#4.
さっそくですが「まとめ」です
#5.
まとめ • 授乳中に内服してはいけない薬は限られている • セフェム系やペニシリン系の抗菌薬は使用可能 • NSAIDs(疼痛薬)や酸化マグネシウム(便秘薬)も使用可能 • むやみに授乳を止めると乳腺炎のリスクとなる • 授乳婦の薬情報はWEBサイト等で調べることができる
#6.
添付文書は信じない!? • 原則として「授乳中に内服してはいけない薬」の数はそれ ほど多くありません。 • 日本の添付文書では、「ごくわずかでも」母乳中へ移行す る薬は、授乳を避けるように記載されています。 • 実際は母乳へ移行しても影響が少ない薬はたくさんあり、 それらは内服をしても授乳を続けることが可能です。 6
#7.
方法① 「妊娠と薬情報センター」で調べる • 安全に使用できると思われる薬 は、国立成育医療研究センター の「妊娠と薬情報センター」に 表でまとめられています(表1)。 • 救急室で迷ったときはその場で 検索し、お母さんにも画面をお 見せすることで安心いただけま す。 出典:国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist_yakkou.html 7
#8.
表1. 授乳中に安全に内服できると思われる薬(ごく一部) 成分名 代表的な商品名 代表的な薬効分類 アセトアミノフェン カロナール® 解熱・鎮痛薬 アモキシシリン サワシリン®、パセトシン® 抗菌薬 セファレキシン ケフレックス® 抗菌薬 テオフィリン※ テオドール® 喘息治療薬 ドンペリドン ナウゼリン® 消化器官用薬 ファモチジン ガスター® 消化器官用薬 センナ・センノシド アローゼン®、プルゼニド® 消化器官用薬 硫酸マグネシウム 硫酸マグネシウム 消化器官用薬 ※テオフィリンは大量投与で赤ちゃんの癇癪が報告されている 出典:国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist_yakkou.html 8
#9.
方法② 「LactMed」で調べる • さらに詳しく調べたい人は、ア メリカ国立衛生研究所(NIH) の「LactMed」というサイト (またはアプリ)で授乳と薬の 情報が調べられるのでオススメ です。 出典:Drugs and Lactation Database (LactMed) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK501922/ 9
#10.
授乳婦に薬を処方する際の説明の方法 • 授乳中の多くの母親が、薬を飲む際に「飲んだ薬が赤ちゃ んに悪影響を与えるのではないか」と心配をします。 • 不要な薬は処方せずに「治療に必要な薬」のみを処方する ことを原則とした上で、日本産科婦人科学会の産婦人科 診療ガイドラインでは「例外はあるが、授乳婦が服用して いる薬物が児に大きな悪影響を及ぼすことを示したエビデ ンスはない」と説明しています。 10
#11.
• 母親が飲んだ薬がどれくらい児に摂取されるかを示す指標 RID(relative infant dose:相対的乳児薬物摂取量)が 10%以下であれば問題なく、事実、多くの薬がその範囲内 にあります。 • 授乳中の人へ薬を処方する際は、 次のような説明を行いましょう。 1. 母親の治療に必要な薬であること 2. 内服した薬が母乳に移行する割合は低く、児への影響は大きくないこと 3. (気をつけるべき点があれば)授乳後に観察するべき点 11
#12.
1. 母親の治療に必要な薬であること 2. 内服した薬が母乳に移行する割合は低く、児への影響は大きくないこと 3. (気をつけるべき点があれば)授乳後に観察するべき点 • 通常の薬であれば、1と2を中心に説明すれば十分です。 • 3は、次スライド(表2)にまとめた「授乳中に内服を控えた ほうが良い薬」が治療上必要な際に説明します。 12
#13.
表2. 授乳中に内服を控えたほうが良い薬(一部抜粋) 成分名 代表的な商品名 アミオダロン アンカロン® 理由 フェノバルビタール 児の摂取量がRID10%以上 プリミドン 児の摂取量がRID10%以上 リチウム 低体温、チアノーゼ ジアゼパム セルシン® 児の傾眠傾向、体重増加不良 アロプラゾラム コンスタン®、ソラナックス® Withdrawal syndrome ※ リン酸コデイン 総合感冒薬・咳止めなど 児のモルヒネ中毒 カルベゴリン カバサール® 母乳分泌低下 経口避妊薬 ピルなど 母乳分泌低下 ※Withdrawal syndrome:新生児薬物離脱症候群 13
#14.
• ここで、医師同士の質問解決プラット フォーム「Antaa」に寄せられた質問 を元に、ケーススタディをしてみま しょう。 出典:Antaa https://antaa.jp/ 14
#15.
Q. 授乳婦にプリンペラン®は使えるか? どのように判断しますか? 一緒に考えてみましょう。 15
#16.
• 添付文書では次のような記載があります。 - 「授乳中の婦人への投与は避けることが望 ましいが、やむを得ず投与する場合は授乳 を避けさせること」 - 「授乳婦にメトクロプラミド10mgを経口投 与した場合、母乳中への移行が認められて いる」 • しかし、母乳へ移行しているだけでは、授 乳を避ける理由にはなりません。 出典:プリンペラン5錠 添付文書 16
#17.
• LactMedでは、以下のように記載されています。 - 「母乳へ移行し、児の吸収量は10%以下であることが多い が、児の吸収量が多くなることもあり、その場合は児の血中 プロラクチン濃度上昇と消化器系の副作用の可能性がある」 - 「副作用として産後うつ病のリスクを上昇させる可能性が指 摘されているため、妊娠前にうつ病の既往があったり、産後 に長期に使用することは避けた方が良い」 出典:Drugs and Lactation Database (LactMed) - Metoclopramide https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK501352/ 17
#18.
• 国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」 では、授乳中にも安全に使用できる薬として、プリンペラ ンと同じような効用の薬としてドンペリドン(ナウゼリン) が紹介されています。 • そのため、プリンペラン、ナウゼリンともに使用できる が、気分の落ち込みなど産後うつ病のリスクがある方には ナウゼリンを使用したほうがよさそうだ、とアドバイスす ることになります。 18
#19.
各学会の授乳と薬についての参考資料 心疾患患者の妊娠・出産の適応,管理に 関するガイドライン(2018年改訂版) • 降圧薬・抗凝固薬・抗血小板薬の妊娠中・授 乳中の使用について表でまとめられています。 https://j-circ.or.jp/old/guideline/pdf/JCS2018_akagi_ikeda.pdf 腎疾患患者の妊娠:診療ガイドライン2017 • 腎疾患関連薬(主に降圧薬)で授乳中に禁忌となる 薬について解説されています。 https://cdn.jsn.or.jp/data/jsn-pregnancy.pdf 19
#20.
さいごに • 母乳には、たくさんのエビデンスがあります。 • 母乳には母親の免疫や抗体が含まれており、乳幼児の体を 感染から守る働きをしています。その他にも、児の神経発 達、アレルギー疾患の予防、糖尿病や高血圧などの生活習 慣病の予防などの効果が示されています。 • 授乳を行っている母親への効果として、乳がんや卵巣が ん、子宮内膜症リスクの低下、骨粗しょう症リスクの低 下が報告されています。
#21.
• 通常、母体は3〜4時間ごとに授乳するように母乳を産生し ており、定期的に授乳をしないと中で固まってしまいます。 • 薬を処方した際に無責任に「授乳は やめておいた方がいいですね」とア ドバイスしてしまうと、授乳を止め ることで乳汁うっ滞、乳腺炎を発症 させる可能性があるので注意が必要 です。 21
#22.
参考文献 • 妊娠と薬情報センター(国立成育医療研究センター) • LactMed(National Institutes of Health) https://www.ncchd.go.jp/kusuri/ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK501922/ • 『日本産科婦人科学会診療ガイドライン産科編2020』 • 『妊娠と授乳 薬物治療コンサルテーション 第2版』(伊藤真也, 村島温子/編), 2014, 南山堂 • 『重篤副作用疾患別対応マニュアル 新生児薬物離脱症候群』, 平成22年3月(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1j17.pdf • 「プリンペラン5錠」添付文書 https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2399004F1200̲2̲01/ • The Transfer of Drugs and Other Chemicals Into Human Milk:PEDIATRICS, 108(3):776789, 2001 DOI: https://doi.org/10.1542/peds.108.3.776 • The Transfer of Drugs and Therapeutics Into Human Breast Milk: An Update on Selected Topics:PEDIATRICS, 132(3):e796-e809, 2013 DOI: https://doi.org/10.1542/peds.2013-1985 ※本スライドは、Antaaウェブサイト上に掲載された「Antaa×中外医学社」の共同企画記事を再編集して作成されました。 22