テキスト全文
摂食障害の概要と目標設定
#1. Anorexia and bulimia nervosa 摂食障害 Refeeding症候群の管理と急性期からのシームレスなケアについて考える
#2. About me Goal 番場 祐基 新潟大学医歯学総合病院 高次救命災害治療センター同 呼吸器・感染症内科 内科医
専門は呼吸器領域と感染症ですが、とりあえずなんでも診る
島暮らしをきっかけにブログ活動をスタート
ブログ「内科医のジレンマ」同Facebookページ
Twitter:@LostphysicianYB
note: @md_dilemma
集中治療領域で内科医だからこそできること!を模索中
重症摂食障害の急性期や外来患者の内科診療を経験診療の難しさ、壁の多さを認識し、勉強中です!
#3. Target Goal 摂食障害患者の急性期診療に関わるすべての医療従事者
特に、診療内容や患者との関わり方で困った・戸惑った経験がある方 摂食障害の病態を理解し、診療全体のイメージを持てるようになる
重症な身体合併症の管理に自信が持てるようになる
急性期における多診療科・多職種連携のポイントを考えよう
摂食障害の定義と疾患概念
#4. 本スライドは、摂食障害の基本的事項について診療に関わるいち内科医がまとめたものである。実際の診療では患者毎の個別性が大きいことや施設によって方針が異なるため、本スライドの内容がそのまま適応できないことがある
実際の摂食障害の診療にあたっては、お近くの専門家、専門チームと連携をはかること Caution
#5. 摂食障害の定義と疾患概念
身体合併症の管理、特に重症例について
疾患急性期に患者とどのように関わるべきか 多職種連携や心理・行動療法も含めて Index
#6. 摂食障害の定義と疾患概念
身体合併症の管理、特に重症例について
疾患急性期に患者とどのように関わるべきか 多職種連携や心理・行動療法も含めて Index
摂食障害の診断基準と病態
#8. 摂食障害− DSM-5 神経性やせ症:Anorexia Nervosa, AN
神経性過食症:Bulimia nervosa, BN
必要量と比べてカロリー摂取を制限し、年齢、性別、成長曲線、身体的健康状態に対する有意に低い体重に至る。有意に低い体重とは、正常の下限を下回る体重で、子どもまたは青年の場合は、期待される量低体重を下回ると定義される。
有意に低い体重であるにもかかわらず、体重増加または肥満になることに対する強い恐怖、または体重増加を妨げる持続する行動がある。
自分の体重または体型の体験の仕方における障害、自己評価に対する体重や体型の不相応な影響、または現在の低体重の深刻さに対する認識の持続的欠如 反復する過食エピソード、過食エピソードは以下の両方によって特徴づけられる。
他とははっきり区別される時間帯に(例:任意の2時間の間の中で)、ほとんどの人が同様の状況で同様の時間内に食べる量よりも明らかに多い食物を食べる。
そのエピソードの間は、食べることを抑制できないという感覚(例:食べるのをやめることができない、または、食べる物の種類や量を抑制できないという感覚)
体重の増加を防ぐための反復する不適切な代償行動、例えば、自己誘発性嘔吐;緩下剤、利尿薬、その他の医薬品の乱用;絶食;過剰な運動など
過食と不適切な代償行動がともに平均して3ヶ月にわたって少なくとも週1回は起こっている。
自己評価が体型および体重の影響を過度に受けている
その障害は、神経性やせ症のエピソードの期間にのみ起こるものではない。 神経性食思不振症
#9. 摂食障害 もう少しざっくり 神経性やせ症:Anorexia Nervosa, ANいわゆる拒食症 体重減少を伴う 制限型/排泄型(嘔吐、下剤・利尿剤など)
神経性過食症:Bulimia nervosa, BN過食とそれを打ち消す行動の悪循環
過食性障害:体重を減らすための“代償行動”を伴わない 【代償行動】
#10. やや脱線 回避制限性食物摂取症 Avoidant-restrictive food intake disorder: ARFID DSM-5A)以下の1つ以上で示される、適切な栄養摂取やエネルギーの必要性を満たすことが持続的にできない摂食または食行動の障害(例:摂食や食物への明らかな関心の欠如、感覚的な特性に基づく食物回避、摂食による悪い結果への懸念)
1. 著しい体重減少(または期待される体重増加がない、または子どもの成長が遅いこと)
2. 著しい栄養不良
3. 経腸栄養や栄養剤への依存
4. 心理社会的機能の著しい障害
B)その障害が、食物を得ることができないことや文化的に容認される慣習ではうまく説明されない。
C)その摂食の障害は、神経性やせ症や神経性過食症の経過中にのみ起こるものではなく、体重や体型の感じ方の障害は確認されない。
D)その摂食の障害は、併存する医学的状態によるものではなく、他の精神障害ではうまく説明されない。その摂食の障害が他の状態や障害の経過中に生じた場合では、通常その状態や障害によるものとする程度以上であり、臨床的関与の追加を正当化するほど重篤である。 若年でやや男性に多い 背景に不安障害があることも
摂食障害における身体合併症の管理
#12. Behav Res Ther. 2003;41(5):509-28. 病型を超えて共通的な摂食障害が維持される精神病理 達成への過大評価
“完全主義” 自己評価の“機能不全” 食事や体型・体重とそれらをコントロールしている感覚を過大に評価する 中心には低い自尊心 厳格なダイエット・行動 気分不耐 “外部”
との関係 暴食 嘔吐・排出 自尊心を満たす、達成感を得られるような代償行動(過食・極端な減量)にいつしか囚われてしまう
#13. はじまりはちょっとしたこと・挫折 代償行動としての過食やダイエット(過食は簡単、やせるのも体重という結果が得られやすい) それが、いつしか“認知”を歪めていく
#14. 身体合併症(後ほど詳しく説明) 心理的問題(社会的) 神経機能的異常 (精神的) 心因 内因 気分障害
強迫性障害
統合失調症
希死念慮
認知機能低下
不安障害
アルコール使用障害 低い自己評価
完璧主義
対人関係の問題
孤独感
正当化
攻撃性
適応障害
パーソナリティ障害 薬物療法が
有効なこともある 精神療法が主体 器質も心因も精神因も(社会的な問題も)
すべて互いに影響しあう
摂食障害の有病率と死亡率
#15. 16-23歳女性における摂食障害の有病率(%) Psychiatry Res. 2014;219(1):151-6.
#16. 死亡率 Arch Gen Psychiatry, 2011;68:724-31. ANでは 5.1 、BNでは1.7 (対 1000人年)
ANでは5人に1人が自殺で死亡 Am J Psychiatry, 2002;159:1284-93. ANの予後に関するReview
ANでは平均粗死亡率は5%
#17. 重症度 BMIによる分類 55%未満は入院の絶対適応
小児は成長曲線や年齢別BMIから評価 標準体重(平田法) 身長160cm以上 (身長cm- 100)x 0.9 150 - 160cm (身長cm- 150)x 0.4
150cm未満 (身長cm- 100)
#18. 重症化・遷延化severe and enduring eating disorder, SEED J Psychiatr Res, 1985;19:493-508.
Adv Psychiatr Treat, 2014;20: 392-401.
J Eat Disord, 2018;6:41. を参考に作図 発症からの年数 有症状患者の割合(%) 7〜10年以上改善しない=遷延化(enduring)とする論文が多い
もう少し早くpick-upしたい 3年(〜5年)間、改善が乏しくエビデンスに基づく治療が奏効しない=SEED(ANならSEAN) ・慢性的な身体合併症
・急変
・(心理)社会的な問題→自殺
#19. 摂食障害は「死ぬ」病気長期化したANへの介入は難しくなる発症が多い思春期のうちにはやく見つけてあげたい(でも医療にはつながりにくい)
Refeeding症候群の病態と予防
#20. 摂食障害の定義と疾患概念
身体合併症の管理、特に重症例について
疾患急性期に患者とどのように関わるべきか 多職種連携や心理・行動療法も含めて Index
#21. 主な身体合併症 気分障害
不安障害
けいれん 低血圧
左室駆出率低下
(難治性)不整脈、突然死 機能性胃腸障害
上腸間膜動脈症候群
肝機能障害 Refeeding syndrome
歯牙侵食、う歯
唾液腺炎 貧血
低K血症、低Ca血症
低血糖 無月経
不妊 骨粗鬆症 易感染性、免疫不全
#22. 致死的な身体合併症 栄養障害 低血糖 低K血症 嘔吐や下剤・利尿薬を反復 QT延長症候群、Torsade de pointes Refeeding syndrome Suicide 低Alb/るいそう 胸水/気胸による呼吸不全 敗血症 CRBSI
日和見感染症 肝不全/DIC 痙攣
#23. Refeeding syndromeの病態とその予防
Refeeding症候群のリスクと治療
#24. Refeeding syndrome 飢餓状態
低栄養 異化亢進
グリコゲン枯渇
ビタミン・電解質の喪失
水分・塩分不耐 インスリン分泌 Glucose
K
Mg
PO43-
Thiamine 低カリウム血症
低Mg血症
低リン血症
チアミン喪失
全身浮腫 Eur J Clin Nutr, 2008;62:687–694.
を元に作図
#25. Refeeding syndrome リスク NICE Clinical guideline Published: 22 February 2006
www.nice.org.uk/guidance/cg32 AN/BNに対する最適なスクリーニングツールはまだないが、入院が必要な患者の多くは上記基準を満たす 以下の1つ以上を満たす:
☑️BMI 16 kg/m 2未満
☑️過去 3 ~ 6 か月以内に 15% を超える意図しない体重減少
☑️10日以上栄養摂取がほとんどまたはまったくない
☑️摂食前に低レベルのカリウム、リン酸塩またはマグネシウム
または、以下の2つ以上を満たす:
☑️BMI 18.5 kg/m 2未満
☑️過去 3 ~ 6 か月以内に 10% を超える意図しない体重減少
☑️5日以上栄養摂取がほとんどまたはまったくない
☑️アルコール乱用またはインスリン、化学療法、制酸剤、利尿剤などの薬物の使用歴
#26. Refeeding syndromeの予防投与カロリー制限 NICE Clinical guideline Published: 22 February 2006
www.nice.org.uk/guidance/cg32
Nutr Clin Pract. 2020;35(2):178-195(ASPEN) NICEガイドライン
5-10kcal/kg/dayから開始し、4-7日で必要カロリーを目指す AN患者への栄養療法は、近年では早期に必要カロリーを充足させ、体重増加に繋げることが望ましいとされる(20kcal/kg/dayくらい、週1kg〜↑を目指す)
#27. Refeeding syndromeの予防投与カロリー制限 NICE Clinical guideline Published: 22 February 2006
www.nice.org.uk/guidance/cg32
Nutr Clin Pract. 2020;35(2):178-195(ASPEN) NICEガイドライン
5-10kcal/kg/dayから開始し、4-7日で必要カロリーを目指す ただしHigh risk(BMI<14、入院時点で重度の身体合併症がある)の場合、5kcal/kg/dayから開始し、5-10kcal/kg/dayずつ増量を行うのが安全だろう。元々食べていた量を参考に。低血糖の補正で過剰カロリー投与にならないように。(経静脈栄養だと過剰な水分の負荷になってしまうことも問題)
Wernicke予防のため、チアミンを含むビタミン補充を行う(他のビタミンB群なども枯渇しているので、総合ビタミン剤がベター) AN患者への栄養療法は、近年では早期に必要カロリーを充足させ、体重増加に繋げることが望ましいとされる(20kcal/kg/dayくらい、週1kg〜↑を目指す)
#28. 低K血症 利尿薬・下剤の使用、嘔吐による喪失、低Mg血症 間質性腎炎→腎不全(クレアチニンではわからない) Treatment 硫酸Mg注射液(経口補正はできない)
重症(K<2.5mEq/Lないし、さらなる低下が予想される場合):静脈投与より高濃度のK投与が必要あるいは糖・水分負荷を避けるため、中心静脈からの投与が望ましい 安全であり、第一選択
アスパラK(1.8mEq/錠)、グルコン酸K(5mEq/錠)、塩化K徐放錠(8mEq/錠) 心電図モニター
重症身体合併症の管理と治療法
#29. 脱線 経口カリウム製剤について 各製剤で添付文書で規定される常用量が異なる=製剤ごとに生体利用率・移行性が異なる(アスパラKは生体利用率が良い) mEq換算で、ざっくり アスパラK
(1.8mEq) グルコン酸K
(5mEq) 塩化K徐放剤
(8mEq) 1 2.5 2 : : 例えば アスパラK 4錠(7.2mEq) ≒ グルコン酸K 4錠(20mEq) ≒ 塩化K徐放錠2錠(16mEq) アスパラKへの変更時は「半量以下」からと覚えるとよい 出典:ニプロESファーマ株式会社 Q&A一覧【アスパラカリウム錠300mg】他のカリウム製剤(経口剤)からアスパラカリウム製剤(経口剤)へ切り替える際の換算量は?
https://www.nipro-es-pharma.co.jp/product/di/qadetail.php?qano=50244 ちょっと
#30. 低リン血症 呼吸筋機能不全、呼吸不全 Treatment リン酸Na注射液(10mmol/20ml=310mg) 意識障害、けいれん 20-40mg/kg/日(最大 3000mg/日) ホスリボン 6P 3X(600mg/日) アルジネード®️ 125ml (630mg, 100kcal)(アルジネードウォーターでも225mg/125ml)
牛乳 100ml (96mg, 約70kcal)
#31. 肝障害 Treatment 低栄養に伴う肝障害と再栄養に伴う肝障害の他、アセトアミノフェンなどによる薬剤性肝障害も起こしやすい 栄養開始前 脱水の評価、介入
再栄養(脂肪製剤も)
薬剤性肝障害の鑑別 栄養開始後 摂取エネルギー量の軽減
薬剤性肝障害の鑑別
#32. 微量元素急いで補充する必要はないが、長期飢餓状態や経口摂取困難時に Treatment
(経口摂取・経管栄養確立前) フェジン®︎(Fe)
TPN、メドレニック®︎、エレメンミック®︎(Fe、Zn、Cu、ヨウ素、マンガン)
アセレンド®︎(セレン) 枯渇しやすさ(私見)Fe > Zn >> Cu > Se >> I, Mn, Co, Cr, Mo 特に貧血を伴う場合、鉄欠乏性貧血以外に、V.12欠乏・葉酸欠乏、亜鉛・銅欠乏(大球性貧血)、セレン欠乏、コバルト欠乏、(カルニチン欠乏)を考慮 インクレミンシロップ®︎(Fe)
エルカルチンFF錠・内用液®︎(カルニチン) 褥瘡など皮膚病変の治癒促進するためにも、亜鉛や銅の補充を考慮(ココアも有効)
#33. その他 貧血や低栄養状態の悪化を防ぐために、低体重時には女性ホルモン療法は行わない。体重増加(標準体重70%以上)したところで婦人科と相談 無月経 骨粗鬆症 低栄養からの回復が一番の治療カルシウム、ビタミンDやビタミンKを適宜補充 浮腫 胸腹水や心嚢水増加による症状だけでなく、患者の不安に結びつきやすい
少量のループ利尿薬(電解質注意)とカリウム保持性利尿薬を試す(濫用注意) 免疫不全 低栄養状態と免疫不全の関連についてはまだ不明なことが多い医療関連感染症(CRBSIやMRSA感染)の他、時に結核や日和見感染を起こす
#34. 重症身体合併症の管理 まとめ 心電図をモニタリング QT延長や致死性不整脈の検出
顕著な低K血症やQT延長があればICU等での管理が望ましい 血糖定期測定と最低限の補正 総合ビタミン製剤(特にB群)
頻回な低血糖の補正が過剰なエネルギー負荷になることに留意 カリウムとリンの補正 マグネシウムも
初期評価で正常でも容易に低下するため、こまめにチェック 体液バランスの評価と是正(過剰も不足も有害)
利尿薬を使用するときには電解質異常の出現に注意
急性期管理の問題点と治療拒否
#35. 摂食障害の定義と疾患概念
身体合併症の管理、特に重症例について
疾患急性期に患者とどのように関わるべきか 多職種連携や心理・行動療法も含めて Index
#37. 強引な栄養療法の導入
急激な体重増加 治療関係の悪化 身体合併症の治療、栄養療法 致死的な身体合併症をコントロールするために重要ではあるが、
結果として患者との関係が悪化する可能性がある
#38. 治療拒否
病識の乏しさ 両価性 ☑️重症なAN患者ほど、驚くほどに病識に乏しい(認知機能そのものの低下や、重度のるいそうそのものが影響しているかもしれない) 治したい気持ち 体重を増やすのが怖くて、このままでいたい気持ち ☑️両価性Ambivalence
#39. 逸脱・問題行動 ☑️自傷行為 リストカット、医薬品多量服薬
☑️危険行動/犯罪
☑️治療に対する拒否的行動 取り決め・約束を守れない、食事を捨ててしまう
☑️時に、医療従事者を「操作」するように振る舞う しばしば「一生懸命な」スタッフが巻き込まれる。毅然とした対応が必要。
#40. 逸脱・問題行動 ☑️自傷行為 リストカット、医薬品多量服薬
☑️危険行動
☑️治療に対する拒否的行動 取り決め・約束を守れない、食事を捨ててしまう
☑️時に、医療従事者を「操作」するように振る舞う しばしば「一生懸命な」スタッフが巻き込まれる。毅然とした対応が必要。 一方で、治療とは本来患者の同意に基づくべきであり、過度な強制的対応はその後の患者-医療者関係を損ない、長期的な予後に影響するかもしれない、という懸念
多職種連携と心理療法の重要性
#41. 誰が、どこで治療する?
それぞれに一長一短
#42. 身体合併症 心理的問題(社会的) 神経機能的異常 (精神的) 心因 内因 気分障害
強迫性障害
統合失調症
希死念慮
認知機能低下
不安障害
アルコール使用障害 低い自己評価
完璧主義
対人関係の問題
孤独感
正当化
攻撃性
適応障害
パーソナリティ障害 薬物療法が
有効なこともある 精神療法が主体 心理教育、心理(精神)療法、薬物療法を
身体合併症の改善とともに、あるいは並行して行う
#43. 身体科 精神科
(心療内科) 身体合併症の管理・治療 心理・精神療法 患者・家族との関わり方 基本的な知識の共有
助言・スムーズなコンサルト/連携
#44. では、どのように患者と関わるべきか
多職種連携と心理療法
#45. 多職種連携 ☑️(特に重症例では)些細な変化が急変のサインであることがあるEx)治療が順調だったのに、急に拒否的な変化 →実は敗血症の予兆「せん妄」だった、電解質異常だった、など身体合併症の増悪であることも
☑️大きな治療方針だけでなく、「伝え方」も共有スタッフ間で話す内容に微妙な齟齬があるだけでも、不信感に繋がることがある☑️とにかく治療には「多大なるエネルギー」が必要であるため、effortを分配すること、情報を共有することが重要
#46. 家族との関わり ☑️家族はしばしば「罪悪感」を抱えているこれが後にトラブルの原因となることがある(治療がうまくいかないこと、不満の矛先は医療者へ)。その思いは吐露して共有させてもらいつつも「一生懸命」な家族を疲弊させないように。
☑️患者と家族に対して「致死的な病態」であることを、繰り返し伝える必要がある
☑️診療チームに「患者」と「家族」を組み込む家族からの独立したアドバイスが行われないように可能なら、患者の思いを受け止めることに専念してもらう
☑️家族療法(小児・若年者)
#47. 心理療法 ☑️認知行動療法(ガイデッドセルフヘルプ、CBT-E)
☑️FBT(Family-Based Treatment)
など
AN(特にSEAN)に対する心理療法には強固なエビデンスがないものの、遷延・重症化したAN患者にも有効である可能性がある。非専門家も重要な部分については理解・共有しておくのが良いだろう
#48. 認知行動療法 ☑️認知や行動に働きかけることで、変容しにくい感情や身体反応を変容する
☑️個人の中で生じる「認知」「行動」「感情」「身体症状」の間の悪循環を断つような介入☑️あらかじめ決められたプログラムの中で、目標に向かうモチベーションを高めながら価値観と向き合いながら行動を変えていく(時に行動制限とその段階的解除を伴う)☑️患者自身が問題となっている認知や行動に向き合えるように、共感し(あなたの感情は正当である) モチベーションを維持することや小さな成功体験を意識させる
#49. ガイデッドセルフヘルプGuided self help セルフヘルプ:自ら病気に取り組むことで認知を修正自己流だと、余計に悪化させてしまうことも“ガイデッド(Guided):治療者が方向性を導いてあげる☑️本人が困っていることは何かを考え、共有する
☑️体重や食事量について信頼できる報告が得られるような関係を築く(これがなかなか難しい)
☑️体重以外の症状の観察を促す☑️次の外来までの課題を出す(できれば自分でみつけられるように促す)
#50. CBT-E摂食障害に焦点化されたエビデンスのあるプログラム化された認知行動療法 0)食生活の修正、体重調節行動を修正(まずは体重を回復させることが先決)
1)疾患を持続させている精神病理を推定するように情報を集める
2)フォーミュレーション(病態概念図)を作成3)介入点、課題(アジェンダ)を設定、話し合う4)宿題を持ち帰ってもらう 対応方法を話し合う 学ぶ5)介入の結果、宿題を確認し、フォーミュレーションを修正2)〜5)を繰り返す
#51. CBT-E 精神経誌(2020) 122巻9号
#52. BATHE
シンプルだが強力な面接技法 非専門家によるBrief therapyとして Background(背景) 患者背景 患者の話を聞く
Affect(感情) 問題に対する患者の感情を要約する
Trouble(問題) 現時点での主な(一番の)問題点は何か?
Handling(対応) その問題に対してどのように対処したか
Empathy(共感) 患者の対応・努力に共感し、正当化する 困難な状況にある患者やいわゆるDifficult-patientと対峙するときに「効く」
特に患者の感情(Affect)を要約し、その感情を正当化(Empathy)することは重要であり、それだけでcureになりうる(≠行動の正当化) The Fifteen Minute Hour: Efficient and Effective Patient-Centered Consultation Skills, Sixth Edition
外来診療によく効くBATHE法(生坂政臣 翻訳)
#53. 診療にあたっては
近くにいる
経験豊富な診療チームと連携をとること
#54. 重症摂食障害患者へのアプローチ 身体合併症、
特にRefeeding症候群への
介入・管理 心理療法
薬物療法 多職種の関わり
ケア
教育 独立ではなく相互補完的
#55. 重症摂食障害患者へのアプローチ 身体合併症、
特にRefeeding症候群への
介入・管理 心理療法
薬物療法 多職種の関わり
ケア
教育 独立ではなく相互補完的 関係者間のコミュニケーション
・目標を設定
・知識、情報の共有
#56. 摂食障害の定義と疾患概念複雑で個別性が大きい、致死的
身体合併症の管理、特に重症例について急性期はRefeeding症候群を厳重に管理
疾患急性期に患者とどのように関わるべきか 多職種が関わる・情報共有ケアに関する共通認識をもつ Summary