テキスト全文
#1.
@Osalepsy 病院外におけるけいれん・てんかん発作に出くわした際の対処法 Osalepsy@小児科, けいれん・てんかん専門医 説明に
そのまま使える #2. @Osalepsy
●アラフォー中堅勤務医
●生息地 西日本のどこか
●資格 小児科専門医・指導医
てんかん専門医
●専門 小児神経 (主にてんかん等けいれん性疾患)
●2022年10月~ Twitter始めてます!
主に小児のてんかんやけいれんについて
・患者さんなど一般の方への病気の説明,
・非専門の先生,若手の先生への診療時のpointやコツ
…などを発信中。
よろしければフォローください(^^)/ 自己紹介 https://twitter.com/osalepsy Osalepsy@小児科, けいれん・てんかん専門医 #3.
本スライドには一部個人の見解が含まれます。
しかし、これらは専門家としての経験に基づく提示あることを
予めお断り申し上げます。
引用している最新のガイドラインには
本邦では適応外使用の薬剤も記載されていますが、
本スライドでは都合上、そのまま掲載させていただいています。
(適応外使用を推奨するものではないことも予めお断りいたします。)
薬剤の使用・適応に関しては添付文書をご参考ください。
各薬剤の情報が示されておりますが、中傷・誹謗するものではありません。 @Osalepsy #4.
@Osalepsy けいれんや
てんかん発作は
生活のどの場面でも起こりうる!! #5.
①病院内
⇒医師や看護師など医療従事者が対応
②病院外
・家庭(家族旅行なども含む)
⇒家族が対応
・家庭外(学校,保育施設,療育施設,放デイ,修学旅行・合宿…)
⇒主に教職員や職員,スタッフが対応
@Osalepsy 発作が起きた際, 誰が対応するか? 救急搬送依頼
または
医師から指示された対応
(現場での治療等も含む) 経過観察
または
重積状態に準じた対応 #6.
@Osalepsy 発作が起きる場や状況によって,
人も対処法も変わる!
病院外の多くの方は非医療従事者 #7.
それは…
発作による
脳や体への『ダメージ』を防ぐ事!
そのためには…
①発作の種類(ダメージのリスクの有無)
②発作の持続時間
③対応方法の理解・把握
が重要!! @Osalepsy 病院外の発作時の対応で何が重要か? #8.
①脳障がいを来すリスクが高い(低い)発作か?
・発作自体による直接的な脳への影響
・頭部外傷による二次的な脳への影響
②ヤケドや外傷, 溺水など体への影響のある発作か?
この観点でわけて考える必要がある @Osalepsy 発作による『ダメージ』とは?? てんかん発作や
けいれんを
一律に考えない事! #9.
★直接的な脳への影響のありうる発作
・強直間代発作 ・間代発作 ・強直発作
いわゆる呼吸抑制,チアノーゼを伴う全身けいれん
●持続時間が重要!
・発作の多くは2-3分以内に自然に止まる
⇒脳障がいを来すリスクは少ない
➡経過観察でよい(迷えば救急車要請)
・5分以上持続する場合(=早期てんかん重積状態)
⇒自然頓挫しにくく, 脳障がいを来すリスクがある
(30分以上の継続は, 不可逆的な脳障がいを来しうる)
➡救急車要請 @Osalepsy 脳障がいを来すリスクの高い発作 ● ●
発作が重積(群発)
しやすい患者さんは
事前に医師と相談し、
指示された対処法を!
#10.
★頭部の外傷による二次的な脳障がいを来しうる発作
・脱力発作 (陰性ミオクロニー発作) ・強直発作
①転倒に伴う頭部外傷等のリスクがある
➡保護帽の着用等の外傷予防対策の必要性
※保護帽は, 本人の転倒の仕方によって補強を検討
(例)額の部分にツバの作成, アゴ当ての作成 等
②何度も転倒し, しばしばケガをする場合
➡外出の際, しっかり腕を組んで歩くように心がけが必要
➡家や施設の中の危険物を少なくするなどの工夫 @Osalepsy 脳障がいを来すリスクの高い発作 ● ● #11.
★直接的な脳への障がいの影響の少ない発作
・非けいれん性発作
▶全般起始非運動発作(欠神発作, 非定型欠神発作)
▶焦点起始意識減損発作(複雑部分発作)
・焦点起始意識保持発作(単純部分発作)
★短い(一瞬~数秒程度)の発作
・強直発作 ・ミオクロニー発作
多くは脳障がいを来す可能性が低いので経過観察可能
ただし
①非けいれん性発作は
発作時間がいつもより長い場合(後述)やヤケド, 溺水に注意
②強直発作は転倒(前述), ミオクロニー発作はヤケドに注意 @Osalepsy 脳障がいを来すリスクの低い発作 #12.
@Osalepsy
各発作への対応と介助・注意点 #13. 口を喰いしばり,四肢をピンと突っ張らせ硬直(強直相)
+
四肢をビクン・ビクンと律動的に曲げ伸ばし(間代相)
・発作中は呼吸抑制やチアノーゼを伴う
・発作後は力が抜けて眠ってしまうことや
時に一時的にもうろう状態や尿失禁がある
・意識回復後, 嘔気や嘔吐・頭痛を訴えることも 強直間代発作(いわゆる全身けいれん) 左.強直相 中.間代相 右.発作終了時
てんかんfor school https://www.tenkanfs.jp/ を参考に作成 熱性けいれんの
多くは強直間代発作
同様の対応でOK! @Osalepsy #15.
やってはいけない3つの事
① あわてる, テンパる, 押さえつける
⇒(できる限り)あわてずに対応, 事前に対処法把握
② 口の中にタオルや箸等を突っ込む
⇒舌を噛んで問題となることはほぼない!
むしろ, 窒息やケガ(歯や口腔内損傷)等のリスク↑
③口の中の食物の除去や水分や薬を無理やり飲ませる
⇒誤嚥(むせこみ)のリスク↑ @Osalepsy 全身けいれんの対応・介助 てんかんInfo より引用 #16.
@Osalepsy 全身けいれんの対応・介助 正しい介助法
①安全な場所へ移動, 危険を遠ざける, 衣服緩める
⇒二次的な外傷や窒息の予防
②横向きに寝かせる, 枕を頭の下に, 呼吸や顔色の確認
⇒吐物による誤嚥防止, 気道確保
③発作状況観察(可能なら全身がうつるように動画を)
⇒目の位置, 手足の伸展・屈曲, 左右差, 持続時間etc…
以上を確認し,
経過観察か, 現場で治療か,
救急搬送要請を判断!
対応法のイメージ ※絵心の無さはご容赦ください(+_+) #17.
@Osalepsy 火のそば 水の中, そば 高いところ 熱いものや機械(車)のそば 尖ったものの近く 参考 避けるべき‘’危険‘’とは? #18. 転倒する発作(脱力発作,強直発作) 脱力発作
てんかんfor school https://www.tenkanfs.jp/ を参考に作成 @Osalepsy ●脱力発作, (陰性ミオクロニー発作)
筋緊張の急激な低下 ⇒ 全身の力が抜ける
●強直発作
眼球上転, 肩を中心に両上肢(全身)に力入り硬直
・発作は一瞬だが, おしりや膝から崩れて倒れる事も…
・頭部を中心とした外傷が問題となる。 #20.
①前兆などある場合
安全な場所へ移動, 座らせる
②前兆がなく突然倒れる場合(外傷のリスク↑↑)
・できるかぎり一人での行動する機会の軽減
・(特に危険な場所では) 腕を組んでの移動
・立っての行動(話)を減らし, 座っての作業を増やす
・家や施設での危険物を少なくする工夫
保護帽の着用等の外傷予防対策の必要性
※保護帽は, 本人の転倒の仕方によって補強を検討
(例)額の部分にツバの作成, アゴ当ての作成 等 @Osalepsy 転倒する発作の対応・介助 #21. ●欠神発作, 非定型欠神発作(全般起始非運動発作)
多くは幼児期~思春期に多い
突然表情がなくなり,
ぼんやりした目つき・動作停止・反応の低下 を認める
発作時間は多くは1回 10秒前後~30秒程度
・1日に何度も起こる事もあるが, 気付かれにくい事も
・集中力や注意力がない児と思われているケースも多い 非けいれん性発作① 欠神発作
てんかんfor school https://www.tenkanfs.jp/ を参考に作成 @Osalepsy #23.
●焦点起始意識減損発作(複雑部分発作)
成人や高齢者に多いが,比較的まれも小児にもある
ぼんやりした目つき・動作停止・反応の低下 を認め,
しばしば前兆(腹部の不快感など)や
自動症(手をモゾモゾ, 口ぺちゃぺちゃ)を認める
欠神発作と似ているが,
①発作時間が1回 数十秒~2・3分 と長い
②発作後に意識もうろう状態を認める事が多い
事が相違点となる多い 非けいれん性発作② @Osalepsy 焦点起始意識減損発作
てんかんInfoブックレットNo4 (tenkan.info)より引用 #24.
①欠神発作の場合
・ケガをする可能性は比較的少ない
⇒頻発しなければ特別な処置は不要で,
意識回復を待てばよい
・熱いもの,コップなどは遠ざける
・倒れそうな時は支えて座らせる
■救急搬送考慮の目安
意識回復が乏しい状態が(10分以上)持続する場合 @Osalepsy 非けいれん性発作の対応・介助 #25.
②焦点起始意識減損発作(複雑部分発作)の場合
・危険な場所でなければ, 特別な処置不要
・危険なものが近くにあれば取り除いて見守る
・声掛けを行い, 反応の有無・意識回復程度の確認
・発作後もうろう状態では
立ち上がったり歩き回る事があるが無理に止めない
(行動を制限するとかえって激しく抵抗する事も…)
ただし転落や事故などの危険を伴う場合は,
必ず後ろから制止する
■救急搬送考慮の目安
意識回復が乏しい状態が(10分以上)持続する場合
@Osalepsy 非けいれん性発作の対応・介助 てんかんInfoより引用 #26. @Osalepsy ミオクロニー発作 ミオクロニー発作
てんかんfor school https://www.tenkanfs.jp/ を参考に作成 ●手・足・体全体が突然,
電気が走ったように瞬間的に『ビクッ』とする症状
連続して起こることもあり,時に強直間代発作へ移行
●(特に寝不足の際)朝起きてから1時間以内に多く出現
・持っている物を落としたり投げ飛ばしたりする事も
・食事中のヤケドや歯磨き中のケガ等が問題となる。 #28.
・問題となるのは
ヤケド, ケガ,全身けいれんへ移行時
・ミオクロニー発作は
(特に寝不足な際や)寝起き直後に出やすい
⇒歯磨きや食事の際に注意を要する
・危険なものがあれば取り除く, ヤケドへの配慮
・全身けいれんへ移行した際には
前述の発作対応と同様に対応でOK
■救急搬送や病院受診考慮の目安
全身けいれんが5分以上持続する場合
ヤケドやケガをした際
@Osalepsy ミオクロニー発作の対応・介助 #29.
@Osalepsy
てんかん発作時の観察ポイント #30.
★いつ, 何をしている時かを明確(具体的)に
●何時に発作が起きたか?
●覚醒時か?睡眠中か?
▶覚醒時でも睡眠から起きたばかりなのか?
昼寝前だったのか?
睡眠中でも寝入りばなだったのか?
寝て〇時間(△分)だったのか?
など具体的にわかればベター
●授業中や作業中なら具体的に何をしていた時か?
▶例えば, ✖✖の体育の授業中の少し休んでいる時
○○の動画の△△のシーンを観ている時
など具体的にわかればベター @Osalepsy 観察ポイント① -時間・状況- 具体的な状況把握が
診断につながる事も多々ある! #31.
★意識障がいがあったかどうか?
▶声かけを行い確認
最初は意識があっても徐々になくなる時もあり
★けいれん
・身体のどこから始まった(ように見えた)か?
・頭や眼球がどちらを向いてるか?
・四肢の様子, 左右差の様子
▶四肢の動きは,グーっと硬直していたか(強直相)?
ビクンッ・ビクンッしていたか(間代相)?
左右差は, どちらの方が強く症状が出ていたか?
どちらの手が伸びて(曲がって)いたか?
などわかる判明で観察・記録できればベター
・ 持続時間 @Osalepsy 観察ポイント② -意識障がい・けいれん- #32.
★ a.フェンシング肢位 b.4の字徴候
左右差を認めるけいれんの際に時折認める。
発作の焦点が(多くは)
伸びている手の反対側(曲がっている手と同側)の
大脳の補足運動野というところにあるのを示唆
診察の際に重要な手がかりとなる事がある @Osalepsy 参考 左右差のある発作の1例 Lila Worden, Seizure Classification and Semiology: Handbook of Pediatric Epilepsy pp 11–29より引用 #33.
@Osalepsy
各シチュエーションでの対応・介助 #34.
入浴中の発作は,要注意項目の1つ!
最も重要なのは呼吸できる状態の確保
・水(お湯)から顔をあげる
・顔をうまく上げられない場合なども想定される
→浴槽の栓を抜く(排水)
■救急車要請の考慮の目安
各発作の持続時間に準ずる
または
溺水による呼吸停止や誤嚥がある(疑われる)場合 @Osalepsy 入浴中の対応・介助 #35.
・浴槽のお湯は少なめに張るように
・長い入浴は避ける
・施設や家庭では
監視または注意した状態での入浴がのぞましい
・浴室のカギをかけない
・一人暮らしの場合や監視ができない場合には
できるだけシャワーを推奨している
・お湯の出しっぱなしに注意!
浴槽につかった状態でお湯の出し止めはしない。 @Osalepsy 入浴における予防対策の指導例 #36.
プール中の発作も入浴中同様
最も重要なのは呼吸できる状態の確保
・水から顔をあげ,鼻と口を水面から出す
・発作持続中は無理にはプールサイドにあげず,
水の中で体を支えるようにする
(ただし,明らかな溺水の場合にはただちにあげる)
・発作が収まればゆっくりプールサイドへあげる
(患者が自分で上がれる場合にはそれでも可)
■救急車要請の考慮の目安
入浴中と同様 @Osalepsy プール中の介助 てんかんInfoより引用 #37.
★発作が十分にコントロールできている場合
・特別な制限は不要!
・疲労や寝不足は発作誘発因子なので
翌日まで疲れが残らないように工夫する
(十分な睡眠時間の確保, 休憩を適宜とる etc…)
★発作コントロールが不十分な場合
・どの程度, どこまで可能か主治医と事前に相談
・激しい接触が多い競技(例 柔道やラグビー),
スピードの速い競技(例 スケートやスキー),
高い場所で行う競技(例 登り棒, ボルダリング)
などは避けるべきとされている @Osalepsy 体育, 運動における指導例・注意点 #38.
・原則,特別な制限は不要!
・注意すべき点は
①理科の実験や技術・家庭科の実習で
火や尖ったものを扱う際に
(特に発作コントロールできていない場合には)
監視を行うなど注意が必要
②光過敏性(光等で発作が誘発される)がある場合,
明るいところで離れてモニター画面を見るなど
工夫をする
③欠神発作が残存する場合には
管楽器の過度な使用など, 過換気を避ける @Osalepsy 授業中の注意点 #39.
・食事中で心配な事は,
食事を詰まらせてしまう事より,
てんかん発作による二次的なケガやヤケドが問題
①無理に口の中の食事を出す必要なし
(むしろ窒息や誤嚥のリスクを高める)
②危険物(熱いものや尖っているもの)を遠ざける
・発作毎の対応は前述の通り @Osalepsy 食事中の対応・介助 #40.
@Osalepsy
救急搬送・病院受診の基準について
~なぜ5分が目安とされるのか?~ #41.
★てんかん発作やけいれんの既往がある患者さんは
事前に主治医に救急車要請の基準を聞いておく
★救急車要請を考慮する基準(私見もあり)
≒脳障がいを来す可能性がある場合 と考えてよい
①てんかん発作(けいれん)が5分以上持続する場合
②てんかん発作が群発する(繰り返される)場合
③発作での頭部外傷や意識障がい持続を認める場合
④呼吸状態や全身状態が悪い場合
⑤いつもと違う発作
など… @Osalepsy 救急搬送のタイミング –本音と建て前- あくまで基準は基準(建前)
判断に迷う場合には,
救急車要請を躊躇しない(本音) #42.
➤従来の定義
てんかん(けいれん)重積状態 :
30分以上持続する(けいれん)発作,
あるいは複数回の発作が断続的に起こり,
各発作間にも意識障害を認める状態
てんかん(発作)群発状態 :
短期間に発作が反復し,
各発作間には意識回復があるものの
更に発作が反復する可能性がある状態
ILAE.Epilepsia 1993;34:592-596. Guideline for Epidemiologic Studies on Epilepsyより引用・改変 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy てんかん発作の重積状態, 群発状態とは? #43.
➤最新(2015年)の定義
てんかん重積状態は発作停止機構
または開始機構の機能不全によりもたらされた
異常な発作遷延状態(time point t1以降)である
発作の型と持続時間に依存して
神経細胞死, 損傷および神経回路網の異常を含む
長期的な後遺症をきたす(time point t2以降)
Trinka, et al.Epilepsia 2015;56:1515-1523.
A definition and classification of status epilepticus-Report of the ILAE Task Force on Classification of Statis Epilepticus 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy てんかん(けいれん)重積状態の最新の定義
t1, t2 って何よ??
そもそも
定義の文章が難しい
(;’∀’) #44.
time point t1(t1時間):
発作状態の遷延とみなす時間
(自然停止が難しくなる時間=治療開始が望ましい)
time point t2(t2時間):
脳に長期的な後遺症を残しうる時間 t1時間, t2時間とは?? 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 @Osalepsy 日本では病院外発生の場合,
医療機関に搬送されるまでの所要時間が20-40分程度かかる
➤後遺症を残さない為に病院前治療の重要性が強調された!
多くの発作のt1時間は5分
➤救急搬送開始のタイミング #45.
A.けいれん性てんかん重積状態 強直間代発作重積状態 B.非けいれん性てんかん重積状態 焦点起始意識減損発作(複雑部分発作)重積状態 全般起始非運動発作(欠神発作)重積状態 小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 早期SE
5-10分 確定したSE
10-30分 難治性SE
30-60分以上 超難治性SE
24時間以上 5分 30分 10分 60分 10-15分 不明 t1時間: 治療開始のタイミング
t2時間: 神経学的後遺症を残しうる時間 @Osalepsy t2時間に入る前に
発作を止めたい!! てんかん重積状態(SE)の分類 #46.
小児てんかん重積状態・けいれん重積状態治療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 早期SE
5-10分 確定したSE
10-30分 難治性SE
30-60分以上 超難治性SE
24時間以上 病院前治療 ミダゾラム口腔用液
7ヶ月~1歳未満 : 2.5mg
1歳~5歳未満 : 5mg
5歳~10歳未満 : 7.5mg
10歳~18歳未満 : 10mg ジアゼパム坐剤
0.4~0.5mg/kg 抱水クロラール
坐剤/注腸液
30~50mg/kg or or 病院前
治療なし 静脈
ルート
確保 ミダゾラム口腔用液
7ヶ月~1歳未満 : 2.5mg
1歳~5歳未満 : 5mg
5歳~10歳未満 : 7.5mg
10歳~18歳未満 : 10mg ミダゾラム筋肉内投与
0.2~0.5mg/kg
ミダゾラム鼻腔内投与
0.2mg/kg
ミダゾラム頬粘膜投与
0.2~0.5mg/kg ジアゼパム注射液
直腸内投与
0.3~0.5mg/kg or or Yes No 静脈ルート確保 第一選択薬 ミダゾラムIV
0.15mg/kg
(0.1~0.3mg/kgの追加可)
(総量0.6mg/kg超えない) ロラゼパムIV
0.05mg/kg(最大4mgまで)
(0.05mg/kgの追加可)
(総量0.1mg/kgを超えない) or ジアゼパムIV
0.3~0.5mg/kg(最大10mg) or 第二選択薬 ホスフェニトインIV
22.5mg/kg
フェニトインIV
15~20mg/kg フェノバルビタールIV
15~20mg/kg or レベチラセタムIV
20~60mg/kg or 第三選択薬 チオペンタールIV
3~5(-7)mg/kg
チオペンタールCIV
2~5(-15)mg/kg/時 チアミラールIV
4~5mg/kg
チアミラールCIV
2~5(-10)mg/kg/時 or ミダゾラムCIV
0.05~0.4mg/kg/時 or 第四選択薬 ケタミン
吸入麻酔
抗てんかん薬
ステロイド
免疫療法
てんかん外科治療
ケトン食療法
脳低温療法 バイタルサイン評価
発作型評価
救急車要請検討 バイタルサイン評価
呼吸循環安定化,発作型評価
静脈ルート確保,酸素投与
血糖測定(必要ならブドウ糖投与) 呼吸循環モニタリング
脳 #47.
★てんかん発作やけいれんが持続していれば
発作時対応を続ける, 必要時は指示された治療薬使用
★発作が終わった(と思った)際の時間を確認する
全身けいれん後であれば, そのまま寝かしつけてよい
しばらく入眠したり, ボーっとしたりは続く
目が覚めた後の嘔吐や頭痛, ふらつきなどに注意!
★お願い
救急搬送の際には, できれば発作を目撃・対応した
職員さんが同乗して来院いただければ嬉しい。
➤発作の様子を医師が問診する事で
発作のタイプや様子を把握しやすいから
➤難しければ, 発作の動画を持参したりメモを渡す @Osalepsy 救急搬送要請後の対応(とお願い) #48.
@Osalepsy
病院外での治療・治療薬
~ブコラム®使用も含めて~ #49.
★坐薬
・ジアゼパム(ダイアップ®坐剤)
・フェノバルビタール(ワコビタール®坐剤,ルピアール®坐剤)
・抱水クロラール(エスクレ®坐剤)
★注腸
・抱水クロラール(エスクレ®注腸用キット)
★頬粘膜投与
・ミダゾラム(ブコラム®)
家庭では上記薬剤はすべて使用可だが,
教育施設等ではどこまで使用可なのだろう…(・・? @Osalepsy 病院外で使用可能な発作時治療薬 #50.
★家庭内または保護者のいる際
➤坐剤, 注腸用キット, 頬粘膜投与すべて使用可
★家庭外,特に医療従事者のいない
教育機関や療育施設, 放課後等デイサービスでは?
➤医師法違反にならないかどうかが懸念点
次に示す4条件を満たせば
坐剤, 頬粘膜投与は使用可で医師法違反にならない
(注腸用キットは医療従事者のいる環境で使用可)
@Osalepsy 病院外で薬はどこまで使用可?
放デイや
児童発達支援施設でも
2023.3.31の通達
により使用可となった
#51.
★当該児童生徒及びその保護者が, 事前に医師から
次の点に関して書面で指示を受けていること
1. 学校等教育施設・保育施設において
やむを得ず坐薬, ブコラム®を
使用する必要性が認められる児童生徒であること
2. 坐薬, ブコラム®の
使用における際の留意事項の記載があること @Osalepsy 医師法違反とならない4条件-① 平成29年8月22日 学校におけるてんかん発作時の坐薬挿入について(依頼)
令和4年7月19日 学校等におけるてんかん発作時の口腔溶液(ブコラム®)の投与について より引用・改変 #52.
★当該児童生徒及びその保護者が,
教育施設・保育施設に対して, やむを得ない場合には
当該児童生徒に坐薬, ブコラム®を
使用することについて具体的に依頼していること
具体的な依頼には,
医師から指示された
坐薬, ブコラム®投与の留意事項に
関する書面を渡して説明しておくこと等を含む @Osalepsy 医師法違反とならない4条件-② 平成29年8月22日 学校におけるてんかん発作時の坐薬挿入について(依頼)
令和4年7月19日 学校等におけるてんかん発作時の口腔溶液(ブコラム®)の投与について より引用・改変 #53.
★当該児童生徒を担当する職員等が,
次の点に留意して坐薬, ブコラム® を使用すること
1. 当該児童生徒がやむを得ず
坐薬, ブコラム®を
使用することが認められている
児童生徒本人であることを改めて確認すること
2. 坐薬, ブコラム®の使用の際の留意事項に関する
書面の記載事項を遵守すること
3. 坐薬挿入は衛生上観点より,手袋を装着すること @Osalepsy 医師法違反とならない4条件-③ 平成29年8月22日 学校におけるてんかん発作時の坐薬挿入について(依頼)
令和4年7月19日 学校等におけるてんかん発作時の口腔溶液(ブコラム®)の投与について より引用・改変 #54.
★当該児童生徒の保護者又は職員等は
坐薬(ダイアップ®), ブコラム® を使用した後,
当該児童生徒を必ず医療機関への受診をさせること
捕捉(私見も含む)
・医療機関は必ずしも指示を行った医師の勤務する
医療機関である必要はない
・状態の悪い際には躊躇せず,救急搬送を依頼 @Osalepsy 医師法違反とならない4条件-④ 平成29年8月22日 学校におけるてんかん発作時の坐薬挿入について(依頼)
令和4年7月19日 学校等におけるてんかん発作時の口腔溶液(ブコラム®)の投与について より引用・改変 #55.
2020年12月に日本で発売開始。
病院前治療または静脈路確保困難時に使用。
保護者又はそれに代わる適切な者が
医療機関外でも投与可能に
重積状態への早期対応,早期抑制が期待される
使用量 修正在胎 52週~ 1歳未満 2.5mg 1歳 ~ 5歳未満 5mg
5歳 ~10歳未満 7.5mg 10歳~18歳未満 10mg
注意点 呼吸抑制(4.0%)あるので
医療機関外で投与された場合には原則救急車要請手配 @Osalepsy ミダゾラム口腔用液(ブコラム®) 武田薬品工業株式会社 ブコラムjpより引用 #56.
ブコラム®の投与方法, 注意点 武田薬品工業株式会社 ブコラムjpより引用 ・投与のタイミングは
事前に主治医から指示をもらっておくこと
・気道確保を忘れない
・顔は横向き(または側臥位)
・よだれが多い場合には, タオル等で
よだれを外側から吸い出してから注入
・下の方の口角に
頬をつまみあげて広げてから
シリンジ先端を下の歯茎と頬の間にいれ注入
・もしうまく注入できない場合
①容器先端が頬の粘膜に密着していないか確認
②シリンジを押す際に抵抗感がある場合には,
容器を一旦引いてから再注入を試みる @Osalepsy #57.
★ジアゼパム坐剤(ダイアップ®)投与について
1. 熱性発作(熱性けいれん)において
再発予防の有効性は高いが,
副反応(鎮静作用, ふらつき)が存在するので注意
2. 医師からの指示による使用基準を満たせば投与
3. 坐薬の効果が出るのに15-30分程度かかる
→ 使用条件を満たせばできるだけ速やかに投与を
4. てんかん発作に対する即効性にはかけるが,
後遺症を残しうる発作の遷延を防ぐ可能性はある ジアゼパム坐剤(ダイアップ®) @Osalepsy 熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023 診断と治療社より引用, 改変 #58.
結語 @Osalepsy ★てんかんは100人に1人,
熱性けいれんは100人7-8人と決して珍しくなく,
家や病院外でも起きることがある。
★発作や持続時間, おかれている状況で対応は変わる
★できるかぎり, 児童生徒さんたちに
生活を制限や支障なく送らせてあげるように
万が一に備えた対応と知識把握を(^^)
★児童生徒さんの一部には坐薬やブコラム®の
使用を指示されているが, 発作による後遺症を
軽減するために, 是非とも一度は使用法の確認を!!