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感染性心内膜炎のまとめ

  • 感染症科

  • 感染症科
  • 感染性心内膜炎
  • IE

17,469

43

2022/11/2
2022/11/2 更新

本スライドの対象者

研修医/専攻医

内容

当院の初期・後期研修医向けに行ったレクチャー資料です。

教科書、ガイドラインだけでなく、最近の話題まで広く取り扱いました。

ご興味があればどうぞ。

HasegawaKohei

堺市立総合医療センター


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感染性心内膜炎のまとめ

  1. 2022.09.27 感染性⼼内膜炎 堺市⽴総合医療センター 感染症内科 ⻑⾕川 耕平

  2. 感染性⼼内膜炎とは • ⼼内膜表⾯の病変に, 微⽣物が集塊を作る疾患 • ⼼臓弁が侵されることが多いが, 中隔⽋損内や壁在⼼内膜 にも起こりうる • ”bacterial endocarditis"と呼ばれていたが, 1960年代以 降”infective endocarditis"という⽤語が⼀般化された Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 80, 1068-1108.e12

  3. IEの診断が遅れた症例集 • 65歳⼥性, 尿管癌, 間⽋的発熱あり適宜抗菌薬投与されていた。1setのみ採取された⾎培 から3回連続C. striatumが⽣えたがコンタミネーションと判断。4ヶ⽉後, 2set採取した ⾎培からもC. striatum • 19歳⼥性, 収縮期雑⾳を指摘されている, 冬に発熱と頭痛ありインフルエンザとしてタミ フル内服。症状が続くため他院受診し, 髄液細胞数が微増していたため髄膜炎として4th セフェムとACVで治療開始。9⽇後, 右⽚⿇痺が出現し, ⾎培2setからMSSA • 78歳⼥性, MR+ARあり, 1ヶ⽉経過の倦怠感と体重減少を主訴に受診, ANAとRF陽性で ありRAとしてPSL+DMARDs開始。経⼝3rdセフェムも同時に開始。さらに1ヶ⽉後下腿 浮腫あり受診した際の⾎培は初回判定で陰性, TTEで僧帽弁に疣贅あり⼿術施⾏, 遅れて ⾎培からC. hominisが発育 Medicine (Baltimore). 2014;93(27):e237.

  4. IEは疑わなければ診断が遅れる • 診断が遅れるパターンとして - 適切な⾎液培養採取がなされなかった (1セットのみ採取, 症状が 揃っていないが感冒と診断など) - 不適切な抗菌薬使⽤ (抗菌薬ローテーション, 経⼝抗菌薬先⾏投与) - 関節痛, 抗核抗体陽性, RF陽性からリウマチ性疾患と診断され免疫抑 制治療を受けた Medicine (Baltimore). 2014;93(27):e237.

  5. 最後まで⾒つからないとどうなる? • ほぼ100%死亡する - 疣贅による⼼臓合併症によって - 疣贅から全⾝にばら撒かれた塞栓によって - etc

  6. 感染症医が介⼊すると増える? IE case Year Scand J Infect Dis. 2012;44(4):270-275.

  7. ⾒つからなかったものが⾒つかり始める • ⾎管現象:major arterial emboli, septic pulmonary infarcts, mycotic aneurysm, intracranial haemorrhage, conjunctival haemorrhages, and Janeway lesions Scand J Infect Dis. 2012;44(4):270-275.

  8. ⾼リスク患者を知る • 年齢≧60歳 • IV drug • 男性 • 維持透析 • 器質的⼼疾患 - 弁膜症 - 先天性⼼疾患 (例; VSD, ⼆尖弁) • ⾎管内カテーテル留置 • ⼼内デバイス埋め込み • ⼈⼯弁 • ⽪膚感染 • IEの既往 • ⼝腔衛⽣不良 JAMA. 2018;320(1):72-83.

  9. 臨床所⾒からいつIEを疑うか? • よくわからない熱が続いているとき • 亜急性経過で局在のない関節の痛みを訴えるとき • うっ⾎性⼼不全の患者に発熱や炎症所⾒があったとき • 新たな逆流性雑⾳を⾒つけたとき • 塞栓症状 (脳梗塞のほか, 腎臓・脾臓, 肺など) があるとき

  10. IEの症状 • たいてい発熱がある • 新規の⼼雑⾳は半数 • 末梢の塞栓症状は数% JAMA. 2018;320(1):72-83.

  11. がんばって出⾎斑を探す JAMA. 2018;320(1):72-83.

  12. 症例① • 特に既往のない39歳⼥性 • 5⽉10⽇に悪寒あり, 検温すると発熱していた。熱は続いていたが, 倦怠感 もほとんどなく, 仕事を続けられるくらいだった。 • 7⽉, 腰痛が出現し, 仕事ができなくなったため受診。

  13. 症例① • BP118/62, HR99(reg), RR12, SpO2 96%(RA), BT37.7 • ⼝腔汚染あり, 拡張期雑⾳あり, 椎体叩打痛なし, Psoas陽性, 結膜・四肢 に出⾎斑なし • 採⾎:WBC 8750 (N 89.2), CRP4.43, UN 14.9, Cr 1.26 • 検尿:⽐重1.007, pH5.0, 尿蛋⽩1+, 尿潜⾎3+, 病的円柱なし →⾃⼰免疫疾患?ということで, ⾊々抗体を提出のうえ⾎培採取し帰宅

  14. 症例① • 第2病⽇, ⾎液培養からViridans group Streptococcusが発育 • 腰痛が悪化しており下記画像検査施⾏するも原因不明 • - 造影CT:多巣性肺炎, 腎動静脈瘤 - 腰椎MRI:椎体や腸腰筋に明らかな信号変化なし TTE:NCC 12mm, RCC 8mmの可動性ある疣贅

  15. 症例① • 第4病⽇にAVR • 経過中, 腰痛消失 • Cre 1.26→0.8まで低下 • 尿検査は細かくフォローされていないが, 数年後のデータでは正常化

  16. 症例② • ⾊々既往のある両側TKA後の93歳⼥性 • 8⽉12⽇から⾷思不振, 様⼦がおかしくなった。19⽇に歩⾏できなくなり 救急要請。

  17. 症例② • BP 200/104, HR 100 (reg), RR 30, SpO2 99% (1L/min), BT 38.4 • 結膜・⼿指出⾎斑なし, ⼼尖部汎収縮期雑⾳あり, 呼気延⻑, wheezes聴 取, 右膝関節腫脹あり • 採⾎:WBC 13250, CRP 28.3, BNP 2549 • CXR:両側肺⽔腫

  18. 症例② • 第2病⽇から意識レベル低下, 四肢末端に虚⾎性変化出現 • ⾎液培養・関節液培養:Streptococcus dysgalactiae • TTE:僧帽弁に12mmの紐状エコー, AS mod〜sev, MR mild • 頭部MRI:さまざまな事相の多発脳梗塞 • 第4病⽇に永眠

  19. IEの経過を知る • 1885年, William OslerはIEを”simple”と”malignant”に分類 • ”simple”は現代で⾔うところの”subacute” • ”malignant”は”acute”に相当する Infect Dis Clin North Am. 2009;23(3):643-664.

  20. IEの経過を知る • Acute IE…急激な発熱や悪寒戦慄⽇にち単位で進⾏, 急性⼼不全や急性塞 栓症状 (⿇痺など), Janeway lesion (微⼩膿瘍)。S. aureusやβStreptococcusなど。 • Subacute IE…週〜⽉単位で微熱が続き, ⾮特異的な全⾝症状を呈する。 関節痛やOsler, ⽷球体腎炎など免疫複合体沈着による症状が⾒られること もある。CoNS, VGSやEnterococcus sp.など Infect Dis Clin North Am. 2009;23(3):643-664. 典型的な経過を辿らないことも多い ↓ IEは常に頭の⽚隅に置く必要がある

  21. (余談) ⻭科処置とIE ⻭科処置前予防的抗菌薬の適応1) • • • ⾼リスク患者に対して, 抜⻭などの侵襲的⻭科 処置前にAMPC 2g, CEX 2g or DOXY 100mg の予防的投与が推奨されている1) ⻭科処置時, ⼝腔衛⽣不良の患者は良好な患者 より⾼率に菌⾎症が⽣じる2) 1⽇3回以上の⾷事後の⻭磨きは, Streptococcal IEのリスク低下と関連する (⽖ 楊枝やデンタルフロス, ⻭間ブラシを除く)3) 1. Circulation. 2021;143(20):e963-e978. 2. J Am Dent Assoc. 2009;140(10):1238-1244. 3. Clin Infect Dis. 2017;64(12):1678-1685. ⼈⼯⼼臓弁 (経カテーテル的⼈⼯弁および同種移植 ⽚を含む) 弁輪形成術のリング, コード, クリップなどの弁形 成術後 IEの既往 先天性⼼疾患 (チアノーゼが是正されていないもの, または⼈⼯パッチ, ⼈⼯装具の部位に隣接する部位 に残存シャントまたは弁逆流を伴うもの) 弁逆流を伴う⼼臓移植

  22. 原因微⽣物 ⾃然弁, non-IVDUの場合 1. S. aureus 2. VGS 3. Enterococcus sp. 4. CoNS 5. Other streptococcus IVDU, IV drug user HACEK – Haemophilus aphrophilus (subsequently called Aggregatibacter aphrophilus and Aggregatibacter paraphrophilus); Actinobacillus actinomycetemcomitans (subsequently called Aggregatibacter actinomycetemcomitans); Cardiobacterium hominis; Eikenella corrodens; and Kingella kingae JAMA. 2018;320(1):72-83. supplementary

  23. VGSなら何でもIEを起こすのか? Stre • IEの頻度は, VGS>>β溶 連菌>肺炎球菌 • VGSと⼀括りにしても, その中でも違いはある Circulation. 2020;142(8):720-730.

  24. すでに抗菌薬が投与されているとき • 臨床的にIEが鑑別に上がる状況で適切な培養採取前に抗菌 薬が処⽅されている場合 - ⾎液培養を採取 (3セット) - 状態が安定しているならば抗菌薬を中⽌ - 数⽇後, ⾎液培養を再検 (7-10⽇要することもある) J Antimicrob Chemother. 2012;67(2):269-289.

  25. S. aureus菌⾎症を⾒たらIEを考える • SAB患者全体におけるIEの頻度は12%1) • PREDICTやVIRSTAなどのIEリスク評価スコアがある2-3) • 持続菌⾎症や塞栓症, IEの既往, ⼈⼯弁, CIED, IV drug使⽤などがあれば, IE の検索を⾏う必要がある 1. Arch Intern Med. 2003;163(17):2066-2072. 2. Clin Infect Dis. 2015;61:18-28. 3. J Infect. 2016;72:544-553.

  26. 連鎖球菌とS. aureusの病原性の違い A. 連鎖球菌は, 傷ついた弁内膜に定着し ⾎⼩板を凝集 B. S. aureusは, 傷がなくても炎症を起 こして⾎⼩板を凝集 Infective Endocarditis, Chapter 1, 1-23

  27. SABに対するVIRSTA score 項⽬ Pts 脳・末梢塞栓 5 髄膜炎 5 IE既往or⼼内デバイス埋め込み 4 弁膜症 3 静注薬物使⽤ 4 持続菌⾎症 3 脊椎椎体炎 2 市中発症 2 敗⾎症性ショック 1 CRP>19mg/dl 1 これらの項⽬があると IEを否定できない 合計が≦2点であれば 有病率11%の集団で IEの陰性適中率98.8% J Infect. 2016;72:544-553.

  28. SABに対するPREDICT study • IEのリスクを, SAB発症からDay 1とDay 5で2回評価 • Day 1 ≧ 4pts → , Day 5 ≦ 2pts • - Day 1…CIED (ICD 2pt, PPM 3pt, なし 0pt), Onset (市中 2pt, 医療福祉施設 1pt, 院内 0pt) → 0-5 pt → ≧ 4 ptならば感度30.4%, 特異度93.8% - Day 5…CIED (ICD 2pt, PPM 3pt, なし 0pt), Onset (市中 2pt, 医療福祉施設 1pt, 院内 0pt), 持続菌⾎症 (≧72h 2pt) → 0-7 pt → ≦ 2 ptならば感度, 陰性適中率100% SAB発症から5⽇⽬の時点で, 下記を満たせばIEではない* (有病率13%の集団で98.5%の精度) (1)CIEDなし (2)市中発症ではない (3)持続菌⾎症(≧72時間)ではない *⼈⼯弁⼼, 過去30⽇以内のope, ⾎培陽性本数が 多いことは, day 5のスコアに関連なくIEリスク Clin Infect Dis. 2015;61:18-28. Clin Infect Dis. 2021;73(7):e1745-e1753.

  29. VGSに対するHANDOC score 項⽬ Pts Heart murmur or valvular disease Aetiology 1 +1 if S. bovis, S. sanguinis, or S. mutans group +1 or if S. anginosus group -1 -1 Number of cultures 2set以上陽性 Duration of symptoms Only 1 species 症状が7⽇以上 単⼀菌の菌⾎症 Community acquired 1 ≧3点でIEに対する感度100%・特異度74% →≦2点で感染性⼼内膜炎を除外可能1) 1 1 1 ただし, IEの有無が不明な”unknown group”が”全員IE無し”に含まれている可能性があり, 仮に”全員IE”とい うworst case scenarioならば3点をカットオフにした場合, 感度36%・特異度73%になると指摘されている2) 1. Clin Infect Dis. 2018;66:693 2. Clin Infect Dis. 2018;66:1819

  30. 腸球菌に対するNOVA・DENOVA adapted NOVA1) 項⽬ Number of positive cultures ≥ 2 (N) Unknown origin of bacteremia (O) Prior valve disease (V) Auscultation of a heart murmur (A) DENOVA2) 項⽬ Pts 5 4 2 1 ≧4点でIEに対する感度97%・特異度23% Pt Duration of symptoms ≥ 7 days 1 Embolization 1 Number of positive cultures ≥ 2 1 Origin of infection unknown 1 Valve disease 1 Auscultation of murmur 1 ≧3点でIEに対する感度100%・特異度83% 1. Clin Infect Dis. 2016;63:771 2. Infection. 2019;47(1):45-50.

  31. 合併症 臨床像 凝固カスケード の活性化 内⽪組織マトリッ クスの破壊 全⾝性 免疫反応 疣贅の成⻑ 塞栓 転移感染巣 弁損傷 急性閉鎖不全症 弁周囲膿瘍 免疫複合体の 循環 ⽷球体腎炎 Osler結節 ⾎管炎 脳梗塞 ⼼不全 敗⾎症の遷延 腎不全 Nat Rev Cardiol. 2019;16(10):623-635.より作成

  32. ⼼臓合併症 • 弁膜症による⼼不全がIEの主な死因 • 稀に, ⼼室穿孔や急性⼼筋梗塞 (冠動脈内への塞栓) • 主に⼈⼯弁⼼内膜炎患者で弁周囲膿瘍 → ⼼臓伝導組織障害によるブロック/不整脈が起こりうる Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 80, 1068-1108.e12

  33. 塞栓性合併症 • 1) 治療開始2週間以内が多い 2) 脳塞栓が最多で, IEの10-20%に起こる • • 特に出⾎性梗塞が起こりやすく, 感染性脳動脈瘤の破裂による脳 2) 出⾎にも注意する • 脾臓や腎臓, 肺, 筋⾁, ⾻, 関節などに塞栓を起こした後, 膿瘍形 成することもある 1. Clin Microbiol Infect. 2006;12(1):5-12. 2. Infect Dis Clin North Am. 2002;16(2):507-xii.

  34. 免疫反応による合併症 • IEの治療が遅れる・遷延した場合, 免疫複合体による⽷球 体腎炎が⽣じうる • Osler結節も免疫複合体の沈着である • その他, 関節炎, ⼩⾎管炎を始め, ⾎液検査では補体低下, RF やANCA陽性を認めることもある N Engl J Med. 1976;295(27):1534-1535. Medicine (Baltimore). 2016;95(3):e2564. J Clin Invest. 1962;41(3):666-675.

  35. (余談) IEと⼤腸腫瘍 • S. gallolyticus groupの中で, 特にsubsp. gallolyticus菌⾎症患者は, 他菌 による菌⾎症患者と⽐較し⼤腸悪性腫瘍が5倍多い1) • in vitroで免疫逃避による前癌病変表⾯への定着のほか, β-catenin発現 による⼤腸癌細胞の増殖と腫瘍形成を促進する2) E. faecalisのIEは⼤腸病変 (腺腫や癌) と関連があるかもしれない3) 1. Clin Infect Dis. 2012;55(4):491-496. 2. Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 200, 2492-2504.e4 3. Mayo Clin Proc. 2021;96(1):132-146.

  36. 診断のための検査 •⾎液培養 •⼼エコー

  37. modi ed Dukeʼs criteria Major criteria ① ⾎液培養陽性 ・IEの典型的な起炎菌が⾎培2set以上で陽性 (VGS, S. bovis, HACEK, S. aureus)。Enterococcus sp.なら, 他に感染巣がない。 ・持続的な⾎液培養の陽性 - 12時間以上間隔をあけて採取した⾎培が2set以上 or 4set以上の⾎液培養のうち3set以上が陽性 ・Coxiella burnetiiが⾎液培養で⼀度検出される or anti-phase 1 IgG antibodyの抗体価が>1:800 ② ⼼内膜病変の所⾒: ・⼼エコー所⾒ - 弁または弁の⽀持組織に付着した腫瘤が逆流で揺れる, or ⼈⼯弁に腫瘤が付着して揺れる, 膿瘍, ⼈⼯弁の新たな 部分的な”ほつれ", 新たな弁逆流症 (以前から存在した雑⾳の変化, 増強では不⼗分) Minor criteria ・基礎疾患としての弁膜疾患や先天性⼼疾患, 薬物中毒 (iv drug) ・発熱 (> 38℃) ・⾎管病変:動脈塞栓, 敗⾎症性肺塞栓, 感染性動脈瘤, 頭蓋内出⾎, 眼瞼結膜出⾎, Janewayʼs lesion ・免疫異常:⽷球体腎炎, Oslerʼs nodes, Roth spots, リウマチ因⼦陽性 ・微⽣物:⾎培陽性であるがMajorは満たさない, またはIEの原因になる微⽣物の活動性感染を⽰す⾎清学的所⾒を認める。 臨床的基準: fi fi De nitive…Major×2, or Major×1+Minor×3, or Minor×5, Possible…Major×1+Minor×1, or Minor×3 Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 80, 1068-1108.e12

  38. 診断はMajorの2つが⼤事 ① 感染微⽣物の証明 ・⾎培2set以上で陽性 ・持続菌⾎症 ② ⼼病変の画像的証明 18 ・TTE/TEE, F-FDG/PET CT, ⼼臓CT

  39. ⼼エコー ⾃⼰弁⼼内膜炎の疣贅検出能1) 感度 TTE TEE 75% 96% 特異度 90% 90% • 機械弁での検出感度は TTE 50%, TEE 92%1) • 弁輪部膿瘍の検出感度は TEE 87%程度2) 1. Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128. 2. Heart. 2004;90(6):614–7.

  40. TEEで⾒えなければIEは否定できる? • 以下の場合は, TEEでも疣贅が⾒つかりにくい (1) ⼈⼯弁や重症MVP, ⽯灰化がある (2) 2-3mm未満の疣贅 (3) 既に疣贅が⾶んでいる • 疑わしい場合は, 5-7⽇後に再検が推奨されている 検査前確率 (⾒積もり) 次第 Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128.

  41. (余談) TEEできないときどうするの? • ESC 2015ではTTE/TEE以外のmodalityも推奨 1. 置換⼈⼯弁周囲における18F-FDG PET/CT (術後3ヵ⽉以上経過している場合) or ⽩⾎球 シンチSPECT/CTの取り込み 2. CTによる弁周囲膿瘍の検出 上記⼆つが, ESC modi ed criteriaのMajorに組 み込まれている Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128. fi •

  42. (余談) Multislice CT • 37⼈のIE患者 (⼈⼯弁 6⼈)に対し1) - 疣贅:感度96%, 特異度97% - 膿瘍/偽性動脈瘤:感度100%, 特異度100% ※reference standard:術中所⾒ • ≧10mmでは診断能はMSCT=TEE, <10mmではTEEで94.4%が同定され た⼀⽅CTは52.8%2) • TEEは⼩さな疣贅, 弁穿孔およびintracardiac stulaの検出に優れている が, MSCTは弁周囲膿瘍および冠動脈疾患の検出に有⽤2) fi 1. J Am Coll Cardiol. 2009;53:436–444. 2. Circ Cardiovasc Imaging. 2018;11:e006986

  43. Circ Cardiovasc Imaging. 2018;11:e006986

  44. (余談) • 18F-FDG/PET CT PVEの場合:感度91%, 特異度95% - 術後3ヶ⽉間は術後変化で集積が認められる場合がある1) • NVEの場合:感度39%, 特異度93%2) • 18FDG - PET/CT撮影の利点として, ⼼病変検出以外に以下がある3) 脳以外の全⾝の末梢性塞栓症と転移性感染症の検出 IEの素因となる潜在病変の診断 (腫瘍性病変) 代替感染源もしくは⾮感染症の同定 1. Cleve Clin J Med. 2019;86(8):559-567. 2. Eur J Nucl Med Mol Imaging 2013; 40(7):1102–1107. 3. Circ Cardiovasc Imaging. 2018;11:e007626.

  45. Cleve Clin J Med. 2019 Aug;86(8):559-567.

  46. 頭部CT・MRI • IE診断時, 30%に無症候性中枢神経合併症が⽣じている可 1) 能性がある • 特に脳出⾎, SAH合併時の早期⼿術は予後を悪化させる可 能性があるため2), 頭部CT・MRIはルーチンで撮影してよ い(と思う) 1. Clin Infect Dis. 2008;47(1):23-30. 2. Eur J Cardiothorac Surg. 2016;50(2):374-382.

  47. 治療のポイント • 患者背景 • 合併症 (特に中枢神経病変) があるかどうか • 原因菌は何か • ⼿術適応があるかどうか, あるなら緊急か待機か

  48. 抗菌薬の考え⽅ • 主に⻩⾊ブドウ球菌, VGSをカバーするが経過で区別する • 中枢病変 (髄膜炎, 脳塞栓, 脳出⾎) があれば, 中枢移⾏性 の良いものを選ぶ • 原則, ⾎培陰性から4-6週間の点滴加療が必要 - 途中弁⼿術を⾏い, その培養が陽性ならば治療期間は振り 出しに戻る (起点が⼿術⽇に変更される)

  49. Staphylococcus spp. • • • ⾃⼰弁 - ペニシリン感受性…PCG 1800-2400万U, ABPC 12g, CEZ 6g ペニシリン耐性・メチシリン感受性…CEZ 6g メチシリン耐性…VCM, DAP 8-12mg/kg ⼈⼯弁 - 上記に, RFP 900-1200mg + GM 3mg/kg を追加 (感受性があれば) 治療期間は6週間以上

  50. リファンピシンはいつ⾜すか? • PVEの場合, GMを含むレジメンを3-5⽇間先⾏させてから投与開始するこ とが推奨されている1-2) • 理由として, ①菌量が多い場合のrpoB変異による耐性化の懸念, ②増殖期 の細菌に対してin vitroでantagonisticに働く点, ③静⽌期の細菌に対して synergyを発揮する点が挙げられる3) 1. Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128. 2. Circulation. 2015;132(15):1435-1486. 3. Clin Microbiol Rev. 2019;32(2):e00041-18.

  51. 併⽤療法は必須なのか? • Staphylococcus spp.によるNVEに対して, AG併⽤は治療成績を改善せず腎 毒性を増やす1) • Staphylococcus spp.によるPVEに対して, 極めて⼩規模な研究だがAG+RFP 併⽤が弁培養の陰性化が得られやすく(転機評価なし)2), MRSE-PVEに対して RFP+VCMは殺菌的に働く3) - GM併⽤はStaphylococcus PVEの死亡率に影響を及ぼさない可能性4) - RFP併⽤もPVEの死亡率に影響がないかもしれない5) PVEならGM+RFPを併⽤を検討するが 腎機能や併⽤薬などとのバランスで決める 1. 2. 3. 4. 5. Clin Infect Dis. 2009;48(6):713-721. J Antimicrob Chemother. 2003;52(5):820-825. Rev Infect Dis. 1983;5 Suppl 3:S543-S548. J Infect Chemother. 2018;24(7):555-562. Clin Infect Dis. 2021;72(9):e249-e255.

  52. Viridans Group Streptococci ペニシリンを基本として, MICで分ける 治療期間:4-6週間 (GMは2週間) • ペニシリン感受性 (MIC≦0.12 μg/mL) • PCG 1200-1800万U, ABPC 12g, CTRX 2g ペニシリン低感受性 (MIC 0.25-2 μg/mL) - PCG 2400万U, ABPC 12g, CTRX 2g + GM 3mg/kg

  53. ゲンタマイシンには疑問の声もある • PC低感受性株に対するGMの追加は, 前向き研究に基づいた推奨ではない • MIC 0.125-0.5 μg/mLの場合, GM併⽤は⽣存に関連しない1) • MIC 0.25-2.0 μg/mLの場合, GM併⽤の有無によらず死亡率が⾼い2) 1. Clin Microbiol Infect. 2020;26(6):723-728. 2. Int J Antimicrob Agents. 2019;53(6):850-854.

  54. Enterococcus faecalis • Enterococcus spp.によるIEの90%はE. faecalis1) • NVEとPVEで, 抗菌薬選択に違いはない (PVEは6週間治療) • 治療薬と期間:ABPC 12g + GM 3mg/kg or CTRX 4g 4-6週間 - GMは2-6週間 (⾼濃度耐性 MIC>500μg/mL がなければ併⽤可能) - ESC2)はGM 3mg/kg q24h, AHA3)は1mg/kg q8hを推奨 - 症状持続期間が≦3ヶ⽉ならばABPC+GM 4週間でもよい2-3)が, 6週間の ⽅が再燃が少ない可能性がある4) 1. 2. 3. 4. Clin Microbiol Infect. 2013;19(12):1140-1147 Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128. Circulation. 2015;132(15):1435-1486.. PLoS One. 2018;13(2):e0192387.

  55. なぜCTRXを併⽤するのか? • ABPCは, E. faecalisのPBP4およびPBP5を部分的に飽和させるが, 細胞壁合成 に関与するPBP2およびPBP3を飽和させることはできない →PBP2およびPBP3に結合できるセファロスポリン系抗菌薬を併⽤することで, シナジー効果が得られる1) • E. faeciumはPBP5の過剰産⽣や変異によりABPCの感受性が低下しており2), この効果は確認されていない 1. Antimicrob Agents Chemother. 1995;39:1984-1987. 2. J Clin Microbiol. 2019;57(3):e01467-18.

  56. GMなのかCTRXなのか? • 少なくともCCr<50ml/minではGMを避ける1) • いくつかの観察研究で, ABPCとCTRXの併⽤は, AGとの併⽤と⽐較し, 再 • 個⼈的には, CTRXをGMに優先して使⽤することがほとんどである • CTRXが肝胆道系酵素上昇などで継続できない場合, 臨床データは乏しい がCTXへの変更を考慮する4) 燃率・死亡率は同等だが, 有害事象が少ないことが⽰されている2-3) 1. Circulation. 2015;132(15):1435-1486.. 2. J Clin Med. 2021;10(19):4594. 3. Clinical Infectious Diseases, ciac777, https://doi.org/10.1093/cid/ciac777 4. Antimicrob Agents Chemother. 1995;39:1984-1987.

  57. Enterococcus faecium 1) Enterococcus spp.によるIEの5% • • 抗菌薬選択と期間:VCM + GM 2-3) 6週間 • 腎機能障害が⾼率に起こる → 代替薬はDAP or LZD - VREに対する治療成績はLZD>DAPだが, 推奨量である DAP 8-12 4-5) mg/kgとの⽐較ではない 1. Clin Microbiol Infect. 2013;19(12):1140-1147 2. Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128. 3. Circulation. 2015;132(15):1435-1486.. 4. Antimicrob Agents Chemother. 2014;58(2):734-9. 5. J Antimicrob Chemother. 2018;73(9):2277-2283.

  58. 栄養要求性連鎖球菌 NVS, Nutritionally Variant Streptococci • Abiotrophia defectiva, Granulicatella spp. (G. adiacens, G. elegans etc) • グラム陽性連鎖球菌だが, グラム染⾊不定で形態学的にも多型性をもつ1-2) • 発育にL-システイン, ビタミンB6を必要とし, ⾎液寒天培地にはほとんど発育せず, チョ コレート寒天培地やブルセラHK寒天培地で炭酸ガス培養や嫌気培養によって発育を認め る3) • Staphylococcusの産⽣するV因⼦ (NAD, ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド) を NVSが利⽤するため, ⾎液寒天培地に画線接種されたS. aureusやS. epidermidisの近傍 でα溶⾎するコロニーを形成する衛星現象を認める 1. Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases. 9th ed. Saunders, 2020, Chap 202. 2. 臨床微⽣物 2014:25;10-18 3. 医学検査 2015:64;421-427

  59. 栄養要求性連鎖球菌 NVS, Nutritionally Variant Streptococci • IEの起因菌として多いのはGranulicatella spp.>Abiotrophia spp.1) • PCG低感受性株 (MIC≧ 0.25 μg/mL) が半数以上を占めると報告されて いるが,1) 感受性検査が難しく必ずしも正確ではない。 • 治療薬:PCG, CTRX, or VCM 6週間 + GM ≧ 2週間 1. J Infect. 2022;S0163-4453(22)00056-1.

  60. β溶⾎性連鎖球菌 • IEリスクは, • 1) GGS>GBS>GAS 稀ではあるが, 死亡率は⾼い2) • 治療薬:PCG 4-6週間 + GM 2週間 - GMについては, PCGの感受性が⼤抵保たれていること, トレランス がないこと, 臨床研究に基づいた推奨ではないことから異論の提唱あ り3) 1. Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 80, 1068-1108.e12 2. Microbiol Spectr. 2019;7(2):10.1128/microbiolspec.GPP3-0016-2018. 3. Clin Microbiol Infect. 2020;26(6):723-728.

  61. HACEK group • Haemophilus aphrophilus (後の, Aggregatibacter aphrophilus, Aggregatibacter paraphrophilus) • Actinobacillus actinomycetemcomitans (後の, Aggregatibacter actinomycetemcomitans) • Cardiobacterium hominis • Eikenella corrodens • Kingella kingae

  62. HACEK group • ⼝腔常在菌の⼀種 • HACEK-IEの発⽣率は0.14-0.44/100,000⼈年と低い1-2) • ⾎液培養が陽性となるまで中央値3.0⽇3) • 治療薬:CTRX 2g 4週間 (NVE) or 6週間 (PVE) - BL⾮産⽣株の場合, ABPC 12g + GM 3mg/kg 4-6週間も選択肢4) 1. Int J Infect Dis. 2018;68:83-87. 2. Expert Rev Anti Infect Ther. 2016;14(6):539-545. 3. J Clin Microbiol. 2006;44(1):257-259. 4. Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128.

  63. 経験的治療 (私⾒) • • Acute endocarditis: - S. aureusをしっかりカバー → CEZ + VCM - 中枢神経系に播種病変あり → CTX (or CTRX) + VCM Subacute endocarditis: - 疣贅が⾒えているなど明らかにIEでない限り, ⾎培結果待ちでもok - VGSとEnterococcus faecalisもカバー → CTRX + ABPC

  64. IEは外科感染症の側⾯もある • 10mm以上の疣贅があれば, 48時間以内の⼿術が6週間以内の死亡, 塞栓症を減らす (3% vs 23%, HR 0.1)1) • ⼿術適応のある⾃⼰弁⼼内膜炎は, 早期⼿術 (遅くとも20⽇以内) が 予後改善に関与2) • ⼈⼯弁⼼内膜炎も, 保存加療と⽐較し⼿術加療が30⽇死亡率を35% 下げる3) 必ず循環器内科・⼼臓⾎管外科と協⼒して診療しなければならない 1. N Engl J Med. 2012;366(26):2466-2473. 2. Heart. 2016;102(12):950-957. 3. Ann Thorac Surg. 2017;103(3):991-1004.

  65. 緊急〜準緊急⼿術の適応 • ⼼不全になっているとき • 感染コントロールがつかないとき - 弁輪部膿瘍, 仮性動脈瘤 - 内科的加療が困難な細菌 (ex. 真菌など) - 他に理由がない持続菌⾎症 • 塞栓リスクが⾼いとき (疣贅>10mm+塞栓症 or >15〜30mm) 脳出⾎, ヘルニア, 広範囲脳梗塞がある場合は延期する Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128.

  66. IEはチーム医療が⼤事 • 2015年AHA/ESCでEndocarditis Team (ET) 設⽴が推奨された1-2) • 2016年にETを⽴ち上げ, 効果を評価 した単施設後⽅視的観察研究@仏3) - ⼼臓⾎管外科医, 循環器内科医, ⼼ エコー技師, 感染症科医で, 毎週す べてのIE症例の診断・管理につい て検討 - MVAでETが院内死亡率低下に関与 1. Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128. 2. Circulation. 2015;132(15):1435-1486. 3. Open Forum Infect Dis. 2019;6(9):ofz308.

  67. 感染症科の介⼊による影響 • 感染症科設⽴前後でIEの臨床転機を評価した単施設前後⽐較研究@⽇本 Ann Thorac Surg. 2021;112(4):1228-1234.

  68. 抗菌薬調節 Ⅰ 抗凝固薬の⼀時中⽌ Ⅱa ⼿術の必要性と 時期を検討 PM/ICD埋込あり ⼼不全の原因とな る弁障害 抵抗性のある菌 (S.aureus, fungi) リードかポケットに感染が あるか? >10mmの可動性 のある⾃然弁疣贅 ⼼ブロック, 膿瘍 ⼼ブロック, 膿瘍 薬剤耐性菌 抗菌薬投与にもかかわ らず繰り返す塞栓や疣 贅の持続がある iEに対する 弁⼿術 ⼈⼯物抜去 Ⅱa 再燃した⼈⼯弁IE 早期⼿術 Ⅰ 脳動脈瘤なし ⼿術を 計画する 早期⼿術 Ⅰ 脳出⾎や広範な神経障害がない 脳動脈瘤 ⼿術は延期しない Ⅱb 早期⼿術 Ⅱa 早期⼿術 Ⅱb ⼈⼯物早期抜去 Ⅰ 広範な虚⾎性病変や脳出⾎があるが ⾎⾏動態が安定している 4週間⼿術延期を検討 Ⅱb Curr Cardiol Rep. 2018;20(10):86. より作成

  69. まとめ • IEは疑わなければ診断が遅れる • 適切な⾎液培養と, 適切な解釈が必要 • 培養前に抗菌薬が処⽅されているときは, ⼀旦中⽌を検討 する • IEと診断した場合は, 専⾨科にコンサルトを⾏う

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