#4.
本スライドのゴール • Withコロナ時代のインフルエンザ診療(疫学・診 断・治療)の原則を学ぶ • インフルエンザに対する抗ウイルス薬の違いを学ぶ 本スライドの対象 • インフルエンザ診療の原則に自信をもてない全ての 初期研修医
#5.
目次 1. インフルエンザは流行するのか?(疫学) 2. インフルエンザの臨床症状 3. インフルエンザの検査診断 4. インフルエンザの治療薬
#6.
目次 1. インフルエンザは流行するのか?(疫学) 2. インフルエンザの臨床症状 3. インフルエンザの検査診断 4. インフルエンザの治療薬
#7.
インフルエンザウイルス感染症 上気道感染症 感染力が強く、致命率も高い 65歳以上の高齢者や基礎疾患を有する人は重症化しやすい A・B・C型があり、A型は変異型が出現しやすい 毎年ウイルスは変異し、流行状況が異なる 世界的な大流行を起こす ウイルスに対するワクチンによる免疫の持続は短いと報告
#8.
新型コロナウイルス感染症とインフルエンザ インフルエンザは、従来日本では冬季に流行する感染症で あった 新型コロナウイルス感染症の流行により、疫学が変化 新型コロナウイルス感染症の流行初期にはインフルエンザ は流行せず Sakamoto H, Ishikane M, Ueda P. JAMA. 2020 May 19;323(19):1969-1971.
#9.
インフルエンザの疫学の変化に注意 2023年は、夏季にも小児を中心にインフルエンザが流行 明らかな原因は不明だが、新型コロナウイルス感染症の5 類感染症への分類に伴う感染対策が弱まったこと、インフ ルエンザが一定期間流行しなかったことによる免疫低下な どが考えられている • 国立感染症研究所や自治体のHPで流行を探知しよう https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/813-idsc/map/130-flu-10year.html
#10.
目次 1. インフルエンザは流行するのか?(疫学) 2. インフルエンザの臨床症状 3. インフルエンザの検査診断 4. インフルエンザの治療薬
#11.
新型インフルエンザ: 神戸のケースの報告 38.0℃未満も結構いる 関節痛は20%程度 咳嗽は80%もいる https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/influ/090522nishikoube_report.pdf
#12.
米国の呼吸器症状のある医療従事者の原因調査 243/449人(54%)が何からの病原体陽性 インフルエンザと診断された病院職員:34人(7.6%) 全てのインフルエンザ患者が咳をしていた Clinical Infectious Diseases. 2015;60(11):1591–5
#13.
熱のないインフルエンザにどう対処する? 熱が低いが働くことは出来る 軽い症状のまま働く人がいることが問題 インフルエンザは咳が出ている者がほぼ100% 熱がなくてもインフルエンザ、いきなり咳があればインフルエンザ 軽い症状の方を含めた咳エチケットの推進が必要 Clinical Infectious Diseases. 2015;60(11):1591–5
#14.
軽症や無症状のインフルエンザに注意 軽症や無症状などの不顕性感染が多い Emerging Infect Dis. 2016;22:1052–6 軽症や無症状の患者は、ウイルス排泄期間が短い Clinical Infectious Diseases. 2017;64:736–42 重症化リスクのない人にとって、抗ウイルス薬の効 果は有症状期間を約1日短縮する程度 Cochrane Database Syst Rev. 2014 Apr 10;(4):CD008965 無症状や軽症患者がインフルエンザの流行に及ぼす 影響はよく分かっていない Public Health Rep. 2009;124:193–6
#15.
目次 1. インフルエンザは流行するのか?(疫学) 2. インフルエンザの臨床症状 3. インフルエンザの検査診断 4. インフルエンザの治療薬
#16.
インフルエンザ迅速抗原検査の限界 日本では迅速抗原検査が主流 感度 :52-90% 特異度:83-99.8% 発症後24時間以内は感度が 低い Lancet 2003;362:1733 http://www.m-junkanki.com/diseases/influenza5.html
#17.
咽頭後壁のリンパ濾胞の限界 発症から診察までの時間: 7.8 ± 5.3時間 感度 : 95 -100% 特異度: 91- 98% General Medicine. 2011;12:51-60
#18.
研究の対象が限定的=比較的若年者 • 新型インフルエンザ(平均年齢が 15 ± 6.7歳) • 迅速検査陽性+PCR検査 迅速検査陰性例のフォローが出来ていない可能性 非特異的なリンパ濾胞もある(形態的、色彩的) • 他のウイルス感染(アデノウィルス等) 咽頭後壁のリンパ濾胞は診断に有効かもしれないが 追試が必要 General Medicine. 2011;12:51-60
#19.
目次 1. インフルエンザは流行するのか?(疫学) 2. インフルエンザの臨床症状 3. インフルエンザの検査診断 4. インフルエンザの治療薬
#20.
インフルエンザの治療 休養 対症療法 – アスピリン、サリチル酸、NSAIDsは避ける 抗ウイルス薬 – 発熱期間を短縮する効果 – 発症後48時間以内に開始した場合、約1日間、病期を短縮 できると言われている Cochrane Database Syst Rev. 2014 Apr 10;(4):CD008965 – 重篤な合併症(肺炎等)が減少する「かもしれない」
#21.
オセルタミビルによる合併症予防 シスマチックレビューとメタ解析は既に3つ発表 一貫した結論は得られていない 研究者主導のいくつかの大規模なRCTが含まれてい ない
#22.
タミフルでインフル入院リスク低下せず カナダの研究グループが、オセルタミビル投与によるインフルエンザの入院リスク低下効 果を検討したランダム化比較試験(RCT)のシステマチックレビューとメタ解析を実施 2022年1月4日までに収載されたRCTと参考文献を検索/ハンドサーチし、最終的に15件 のRCTを解析対象として抽出 対照群は14件がプラセボ、1件が標準ケア 外来でインフルエンザ患者に同薬を処方しても入院予防効果は確認されなかった 相対リスク 0.77、95%CI 0.47~1.27、I2 = 0% リスク差 RD-0.14%、95%CI -0.32~0.16%
#23.
サブグループ解析でも入院予防効果なし 高齢者群(65歳以上)と非高齢者群 (RR 0.99 95%CI 0.19~5.13)、さま ざまな危険因子を有する高リスク群と低リスク群 (RR 0.9095%CI 0.37~ 2.17)、各試験のバイアスリスク別のサブ解析でも、オセルタミビルによる 入院リスク低下効果は示されず 有害事象に関しては、対照群に比べオセルタミビル群で 悪心: RR 1.43、95%CI 1.13~1.82、P=0.004 嘔吐: RR 1.83、95% CI 1.28~2.63、P=0.001 胃腸障害: RR 1.21、95%CI 1.02~1.45、P=0.03 のリスクが有意に高い 下痢: RR 0.76、95%CI 0.57~1.00、P=0.05 は低かった 重篤な有害事象の発生リスクは両群で差がなかった RR 0.71、95%CI 0.46~1.08、P=0.11
#24.
重症化予防への使用にば 高リスク集団での臨床試験が必要 今回のメタ解析の対象は既報に比べ3000例以上多いが、それでも オセルタミビルによる入院リスクの低下は主解析、サブ解析のい ずれにおいても見られなかった 一般の外来患者にオセルタミビルを処方しても、入院に至る重症 転帰を予防できる可能性は低いと結論 しかしながら、そもそも入院率は対照群でも0.6%(95%CI 0.14 ~1.07%)と極めて低かった 今後も重症合併症予防を期待してオセルタミビルを処方し続ける のであれば、ベネフィットが得られる可能性があるよりリスクが 高い患者集団を対象に臨床試験を実施すべき
#25.
インフルエンザ合併症のリスクの高い患者 5歳未満(とりわけ2歳未満)の幼児 65歳以上の高齢者 慢性肺疾患(気管支喘息を含む)・心血管疾患・腎疾患・肝疾患・血液疾患・代謝 性疾患(糖尿病を含む)・神経疾患(脳脊髄障害、末梢神経障害、筋障害、てんか ん、脳卒中、精神遅滞、中等度以上の発達異常、筋萎縮、脊髄外傷を含む) 免疫抑制状態の患者(免疫抑制治療を受けているあるいはHIV感染を含む) 妊婦および出産後2週以内の産褥婦 アスピリンまたはサリチル酸を含む薬物治療を受け、ライ症候群のリスクのある18 歳以下 BMI 40以上の肥満者 ナーシングホーム等の長期療養施設入居者 日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」2019年10月24日
#26.
治療を開始する対象 入院までの期間に関わらず、インフルエンザで入院したすべ ての患者 罹病期間に関わらず、重症あるいは症状の進行する外来患者 慢性疾患及び免疫抑制患者を含む、インフルエンザの合併症 のリスクが高い外来患者 2歳未満の小児および65歳以上の高齢者 妊婦および産後2週以内の患者 インフルエンザが確定あるいは疑われたならば、ワクチン接種の有無に関わ らず、可及的早期に抗ウイルス治療を開始する 日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」2019年10月24日
#27.
治療を開始を検討する対象 発症後2日以内の外来患者 インフルエンザの合併症のリスクの高い人、とりわけ重症の 免疫抑制患者と家庭内で接触のある症状を呈した外来患者 インフルエンザの合併症のリスクの高い人、とりわけ重症の 免疫抑制患者を日常的にケアする医療従事者の患者。 インフルエンザの合併症のリスクのない患者については、インフルエンザが 確定あるいは疑われたならば、ワクチン接種の有無に関わらず、抗ウイルス 治療を検討してよい。 日本感染症学会提言「~抗インフルエンザ薬の使用について~」2019年10月24日
#28.
抗ウイルス薬 オセルタミビル ザナミビル ラニナミビル バロキサビル ペラミビル ファビピラ ビル 方法 内服 吸入 吸入 内服 静注 内服 期間 回数 1日2回 5日間 1日2回 5日間 1回 1回 1日1回 最大5日間 1日1回 5日間 特徴 • • 使用実績が多い 小児に対しても 2018年に公知 申請により承認 • 操作が 煩雑 • 服薬指導 が必須 • • 薬剤耐性 高価 • 内服困難 例や腸間 吸収低下 例に使用 • • 予防投与 1日1回 7-10日間 1日1回 7-10日間 1日1回 2日間 1回 内服可能であればオセルタミビルによる内服 内服不可能であればペラミビルによる静注 動物実験 において 胎児に対 する催奇 形性 一般臨床 で使用経 験なし
#29.
Take Home Messages 1. インフルエンザの多くは咳を伴い、発熱を伴 わない 2. 重症化リスクの高い患者を対象に、オセルタ ミビルなどの抗ウイルス薬の投与を検討する 3. 新しい抗ウイルス薬も出はじめたwithコロナ 時代であるが、インフルエンザ診療の原則に 大きな変化はない