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説明にそのまま使える 病院外におけるけいれん・てんかん発作に出くわした際の対処法

投稿者プロフィール
Osalepsy

総合病院

201,639

406

投稿した先生からのメッセージ

・主に病院外(特に家族のいない教育施設等)でけいれん・てんかん発作に出くわした際の対処法について説明

・もちろん病院内で発作に出くわした際にも対処可能な内容を記載

・熱性けいれん(熱性発作)の際にもこのスライドの内容で対応可能

・小児でよくみかける てんかん発作(強直間代発作,ミオクロニー発作,欠神発作…)等の簡単な解説付き

 そして各発作毎に対処法・注意点について解説

・ミダゾラム口腔溶液(ブコラム)やジアゼパム坐剤(ダイアップ)の使用法についても解説

・プールや入浴、食事の際に発作に出くわした時の対処法についても解説

・患者さんおよび家族, てんかん患児に携わる非医療従事者にそのままスライドを見せて解説できる

・2023年6月29日更新 

 体育,運動,授業中の注意点や避けるべき状況の例を追加しました

概要

てんかんは100人に1人の病気。

そして熱性けいれん(熱性発作)は100人に7-8人が罹患する病気。

ありふれた病気であり、

けいれんやてんかん発作は生活のどの場面でも起こり得ます。

病院外、特に家族が対応していない状況で

発作が起きた際には非医療従事者は

どのように対応したらよいのでしょうか?

ミダゾラム口腔用液や抗発作座薬の使用基準も含め解説しました。

スライド毎の解説は

https://twitter.com/osalepsy/status/1671877974491279362?s=20

の返信欄に随時載せています

本スライドの対象者

医学生/研修医/専攻医/専門医

参考文献

  • 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023

  • 「てんかん入門シリーズ」1 てんかん発作 こうすればだいじょうぶー発作と介助

  • 新てんかんテキストーてんかんと向き合うための本

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テキスト全文

病院外でのけいれん・てんかん発作の対処法

#1.

@Osalepsy 病院外におけるけいれん・てんかん発作に出くわした際の対処法 Osalepsy@小児科, けいれん・てんかん専門医 説明に そのまま使える

#2.

@Osalepsy ●アラフォー中堅勤務医 ●生息地 西日本のどこか ●資格  小児科専門医・指導医      てんかん専門医  ●専門 小児神経 (主にてんかん等けいれん性疾患) ●2022年10月~ Twitter始めてます!    主に小児のてんかんやけいれんについて  ・患者さんなど一般の方への病気の説明,  ・非専門の先生,若手の先生への診療時のpointやコツ  …などを発信中。   よろしければフォローください(^^)/     自己紹介 https://twitter.com/osalepsy Osalepsy@小児科, けいれん・てんかん専門医

#3.

本スライドには一部個人の見解が含まれます。 しかし、これらは専門家としての経験に基づく提示あることを 予めお断り申し上げます。 引用している最新のガイドラインには 本邦では適応外使用の薬剤も記載されていますが、 本スライドでは都合上、そのまま掲載させていただいています。 (適応外使用を推奨するものではないことも予めお断りいたします。) 薬剤の使用・適応に関しては添付文書をご参考ください。 各薬剤の情報が示されておりますが、中傷・誹謗するものではありません。 @Osalepsy

発作が起こる場面と対応者

#4.

@Osalepsy けいれんや てんかん発作は 生活のどの場面でも起こりうる!!

#5.

 ①病院内   ⇒医師や看護師など医療従事者が対応  ②病院外  ・家庭(家族旅行なども含む)   ⇒家族が対応  ・家庭外(学校,保育施設,療育施設,放デイ,修学旅行・合宿…)   ⇒主に教職員や職員,スタッフが対応 @Osalepsy 発作が起きた際, 誰が対応するか? 救急搬送依頼 または 医師から指示された対応 (現場での治療等も含む) 経過観察 または 重積状態に準じた対応

#6.

@Osalepsy 発作が起きる場や状況によって, 人も対処法も変わる! 病院外の多くの方は非医療従事者

発作時のダメージ防止の重要性

#7.

 それは… 発作による 脳や体への『ダメージ』を防ぐ事!    そのためには…   ①発作の種類(ダメージのリスクの有無)   ②発作の持続時間   ③対応方法の理解・把握                 が重要!! @Osalepsy 病院外の発作時の対応で何が重要か?

#8.

①脳障がいを来すリスクが高い(低い)発作か?  ・発作自体による直接的な脳への影響  ・頭部外傷による二次的な脳への影響   ②ヤケドや外傷, 溺水など体への影響のある発作か? この観点でわけて考える必要がある @Osalepsy 発作による『ダメージ』とは?? てんかん発作や けいれんを 一律に考えない事!

#9.

★直接的な脳への影響のありうる発作  ・強直間代発作  ・間代発作  ・強直発作  いわゆる呼吸抑制,チアノーゼを伴う全身けいれん ●持続時間が重要!  ・発作の多くは2-3分以内に自然に止まる   ⇒脳障がいを来すリスクは少ない   ➡経過観察でよい(迷えば救急車要請)  ・5分以上持続する場合(=早期てんかん重積状態)   ⇒自然頓挫しにくく, 脳障がいを来すリスクがある   (30分以上の継続は, 不可逆的な脳障がいを来しうる)   ➡救急車要請 @Osalepsy 脳障がいを来すリスクの高い発作 ● ● 発作が重積(群発) しやすい患者さんは 事前に医師と相談し、 指示された対処法を!

脳障がいを来すリスクの高い発作

#10.

★頭部の外傷による二次的な脳障がいを来しうる発作  ・脱力発作 (陰性ミオクロニー発作) ・強直発作  ①転倒に伴う頭部外傷等のリスクがある  ➡保護帽の着用等の外傷予防対策の必要性   ※保護帽は, 本人の転倒の仕方によって補強を検討   (例)額の部分にツバの作成, アゴ当ての作成 等  ②何度も転倒し, しばしばケガをする場合  ➡外出の際, しっかり腕を組んで歩くように心がけが必要  ➡家や施設の中の危険物を少なくするなどの工夫 @Osalepsy 脳障がいを来すリスクの高い発作 ● ●

#11.

★直接的な脳への障がいの影響の少ない発作  ・非けいれん性発作    ▶全般起始非運動発作(欠神発作, 非定型欠神発作)    ▶焦点起始意識減損発作(複雑部分発作) ・焦点起始意識保持発作(単純部分発作) ★短い(一瞬~数秒程度)の発作  ・強直発作 ・ミオクロニー発作 多くは脳障がいを来す可能性が低いので経過観察可能  ただし ①非けいれん性発作は  発作時間がいつもより長い場合(後述)やヤケド, 溺水に注意 ②強直発作は転倒(前述), ミオクロニー発作はヤケドに注意 @Osalepsy 脳障がいを来すリスクの低い発作

#12.

@Osalepsy 各発作への対応と介助・注意点

強直間代発作の特徴と対応

#13.

口を喰いしばり,四肢をピンと突っ張らせ硬直(強直相) + 四肢をビクン・ビクンと律動的に曲げ伸ばし(間代相) ・発作中は呼吸抑制やチアノーゼを伴う ・発作後は力が抜けて眠ってしまうことや  時に一時的にもうろう状態や尿失禁がある ・意識回復後, 嘔気や嘔吐・頭痛を訴えることも 強直間代発作(いわゆる全身けいれん)  左.強直相 中.間代相 右.発作終了時 てんかんfor school https://www.tenkanfs.jp/ を参考に作成 熱性けいれんの 多くは強直間代発作 同様の対応でOK! @Osalepsy

#14.

強直間代発作  左.強直相 中.間代相 右.発作終了時 てんかんfor school https://www.tenkanfs.jp/ を参考に作成 @Osalepsy @Osalepsy @Osalepsy 強直相 間代相 発作終了時

#15.

やってはいけない3つの事 ① あわてる, テンパる, 押さえつける ⇒(できる限り)あわてずに対応, 事前に対処法把握  ② 口の中にタオルや箸等を突っ込む ⇒舌を噛んで問題となることはほぼない! むしろ, 窒息やケガ(歯や口腔内損傷)等のリスク↑ ③口の中の食物の除去や水分や薬を無理やり飲ませる   ⇒誤嚥(むせこみ)のリスク↑  @Osalepsy 全身けいれんの対応・介助  てんかんInfo より引用

発作時の安全な介助法

#16.

@Osalepsy 全身けいれんの対応・介助 正しい介助法 ①安全な場所へ移動, 危険を遠ざける, 衣服緩める ⇒二次的な外傷や窒息の予防   ②横向きに寝かせる, 枕を頭の下に, 呼吸や顔色の確認 ⇒吐物による誤嚥防止, 気道確保 ③発作状況観察(可能なら全身がうつるように動画を) ⇒目の位置, 手足の伸展・屈曲, 左右差, 持続時間etc… 以上を確認し, 経過観察か, 現場で治療か, 救急搬送要請を判断!                                                                                         対応法のイメージ ※絵心の無さはご容赦ください(+_+)

#17.

@Osalepsy 火のそば 水の中, そば 高いところ 熱いものや機械(車)のそば 尖ったものの近く 参考 避けるべき‘’危険‘’とは?

#18.

転倒する発作(脱力発作,強直発作)  脱力発作 てんかんfor school https://www.tenkanfs.jp/ を参考に作成 @Osalepsy ●脱力発作, (陰性ミオクロニー発作) 筋緊張の急激な低下 ⇒ 全身の力が抜ける ●強直発作   眼球上転, 肩を中心に両上肢(全身)に力入り硬直   ・発作は一瞬だが, おしりや膝から崩れて倒れる事も… ・頭部を中心とした外傷が問題となる。

転倒する発作の対応と注意点

#19.

脱力発作  脱力発作 てんかんfor school https://www.tenkanfs.jp/ を参考に作成 @Osalepsy @Osalepsy @Osalepsy

#20.

①前兆などある場合 安全な場所へ移動, 座らせる   ②前兆がなく突然倒れる場合(外傷のリスク↑↑)   ・できるかぎり一人での行動する機会の軽減   ・(特に危険な場所では) 腕を組んでの移動   ・立っての行動(話)を減らし, 座っての作業を増やす   ・家や施設での危険物を少なくする工夫 保護帽の着用等の外傷予防対策の必要性  ※保護帽は, 本人の転倒の仕方によって補強を検討  (例)額の部分にツバの作成, アゴ当ての作成 等 @Osalepsy 転倒する発作の対応・介助

#21.

●欠神発作, 非定型欠神発作(全般起始非運動発作) 多くは幼児期~思春期に多い 突然表情がなくなり, ぼんやりした目つき・動作停止・反応の低下 を認める   発作時間は多くは1回 10秒前後~30秒程度   ・1日に何度も起こる事もあるが, 気付かれにくい事も ・集中力や注意力がない児と思われているケースも多い 非けいれん性発作①  欠神発作 てんかんfor school https://www.tenkanfs.jp/ を参考に作成 @Osalepsy

非けいれん性発作の特徴と対応

#22.

欠神発作  脱力発作 てんかんfor school https://www.tenkanfs.jp/ を参考に作成 @Osalepsy @Osalepsy @Osalepsy

#23.

●焦点起始意識減損発作(複雑部分発作) 成人や高齢者に多いが,比較的まれも小児にもある ぼんやりした目つき・動作停止・反応の低下 を認め, しばしば前兆(腹部の不快感など)や 自動症(手をモゾモゾ, 口ぺちゃぺちゃ)を認める   欠神発作と似ているが, ①発作時間が1回 数十秒~2・3分 と長い   ②発作後に意識もうろう状態を認める事が多い   事が相違点となる多い 非けいれん性発作② @Osalepsy  焦点起始意識減損発作 てんかんInfoブックレットNo4 (tenkan.info)より引用

#24.

①欠神発作の場合 ・ケガをする可能性は比較的少ない  ⇒頻発しなければ特別な処置は不要で, 意識回復を待てばよい  ・熱いもの,コップなどは遠ざける ・倒れそうな時は支えて座らせる ■救急搬送考慮の目安 意識回復が乏しい状態が(10分以上)持続する場合 @Osalepsy 非けいれん性発作の対応・介助

ミオクロニー発作のリスクと対策

#25.

②焦点起始意識減損発作(複雑部分発作)の場合  ・危険な場所でなければ, 特別な処置不要  ・危険なものが近くにあれば取り除いて見守る  ・声掛けを行い, 反応の有無・意識回復程度の確認  ・発作後もうろう状態では 立ち上がったり歩き回る事があるが無理に止めない   (行動を制限するとかえって激しく抵抗する事も…)   ただし転落や事故などの危険を伴う場合は, 必ず後ろから制止する   ■救急搬送考慮の目安 意識回復が乏しい状態が(10分以上)持続する場合    @Osalepsy 非けいれん性発作の対応・介助  てんかんInfoより引用

#26.

@Osalepsy ミオクロニー発作  ミオクロニー発作 てんかんfor school https://www.tenkanfs.jp/ を参考に作成 ●手・足・体全体が突然,   電気が走ったように瞬間的に『ビクッ』とする症状   連続して起こることもあり,時に強直間代発作へ移行 ●(特に寝不足の際)朝起きてから1時間以内に多く出現   ・持っている物を落としたり投げ飛ばしたりする事も ・食事中のヤケドや歯磨き中のケガ等が問題となる。

#27.

ミオクロニー発作 @Osalepsy @Osalepsy  ミオクロニー発作 てんかんfor school https://www.tenkanfs.jp/ を参考に作成 @Osalepsy

発作時の観察ポイントと重要性

#28.

・問題となるのは   ヤケド, ケガ,全身けいれんへ移行時  ・ミオクロニー発作は (特に寝不足な際や)寝起き直後に出やすい   ⇒歯磨きや食事の際に注意を要する  ・危険なものがあれば取り除く, ヤケドへの配慮  ・全身けいれんへ移行した際には   前述の発作対応と同様に対応でOK   ■救急搬送や病院受診考慮の目安 全身けいれんが5分以上持続する場合   ヤケドやケガをした際    @Osalepsy ミオクロニー発作の対応・介助

#29.

@Osalepsy てんかん発作時の観察ポイント

#30.

★いつ, 何をしている時かを明確(具体的)に ●何時に発作が起きたか? ●覚醒時か?睡眠中か? ▶覚醒時でも睡眠から起きたばかりなのか?       昼寝前だったのか?   睡眠中でも寝入りばなだったのか? 寝て〇時間(△分)だったのか?    など具体的にわかればベター ●授業中や作業中なら具体的に何をしていた時か?  ▶例えば, ✖✖の体育の授業中の少し休んでいる時       ○○の動画の△△のシーンを観ている時   など具体的にわかればベター @Osalepsy 観察ポイント① -時間・状況- 具体的な状況把握が 診断につながる事も多々ある!

各シチュエーションでの対応法

#31.

★意識障がいがあったかどうか? ▶声かけを行い確認 最初は意識があっても徐々になくなる時もあり ★けいれん  ・身体のどこから始まった(ように見えた)か? ・頭や眼球がどちらを向いてるか? ・四肢の様子, 左右差の様子   ▶四肢の動きは,グーっと硬直していたか(強直相)?           ビクンッ・ビクンッしていたか(間代相)?    左右差は, どちらの方が強く症状が出ていたか?        どちらの手が伸びて(曲がって)いたか?    などわかる判明で観察・記録できればベター    ・ 持続時間 @Osalepsy 観察ポイント② -意識障がい・けいれん-

#32.

★ a.フェンシング肢位 b.4の字徴候 左右差を認めるけいれんの際に時折認める。 発作の焦点が(多くは) 伸びている手の反対側(曲がっている手と同側)の 大脳の補足運動野というところにあるのを示唆 診察の際に重要な手がかりとなる事がある @Osalepsy 参考 左右差のある発作の1例 Lila Worden, Seizure Classification and Semiology: Handbook of Pediatric Epilepsy pp 11–29より引用

#33.

@Osalepsy 各シチュエーションでの対応・介助

入浴中・プール中の発作対応

#34.

入浴中の発作は,要注意項目の1つ! 最も重要なのは呼吸できる状態の確保  ・水(お湯)から顔をあげる ・顔をうまく上げられない場合なども想定される →浴槽の栓を抜く(排水) ■救急車要請の考慮の目安 各発作の持続時間に準ずる または 溺水による呼吸停止や誤嚥がある(疑われる)場合 @Osalepsy 入浴中の対応・介助

#35.

・浴槽のお湯は少なめに張るように ・長い入浴は避ける ・施設や家庭では 監視または注意した状態での入浴がのぞましい ・浴室のカギをかけない ・一人暮らしの場合や監視ができない場合には できるだけシャワーを推奨している ・お湯の出しっぱなしに注意! 浴槽につかった状態でお湯の出し止めはしない。 @Osalepsy 入浴における予防対策の指導例

#36.

プール中の発作も入浴中同様 最も重要なのは呼吸できる状態の確保  ・水から顔をあげ,鼻と口を水面から出す ・発作持続中は無理にはプールサイドにあげず, 水の中で体を支えるようにする   (ただし,明らかな溺水の場合にはただちにあげる)  ・発作が収まればゆっくりプールサイドへあげる   (患者が自分で上がれる場合にはそれでも可)   ■救急車要請の考慮の目安 入浴中と同様 @Osalepsy プール中の介助  てんかんInfoより引用

体育・授業中の注意点

#37.

★発作が十分にコントロールできている場合 ・特別な制限は不要! ・疲労や寝不足は発作誘発因子なので 翌日まで疲れが残らないように工夫する    (十分な睡眠時間の確保, 休憩を適宜とる etc…) ★発作コントロールが不十分な場合   ・どの程度, どこまで可能か主治医と事前に相談     ・激しい接触が多い競技(例 柔道やラグビー), スピードの速い競技(例 スケートやスキー), 高い場所で行う競技(例 登り棒, ボルダリング) などは避けるべきとされている @Osalepsy 体育, 運動における指導例・注意点

#38.

・原則,特別な制限は不要! ・注意すべき点は   ①理科の実験や技術・家庭科の実習で 火や尖ったものを扱う際に (特に発作コントロールできていない場合には)    監視を行うなど注意が必要   ②光過敏性(光等で発作が誘発される)がある場合,    明るいところで離れてモニター画面を見るなど    工夫をする   ③欠神発作が残存する場合には 管楽器の過度な使用など, 過換気を避ける @Osalepsy 授業中の注意点

#39.

 ・食事中で心配な事は, 食事を詰まらせてしまう事より, てんかん発作による二次的なケガやヤケドが問題 ①無理に口の中の食事を出す必要なし (むしろ窒息や誤嚥のリスクを高める)   ②危険物(熱いものや尖っているもの)を遠ざける  ・発作毎の対応は前述の通り @Osalepsy 食事中の対応・介助

救急搬送の基準と重要性

#40.

@Osalepsy 救急搬送・病院受診の基準について ~なぜ5分が目安とされるのか?~

#41.

★てんかん発作やけいれんの既往がある患者さんは 事前に主治医に救急車要請の基準を聞いておく ★救急車要請を考慮する基準(私見もあり)  ≒脳障がいを来す可能性がある場合 と考えてよい  ①てんかん発作(けいれん)が5分以上持続する場合  ②てんかん発作が群発する(繰り返される)場合 ③発作での頭部外傷や意識障がい持続を認める場合 ④呼吸状態や全身状態が悪い場合  ⑤いつもと違う発作  など… @Osalepsy 救急搬送のタイミング –本音と建て前- あくまで基準は基準(建前) 判断に迷う場合には, 救急車要請を躊躇しない(本音)

#42.

➤従来の定義 てんかん(けいれん)重積状態 :  30分以上持続する(けいれん)発作,  あるいは複数回の発作が断続的に起こり,  各発作間にも意識障害を認める状態 てんかん(発作)群発状態 :  短期間に発作が反復し,  各発作間には意識回復があるものの 更に発作が反復する可能性がある状態 ILAE.Epilepsia 1993;34:592-596. Guideline for Epidemiologic Studies on Epilepsyより引用・改変 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy てんかん発作の重積状態, 群発状態とは?

てんかん重積状態の定義と対応

#43.

➤最新(2015年)の定義 てんかん重積状態は発作停止機構 または開始機構の機能不全によりもたらされた 異常な発作遷延状態(time point t1以降)である 発作の型と持続時間に依存して 神経細胞死, 損傷および神経回路網の異常を含む 長期的な後遺症をきたす(time point t2以降) Trinka, et al.Epilepsia 2015;56:1515-1523. A definition and classification of status epilepticus-Report of the ILAE Task Force on Classification of Statis Epilepticus 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy てんかん(けいれん)重積状態の最新の定義 t1, t2 って何よ?? そもそも 定義の文章が難しい (;’∀’)

#44.

time point t1(t1時間): 発作状態の遷延とみなす時間 (自然停止が難しくなる時間=治療開始が望ましい) time point t2(t2時間): 脳に長期的な後遺症を残しうる時間 t1時間, t2時間とは?? 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy 日本では病院外発生の場合, 医療機関に搬送されるまでの所要時間が20-40分程度かかる ➤後遺症を残さない為に病院前治療の重要性が強調された! 多くの発作のt1時間は5分 ➤救急搬送開始のタイミング

#45.

A.けいれん性てんかん重積状態 強直間代発作重積状態 B.非けいれん性てんかん重積状態 焦点起始意識減損発作(複雑部分発作)重積状態 全般起始非運動発作(欠神発作)重積状態 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 早期SE 5-10分 確定したSE 10-30分 難治性SE 30-60分以上 超難治性SE 24時間以上 5分 30分 10分 60分 10-15分 不明 t1時間: 治療開始のタイミング t2時間: 神経学的後遺症を残しうる時間 @Osalepsy t2時間に入る前に 発作を止めたい!! てんかん重積状態(SE)の分類

病院外での治療薬と使用基準

#46.

小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 早期SE 5-10分 確定したSE 10-30分 難治性SE 30-60分以上 超難治性SE 24時間以上 病院前治療 ミダゾラム口腔用液 7ヶ月~1歳未満 : 2.5mg 1歳~5歳未満 : 5mg 5歳~10歳未満 : 7.5mg 10歳~18歳未満 : 10mg ジアゼパム坐剤 0.4~0.5mg/kg 抱水クロラール 坐剤/注腸液 30~50mg/kg or or 病院前 治療なし 静脈 ルート 確保 ミダゾラム口腔用液 7ヶ月~1歳未満 : 2.5mg 1歳~5歳未満 : 5mg 5歳~10歳未満 : 7.5mg 10歳~18歳未満 : 10mg ミダゾラム筋肉内投与 0.2~0.5mg/kg ミダゾラム鼻腔内投与 0.2mg/kg ミダゾラム頬粘膜投与 0.2~0.5mg/kg ジアゼパム注射液 直腸内投与 0.3~0.5mg/kg or or Yes No 静脈ルート確保 第一選択薬 ミダゾラムIV 0.15mg/kg (0.1~0.3mg/kgの追加可) (総量0.6mg/kg超えない) ロラゼパムIV 0.05mg/kg(最大4mgまで) (0.05mg/kgの追加可) (総量0.1mg/kgを超えない) or ジアゼパムIV 0.3~0.5mg/kg(最大10mg) or 第二選択薬 ホスフェニトインIV 22.5mg/kg フェニトインIV 15~20mg/kg フェノバルビタールIV 15~20mg/kg or レベチラセタムIV 20~60mg/kg or 第三選択薬 チオペンタールIV 3~5(-7)mg/kg チオペンタールCIV 2~5(-15)mg/kg/時 チアミラールIV 4~5mg/kg チアミラールCIV 2~5(-10)mg/kg/時 or ミダゾラムCIV 0.05~0.4mg/kg/時 or 第四選択薬 ケタミン 吸入麻酔 抗てんかん薬 ステロイド 免疫療法 てんかん外科治療 ケトン食療法 脳低温療法 バイタルサイン評価 発作型評価 救急車要請検討 バイタルサイン評価 呼吸循環安定化,発作型評価 静脈ルート確保,酸素投与 血糖測定(必要ならブドウ糖投与) 呼吸循環モニタリング 脳

#47.

★てんかん発作やけいれんが持続していれば 発作時対応を続ける, 必要時は指示された治療薬使用 ★発作が終わった(と思った)際の時間を確認する  全身けいれん後であれば, そのまま寝かしつけてよい しばらく入眠したり, ボーっとしたりは続く  目が覚めた後の嘔吐や頭痛, ふらつきなどに注意! ★お願い  救急搬送の際には, できれば発作を目撃・対応した 職員さんが同乗して来院いただければ嬉しい。  ➤発作の様子を医師が問診する事で   発作のタイプや様子を把握しやすいから  ➤難しければ, 発作の動画を持参したりメモを渡す @Osalepsy 救急搬送要請後の対応(とお願い)

#48.

@Osalepsy 病院外での治療・治療薬 ~ブコラム®使用も含めて~

医師法違反とならない条件

#49.

★坐薬 ・ジアゼパム(ダイアップ®坐剤) ・フェノバルビタール(ワコビタール®坐剤,ルピアール®坐剤) ・抱水クロラール(エスクレ®坐剤) ★注腸 ・抱水クロラール(エスクレ®注腸用キット) ★頬粘膜投与 ・ミダゾラム(ブコラム®) 家庭では上記薬剤はすべて使用可だが, 教育施設等ではどこまで使用可なのだろう…(・・? @Osalepsy 病院外で使用可能な発作時治療薬

#50.

★家庭内または保護者のいる際  ➤坐剤, 注腸用キット, 頬粘膜投与すべて使用可 ★家庭外,特に医療従事者のいない  教育機関や療育施設, 放課後等デイサービスでは?  ➤医師法違反にならないかどうかが懸念点   次に示す4条件を満たせば   坐剤, 頬粘膜投与は使用可で医師法違反にならない      (注腸用キットは医療従事者のいる環境で使用可)   @Osalepsy 病院外で薬はどこまで使用可? 放デイや 児童発達支援施設でも 2023.3.31の通達 により使用可となった

#51.

★当該児童生徒及びその保護者が, 事前に医師から 次の点に関して書面で指示を受けていること 1. 学校等教育施設・保育施設において やむを得ず坐薬, ブコラム®を 使用する必要性が認められる児童生徒であること  2. 坐薬, ブコラム®の 使用における際の留意事項の記載があること @Osalepsy 医師法違反とならない4条件-① 平成29年8月22日 学校におけるてんかん発作時の坐薬挿入について(依頼) 令和4年7月19日 学校等におけるてんかん発作時の口腔溶液(ブコラム®)の投与について より引用・改変

発作後の対応と医療機関受診

#52.

★当該児童生徒及びその保護者が,  教育施設・保育施設に対して, やむを得ない場合には  当該児童生徒に坐薬, ブコラム®を  使用することについて具体的に依頼していること  具体的な依頼には, 医師から指示された 坐薬, ブコラム®投与の留意事項に 関する書面を渡して説明しておくこと等を含む @Osalepsy 医師法違反とならない4条件-② 平成29年8月22日 学校におけるてんかん発作時の坐薬挿入について(依頼) 令和4年7月19日 学校等におけるてんかん発作時の口腔溶液(ブコラム®)の投与について より引用・改変

#53.

★当該児童生徒を担当する職員等が,  次の点に留意して坐薬, ブコラム® を使用すること 1. 当該児童生徒がやむを得ず    坐薬, ブコラム®を 使用することが認められている    児童生徒本人であることを改めて確認すること  2. 坐薬, ブコラム®の使用の際の留意事項に関する    書面の記載事項を遵守すること  3. 坐薬挿入は衛生上観点より,手袋を装着すること @Osalepsy 医師法違反とならない4条件-③ 平成29年8月22日 学校におけるてんかん発作時の坐薬挿入について(依頼) 令和4年7月19日 学校等におけるてんかん発作時の口腔溶液(ブコラム®)の投与について より引用・改変

#54.

★当該児童生徒の保護者又は職員等は  坐薬(ダイアップ®), ブコラム® を使用した後, 当該児童生徒を必ず医療機関への受診をさせること  捕捉(私見も含む)  ・医療機関は必ずしも指示を行った医師の勤務する   医療機関である必要はない  ・状態の悪い際には躊躇せず,救急搬送を依頼 @Osalepsy 医師法違反とならない4条件-④ 平成29年8月22日 学校におけるてんかん発作時の坐薬挿入について(依頼) 令和4年7月19日 学校等におけるてんかん発作時の口腔溶液(ブコラム®)の投与について より引用・改変

てんかん発作の重要性と結語

#55.

2020年12月に日本で発売開始。 病院前治療または静脈路確保困難時に使用。 保護者又はそれに代わる適切な者が 医療機関外でも投与可能に 重積状態への早期対応,早期抑制が期待される  使用量  修正在胎 52週~ 1歳未満 2.5mg 1歳 ~ 5歳未満 5mg 5歳 ~10歳未満 7.5mg 10歳~18歳未満  10mg 注意点 呼吸抑制(4.0%)あるので 医療機関外で投与された場合には原則救急車要請手配 @Osalepsy ミダゾラム口腔用液(ブコラム®)  武田薬品工業株式会社 ブコラムjpより引用

#56.

ブコラム®の投与方法, 注意点  武田薬品工業株式会社 ブコラムjpより引用 ・投与のタイミングは  事前に主治医から指示をもらっておくこと ・気道確保を忘れない ・顔は横向き(または側臥位) ・よだれが多い場合には, タオル等で  よだれを外側から吸い出してから注入 ・下の方の口角に  頬をつまみあげて広げてから  シリンジ先端を下の歯茎と頬の間にいれ注入 ・もしうまく注入できない場合 ①容器先端が頬の粘膜に密着していないか確認 ②シリンジを押す際に抵抗感がある場合には, 容器を一旦引いてから再注入を試みる @Osalepsy

#57.

★ジアゼパム坐剤(ダイアップ®)投与について 1. 熱性発作(熱性けいれん)において   再発予防の有効性は高いが, 副反応(鎮静作用, ふらつき)が存在するので注意 2. 医師からの指示による使用基準を満たせば投与 3. 坐薬の効果が出るのに15-30分程度かかる  → 使用条件を満たせばできるだけ速やかに投与を 4. てんかん発作に対する即効性にはかけるが, 後遺症を残しうる発作の遷延を防ぐ可能性はある ジアゼパム坐剤(ダイアップ®) @Osalepsy 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変

#58.

結語 @Osalepsy ★てんかんは100人に1人, 熱性けいれんは100人7-8人と決して珍しくなく,  家や病院外でも起きることがある。 ★発作や持続時間, おかれている状況で対応は変わる ★できるかぎり, 児童生徒さんたちに 生活を制限や支障なく送らせてあげるように  万が一に備えた対応と知識把握を(^^) ★児童生徒さんの一部には坐薬やブコラム®の  使用を指示されているが, 発作による後遺症を 軽減するために, 是非とも一度は使用法の確認を!!

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