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Dr.クルクル@救急&ICU

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「防ぎえた死」から救命せよ!ダメージコントロール戦略 誕生秘話〜外傷診療の歴史と変遷〜

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  • 外傷死の三徴候
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Dr.クルクル@救急&ICU

市中総合病院

内容

外傷診療をマネージメントする救急医、外傷患者の手術を行う外科医、重症外傷に関わる全てのコメディカル、そして外傷診療の歴史にちょっと興味があるあなたに見ていただきたいスライドです。戦争の中で進化を続けてきた外傷診療の歴史と、ダメージコントロール戦略について解説しています。

◎目次

・本スライド対象者

・外傷診療の技術は戦争によって磨かれた

・戦争と外傷診療の歴史

・大量輸液療法の誕生と衰退

・ダメージコントロール(DC)戦略の誕生

・ダメージコントロール手術とは

・なぜDC手術は迅速性が必要なのか?

・ダメージコントロール蘇生とは

・ダメージコントロール蘇生の具体例

・REBOAとは

・REBOAの使用法

・ダメージコントロール戦略の全体像

・Take Home Message

本スライドの対象者

研修医/専攻医/専門医

参考文献

  • 照井資規. イラストでまなぶ! 戦闘外傷救護 -COMBAT FIRST AID- 増補改訂版. ホビージャパン. 2019.

  • Hasan B. Curr Probl Surg. 2011 August ; 48(8): 531–564.

  • Cotton BA. Shock. 2006 Aug;26(2):115-21.

  • Edelmuth RC. Rev Col Bras Cir. 2013 Mar-Apr;40(2):142-51.

  • Gonçalves R. Rev Col Bras Cir. 2016 Sep-Oct;43(5):374-381.

  • Bogert JN. Trauma Case Rep. 2017 Jan 10;7:11-14.

テキスト全文

  • 1.

    「防ぎえた死」から救命せよ︕ ダメージコントロール戦略 誕⽣秘話 〜外傷診療の歴史と変遷〜

  • 2.

    本スライド対象者 • 外傷診療をマネージメントする救急医 • 外傷患者の⼿術を⾏う外科医 • 重症外傷に関わる全てのコメディカル • 外傷診療の歴史にちょっと興味があるあなた︕

  • 3.

    ⽬次 • 外傷診療の技術は戦争によって磨かれた • ⼤量輸液療法の誕⽣と衰退 • ダメージコントロール(DC)戦略の誕⽣ • DC⼿術 と DC蘇⽣

  • 4.

    外傷診療の技術は戦争によって磨かれた • アメリカ軍は南北戦争(1961~1865年)以来 兵⼠のカルテを永久保存して 戦闘外傷や戦地での疾病について研究を重ねている • 1970年台に救急医療を⼤きく発展させる⼀因となった ⼤量輸液療法は第⼀次世界⼤戦時の研究から⽣まれた 照井資規. イラストでまなぶ! 戦闘外傷救護 -COMBAT FIRST AID- 増補改訂版. ホビージャパン. 2019.

  • 5.

    戦争と外傷診療の歴史 時代 外傷診療 他の要因 第⼀次世界⼤戦 [1914-1918] 概念なし ー 早期死亡多数 ー 早期死亡↓ 晩期死亡↑ (腎不全による) 迅速な退避法 早期死亡↓↓ 晩期死亡の原因変化 (ARDS増加) 第⼆次世界⼤戦 [1939-1945] ベトナム戦争 [1960-1975] 1980-1990年代 イラク戦争 [2003-2011] アルブミン製剤 ⾎液、⾎漿の使⽤ ⼤量輸液療法 DC⼿術 DC蘇⽣ 結果 外傷搬送体系成熟 早期死亡↓↓↓ 晩期死亡↓ 臓器不全↑ ⻑期搬送体系成熟 防護服の改良 戦場戦略の改良 早期死亡↓↓↓↓ 晩期死亡↓↓ 臓器不全↓ トリアージ Hasan B. Curr Probl Surg. 2011 August ; 48(8): 531–564.

  • 6.

    戦争と外傷診療の歴史 1900年代初期は外傷診療の概念がなかったため 戦争で多くの兵⼠が死亡した この中には 防ぎえた外傷死 (Preventable Trauma Death) が多く含まれていた

  • 7.

    戦争と外傷診療の歴史 第⼀次世界⼤戦の時点で輸⾎の概念は存在したが実⽤化されず 第⼆次世界⼤戦では 輸⾎の備蓄ができるようになっており 輸⾎投与によって多くの傷病兵が救命された

  • 8.

    戦争と外傷診療の歴史 ベトナム戦争時には⼤量輸液療法が発案され 早期外傷死亡が著明に減少した

  • 9.

    ⼤量輸液療法の誕⽣と衰退 ⾎管内容量の補充だけでなく 間質分の⽋損も補充が必要であるという概念の元、 出⾎量の3倍以上輸液をする⼤量輸液療法が発案された 細胞外の⽔分布 間 質 3 ⾎ 管 内 1 ︓ 「なぜ3倍以上の輸液が必要なのか︖」 循環⾎液量減少をきたした際は ⾎液と同じ浸透圧の製剤(等張液)を ⾎管内投与することで⽔分を補充する。 しかし、投与された⽔分は細胞外全体に広がってしまうため ⾎液喪失の3倍以上投与しないと⾎管内に残らない。

  • 10.

    ⼤量輸液療法の誕⽣と衰退 ⼤量輸液療法により 早期死亡が⼤幅に低下したが 晩期死亡が増加した 【晩期死亡の原因】 • ⼤量輸液による溢⽔で 肝不全・急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)発症 • ⼿術後に浮腫んだ腸管を無理やり腹腔内に戻すことで Abdominal Compartment Syndrome (ACS)発症 • 希釈性の貧⾎・凝固異常 • 輸液そのものの細胞毒性による全⾝性炎症反応症候群 (SIRS) Cotton BA. Shock. 2006 Aug;26(2):115-21.

  • 11.

    戦争と外傷診療の歴史 時代 外傷診療 他の要因 第⼀次世界⼤戦 [1914-1918] 概念なし ー 早期死亡多数 ー 早期死亡↓ 晩期死亡↑ (腎不全による) 迅速な退避法 早期死亡↓↓ 晩期死亡の原因変化 (ARDS増加) 第⼆次世界⼤戦 [1939-1945] ベトナム戦争 [1960-1975] 1980-1990年代 イラク戦争 [2003-2011] アルブミン製剤 ⾎液、⾎漿の使⽤ ⼤量輸液療法 輸液の量を減らすべく DC⼿術 DC蘇⽣ 結果 外傷搬送体系成熟 早期死亡↓↓↓ 晩期死亡↓ 臓器不全↑ ⻑期搬送体系成熟 防護服の改良 戦場戦略の改良 早期死亡↓↓↓↓ 晩期死亡↓↓ 臓器不全↓ トリアージ

  • 12.

    ダメージコントロール(DC)戦略の誕⽣ • 受傷直後に全ての治療を完遂するのは時間がかかる • その間に輸液量がかさむことで合併症も増える まず迅速な⽌⾎と洗浄に専念する Damage Control Surgery "早期からの輸⾎投与"を含めた新しい全⾝管理法 Damage Control Resuscitationが発案された

  • 13.

    ダメージコントロール(DC)戦略の誕⽣ 溢⽔︓肝不全, ARDS, ACS 希釈︓貧⾎, 凝固異常 SIRS︓輸液⾃体の細胞障害 ⼀期的に全て終えるのは困難 プル ン シ 輸液は⾎液の代替にならない︕ に まずは⽌⾎と洗浄 より早く輸⾎を始める︕ DC⼿術 DC蘇⽣

  • 14.

    ダメージコントロール⼿術とは 重症の胸部、腹部、⾻盤外傷患者に対する初回⼿術で ⽌⾎処置(タオルパッキング等)、創部洗浄を迅速に実施した後 患者をすぐに集中治療室へ収容し全⾝管理を⾏う。 全⾝状態が落ち着いた後、後⽇根治的な再建⼿術等を⾏う。 肝損傷のタオルパッキング Edelmuth RC. Rev Col Bras Cir. 2013 Mar-Apr;40(2):142-51. 胸部の開放管理 Gonçalves R. Rev Col Bras Cir. 2016 Sep-Oct;43(5):374-381.

  • 15.

    なぜDC⼿術は迅速性が必要なのか︖ 代謝性アシドーシス 凝固異常 低体温 外傷死の三徴候 ⼿術時間が延⻑する程、低体温が進⾏する 低体温は凝固異常を助⻑し、⽌⾎できなくなる(出⾎持続) 出⾎が持続すると循環不全により乳酸アシドーシスが進⾏する ➡ 救命困難 DC⼿術を最低限の時間で終えることで 救命率アップ︕

  • 16.

    ダメージコントロール蘇⽣とは 外傷死の三徴候を避けるため 循環動態の蘇⽣、低体温の回避、凝固異常の予防、 ⼿術以外の⽌⾎法などを適切に取り⼊れる治療戦略 救急外来でDC蘇⽣を⾏いながら⽌⾎術へつなげる DC蘇⽣ DC⼿術 集中治療

  • 17.

    ダメージコントロール蘇⽣の具体例 ① ② ③ ④ ⑤ 復温 ⑥ 輸液制限 ⑦ 低⾎圧の容認 ⑧ 輸⾎適正⽐率(RBC:FFP=1:1) ⑨ ⼤量輸⾎プロトコル(MTP)の実施 Ca2+の補充 トラネキサム酸投与 周術期ICU管理 REBOA 低⾎圧や輸⾎適正⽐率を維持しながらのMTP実施 周術期の集中治療管理など 「厳密さ」と「専⾨性」が求められる管理が必要 救急医や集中治療医の腕の⾒せ所!!

  • 18.

    REBOAとは Resuscitative Endovascular Balloon Occlusion of the Aorta "⼤動脈の蘇⽣的⾎管内バルーン閉塞術"の略 従来IABOと呼ばれてきたが、諸外国に合わせREBOAと呼称されるようになった 【適応】 輸液・輸⾎療法に反応せず⼼停⽌が差し迫った出⾎性ショックに使⽤ 【⽬的・⼿法】 冠⾎流・脳⾎流を維持するため 緊急避難的に⼤腿動脈からバルーンカテーテルを挿⼊し 下⾏⼤動脈の⾎流を遮断する処置

  • 19.

    REBOAの使⽤法 バルーンを拡張させた部位から下の⾎流が途絶するため 出⾎部位によってバルーン拡張の位置を調整する 腹腔内出⾎︓腹腔動脈より頭側のZone 1 重症⾻盤⾻折︓腎動脈より尾側のZone 3 横隔膜より頭側の出⾎では⽌⾎効果なし︕ バルーンを⻑時間拡張させ続けると そこから遠位で致命的な虚⾎をきたすので 連続使⽤は30分以内に留める バルーンを完全に拡張させず少し⾎流を残すこともある Bogert JN. Trauma Case Rep. 2017 Jan 10;7:11-14.

  • 20.

    ダメージコントロール戦略の全体像 治療計画と全⾝管理を⾏う救急医 各臓器の迅速な⽌⾎を⾏う外科医 防ぎえた外傷死を回避︕

  • 21.

    Take Home Message 戦争の中で外傷診療は進化を続けてきた 防ぎえた外傷死をなくすために 「根本的⽌⾎術と根治術を⾏う外科医」と 「全体的な戦略マネージメントを⾏う救急医」 両者の存在が重要である

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