炎を考慮!
#3. 急性膵炎の診断基準 上腹部に急性腹痛発作と圧痛がある. 血中または尿中に膵酵素(アミラーゼ,リパーゼ)の上昇がある. 超音波,CTまたはMRIで膵に急性膵炎に伴う異常所見がある. 上記3項目中2項目以上を満たし,他の膵疾患,急性腹症を除外したものを急性膵炎と診断する. 急性膵炎治療ガイドライン,2015より 腹痛の確認,画像検査を行い,まずは急性膵炎を除外する!
急性膵炎の原因と重症度判定
#4. 急性膵炎と診断されたら ①原因検索を行う アルコール(33.5%)と胆石(26.9%),特発性(16.7%)の順に多く, その他はいずれも1%程度である. 急性膵炎治療ガイドライン,2015より 胆石性膵炎は,速やかな内視鏡的乳頭処置(ERCP)が必要 CTで結石がはっきりしなくても,肝胆道系酵素の上昇あれば 胆石性膵炎の可能性を考慮する.
#5. ②重症度判定を行う 予後因子(各1点) ①Base Excess≦-3mEq/L,またはショック(収縮期血圧≦80mmHg) ②PaO2≦60mmHg(room air),または呼吸不全 ③BUN≧40mg/dL(or Cr≧2mg/dL),または乏尿 ④LDH≧基準値上限の2倍 ⑤血小板数≦10万/mm3 ⑥Ca≦7.5mg/dL ⑦CRP≧15mg/dL ⑧SIRS 陽性項目数≧3 ⑨年齢≧70歳 予後因子 3点以上,または造影CT Grade2以上を重症とする. 造影CT Grade 炎症の膵外進展度 膵造影不良域 <1/3 1/3〜1/2 1/2< 前腎傍腔 急性膵炎治療ガイドライン,2015より 結腸間膜根部 腎下極以遠 Grade1 Grade2 Grade3
急性膵炎の初期治療法
#6. 急性膵炎の初期治療 ①十分な輸液投与 細胞外液を130-150ml/時で開始し,尿量0.5ml/kg/時以上が 確保されたら徐々に速度を下げる. ②薬物療法 ・重症例では抗生剤(メロペネムが主流)が推奨されている. ・蛋白分解酵素阻害剤は明らかな改善効果の実証はないが, 実臨床では広く使用されている. ③早期の経腸栄養の開始 48時間以内に経腸栄養を開始することが推奨されている.
膵アミラーゼとマクロアミラーゼ血症の理解
#7. 急性膵炎を除外できたら 膵アミラーゼもしくは,アミラーゼアイソザイムを測定する ☆膵型(P型)と唾液線型(S型)の判別を行い,原因を考える. P型 慢性膵炎,膵癌,ERCP後など S型 唾液腺疾患,術後などのストレス(一過性),肝障害,肺疾患, 糖尿病性ケトアシドーシス,アミラーゼ産生腫瘍など P型,S型両方 腎不全による腎からのクリアランス低下 P型,S型区別不能 マクロアミラーゼ血症を疑う
#8. マクロアミラーゼ血症とは? アミラーゼが免疫グロブリンと結合し,巨大分子となり,腎排泄が低下し高アミラーゼ血症を呈する病態である. 頻度は高アミラーゼ血症の0.5-2.5%であり,健常者にもみられ 臨床的意義はなく,経過観察可能である. アミラーゼ・クレアチニン・クリアランス比(ACCR)を測定し, 1%以下はマクロアミラーゼ血症の診断となる. *健常者のACCRは2-3% ACCR:(尿中アミラーゼ×血中クレアチニン)÷(血中アミラーゼ×尿中クレアチニン)×100
アミラーゼ低値の原因と影響
#9. アミラーゼが低値を示すのは? P型 膵臓の摘出,重度の糖尿病,膵実質の荒廃 (慢性膵炎の非代償期,膵癌による広範囲破壊など) S型 唾液線の摘出,シェーグレン症候群,放射線照射後
急性膵炎除外の重要性とまとめ
#10. まとめ まずは急性膵炎を除外しよう! (腹痛の確認、画像検査を行う) アミラーゼアイソザイムを測定しよう! マクロアミラーゼ血症の診断を学ぼう!