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Lemon@感染症

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意識障害を主訴に救急搬送されたレジオネラ感染症の1例

  • 呼吸器内科

  • 救急科

  • 感染症科

  • レジオネラ肺炎
  • シプロフロキサシン
  • レジオネラ感染症
  • ポンティアック熱

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Lemon@感染症

急性期総合病院

内容

レジオネラ感染症の多彩な症状や画像所見を知り、レジオネラ感染症を疑うポイント・適切なアプローチ(診断・治療など)の学習をゴールとしたスライドです。救急・呼吸器・感染症診療に関わる全ての医療従事者を対象としています。

◎目次

・本スライドのゴール、本スライドの対象

・レジオネラ感染症の歴史

・レジオネラ感染症の疫学

・症例

・入院時血液検査・尿検査所見

・入院時の画像所見

・AIUEOTIPSを用いた意識障害の鑑別

・追加の問診事項

・追加の検査所見

・Problem List

・入院後経過

・レジオネラ感染症の病型

・微生物学的特徴

・リスク因子①:環境

・リスク因子②:宿主

・温泉水からのレジオネラ菌の分離

・レジオネラ肺炎の主な臨床症状

・レジオネラ肺炎の主な治療

・レジオネラ肺炎の予後

・Take Home Messages

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医/専門医

参考文献

  • レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版

  • Mandell,Douglas Bennett’s Principles and Practice of Infectious Disease, 9th ed.

  • 古畑勝則ら 温泉水からのレジオネラ属菌の分離状況 感染症学雑誌 2005年

  • Legionella Net

テキスト全文

  • 1.

    意識障害を主訴に救急搬送された レジオネラ感染症の1例 Lemon@感染症 日本感染症学会専門医・指導医・評議員 twitter: @Dr_lemon_infect

  • 2.

    本スライドのゴール • レジオネラ感染症の多彩な症状や画像所見を知り、 レジオネラ感染症を疑うポイントを学ぶ • レジオネラ感染症の適切なアプローチ(診断・治療 など)を学ぶ 本スライドの対象 • 救急・呼吸器・感染症診療に関わる全ての医療従事者

  • 3.

    レジオネラ感染症の歴史  1976年、米国フィラデルフィアで発見 在郷軍人会でホテルの宿泊客・通行人221名に感染 し34名が死亡  名前は、‘在郷軍人(legion)’と ‘肺を好む (pneumophila)’に由来  本邦では1981年に初めて報告

  • 4.

    レジオネラ感染症の疫学  市中肺炎の原因の2~9% 市中肺炎の4大原因菌  年々報告件数が増加  第4類感染症 全数報告対象疾患(7日以内に届け出)

  • 5.

    症例 【患者】 58歳男性 【主訴】 意識障害 【現病歴】情報は娘、義理の息子、次男より聴取 医療機関通院歴がなく既往歴が不明な独居の患者 入院6日前に家族との電話で40度程度の発熱があった と話していた 入院5日前に『熱はさがったが、体が疲れていて食べ ると吐いてしまうため、体に何かにあたったのではな いか』との内容のメールが家族に届いた

  • 6.

    症例 入院2日前、義理の息子が連絡したが、連絡がとれなかっ た 入院前日18時頃、義理の息子が患者のマンションを訪れ たところ、部屋の中で荒い呼吸音がしているのを聞いた 布団からは離れたところで患者が寝ており、患者の周囲や トイレには吐物のような物があった 目を見開いている状態で会話が成立せず、呼吸も荒く救急 車要請し当院ER搬送となった。

  • 7.

    【既往歴】 医療機関通院歴なし(健康保険未取得) 繰り返す結膜炎(市販の点眼薬で加療) 【嗜好歴】 喫煙:40-60本/日 約35 年間(3年前に禁煙) 飲酒:焼酎2-3杯/日 【内服薬】なし【アレルギー】なし 【輸血歴】なし 【家族歴】 父 :心疾患で入院歴あり、老衰 母 :高血圧、脳出血 長男:糖尿病などで内服あり(詳細不明) 次男:高血圧、高尿酸血症 三男:34歳で突然死(心不全の診断)

  • 8.

    【バイタル】 血圧125/95 mmHg 脈拍127/分・整 呼吸数 42/分 体温 38.1 ℃ Sat 88%(Room Air) 【意識レベル】 GCS E4V1M1 【全身状態】不良 【頭頚部】両眼球結膜充血あり、眼瞼結膜黄染なし 右眼眼脂あり、点状出血なし 副鼻腔圧痛なし、項部硬直あり、口腔汚染著明 【胸部】 両側肺野にcoarse crackles聴取、wheeze聴取せず 心音 murmur聴取せず、異常心音聴取せず 【腹部】 緊満感あり、圧痛なし、筋性防御なし 【背部】 CVA叩打痛なし、脊柱叩打痛なし 【下肢】 浮腫なし 【皮膚】 殿部、第4・5胸椎周囲にⅠ度褥瘡

  • 9.

    入院時血液検査・尿検査所見 WBC Hb 14600 /μl 20.1 g/dl TP 8.9 g/dl Na 140 mEq/L Alb 3.6 g/dl K 6.1 mEq/L RBC 596×106 /μl AST 98 IU/l Cl 105 mEq/L Hct 14.8×106 % ALT 46 IU/l Ca 8.8 mg/dl Plt 148000 LDH 473 IU/l Glu 278 mg/dl T-Bil 0.9 mg/dl γGTP 81 IU/l U-SG 1.030> /μl PT INR 1.06 ALP 255 IU/l U-Glu 1+ APTT 32.8 Sec BUN 67.3 mg/dl U-Ket +/- FBG 1185 mg/dl Cr 1.12 mg/dl U-OB 3+ D-dimer 20.2 μg/ml CK 4943 IU/L U-pH 5.5 U-pro 2+ U-uro 0.1 U-WBC - U-Nit -

  • 10.

    入院時の画像所見  胸部単純レントゲン写真では、右肺底部含気不良を認め、左 中下肺野に気管支壁肥厚および周囲浸潤を認める  胸部単純CTでは、左肺下葉に気腫の抜けを伴うすりガラス陰 性の分布を認める

  • 11.

    AIUEOTIPSを用いた意識障害の鑑別 A I アルコール インスリン 低血糖 U E O T I 尿毒症 電解質異常 内分泌疾患 麻薬、低酸素血症 外傷 感染症 P 精神疾患、心因性 S 脳血管障害、痙攣

  • 12.

    追加の問診事項 【麻薬使用歴】なし 【職業歴】警備員アルバイト 空調整備(主にコンビニ) 【精神疾患】精神疾患・けいれん発作の既往はない 【鳥接触歴】なし 【温泉】スーパー銭湯に入湯 【海外渡航歴】なし 【周囲の類似症状】なし

  • 13.

    追加の検査所見 【髄液検査】 糖 139 mg/dl, 蛋白 46 mg/dl, 細胞数 5個以下 HSV-1 PCR 陰性、HSV-2 PCR 陰性 【血液ガス(FiO2 0.6)】 pH 7.441, PaCO2 34.9 mmHg,PaO2 72.5 mmHg HCO3- 23.4 mEq/L 【喀痰培養】 グラム染色陰性 チール・ニールセン染色陰性 【クラミジアニューモニア抗体】IgA 1.988 倍, IgG 1.935 倍 【マイコプラズマPA】 40倍未満 【HIV抗体】 陰性 【インフルエンザ抗原】A陰性、B陰性 【尿中抗原】肺炎球菌肺炎陰性

  • 14.

    Problem List #1 感染症 #1-1 意識障害 #1-2 発熱 #1-3 嘔吐 #2 #3 #4 #5 #6 #7 Ⅰ型呼吸不全 気腫性病変 血尿・蛋白尿 高CPK血症 肝酵素上昇 眼球結膜充血

  • 15.

    入院後経過 第1病日 救急外来で非侵襲的陽圧換気を装着 集中治療室に入出 敗血症、重症肺炎、細菌性髄膜炎、ヘルペス脳炎な どを考えて、以下の抗菌薬と抗ウイルス薬を開始 ・セフトリアキソン1回2gを12時間毎 ・バンコマイシン1回1gを12時間毎 ・アンピシリン1回2gを6時間毎 ・アシクロビル1回500mgを8時間毎 第2病日 意識障害を伴う重症肺炎の点から、レジオネラ肺炎 も疑われ、シプロフロキサシン1回300mg12時間毎 を追加

  • 16.

    入院後経過 第3病日 尿中レジオネラ抗原が陽性でレジオネラ肺炎 と診断 他の抗菌薬と抗ウイルス薬は中止し シプロフロキサシンのみに変更 酸素化も改善したので、ベンチュリーマスク に変更 第16病日 経過良好のためシプロフロキサシン(16日間 からレボフロキサシン1日1回500mg内服に 変更 第26病日 レボフロキサシン内服継続とし自宅退院 最終診断 レジオネラ肺炎

  • 17.

    レジオネラ感染症の病型 レジオネラ肺炎(在郷軍人病) ポンティアック熱 発熱や筋肉痛を認めるが軽症 通常は治療なしでも2~5日間で自然回復する  その他に肺外疾患として 心内膜炎、蜂窩織炎、副鼻腔炎 関節炎、膵炎、腎盂腎炎など

  • 18.

    微生物学的特徴  好気性ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌  水系、土壌などに存在  レジオネラ属には現在50種類以上の菌種  20菌種にヒトでの感染が確認  Legionella pneumophilaが最も一般的な菌種  15種類の血清型が発見されている  Legionella pneumophila 血清型1がレジオネラ感染症の70 ~80%を占める

  • 19.

    リスク因子①:環境  浴場施設、温泉(特に循環式)  冷却塔  院内感染の場合は給湯システム、加湿器、吸引水  加湿器  井戸水の使用  上水道の破損  気泡風呂  土壌 • 本症例では、温泉が該当

  • 20.

    リスク因子②:宿主  男性  喫煙  飲酒  糖尿病  免疫抑制状態(移植患者、ステロイドの使 用)  慢性肺疾患  慢性腎不全  旅行 • 本症例では、男性、喫煙、飲酒、糖尿病が該当

  • 21.

    温泉水からのレジオネラ菌の分離 調査した温泉施設の中でレジオネラが検出された施設の割合 北海道:14/56(25%) 東北 :31/101(30.7%) 関東 :47/153(30.7%) 中部 :45/154(29.2%) 近畿 :20/78(25.6%) 中国 :13/42(31%) 四国 :12/42(28.6%) 九州・沖縄: 22/84(26.2%) 合計 :204/720(28.7%) 内湯VS露天 :137/447(30.6%) VS 61/222(27.5%) 循環式VSかけ流し :38/100(38%) VS 68/249(27.3%) pH7.6以上 :24.8% pH3.1~7.5:34.8% pH3以下:4.9% 古畑 勝則ら 温泉水からのレジオネラ属菌の分離状況 感染症学雑誌 2005年

  • 22.

    レジオネラ肺炎の主な臨床症状  潜伏期:2-10日間(平均4-5日)  39℃以上の高熱(比較的徐脈)  呼吸器症状(乾性咳嗽、呼吸困難など)は軽度  中枢神経症状(意識障害、歩行困難):10~50%  消化器症状(吐気、嘔吐、下痢):10~30%

  • 23.

    レジオネラ肺炎の主な治療 レジオネラ菌は細胞内移行性菌のため、βラ クタム系やアミノグリコシドは無効 ニューキノロン系抗菌薬やマクロライド系 抗菌薬が有効 治療期間は2~3週間

  • 24.

    レジオネラ肺炎の予後 3日から5日間で症状の改善や解熱 適切な抗菌薬が投与されない場合の致命 率は60~70% 適切な治療でも10~20%が死亡 死亡例は発症7日以内が多い

  • 25.

    Take Home Messages 意識障害や消化器症状を伴う重症肺炎の場合 はレジオネラ肺炎を考える 初期治療として、シプロフロキサシンまたは アジスロマイシンを使用する

  • 26.

    参考文献  レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版  Mandell,Douglas Bennett’s Principles and Practice of Infectious Disease, 9th ed.  古畑勝則ら 症学雑誌 温泉水からのレジオネラ属菌の分離状況 2005年  Legionella Net 感染

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