#4.
症例の続き ・PCR検査を施行するように指示をすると、後輩Drより質問が
あった。
・後輩Dr「検体はどこからとれば良いですか?鼻ですか?
咽頭ですか?唾液はありですか・・・?」
#5.
PCRの検体はどこから採取するべきか?
#6.
検体によるPCR陽性率の違い@中国
#7.
検体によるPCR陽性率の違い@中国 ・2020年1月1日から2月17日まで、中国の3病院に入院していた 患者205人から血液、喀痰、便、尿、鼻咽頭スワブ 挿管患者からはBALや気管支鏡下擦過生検を合わせ 計1070の検体から陽性率のデータを抽出した。・患者の平均年齢は44歳。
・19%は重症患者であった。 Detection of SARS-CoV-2 in Different Types of Clinical Specimens
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2762997
#8.
検体によるPCR陽性率の違い@中国 下気道からの検体で陽性率が高い 尿は0% Detection of SARS-CoV-2 in Different Types of Clinical Specimens
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2762997
#9.
上気道検体に関する報告 ・18症例の上気道検体のウィルス量をモニタリング
・喉よりも鼻からより高いウィルス量が検出される傾向にあった。
・無症状(ないし軽症状)患者と症状のある患者ではウィルス量に大きな差はなかった。 SARS-CoV-2 Viral Load in Upper Respiratory Specimens of Infected Patients
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2001737
#10.
IDSAでは ・合計11のレポートが、特定の検体の検査精度を明らかにして いる。8つのレポートは2つ以上の検体の比較データを 3つのデータは1つの検体のデータを示している。
・2つの研究は直接鼻腔スワブvs鼻咽頭スワブで比較をし 同程度の感度である、と示した。 IDSAガイドラインより引用
https://www.idsociety.org/practice-guideline/covid-19-guideline-diagnostics/?fbclid=IwAR1SLMxblvPrvGW3XDCEKQLZ9Fw3DMsx84TdZX-il8B4c4Qe9PcotbExyro
#11.
IDSAによる感度・特異度のまとめ ※(鼻咽頭が比較対象の研究結果2例) IDSAガイドラインより引用
https://www.idsociety.org/practice-guideline/covid-19-guideline-diagnostics/?fbclid=IwAR1SLMxblvPrvGW3XDCEKQLZ9Fw3DMsx84TdZX-il8B4c4Qe9PcotbExyro 鼻咽頭は感度が優れる 唾液は感度で劣りそう
#12.
これまでのデータを踏まえて・・上気道検体はどこから取るか? 日本(国立感染研)は、鼻咽頭スワブ>咽頭スワブ
米国(CDC)は
①医療従事者が採取した鼻咽頭スワブ、咽頭スワブ
②医療従事者か患者自身が自宅で採取した前鼻腔スワブ または中鼻腔スワブ(スーパーバイズ必要)
③医療従事者が採取した鼻腔または鼻咽頭の洗浄・吸引液
を推奨している。
#13.
ここまでのまとめ ・BAL洗浄液(挿管患者)と喀痰で感度が高いが、採取にエアロゾル 発生リスクを伴う場合もある。第一選択は今のところ鼻咽頭 スワブ(または喀痰)である。
・唾液も注目されているが、IDSAガイドラインは 唾液検体の診断精度がまだ一貫しないことから推奨していない。
・しかし、安全性や簡便性、自己採取の可能性の観点から 期待が持たれている。
#14.
症例の続き 40歳男性 5日間続く発熱、咳嗽
PCR検査の準備をしていると患者より質問があった。
「PCR検査には偽陰性や偽陽性があると聞きます。
どれくらい正確なのでしょうか?」
#15.
PCR検査の結果をどのように解釈すればよいか
#16.
検査の感度とタイミングによる変化
#17.
感染後の日数と偽陰性率の変化 偽陰性率 感染後8日、発症後3日目が
偽陰性が最も少ない 鼻咽頭・口咽頭からの採取が含まれる。
感度の中央値は62%
#18.
PCR検査感度まとめ ・感度は総じて6割程度になる。すなわち、COVID-19を疑っている 状況であれば、検査陰性でCOVID-19を否定することはできない。
・症状出現後3日目に採取した検体で、感度が最も高くなる可能性が あり、発症初期のケースでは検査提出を1-2日待った方が良いかも しれない。
#19.
PCR検査の反復@シンガポール
#20.
PCR検査の反復@シンガポール ・シンガポールに居住し、COVID-19疑いで入院した 有症状の患者70人の鼻咽頭スワブ検体のデータを抽出した。
・症状が出現してから病院に入院するまでの平均日数は 5日であった。
・再検査をする際には最低24時間あけて採取した。
Testing for SARS-CoV-2: Can We Stop at Two?
https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciaa459/5822543
#21.
PCR検査の反復@シンガポール ・95%の症例で2回目のPCR検査までに 陽性が確定された。
・2例で3日目に、1例で5日目に はじめて陽性となった。
・1例では便と喀痰は陽性にも 関わらず、鼻咽頭スワブは陰性で あった。
2回目で陽性7% Testing for SARS-CoV-2: Can We Stop at Two?
https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciaa459/5822543
#22.
PCR検査の反復まとめ ・PCR検査が1回目陰性でも、COVID-19を疑う症例であれば 2回目の検査を提出する価値があるかもしれない。
・IDSAは、初回のPCRが陰性だがCOVID-19が疑われる場合は 24~48時間以内に再検査することを推奨。PCRを再検査する際 には別の検体、下気道症状がある患者は下気道のサンプルで 再提出をすることも推奨しているが、エビデンスレベルは 低いとされている。
#23.
RT-PCRは特異度に優れた検査 ・MERS-CoV、他HCoV4種類、インフルエンザウィルスを含む 多種の病原体を含む患者からのサンプル297例でRT-PCR検査を 行った結果、偽陽性は0件だった。
・4例で初期に弱い反応が見られたが、再検査で陰性となった。 コンタミネーションなど検体の取り扱いに問題があった 可能性が指摘されている。
Detection of 2019 novel coronavirus (2019-nCoV) by real-time RT-PCR
https://www.eurosurveillance.org/content/10.2807/1560-7917.ES.2020.25.3.2000045
#24.
PCR検査結果の解釈
#25.
PCR検査結果の解釈 発症1週目がピーク 3週目までに陰性化するが重症例では3週を超えても陽性が持続 Interpreting Diagnostic Tests for SARS-CoV-2
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2765837
#26.
PCR検査結果の解釈 ・PCRの感度は検体によって異なる。
・喀痰のPCR感度は緩徐に低下するため、鼻咽頭スワブ検体が 陰転化しても陽性と出る可能性がある。
・6週間PCR検査が陽性になった例、2回連続でPCR陰性確認された 後に陽性になった例なども複数報告されている。
・しかし現時点では検査エラーのためなのか 再感染のためなのか、再活性化のためなのか判然としない。 Interpreting Diagnostic Tests for SARS-CoV-2
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2765837
#27.
PCR検査のまとめ ・PCR検査の感度は60%程度、採取のタイミングや部位によって もばらつきがあり、特に陰性結果の解釈には 十分な注意が必要である。
・初回PCRが陰性でもCOVID-19を経過から疑うので あれば、24~48時間以内に再検査を検討する。
・コンタミネーションなどがなければ 特異度はほぼ100%になり、陽性なら診断は確定的。
#28.
症例の続き 40歳男性 5日間続く発熱、咳嗽
PCRの検査を施行した後に患者より質問があった。
「ワイドショーで抗体検査でも診断がつけられる、と言っていました。これって本当ですか?」
#29.
抗体検査の意義は何か
#30.
基本知識 ・大半の抗体はヌクレオカプシド蛋白(NC)に対して産生されるため NCに対する抗体は感度が高い。
・一方、S蛋白レセプター結合ドメイン(RBD-S)に対する抗体はより 特異度が高いと考えられている。
・SARS-CoVや他のコロナウイルスへの 交差反応もありうる。
図:日経バイオテクより引用 Interpreting Diagnostic Tests for SARS-CoV-2
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2765837
#31.
抗体検査の解釈
#32.
抗体検査の解釈 発症後2週目に立ち上がる 発症後5週目でIgMは低下し、7週目に消失、IgGは維持される 3-4週目で
seroconversion Interpreting Diagnostic Tests for SARS-CoV-2
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2765837
#33.
抗体検査の意義は何か ・血清学的な検査は症状が出現して、2週間以上経過して 受診した軽症~中等症の患者で重要となる。
・また、COVID-19の流行地域の感染の広がりを理解し 潜在的に感染から「保護される」個人を特定する 重要なツールになるかもしれない。
・ELISAベースのIgMとIgG検査の特異度は95%以上であり PCR検査に2週間隔のペア血清を追加することで 診断精度をあげられるかもしれない。
Interpreting Diagnostic Tests for SARS-CoV-2
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2765837
#34.
コホート研究@中国
#35.
コホート研究@中国 ・香港の2つの病院で30人の患者から採取した検体を用いたコホート研究。
・患者の年齢の中央値は62歳。
Temporal profiles of viral load in posterior oropharyngeal saliva samples and serum antibody responses during infection by SARS-CoV-2: an observational cohort study
https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(20)30196-1
#36.
コホート研究@中国 ・IgMとIgGは発症後約10日でほぼ同時に上昇、IgGがより早期に 陽性になる症例もあった。
・症状が出現して14日目以降の抗体の陽性率はNP、RBDともに 8割を超えていた(以下の表)。 Temporal profiles of viral load in posterior oropharyngeal saliva samples and serum antibody responses during infection by SARS-CoV-2: an observational cohort study
https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(20)30196-1
#37.
コホート研究@中国 ・抗体検査は、ウイルス量が少ないためにPCRで検出できず 検査タイミングの遅い症例に有効な検査と考えられる。
・血清抗体の力価と重症度は相関しない。
・S蛋白に対するIgG抗体が急性肺障害に関連する可能性が 示唆されており、ワクチンが肺障害に対しても 有用な可能性がある。
#38.
抗体検査の意義は何か
・一方で、FDA(アメリカ食品医薬品局)は感度や特異度が 検査系によりまちまちであり、十分意義が確立されていないため、 現時点では血清学的な検査を診断や除外のために使用するのは 時期尚早であると述べている。
・実際、多くの検査キットが、何を抗原に用いているか 公表していない。
#39.
抗体検査のまとめ ・抗体検査は、ウイルス量が少なく、発症後2週間以上経過した 軽症~中等症の患者の診断で重要となるだろう。
・臨床的な重症度と抗体価の相関関係はない。
・検査の精度については未だ議論をよぶところであり 今後もさらなるデータの蓄積や検査系の標準化が待たれる。
#40.
症例の続き 40歳男性 5日間続く発熱、咳嗽
再度患者より質問があった。
「最近は抗原検査も迅速に行えるように承認が進んでいる、と聞きました。抗原検査でも診断をつけられるのですか?」
#41.
抗原検査の意義は何か
#42.
レビュー論文では
#43.
レビュー論文では ・鼻咽頭と喉のスワブから採取した7つの検体では PCRをゴールドスタンダードとして 感度80%、特異度100%であった。
・同じ検体で別の抗原検査を施行すると感度100%、 特異度100%であった。
・PCR前の最初の検査として使用できるかもしれない。 Diagnostic Performance of COVID-19 Serology Assays
http://www.mjpath.org.my/2020/v42n1/COVID-19-serology.pdf
#44.
厚生労働省ホームページでは
#45.
根拠となる臨床試験 鼻咽頭ぬぐい液に対して、SARS-CoV-2抗原キットを使用。それぞれ国内臨床検体(①)と行政検査検体(②)を用いたPCR検査との相関性試験を施行。
抗原検査キットを使用すれば簡便かつ短時間(約30分間)で検査結果を得ることができるとしている。
#46.
根拠となる臨床試験① 厚生労働省 資料より
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000629736.pdf
陽性一致率 37%
陰性一致率 98%
#47.
根拠となる臨床試験② 陽性一致率 66.7%
陰性一致率 100% 厚生労働省 資料より
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000629736.pdf
#48.
根拠となる臨床試験 2つの臨床試験ともに陽性一致率はSARS-CoV-2RNAのコピー数が多いほど高くなった。 厚生労働省 資料より
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000629736.pdf
#49.
厚生労働省ホームページでは 除外診断としては使用しない。
陰性者に必要に応じてPCR検査を行うことを推奨。 厚生労働省 資料より
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000629736.pdf
#50.
抗原検査のまとめ ・抗原検査に関するデータは少ないが、現時点ではPCRと 比較して感度は劣るものの、特異度は十分高そうである。
・初期検査として活用できる可能性があり、PCRのキャパシティ を補うかもしれない。
・抗原検査をどのように扱うかは国によっても異なっており、
今後のさらなる追求が必要である。
#51.
症例の続き 40歳男性 5日間続く発熱、咳嗽
PCR検査を施行し、陽性が確定した。
すると患者より再度質問があった。
「僕はいつから仕事に戻れるのでしょうか?それまでに何の検査を受ける必要がありますか?」
#52.
職場復帰できる基準は何か?(検査は必要か?)
#53.
職場復帰できる基準は何か 厚生労働省のホームページには以下のように記載。
・就業制限の解除については、宿泊療養又は自宅療養の解除の基準を満たした時点で、同時に就業制限の解除の基準を満たすこととして差し支えないこと(解除時のPCR検査は必須ではないこと)。
・就業制限解除の確認を求められた場合には、就業制限の解除の基準を満たすこと又は宿泊療養又は自宅療養を開始した日から14日間経過したことを確認すること。
・就業制限の解除については、医療保健関係者による健康状態の確認を経て行われるものであるため、解除された後に職場等で勤務を開始するに当たり 職場等に証明を提出する必要はないこと。
https://www.mhlw.go.jp/content/000627457.pdf
#54.
日本産業衛生学会では ・宿泊療養又は自宅療養を開始した日から 14 日間経過 したときに宿泊療養・自宅療養を解除することが できるようになりました。
・主治医からアドバイスを受けたうえで 体調を確認しつつ復帰時期を決めてください。 日本産業衛生学会
https://www.sanei.or.jp/images/contents/416/COVID-19info0420koukai.pdf
#55.
CDCによるCOVID-19疑い・確定例の医療従事者の復職基準 【症状による戦略】
・解熱剤を使用しなくても発熱がないことが最低72時間続いている。
・かつ、咳や息切れなどの呼吸器症状が改善している。
・かつ、症状が最初に出現してから10日以上経過している。
CDCガイドライン
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/return-to-work.html
#56.
CDCによるCOVID-19疑い・確定例の医療従事者の復職基準 【検査による戦略】
・解熱剤の使用がなくても発熱がない。
・かつ、咳や息切れなどの呼吸器症状が改善している。
・かつ、24時間以上間隔をあけて採取した呼吸器検体のCOVID-19の検査(FDA緊急使用承認イムノアッセイ法)が2回連続陰性。
以上の基準を満たすまで出勤しない。
CDCガイドライン
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/return-to-work.html
#57.
COVID-19確定例だが無症候の場合 【時間による戦略】
・最初のCOVID-19学的検査で陽性となり、その後症状が 出ていないと仮定した場合、10日が経過している。
・症状が発現した場合は、症状に基づくまたは検査に基づく 戦略を用いるべきである。
以上の基準を満たすまで出勤しない。
CDCガイドライン
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/return-to-work.html
#58.
COVID-19確定例だが無症候の場合 【検査による戦略】
24時間以上間隔をあけて採取した呼吸器検体のCOVID-19の検査(FDA緊急使用承認イムノアッセイ法)が2回連続陰性
以上の基準を満たすまで出勤しない。 CDCガイドライン
https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/hcp/return-to-work.html
#59.
職場復帰できる基準まとめ ・就業制限の解除にPCR検査は必須ではない。
・厚労省基準では発症から14日、CDC基準では最短で10日で 復職できるとされている。
・就業制限の解除について、 職場等に証明を提出する 必要はない。
https://www.mhlw.go.jp/content/000627457.pdf
#60.
症例の続き 40歳男性 5日間続く発熱、咳嗽
PCR検査を施行し、陽性が確定した。
軽症であったため、宿泊施設で療養の方針となった。
職業を聞いてみると理学療法士であった。
厚生労働省・CDCの方針に従うと再検査は必ずしも必要でなく、順調に回復すれば発症から2週間が目安になると説明した。
#61.
まとめ ・PCR検査の採取場所として、鼻咽頭スワブや下気道検体の感度が 比較的高い。
・正確性の高いPCR検査結果も、臨床情報と合わせて 注意深く解釈することが重要である。
・抗体検査は、比較的時間の経過した症例への適用やペア血清の活用で 有用になるかもしれない。
・迅速性や簡便性から、抗原検査が今後入り口の検査になるかもしれない。
・復職基準に必ずしも再検査は要求されておらず 正しく指導する必要がある。