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感染性心内膜炎のまとめ

投稿者プロフィール
長谷川耕平

堺市立総合医療センター

312,127

523

概要

当院の初期・後期研修医向けに行ったレクチャー資料です。

教科書、ガイドラインだけでなく、最近の話題まで広く取り扱いました。

ご興味があればどうぞ。

-----

2023.08.05更新

The 2023 Duke-ISCVID Criteria, WikiGuidelineなどの情報を追加しました。

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医/専門医

投稿された先生へ質問や勉強になったポイントをコメントしてみましょう!

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テキスト全文

  • #1.

    updated 2023.08.05 感染性⼼内膜炎 堺市⽴総合医療センター 感染症内科 ⻑⾕川 耕平

  • #2.

    感染性⼼内膜炎とは • ⼼内膜表⾯の病変に, 微⽣物が集塊を作る疾患 • ⼼臓弁が侵されることが多いが, 中隔⽋損内や壁在⼼内膜にも起こりうる • ”bacterial endocarditis"と呼ばれていたが, 1960年代以降”infective endocarditis"とい う⽤語が⼀般化された Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 80, 1068-1108.e12

  • #3.

    IEの診断が遅れた症例集 • 65歳⼥性, 尿管癌, 間⽋的発熱あり適宜抗菌薬投与されていた。1setのみ採取された⾎培 から3回連続C. striatumが⽣えたがコンタミネーションと判断。4ヶ⽉後, 2set採取した ⾎培からもC. striatum • 19歳⼥性, 収縮期雑⾳を指摘されている, 冬に発熱と頭痛ありインフルエンザとしてタミ フル内服。症状が続くため他院受診し, 髄液細胞数が微増していたため髄膜炎として4th セフェムとACVで治療開始。9⽇後, 右⽚⿇痺が出現し, ⾎培2setからMSSA • 78歳⼥性, MR+ARあり, 1ヶ⽉経過の倦怠感と体重減少を主訴に受診, ANAとRF陽性で ありRAとしてPSL+DMARDs開始。経⼝3rdセフェムも同時に開始。さらに1ヶ⽉後下腿 浮腫あり受診した際の⾎培は初回判定で陰性, TTEで僧帽弁に疣贅あり⼿術施⾏, 遅れて ⾎培からC. hominisが発育 Medicine (Baltimore). 2014;93(27):e237.

  • #4.

    IEは疑わなければ診断が遅れる • 診断が遅れるパターンとして - 適切な⾎液培養採取がなされなかった (1セットのみ採取, 症状が揃っていないが感冒 と診断など) - 不適切な抗菌薬使⽤ (抗菌薬ローテーション, 経⼝抗菌薬先⾏投与) - 関節痛, 抗核抗体陽性, RF陽性からリウマチ性疾患と診断され免疫抑制治療を受けた Medicine (Baltimore). 2014;93(27):e237.

  • #5.

    最後まで⾒つからないとどうなる? • ほぼ100%死亡する - 疣贅による⼼臓合併症によって - 疣贅から全⾝にばら撒かれた塞栓によって - etc

  • #6.

    感染症医が介⼊すると増える? IE case Year Scand J Infect Dis. 2012;44(4):270-275.

  • #7.

    探すと⾊々⾒つかる • ⾎管現象:major arterial emboli, septic pulmonary infarcts, mycotic aneurysm, intracranial haemorrhage, conjunctival haemorrhages, and Janeway lesions Scand J Infect Dis. 2012;44(4):270-275.

  • #8.

    ⾼リスク患者 • 年齢≧60歳 • IV drug • 男性 • 維持透析 • 器質的⼼疾患 - 弁膜症 - 先天性⼼疾患 (例; VSD, ⼆尖弁) • ⾎管内カテーテル留置 • ⼼内デバイス埋め込み • ⼈⼯弁 • ⽪膚感染 • IEの既往 • ⼝腔衛⽣不良 JAMA. 2018;320(1):72-83.

  • #9.

    臨床所⾒からいつIEを疑うか? • よくわからない熱が続いているとき • 亜急性経過で局在のない関節の痛みを訴えるとき • うっ⾎性⼼不全の患者に発熱や炎症所⾒があったとき • 新たな逆流性雑⾳を⾒つけたとき • 塞栓症状 (脳梗塞のほか, 腎臓・脾臓, 肺など) があるとき

  • #10.

    IEの症状 • たいてい発熱がある • 新規の⼼雑⾳は半数 • 末梢の塞栓症状は数% JAMA. 2018;320(1):72-83.

  • #11.

    がんばって出⾎斑を探す JAMA. 2018;320(1):72-83.

  • #12.

    がんばって出⾎斑を探す A B C D A:作成者撮影 B〜D:Emerg Med Clin North Am. 2018;36(4):645-663.

  • #13.

    症例① • 特に既往のない39歳⼥性 • X⽉初旬に悪寒あり, 検温すると発熱していた。熱は続いていたが, 倦怠感もほとんどな く, 仕事を続けられるくらいだった。 • X+2⽉, 腰痛が出現し, 仕事ができなくなったため受診。

  • #14.

    症例① • BP118/62, HR99(reg), RR12, SpO2 96%(RA), BT37.7 • ⼝腔汚染あり, 拡張期雑⾳あり, 椎体叩打痛なし, Psoas陽性, 結膜・四肢に出⾎斑なし • 採⾎:WBC 8750 (N 89.2), CRP4.43, UN 14.9, Cr 1.26 • 検尿:⽐重1.007, pH5.0, 尿蛋⽩1+, 尿潜⾎3+, 病的円柱なし →⾃⼰免疫疾患?ということで, ⾊々抗体を提出のうえ⾎培採取し帰宅

  • #15.

    症例① • 第2病⽇, ⾎液培養からViridans group Streptococcusが発育 • 腰痛が悪化しており下記画像検査施⾏するも原因不明 • - 造影CT:多巣性肺炎, 腎動静脈瘤 - 腰椎MRI:椎体や腸腰筋に明らかな信号変化なし TTE:NCC 12mm, RCC 8mmの可動性ある疣贅

  • #16.

    症例① • 第4病⽇にAVR • 経過中, 腰痛消失 • Cre 1.26→0.8まで低下 • 尿検査は細かくフォローされていないが, 数年後のデータでは正常化

  • #17.

    症例② • ⾊々既往のある両側TKA後の93歳⼥性 • X-7⽇から⾷思不振, 様⼦がおかしくなった。X⽇に歩⾏できなくなり救急要請。

  • #18.

    症例② • BP 200/104, HR 100 (reg), RR 30, SpO2 99% (1L/min), BT 38.4 • 結膜・⼿指出⾎斑なし, ⼼尖部汎収縮期雑⾳あり, 呼気延⻑, wheezes聴取, 右膝関節腫 脹あり • 採⾎:WBC 13250, CRP 28.3, BNP 2549 • CXR:両側肺⽔腫

  • #19.

    症例② • 第2病⽇から意識レベル低下, 四肢末端に虚⾎性変化出現 • ⾎液培養・関節液培養:Streptococcus dysgalactiae • TTE:僧帽弁に12mmの紐状エコー, AS mod〜sev, MR mild • 頭部MRI:さまざまな事相の多発脳梗塞 • 第4病⽇に永眠

  • #20.

    経過と分類 • 1885年, William OslerはIEを”simple”と”malignant”に分類 • ”simple”は現代で⾔うところの”subacute” • ”malignant”は”acute”に相当する Infect Dis Clin North Am. 2009;23(3):643-664.

  • #21.

    病歴と経過 • Acute IE…急激な発熱や悪寒戦慄⽇にち単位で進⾏, 急性⼼不全や急性塞栓症状 (⿇痺 など), Janeway lesion (微⼩膿瘍)。S. aureusやβ-Streptococcusなど。 • Subacute IE…週〜⽉単位で微熱が続き, ⾮特異的な全⾝症状を呈する。関節痛や Osler, ⽷球体腎炎など免疫複合体沈着による症状が⾒られることもある。CoNS, VGSや Enterococcus spp.など Infect Dis Clin North Am. 2009;23(3):643-664. 典型的な経過を辿らないことも多い ↓ 常にIEを頭の⽚隅に置く必要がある

  • #22.

    ⻭科処置とIE • ⻭科処置時, ⼝腔衛⽣不良の患者は, 良好な患者よりも⾼率に菌⾎症が⽣じる1) • ⼀⽅, 1⽇3回以上の⾷事後の⻭磨きは, Streptococcal IEのリスク低下と関連する (⽖楊 枝やデンタルフロス, ⻭間ブラシを除く)2) 1. J Am Dent Assoc. 2009;140(10):1238-1244. 2. Clin Infect Dis. 2017;64(12):1678-1685.

  • #23.

    ⻭科処置とIEと予防的抗菌薬 • ⾼リスク患者に対して, 抜⻭などの侵襲的⻭科処置前にAMPC 2g, CEX 2g or DOXY 100mgの予防的投与が推奨されている1) - ⼈⼯⼼臓弁 (経カテーテル的⼈⼯弁および同種移植⽚を含む) - 弁輪形成術のリング, コード, クリップなどの弁形成術後 - IEの既往 - 先天性⼼疾患 (チアノーゼが是正されていないもの, または⼈⼯パッチ, ⼈⼯装具の部 位に隣接する部位に残存シャントまたは弁逆流を伴うもの) - 弁逆流を伴う⼼臓移植 • 尚, スウェーデンでは2012年以降, ⾼リスク群含め⻭科処置前の予防的抗菌薬投与が推奨 されなくなったが, VGS IE発⽣率は上昇していない2) 1. Circulation. 2021;143(20):e963-e978. 2. Clin Infect Dis. 2022;75(7):1171-1178.

  • #24.

    原因微⽣物 ⾃然弁, non-IVDUの場合 1. S. aureus 2. VGS 3. Enterococcus sps. 4. CoNS 5. Other streptococcus IVDU, IV drug user HACEK – Haemophilus aphrophilus (subsequently called Aggregatibacter aphrophilus and Aggregatibacter paraphrophilus); Actinobacillus actinomycetemcomitans (subsequently called Aggregatibacter actinomycetemcomitans); Cardiobacterium hominis; Eikenella corrodens; and Kingella kingae JAMA. 2018;320(1):72-83. supplementary

  • #25.

    VGSなら何でもIEを起こすのか? Stre • IEの頻度は, VGS>>β溶連菌> 肺炎球菌 • VGSと⼀括りにしても, その中 でも違いはある Circulation. 2020;142(8):720-730.

  • #26.

    すでに抗菌薬が投与されているとき • 臨床的にIEが鑑別に上がる状況で適切な培養採取前に抗菌薬が処⽅されている場合 - ⾎液培養を採取 (3セット) - 状態が安定しているならば抗菌薬を中⽌ - 数⽇後, ⾎液培養を再検 (7-10⽇要することもある) J Antimicrob Chemother. 2012;67(2):269-289.

  • #27.

    S. aureus菌⾎症を⾒たらIEを考える • SAB患者全体におけるIEの頻度は12%1) • PREDICTやVIRSTAなどのIEリスク評価スコアがある2-3) • 持続菌⾎症や塞栓症, IEの既往, ⼈⼯弁, CIED, IV drug使⽤などがあれば, IEの検索を⾏う必要 がある 1. Arch Intern Med. 2003;163(17):2066-2072. 2. Clin Infect Dis. 2015;61:18-28. 3. J Infect. 2016;72:544-553.

  • #28.

    連鎖球菌とS. aureusの病原性の違い A. 連鎖球菌は, 傷ついた弁内膜に定着し⾎⼩板 を凝集 B. S. aureusは, 傷がなくても炎症を起こして ⾎⼩板を凝集 Infective Endocarditis, Chapter 1, 1-23

  • #29.

    SABに対するVIRSTA score 項⽬ Pts 脳・末梢塞栓 5 髄膜炎 5 IE既往or⼼内デバイス埋め込み 4 弁膜症 3 静注薬物使⽤ 4 持続菌⾎症 3 脊椎椎体炎 2 市中発症 2 敗⾎症性ショック 1 CRP>19mg/dl 1 これらの項⽬があると IEを否定できない 合計が≦2点であれば 有病率11%の集団で IEの陰性適中率98.8% J Infect. 2016;72:544-553.

  • #30.

    SABに対するPREDICT study • IEのリスクを, SAB発症からDay 1とDay 5で2回評価 • Day 1 ≧ 4pts → , Day 5 ≦ 2pts • - Day 1…CIED (ICD 2pt, PPM 3pt, なし 0pt), Onset (市中 2pt, 医療福祉施設 1pt, 院内 0pt) → 0-5 pt → ≧ 4 ptならば感度30.4%, 特異度93.8% - Day 5…CIED (ICD 2pt, PPM 3pt, なし 0pt), Onset (市中 2pt, 医療福祉施設 1pt, 院内 0pt), 持続菌⾎症 (≧72h 2pt) → 0-7 pt → ≦ 2 ptならば感度, 陰性適中率100% SAB発症から5⽇⽬の時点で, 下記を満たせばIEではない* (有病率13%の集団で98.5%の精度) (1)CIEDなし (2)市中発症ではない (3)持続菌⾎症(≧72時間)ではない *⼈⼯弁⼼, 過去30⽇以内のope, ⾎培陽性本数が 多いことは, day 5のスコアに関連なくIEリスク Clin Infect Dis. 2015;61:18-28. Clin Infect Dis. 2021;73(7):e1745-e1753.

  • #31.

    VGSに対するHANDOC score 項⽬ Pts Heart murmur or valvular disease Aetiology 1 +1 if S. bovis, S. sanguinis, or S. mutans group +1 or if S. anginosus group -1 -1 Number of cultures 2set以上陽性 Duration of symptoms Only 1 species 症状が7⽇以上 単⼀菌の菌⾎症 Community acquired 1 ≧3点でIEに対する感度100%・特異度74% →≦2点で感染性⼼内膜炎を除外可能1) 1 1 1 ただし, IEの有無が不明な”unknown group”が”全員IE無し”に含まれている可能性があり, 仮に”全員IE”とい うworst case scenarioならば3点をカットオフにした場合, 感度36%・特異度73%になると指摘されている2) 1. Clin Infect Dis. 2018;66:693 2. Clin Infect Dis. 2018;66:1819

  • #32.

    腸球菌に対するNOVA・DENOVA adapted NOVA1) 項⽬ Number of positive cultures ≥ 2 (N) Unknown origin of bacteremia (O) Prior valve disease (V) Auscultation of a heart murmur (A) DENOVA2) 項⽬ Pts 5 4 2 1 ≧4点でIEに対する感度97%・特異度23% Pt Duration of symptoms ≥ 7 days 1 Embolization 1 Number of positive cultures ≥ 2 1 Origin of infection unknown 1 Valve disease 1 Auscultation of murmur 1 ≧3点でIEに対する感度100%・特異度83% 1. Clin Infect Dis. 2016;63:771 2. Infection. 2019;47(1):45-50.

  • #33.

    合併症 臨床像 凝固カスケード の活性化 内⽪組織マトリッ クスの破壊 全⾝性 免疫反応 疣贅の成⻑ 塞栓 転移感染巣 弁損傷 急性閉鎖不全症 弁周囲膿瘍 免疫複合体の 循環 ⽷球体腎炎 Osler結節 ⾎管炎 脳梗塞 ⼼不全 敗⾎症の遷延 腎不全 Nat Rev Cardiol. 2019;16(10):623-635.より作成

  • #34.

    ⼼臓合併症 • 弁膜症による⼼不全がIEの主な死因 • 稀に, ⼼室穿孔や急性⼼筋梗塞 (冠動脈内への塞栓) • 主に⼈⼯弁⼼内膜炎患者で弁周囲膿瘍 → ⼼臓伝導組織障害によるブロック/不整脈が起こりうる Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 80, 1068-1108.e12

  • #35.

    塞栓性合併症 • 治療開始2週間以内が多い1) • 脳塞栓が最多で, IEの10-20%に起こる2) • 特に出⾎性梗塞が起こりやすく, 感染性脳動脈瘤の破裂による脳出⾎にも注意する2) • 脾臓や腎臓, 肺, 筋⾁, ⾻, 関節などに塞栓を起こした後, 膿瘍形成することもある 1. Clin Microbiol Infect. 2006;12(1):5-12. 2. Infect Dis Clin North Am. 2002;16(2):507-xii.

  • #36.

    免疫反応による合併症 • IEの治療が遅れる・遷延した場合, 免疫複合体による⽷球体腎炎が⽣じうる • Osler結節も免疫複合体の沈着である • その他, 関節炎, ⼩⾎管炎を始め, ⾎液検査では補体低下, RFやANCA陽性を認めることも ある N Engl J Med. 1976;295(27):1534-1535. Medicine (Baltimore). 2016;95(3):e2564. J Clin Invest. 1962;41(3):666-675.

  • #37.

    (余談) IEと⼤腸腫瘍 • • S. gallolyticus groupの中で, 特にsubsp. gallolyticus菌⾎症患者は, 他菌による菌⾎症 患者と⽐較し⼤腸悪性腫瘍が5倍多い1) - in vitroで免疫逃避による前癌病変表⾯への定着のほか, β-catenin発現による⼤腸癌 細胞の増殖と腫瘍形成を促進する2) - 平均41.8ヶ⽉のフォローで2回CSを受けた患者のうち, 89%に⼤腸腫瘍が認められ, うち31.6%は初回は正常だった → 菌⾎症発症後しばらくして⼤腸腫瘍が発⽣するこ ともあり⻑期フォローが必要3) E. faecalisのIEは⼤腸病変 (腺腫や癌) と関連があるかもしれない4) 1. Clin Infect Dis. 2012;55(4):491-496. 2. Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 200, 2492-2504.e4 3. Eur J Intern Med. 2017;41:68-73. 4. Mayo Clin Proc. 2021;96(1):132-146.

  • #38.

    診断のための検査 •⾎液培養 •⼼エコー

  • #39.

    modi ed Dukeʼs criteria Major criteria ① ⾎液培養陽性 ・IEの典型的な起炎菌が⾎培2set以上で陽性 (VGS, S. bovis, HACEK, S. aureus)。Enterococcus sp.なら, 他に感染巣がない。 ・持続的な⾎液培養の陽性 - 12時間以上間隔をあけて採取した⾎培が2set以上 or 4set以上の⾎液培養のうち3set以上が陽性 ・Coxiella burnetiiが⾎液培養で⼀度検出される or anti-phase 1 IgG antibodyの抗体価が>1:800 ② ⼼内膜病変の所⾒: ・⼼エコー所⾒ - 弁または弁の⽀持組織に付着した腫瘤が逆流で揺れる, or ⼈⼯弁に腫瘤が付着して揺れる, 膿瘍, ⼈⼯弁の新たな 部分的な”ほつれ", 新たな弁逆流症 (以前から存在した雑⾳の変化, 増強では不⼗分) Minor criteria ・基礎疾患としての弁膜疾患や先天性⼼疾患, 薬物中毒 (iv drug) ・発熱 (> 38℃) ・⾎管病変:動脈塞栓, 敗⾎症性肺塞栓, 感染性動脈瘤, 頭蓋内出⾎, 眼瞼結膜出⾎, Janewayʼs lesion ・免疫異常:⽷球体腎炎, Oslerʼs nodes, Roth spots, リウマチ因⼦陽性 ・微⽣物:⾎培陽性であるがMajorは満たさない, またはIEの原因になる微⽣物の活動性感染を⽰す⾎清学的所⾒を認める。 臨床的基準: fi fi De nitive…Major×2, or Major×1+Minor×3, or Minor×5, Possible…Major×1+Minor×1, or Minor×3 Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases, 80, 1068-1108.e12

  • #40.

    The 2023 Duke-ISCVID Criteria <Major Criteria> A. 微⽣物基準 (1) ⾎液培養陽性 (←採⾎タイミング不問かつ⼀部の細菌が追加された) i. IEの典型的な原因微⽣物が別々の2セット以上の⾎液培養から検出, または ii. IEを時々または稀に起こす微⽣物が別々の3セット以上の⾎液培養から検出 (2) 臨床検査陽性 i. ⾎液の核酸検査でC. burnetii, Bartonella spp T. whippleiが陽性, または ii. C. burnetiiのantiphase I IgG抗体価が≧800倍, または⾎液培養からC. burnetiiを検出, または iii. IFAでB. henselaeまたはB. quintana IgG≧800倍 • IEに典型的な微⽣物は以下を指す S. aureus; S. lugdunensis; E. faecalis; すべての連鎖球菌属 (S. pneumoniae, S. pyogenesを除く), Granulicatella,Abiotrophia spp., Gemella spp., HACEK ⼼臓内⼈⼯物の存在下では, 次の細菌も典型的と⾒なす:CoNS, C. striatum, C. jeikeium, S. marcescens, P. aeruginosa, C. acnes, NTM (特に M chimaerae), Candida spp. Clin Infect Dis. 2023;ciad271. DOI: 10.1093/cid/ciad271

  • #41.

    The 2023 Duke-ISCVID Criteria <Major Criteria>の続き B. 画像基準 (1) ⼼エコー, ⼼臓CT検査 i. ⼼エコー, ⼼臓CTで疣贅, 弁/弁尖の穿孔, 弁/弁尖の動脈瘤, 膿瘍, 仮性動脈瘤, ⼼内瘻孔 を⽰す, または ii. ⼼エコーで以前と⽐較して著しい新規の弁逆流あり。既存の逆流の悪化や変化だけでは 不⼗分, または iii. 以前の画像と⽐べて新たに⼈⼯弁の部分的な裂開あり (2) FDG PET/CT検査:弁, グラフト (弁病変の所⾒と併存), CIEDに集積 C. ⼼臓⼿術中の直接観察によるIEの所⾒ (画像の⼤基準およびその後の組織検査, 微⽣物検 査で確定されない場合) Clin Infect Dis. 2023;ciad271. DOI: 10.1093/cid/ciad271

  • #42.

    The 2023 Duke-ISCVID Criteria <Minor criteria> A. 素因:IEの既往, ⼈⼯弁, 弁形成術の既往, 先天性⼼疾患, 中等症以上の逆流/狭窄症, CIED, HOCM, 静脈薬物使⽤ B. 発熱:体温 >38℃ C. ⾎管病変:動脈塞栓, 敗⾎症性肺梗塞, 脳膿瘍, 脾膿瘍, 感染性動脈瘤, 頭蓋内出⾎, 結膜出⾎, Janeway病変, 化 膿性紫斑 D. 免疫病変:RF陽性, Osler結節, Roth斑, ⽷球体腎炎 (AKI+蛋⽩⾎尿, 細胞円柱, 低補体, クリオグロブリン, 免疫 複合体陽性, または腎⽣検所⾒) E. 微⽣物検査 (⼤基準を満たさないもの) 1) IEに⽭盾ない微⽣物が⾎液培養陽性だが, ⼤基準を満たさない 2) IEに⽭盾ない微⽣物が⼼臓, ⼈⼯物, 塞栓以外の無菌検体で培養・拡散増幅検査陽性, 弁やワイヤーのPCRで⽪ 膚の細菌が単⼀陽性 F. 画像検査:⼼⾎管系⼈⼯物植え込みから3ヶ⽉未満に撮影されたFDG PET/CTで集積 G. ⾝体所⾒:⼼エコーが利⽤出来ない場合の新規逆流性⼼雑⾳の聴取 (以前からあった⼼雑⾳の悪化や変化では不 ⼗分) Clin Infect Dis. 2023;ciad271. DOI: 10.1093/cid/ciad271

  • #43.

    Rejected IE • 以下のいずれかを満たす場合, IEを否定して良い A. 徴候・症状を説明できる確固たる代替診断 (a-cの全てを満たす必要がある) a. ⾮典型的な病原体による感染巣の明らかな菌⾎症 b. 持続菌⾎症ではないこと c. 画像でIEの証拠がない d. 微⽣物学的な証拠がなく, ⾮微⽣物学的な診断 (衰弱性⼼内膜炎) などで除外も可能 B. 4⽇以内の抗菌薬投与にも関わらず再燃がない C. 4⽇以内の抗菌薬投与で, ⼿術・剖検による病理的・⾁眼的IEの根拠がない D. possible IEの基準を満たさない Clin Infect Dis. 2023;ciad271. DOI: 10.1093/cid/ciad271

  • #44.

    The 2023 Duke-ISCVID Criteria • 2023年Duke-ISCVID IE criteriaの主な⽬的は, 国際的に再現可能な定義 を提供することによってIEの研究を促進することにある • 診断感度・特異度については, 外的妥当性の検証が必要 Clin Infect Dis. 2023;ciad271. DOI: 10.1093/cid/ciad271

  • #45.

    診断はMajorの2つがキモ ① 感染微⽣物の証明 • ⾎培2set以上で陽性 • 持続菌⾎症 ② ⼼病変の画像的証明 18 TTE/TEE, F-FDG/PET CT, ⼼臓CT •

  • #46.

    ⼼エコー ⾃⼰弁⼼内膜炎の疣贅検出能1) 感度 TTE TEE 75% 96% 特異度 • 1) 機械弁での検出感度 は • 2) 弁輪部膿瘍の検出感度 は 90% 90% TTE 50%, TEE 92% TEE 87% 1. Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128. 2. Heart. 2004;90(6):614–7.

  • #47.

    TEEで⾒えなければIEは否定できる? • 以下の場合は, TEEでも疣贅が⾒つかりにくい (1) ⼈⼯弁や重症MVP, ⽯灰化がある (2) 2-3mm未満の疣贅 (3) 既に疣贅が⾶んでいる • 疑わしい場合は, 5-7⽇後に再検が推奨されている 検査前確率 (⾒積もり) 次第 Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128.

  • #48.

    TEEが⾏えない場合の画像検査 • ESC 2015ではTTE/TEE以外のmodalityも推奨してお り, 下記2つがESC modi ed criteriaのMajorに組み込 まれている1) 1. 置換⼈⼯弁周囲における18F-FDG PET/CT (術後 3ヵ⽉以上経過している場合) or ⽩⾎球シンチ SPECT/CTの取り込み 2. CTによる弁周囲膿瘍の検出 • 2023 Duke-ISCVID Criteriaにもエコー以外の画像所 ⾒が組み込まれた2) fi 1. Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128. 2. Clin Infect Dis. 2023;ciad271. DOI: 10.1093/cid/ciad271

  • #49.

    Multislice CT • 37⼈のIE患者 (⼈⼯弁 6⼈)に対し1) - 疣贅:感度96%, 特異度97% - 膿瘍/偽性動脈瘤:感度100%, 特異度100% ※reference standard:術中所⾒ • ≧10mmでは診断能はMSCT=TEE, <10mmではTEEで94.4%が同定された⼀⽅CTは 52.8%2) • TEEは⼩さな疣贅, 弁穿孔およびintracardiac stulaの検出に優れているが, MSCTは弁 周囲膿瘍および冠動脈疾患の検出に有⽤2) fi 1. J Am Coll Cardiol. 2009;53:436–444. 2. Circ Cardiovasc Imaging. 2018;11:e006986

  • #50.

    Circ Cardiovasc Imaging. 2018;11:e006986

  • #51.

    18F-FDG/PET • CT PVEの場合:感度91%, 特異度95% - 術後3ヶ⽉間は術後変化で集積が認められる場合がある1) • NVEの場合:感度39%, 特異度93%2) • 18FDG - PET/CT撮影の利点として, ⼼病変検出以外に以下がある3) 脳以外の全⾝の末梢性塞栓症と転移性感染症の検出 IEの素因となる潜在病変の診断 (腫瘍性病変) 代替感染源もしくは⾮感染症の同定 1. Cleve Clin J Med. 2019;86(8):559-567. 2. Eur J Nucl Med Mol Imaging 2013; 40(7):1102–1107. 3. Circ Cardiovasc Imaging. 2018;11:e007626.

  • #52.

    Cleve Clin J Med. 2019 Aug;86(8):559-567.

  • #53.

    頭部CT・MRI • 神経学的症状がないrejected/possible IEに対し頭部画像検査を⾏っても, IEの診断には 寄与しにくい1) • ⼀⽅, de nitive IE (疣贅>10mm) では30%に無症候性中枢神経合併症が⽣じている可 能性があり2), それが⼼臓⼿術のindicationとなるケースがあるため1), de nitive IEに対 して頭部CT・MRIはルーチンで撮影してよい(と思う) fi fi 1. Clin Infect Dis. 2023;ciad192. DOI: 10.1093/cid/ciad192 2. Clin Infect Dis. 2008;47(1):23-30.

  • #54.

    治療のポイント • 患者背景 • 合併症 (特に中枢神経病変) があるかどうか • 原因菌は何か • ⼿術適応があるかどうか, あるなら緊急か待機か

  • #55.

    抗菌薬の考え⽅ • 主に⻩⾊ブドウ球菌, VGSをカバーするが, 経過である程度区別する • 中枢病変 (髄膜炎, 脳塞栓, 脳出⾎) があれば, 中枢移⾏性の良いものを選ぶ • 脳膿瘍や髄膜炎以外の中枢病変に対して, 移⾏性をどこまで気にするかは個⼈差があ る 原則, ⾎培陰性から4-6週間の点滴加療が必要 - 途中弁⼿術を⾏い, その培養が陽性ならば治療期間は振り出しに戻る (起点が⼿術⽇に 変更される)

  • #56.

    Staphylococcus spp. • • • ⾃⼰弁 - ペニシリン感受性…PCG 1800-2400万U, ABPC 12g, CEZ 6g ペニシリン耐性・メチシリン感受性…CEZ 6g メチシリン耐性…VCM, DAP 8-12mg/kg ⼈⼯弁 - 上記に, RFP 900-1200mg + GM 3mg/kg を追加してもよい (感受性があれば) 治療期間は6週間以上

  • #57.

    CEZに中枢移⾏性はあるのか? • セファロチン (第⼀世代セファロスポリン) は⾮炎症性脳脊髄液への移⾏が悪く, 肺炎球 菌肺炎に対しセファロチンを投与された患者で肺炎球菌髄膜炎が⽣じた, といった経緯も ありCEZは中枢感染に使⽤されなくなった1) • MSSA髄膜炎に対し, CEZ 8gとMCIPC 12gでは, CEZの⽅がCSF/⾎漿⽐及びCSF/MIC⽐ • CEZ 2g q8hでもCNSドレーンから採取された髄液中にCEZが検出可能3) • 最近のreviewでは, SAB+中枢病変合併時の治療選択肢としてCEZも考慮するよう記載さ れており4), 今後の臨床データ次第でマネジメントが変わるかもしれない が⾼く, MCIPC群でのみ治療失敗があった2) 57 1. 2. 3. 4. Clin Microbiol Infect. 2020;26(2):258-259. Clin Microbiol Infect. 2020;26(10):1415.e1-1415.e4. Open Forum Infect Dis. 2021;9(2):ofab649. Am J Med. 2023;136(1):19-26.

  • #58.

    リファンピシンはいつ⾜すか? • PVEの場合, GMを含むレジメンを3-5⽇間先⾏させてからRFP投与を開始することが推奨 されている1-2) • 理由として, ①菌量が多い場合のrpoB変異による耐性化の懸念, ②増殖期の細菌に対して in vitroでantagonisticに働く点, ③静⽌期の細菌に対してsynergyを発揮する点が挙げら れる3) 1. Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128. 2. Circulation. 2015;132(15):1435-1486. 3. Clin Microbiol Rev. 2019;32(2):e00041-18.

  • #59.

    併⽤療法は必須なのか? • Staphylococcus spp.によるNVEに対して, AG併⽤は治療成績を改善せず腎毒性を増や す1) • Staphylococcus spp.によるPVEに対して, 極めて⼩規模な研究だがAG+RFP併⽤が弁培 養の陰性化が得られやすく(転機評価なし)2), MRSE-PVEに対してRFP+VCMは殺菌的に 働く3) - GM併⽤もRFP併⽤もStaphylococcal-PVEの死亡率に影響を及ぼさない可能性4-6) RFP併⽤は⼊院期間延⻑に関連するかもしれない6) PVEならGM+RFP併⽤を検討はするが, 腎機能や併⽤薬などとのバランスで決める 1. 2. 3. 4. 5. 6. Clin Infect Dis. 2009;48(6):713-721. J Antimicrob Chemother. 2003;52(5):820-825. Rev Infect Dis. 1983;5 Suppl 3:S543-S548. J Infect Chemother. 2018;24(7):555-562. Clin Infect Dis. 2021;72(9):e249-e255. Open Forum Infect Dis. 2022;9(11):ofac583.

  • #60.

    Viridans Group Streptococci ペニシリンを基本として, MICで分ける 治療期間:4-6週間 (GMは2週間) • ペニシリン感受性 (MIC≦0.12 μg/mL) • PCG 1200-1800万U or ABPC 12g or CTRX 2g ペニシリン低感受性 (MIC 0.25-2 μg/mL) - PCG 2400万U or ABPC 12g or CTRX 2gにGM 3mg/kgを併⽤

  • #61.

    ゲンタマイシンには疑問の声もある • PC低感受性株に対するGMの追加は, 前向き研究に基づいた推奨ではない • MIC 0.125-0.5 μg/mLの場合, GM併⽤は⽣存に関連しない1) • MIC 0.25-2.0 μg/mLの場合, GM併⽤の有無によらず死亡率が⾼い2) 1. Clin Microbiol Infect. 2020;26(6):723-728. 2. Int J Antimicrob Agents. 2019;53(6):850-854.

  • #62.

    PCN中間耐性の場合にPCGを使うのか • CLSIでは, PCNのbreakpointを下記の通り設定1) - S:≦0.12 μg/mL, I:0.25-2 μg/mL, R:≧4 μg/mL • いくつかの症例報告や観察研究で, PCN⾮感性VGSについてCTRX単剤での治療が良好な 治療成績を治めている2-4) • WikiGuideline (consensus statement) では, PCN MICごとに下記のように推奨5) - <0.5 μg/mL → CTRX 2g, PCG 24 million U, ABPC 2g q4h - >0.5-2 μg/mL → CTRX 2g, VCM 1. 2. 3. 4. CLSI M100-ED33:2023 Performance Standards for Antimicrobial Susceptibility Testing, 33rd Edition J Infect. 2007;54(2):e99-e101. Clin Infect Dis. 2007;44(12):1585-1592. Clin Infect Dis. 2023;ciad375. DOI: 10.1093/cid/ciad375 5. JAMA Netw Open. 2023;6(7):e2326366. DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2023.26366

  • #63.

    Enterococcus faecalis • Enterococcus spp.によるIEの90%はE. faecalis1) • NVEとPVEで, 抗菌薬選択に違いはない (PVEは6週間治療) • 治療薬と期間:ABPC 12g + GM 3mg/kg or CTRX 4g 4-6週間 - GMは2-6週間 (⾼濃度耐性 MIC>500μg/mL がなければ併⽤可能) - ESC2)はGM 3mg/kg q24h, AHA3)は1mg/kg q8hを推奨 - 症状持続期間が≦3ヶ⽉ならばABPC+GM 4週間でもよい2-3)が, 6週間の⽅が再燃が少 ない可能性がある4) 1. 2. 3. 4. Clin Microbiol Infect. 2013;19(12):1140-1147 Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128. Circulation. 2015;132(15):1435-1486.. PLoS One. 2018;13(2):e0192387.

  • #64.

    なぜAGsを併⽤するのか? • 1950年代, PCNとSM併⽤でE. faecalisに対する殺菌効果のsynergyがin vitroで確認され た1) • 腸球菌IEの症例シリーズでは, PCN単剤 (n=19) とSM併⽤ (n=14) のうち, 治療失敗率 はPNC 61% (11/18), SM併⽤ 14% (10/12) だった2) • ABPC単剤治療と併⽤治療の質の⾼い前向き研究はないが, Enterococcus spp.はPCNに 対してtoleranceを持つことから3), 個⼈的には侵襲性感染症の場合はなるべく併⽤療法を ⾏なっている 1. Am J Med. 1950;8(4):532. 2. Circulation. 1954;10(2):173-194. 3. Appl Environ Microbiol. 2020;87(1):e02083-20.

  • #65.

    なぜCTRXを併⽤するのか? • • ABPCは, E. faecalisのPBP4およびPBP5を部分的に飽和させるが, 細胞壁合成に関与する PBP2およびPBP3を飽和させることはできない → PBP2およびPBP3に結合できるセファロスポリン系抗菌薬を併⽤することで, シナジー 効果が得られる1) E. faeciumはABPCの感受性に関わらずこの効果は確認されていない2-3) 1. Antimicrob Agents Chemother. 1995;39:1984-1987. 2. J Clin Microbiol. 2019;57(3):e01467-18. 3. J Antimicrob Chemother. 2019;74(8):2269-2273.

  • #66.

    AGなのかCTRXなのか • 少なくともCCr<50ml/minではGMを避ける1) • いくつかの観察研究で, ABPCとCTRXの併⽤は, AGとの併⽤と⽐較し, 再燃率・死亡率は • 個⼈的には, CTRXをGMに優先して使⽤することがほとんどである 同等だが, 有害事象が少ないことが⽰されている2-3) - CTRXが肝胆道系酵素上昇などで継続できない場合, 臨床データは乏しいがCTXへの変 更を考慮する4) - eGFR<60は胆泥形成リスクであり, 腹部所⾒の変化に注意5) 1. 2. 3. 4. Circulation. 2015;132(15):1435-1486.. J Clin Med. 2021;10(19):4594. Clin Infect Dis. 2023;76(2):281-290. Antimicrob Agents Chemother. 1995;39:1984-1987. 5. Clin Exp Nephrol. 2018;22(3):613-619.

  • #67.

    Enterococcus faecium • Enterococcus spp.によるIEの5%1) • 抗菌薬選択と期間:VCM + GM 6週間2-3) • 腎機能障害のリスクが⾼い → 代替薬はDAP or LZD - VREに対する治療成績はLZD>DAP - ただし, 推奨量であるDAP 8-12 mg/kgとの⽐較ではない4-5) 1. Clin Microbiol Infect. 2013;19(12):1140-1147 2. Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128. 3. Circulation. 2015;132(15):1435-1486.. 4. Antimicrob Agents Chemother. 2014;58(2):734-9. 5. J Antimicrob Chemother. 2018;73(9):2277-2283.

  • #68.

    栄養要求性連鎖球菌 NVS, Nutritionally Variant Streptococci • Abiotrophia defectiva, Granulicatella spp. (G. adiacens, G. elegans, etc) • グラム陽性連鎖球菌だが, グラム染⾊不定で形態学的にも多型性をもつ1-2) • 発育にL-システイン, ビタミンB6を必要とし, ⾎液寒天培地にはほとんど発育せず, チョ コレート寒天培地やブルセラHK寒天培地で炭酸ガス培養や嫌気培養によって発育を認め る3) • Staphylococcus spp.の産⽣するV因⼦ (NAD, ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド) をNVSが利⽤するため, ⾎液寒天培地に画線接種されたS. aureusやS. epidermidisの近 傍でα溶⾎するコロニーを形成する衛星現象を認める 1. Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases. 9th ed. Saunders, 2020, Chap 202. 2. 臨床微⽣物 2014:25;10-18 3. 医学検査 2015:64;421-427

  • #69.

    栄養要求性連鎖球菌 NVS, Nutritionally Variant Streptococci • IEの起因菌として多いのはGranulicatella spp.>Abiotrophia spp.1) • PCG低感受性株 (MIC≧ 0.25 μg/mL) が半数以上を占めると報告されているが1), 感受性 検査が難しく必ずしも正確ではない。 • 治療薬:PCG, CTRX, or VCM 6週間 + GM ≧ 2週間 1. J Infect. 2022;S0163-4453(22)00056-1.

  • #70.

    β溶⾎性連鎖球菌 • 菌⾎症におけるIEの頻度はS. agalactiae (9.1%)>S. dysgalactiae (6.4%)>S. pyogenes (<3%)1) • S. agalactiae, S. dysgalactiaeは2023 Duke-ISCVID Criteriaのmajor criteriaに組み 込まれた2)が, 菌⾎症の際にIE work upがどこまで必要かは今後の検討次第 • 治療薬:PCG 4-6週間 (+ GM 2週間) - GMについては, PCGの感受性が⼤抵保たれていること, 臨床研究に基づいた推奨では ないことなどから異論の提唱あり3) 1. Circulation. 2020;142(8):720-730. 2. Clin Infect Dis. 2023;ciad271. DOI: 10.1093/cid/ciad271 3. Clin Microbiol Infect. 2020;26(6):723-728.

  • #71.

    HACEK group • Haemophilus aphrophilus (後の, Aggregatibacter aphrophilus, Aggregatibacter paraphrophilus) • Actinobacillus actinomycetemcomitans (後の, Aggregatibacter actinomycetemcomitans) • Cardiobacterium hominis • Eikenella corrodens • Kingella kingae

  • #72.

    HACEK group • ⼝腔常在菌の⼀種 • HACEK-IEの発⽣率は0.14-0.44/100,000⼈年と低い1-2) • ⾎液培養が陽性となるまで中央値3.0⽇3)であり, 5⽇以上培養する意義は乏しい4) • 治療薬:CTRX 2g 4週間 (NVE) or 6週間 (PVE) - BL⾮産⽣株の場合, ABPC 12g + GM 3mg/kg 4-6週間も選択肢5) 1. Int J Infect Dis. 2018;68:83-87. 2. 3. 4. 5. Expert Rev Anti Infect Ther. 2016;14(6):539-545. J Clin Microbiol. 2006;44(1):257-259. Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2019;38(5):989-990. Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128.

  • #73.

    NVEの経験的治療 (私⾒) • • Acute endocarditis: - S. aureusをしっかりカバー → CEZ + VCM - 中枢神経系に播種病変あり → CTX (or CTRX) + VCM Subacute endocarditis: - VGSとEnterococcus spp.もカバー → CTRX + ABPC (or VCM)

  • #74.

    NVEのoral switch • 成⼈の左⼼系NVE患者を対象とした多施設ランダム化⾮盲検 ⾮劣勢試験@デンマーク1) • iv開始後最低10⽇間 (術後1週間) 経過時点でoral switch群 (n=201) とiv群 (n=199) に振り分け, 6ヶ⽉follow-up • 微⽣物:Streptococci 54%, E. faecalis 25%, MSSA 23%, CoNS 13% (MRSAは除外) • 主要複合転機:oral群18名 (9.0%) vs iv群24名 (12.1%) (群 間差 3.1%; 95%CI –3.4 to 9.6), 全死亡/⼼臓⼿術/塞栓症/ 再燃全て差なし • 5年間の追跡調査で, oral群 vs iv群の⽣存率差12% (77% vs 65%, p<0.05)2) 1. N Engl J Med. 2019;380(5):415-424. 2. N Engl J Med. 2022;386(6):601-602.

  • #75.

    NVEのoral switch • 適格基準として下記が挙げられる 1. 臨床的に安定しており, ソースコントロールや⼼臓⼿術の適応がないこと 2. 菌⾎症がソースコントロールを必要とせずに消失または消失しつつあること 3. 原因微⽣物がin vitroで感受性を⽰し, 経⼝抗菌薬レジメンが利⽤可能であること 4. 消化管からの吸収に問題がないこと 5. iv治療が望ましいような要因が存在しないこと • oral switch前に, iv治療がどの程度の期間必要かは不明である JAMA Netw Open. 2023;6(7):e2326366. DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2023.26366

  • #76.

    NVEのoral switch Streptococci: PCN-S (MIC ≤0.12 μg/ml) • AMPC 1 g×4, only for NVE • AMPC 1 g×4 with RFP 600mg×1 • LZD 600mg×2 alone or with RFP 600mg×1 • MFLX 400mg×1 with RFP 600mg ×1 or LZD 600mg×2 Streptococci: PCN-I (MIC 0.25-1.00 μg/mL) or Enterococcus • Streptococci: PCN-R (MIC ≥2 μg/mL) or AMPC-R Enterococcus AMPC 1 g×4 with RFP 600mg×1 or LZD 600mg×2 • • LZD 600mg×2 alone or with RFP 600mg×1 • • MFLX 400mg×1 with RFP 600 mg×1 LZD 600mg×2 alone or with RFP 600mg×1 MFLX 400mg×1 with RFP 600 mg×1 Staphylococcus spp. • • • • LVFX 750mg×1 with RFP 600mg×1 or LZD 600mg×2 LZD 600mg×2 alone or with RFP 600mg×1 (RFPはLZDの⾎ 中濃度を下げるため単剤と併⽤ どちらがいいか不明) TMP-SMX 960mg or 4800mg daily in divided doses Dicloxacillin 1 g×4 with RFP 600mg×1 (only formethicillinsensitive strains) JAMA Netw Open. 2023;6(7):e2326366. DOI: 10.1001/jamanetworkopen.2023.26366

  • #77.

    IEは外科感染症の側⾯もある • 10mm以上の疣贅があれば, 48時間以内の⼿術が6週間以内の死亡, 塞栓症を減らす (3% vs 23%, HR 0.1)1) • ⼿術適応のある⾃⼰弁⼼内膜炎は, 早期⼿術 (遅くとも20⽇以内) が予後改善に関与2) • ⼈⼯弁⼼内膜炎も, 保存加療と⽐較し⼿術加療が30⽇死亡率を35%下げる3) 必ず循環器内科・⼼臓⾎管外科と協⼒して診療しなければならない 1. N Engl J Med. 2012;366(26):2466-2473. 2. Heart. 2016;102(12):950-957. 3. Ann Thorac Surg. 2017;103(3):991-1004.

  • #78.

    緊急〜準緊急⼿術の適応 • ⼼不全になっているとき • 感染コントロールがつかないとき - 弁輪部膿瘍, 仮性動脈瘤 - 内科的加療が困難な細菌 (ex. 真菌など) - 他に理由がない持続菌⾎症 • 塞栓リスクが⾼いとき (疣贅>10mm+塞栓症 or >15〜30mm) 脳出⾎, ヘルニア, 広範囲脳梗塞がある場合は延期する Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128.

  • #79.

    IEはチーム医療が⼤事 • 2015年AHA/ESCでEndocarditis Team (ET) 設⽴が推奨された1-2) • 2016年にETを⽴ち上げ, 効果を評価した単 施設後⽅視的観察研究@仏3) - ⼼臓⾎管外科医, 循環器内科医, ⼼エコー 技師, 感染症科医で, 毎週すべてのIE症例 の診断・管理について検討 - MVAでETが院内死亡率低下に関与 1. Eur Heart J. 2015;36(44):3075-3128. 2. Circulation. 2015;132(15):1435-1486. 3. Open Forum Infect Dis. 2019;6(9):ofz308.

  • #80.

    感染症科の介⼊による影響 • 感染症科設⽴前後でIEの臨床転機を評価した単施設前後⽐較研究@⽇本 Ann Thorac Surg. 2021;112(4):1228-1234.

  • #81.

    抗菌薬調節 Ⅰ 抗凝固薬の⼀時中⽌ Ⅱa ⼿術の必要性と 時期を検討 PM/ICD埋込あり ⼼不全の原因とな る弁障害 抵抗性のある菌 (S.aureus, fungi) リードかポケットに感染が あるか? >10mmの可動性 のある⾃然弁疣贅 ⼼ブロック, 膿瘍 ⼼ブロック, 膿瘍 薬剤耐性菌 抗菌薬投与にもかかわ らず繰り返す塞栓や疣 贅の持続がある iEに対する 弁⼿術 ⼈⼯物抜去 Ⅱa 再燃した⼈⼯弁IE 早期⼿術 Ⅰ 脳動脈瘤なし ⼿術を 計画する 早期⼿術 Ⅰ 脳出⾎や広範な神経障害がない 脳動脈瘤 ⼿術は延期しない Ⅱb 早期⼿術 Ⅱa 早期⼿術 Ⅱb ⼈⼯物早期抜去 Ⅰ 広範な虚⾎性病変や脳出⾎があるが ⾎⾏動態が安定している 4週間⼿術延期を検討 Ⅱb Curr Cardiol Rep. 2018;20(10):86. より作成

  • #82.

    まとめ • IEは疑わなければ診断が遅れる • 適切な⾎液培養と, 適切な解釈が必要 • 培養前に抗菌薬が処⽅されているときは, ⼀旦中⽌を検討する • IEと診断した場合は, 専⾨科にコンサルトを⾏う

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