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【ここだけは押さえる】周術期予防的抗菌薬のまとめ

投稿者プロフィール
三谷雄己
Award 2023 受賞者

県立広島病院

198,451

354

概要

普段何気なく投与している周術期予防的抗菌薬の目的や、適切な使用方法は理解できていますか?

とりあえず生で!の要領で、とりあえずセファゾリン1gではよくない症例もあるのです。

今回は、周術期予防的抗菌薬に関して最低限押さえておくべきポイントをまとめました。

日々の診療の参考にしていただければ幸いです。

本スライドの対象者

研修医/専攻医

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テキスト全文

周術期抗菌薬の基本と注意点

#1.

-

#2.

今日オペ予定の患者さんの 抗菌薬を入れといて! とお願いされた…どうしよう…

#3.

とりあえずセファゾリン(CEZ)1g…はNG! ●下部消化管手術はCEZでカバーできる? ●100㎏を超える患者さんに1gで十分? ●βラクタム系アレルギーの患者さんは…?

手術別の抗菌薬選択とその理由

#4.

周術期予防的抗菌薬の総論 ●目的は手術部位感染(SSI)発生率の減少  ・組織中で十分な殺菌作用を示す抗菌薬濃度の維持  ・感染を引き起こさないレベルまで細菌量をコントロール  ※完全な無菌化を目指しているわけではない!   ●切開部位・皮膚の消毒・確実な清潔操作  術後管理など多角的なSSI予防策の1つにすぎない 手術部位や症例に応じて テーラーメイドな投与計画を設計 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#5.

手術別の術中汚染菌と抗菌薬の選択 引用)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#6.

主な抗菌薬① セファゾリン(CEZ) ●基本的には皮膚の常在菌で 皮膚軟部組織感染症の主要な原因菌 黄色ブドウ球菌とレンサ球菌をカバー ●嫌気性菌群の関与がある手術部位(口腔・大腸など) かどうかを考慮しカバーを拡大 ➡CEZ以外の抗菌薬を選択 ※CEZは耐性のない腸内細菌科(大腸菌など)の一部までカバー可能 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

βラクタム系アレルギー患者への対応

#7.

主な抗菌薬② セフメタゾール(CMZ) ●下部消化管手術では腸管内に存在する Bacteroidesや腸内細菌科のカバーが必要 ※CEZとメトロニダゾール(MNZ)の併用も可 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#8.

主な抗菌薬③ スルバクタム/アンピシリン(SBT/ABPC) ●口腔や気管が開放される頭頸部・呼吸器手術では 口腔内の嫌気性菌群 (Peptococcus・Peptostreptococcusなど)もカバー 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#9.

Βラクタム系アレルギーの症例は… ●セファゾリンの代替➡クリンダマイシン ・腸内細菌科に無効(上部消化管手術など) ➡ゲンタマイシンなどアミノグリコシドを併用 ・嫌気性菌群へのカバー不十分 ➡メトロニダゾールを検討 ※クリンダマイシンの代わりにグリコペプチドが用いられる場合も 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

抗菌薬投与のタイミングと方法

#10.

鼻腔培養でMが出てます… 【グリコペプチド系抗菌薬追加の適応考慮】 ●MRSA保菌者(鼻腔培養など) ●手術部位からMRSAが検出 ●β-ラクタム薬アレルギー患者 インプラント挿入術などにおいて 同一施設でMRSAによるSSIの集団発生が 認められた場合も検討 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#11.

周術期予防的抗菌薬選択の注意点 ●完璧なカバーを目指した広域抗菌薬は避ける ●手術部位から常在細菌以外の細菌が検出 ➡その細菌に活性を有する抗菌薬を選択 ●術前1か月以内に抗菌薬使用歴 ➡抗菌薬耐性獲得の関与も検討 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#12.

投与タイミング ●執刀時点で十分な組織中濃度となるように ●日本的には切開の1時間前以内に投与を開始1) ●フルオロキノロン系・バンコマイシンは 副作用を避けるため120分以内に投与を開始2) 1)日本外科感染症学会 消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン作成委員会. 消化器外科SSI予防のための周術期管理2018. 診断と治療社, 2018; 78-9. 2)Bratzler DW, et al. Am J Health Syst Pharm 2013; 70: 195-283.

肥満患者における抗菌薬投与量

#13.

整形外科領域の ターニケットを用いた手術の場合… ●駆血により手術部位への動脈血流は阻害 ➡事前に抗菌薬投与を完了させる ●ターニケットを加圧する5-10分前に 抗菌薬の投与を終了することを推奨 引用)Schweizer ML, et al. JAMA 2015; 313: 2162-71.

#14.

抗菌薬の投与量 引用)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年. SSI予防目的であるが治療量投与が推奨

#15.

肥満患者の場合… ●肥満症例においては分布容量が大きく 血中濃度が上昇しない可能性あり ●CEZは体重80kg以上では2g 120kg以上では3g投与を推奨 引用)Schweizer ML, et al. JAMA 2015; 313: 2162-71.

肝腎機能障害患者への抗菌薬管理

#16.

肝腎機能障害がある場合… ●腎・肝障害があっても術前単回投与であれば 抗菌薬の投与量を変更する必要はない 引用)Bratzler DW, et al. Am J Health Syst Pharm 2013; 70: 195-283. ●有効血中濃度の達成に 薬物の代謝・排泄機能は直接関連しない ●腎機能低下がある場合は投与間隔を延長

#17.

抗菌薬の投与間隔 引用)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#18.

Take home message ●周術期予防的抗菌薬の目的はSSIの予防! ●手術部位に合わせた周術期抗菌薬選択を! ●アレルギーや腎機能、体重など症例に応じて  周術期投与計画を設計する!

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