#4.
腎硬化症の病理学的な特徴(病理読まない⼈には関係ないが、、、) 特徴的な光学顕微鏡所⾒として,下記があげられる。 と書いてあるがどれも⾮特異的(全然特徴的じゃない︕と突っ込むべき) ü 全節性硬化(GS:Global Sclerosis、つぶれた⽷球体のこと) ü 細動脈硝⼦化 ü 動脈硬化(⼩動脈以上(⼩葉間動脈,⼸状動脈)の⾎管内膜肥厚〕 ü 間質線維化 ü 尿細管萎縮 ここを合わせてIFTA: interstitial Fibrosis Tubular Atrophy 次のページの糖尿病性腎硬化症との違いを⽐較 4
#5.
糖尿病性腎硬化症に特異的な病理所⾒ (⽇腎会誌 2015;57:649-725) ⽷球体病変 びまん性病変(メサンギウム拡⼤,基質増加)0-3 0:メサンギウム拡⼤なし、1:メサンギウム拡⼤≦⽑細⾎管腔、2メサンギウム拡⼤=⽑細⾎管腔、3:メサンギウム拡⼤≧⽑細⾎管腔 結節性病変(結節性硬化)0-1 みんな⼤好きなKimmelstiel-Wilson lesion→次⾴で解説 ⽷球体基底膜⼆重化・内⽪下腔開⼤0-3 最も所⾒の強い⽷球体において評価 滲出性病変0-1 メサンギウム融解・微⼩⾎管瘤0-1 ⾮特異的 ※糖尿病性腎硬化症はほぼ腎硬化症の要素が⼊っている→糖尿病性腎硬化 症の中で左の糖尿病の要素がないものを腎硬化症と判断する事が多い。 腎硬化症の要素がない糖尿病性腎硬化症は別疾患を想定するべき 下も参照 ⽷球体⾨部⼩⾎管増⽣0-1 ⾮特異的 ⽷球体肥⼤0-1 ⾮特異的 このほかに尿細管病変、⾎管病変と合わせてスコア化 5
#6.
腎硬化症の診断意味なくない︖ 「悪性腎硬化症(malignant Nephrosclerosis)」との区別が必要 歴史的には腎疾患→悪性⾼⾎圧というMalignant Cycleが存在あると考えられていた。 Ohta Y, Tsuchihashi T, Ohya Y et al. Trends in the pathophysiological characteristics of malignant hypertension. Hypertens Res 2001;24:489–92 Kawazoe N, Eto T, Abe I et al. Long-term prognosis of malignant hypertension; difference between underlying diseases such as essential hypertension and chronic glomerulonephritis. Clin Nephrol 1988;29:53–7. Blumenfeld JD, Laragh JH. Management of hypertensive crises: the scientific basis for treatment decisions. Am J Hypertens 2001;14:1154–67. その中で、悪性⾼⾎圧の病理的な所⾒※がないものを「良性腎硬化症(benign nephrosclerosis)」と呼んだのだろう。 逆に腎⽣検して特徴的な所⾒があれば、悪性腎硬化症と判断されてしまう事もあり得る、そんなときは強⽪症腎との鑑別になる。 ※⾎圧による内⽪障害がメインでありフィブリノイド壊死や動脈のOnion-Skin-Lesion(線維性増加)などがあれば悪性腎硬化症 とする。⾎栓性微⼩⾎管障害症(TMA:Thrombotic microangiopathy)などになることもある。この辺りはSTECによるHUS、 ADAMTS13活性↓のTTPとは明確に区別するべきである。 6
#7.
加齢に伴う腎機能低下とどう違うの︖ 加齢に伴う腎障害は「Aging Kidney」と呼ばれたりする そもそも⽇本の健診でも70歳以上のeGFRの平均値は60ml/min/1.73m2強であり、半数が CKDの基準を満たしてしまう。(私⾒だが65歳以上の正常はeGFR>45で良いと思っている、 尿タンパクは別物) ⽷球体全節性硬化(GS)の年齢別の95 percentileがあり、20-29歳だと7%。30-39歳で10%、 40-49歳で16%、50-59歳で20%、60歳以上で23%(Kidney Int. 2023 May 25:S0085-2538(23)00391-5.) 年齢別の全節性硬化、尿細管線維化と萎縮の割合がある程度わかっている( J Am Soc Nephrol. 2023 Aug 1;34(8):1421-1432) 上記を考えたうえで年齢不相応に動脈硬化性病変が強い場合などが⾎圧に伴う影響が腎硬化症 と考える 7
#8.
悪性⾼⾎圧→悪性腎硬化症︖ 悪性⾼⾎圧の定義・・・急性の臓器障害を伴う⾼⾎圧 ⾎圧に明確な基準はないが180/120mmHg以上のことが多い。 この中の腎障害を起こした⼀部が腎⽣検で悪性腎硬化症という病理学的な診断になる(そのために腎⽣検しないで、悪性腎硬化 症というのは変な診断) 悪性⾼⾎圧→臨床的な判断、悪性腎硬化症→病理学的な判断 臨床的に悪性⾼⾎圧で後⽇腎⽣検したらIgA腎症だったとか、サルコイドーシスに伴う間質性腎炎だったなんてことはいくらで も存在する。悪性⾼⾎圧(臨床)で良性腎硬化症(病理)なんてこともしばしばある。(患者には理解できないから、「あなた は⾎圧に弱い腎臓だから⼤事にしなさい」と話している) 外来で⾼い⾎圧にであったら臓器障害を評価 具体的には元気な⼈の場合には聴診、尿タンパクのチェックはする。⾼⾎圧+頭痛、視⼒低下や胸痛、呼吸苦は通常救急疾患として対応されている。 そのため230/120mmHgで臓器障害がなければゆっくり下げればよいし179/115mmHgでも臓器障害があれば急いで下げる 8
#9.
ところで⾼⾎圧緊急症とは︖ ⾼⾎圧診療ガイドライン2019より • • • • • • • • • • • 加速型ー悪性⾼⾎圧(網膜出⾎や乳頭浮腫を伴う) ⾼⾎圧性脳症(可逆性⽩質脳症︓PRESなど) 急性の臓器障害を伴う重症⾼⾎圧 脳梗塞⾎栓溶解療法後の重症⾼⾎圧 カテコールアミン過剰 sBP≧180mmHg、dBP≧120mmHgの妊婦 ⼦癇 ⼿術関連 冠動脈バイパス後 重症熱傷 重症⿐出⾎ こういうのはとりあえずカルシウム受容体拮抗薬(内服でも静脈注射)で⾎圧を下げ臓器保護をすることが先決 この時点で原因云々というのはセンスがない(外科の縫合部からの出⾎を⾼⾎圧緊急症と⾔われたって、、、、) 9
#10.
臨床的な判断の落とし所 ⾼⾎圧歴が⻑い 厳密にどのくらいか︖という定義はないが、「⾎圧の値×感受性×罹患期間×その他の要素(喫煙、肥満、etc…)」で決まると思っている。 顕微鏡的⾎尿に乏しく、尿タンパクがでている 尿タンパク量は、ほぼ正常からネフローゼレンジまで様々だが⾎清Alb値が下がることは余りない(ネフローゼ症候群の定義を満たす場合には、腎⽣ 検をする事が多い) 腎臓が萎縮している(⽪質が薄い) ⾼⾎圧による他臓器の障害の存在 眼底に⾼⾎圧性の所⾒(Scheie分類やKeith-Wagner分類)、⼤動脈蛇⾏や⽯灰化(個⼈的には、⼤動脈⼸の⽯灰化や脾動脈の⽯灰化が単純X線で⾒られると、腎硬 化症っぽいなと思う。 10
#11.
腎硬化症は何のために診断するの︖ ⼼⾎管イベント発症率が違う IgA腎症などにくらべて、腎硬化症でHR 2.57、糖尿病関連腎臓病でHR 12.2 (Clin Exp Nephrol. 2010 Aug;14(4):333-9) eGFR slopeが違う 糖尿病関連腎臓病はeGFR 45→RRTまでの期間が 59±26⽉、腎硬化症 94±28ヶ⽉ (Diabetes Res. 2016;2016:5374746) ただし、SGLT2阻害薬が使われる前の観察である事に注意 透析導⼊後の予後が違う 透析患者の平均余命は導⼊年齢にもよるが概ね⼀般⼈の40-60%(Renal Replacement Therapy 2020 6:58) ⽷球体腎炎に⽐べて、糖尿病を原疾患とする患者は予後が悪い(おおむね10-20%低い)腎硬化症はこの間に⼊ると思う。(わ が国の慢性透析療法現況 2010年) 11
#12.
腎⽣検までする必要があるの︖ ⼤規模研究でも腎硬化症は20%程度 IgA腎症は腎⽣検でしか診断できないから当たりまえだが、論⽂を読むときはどの精度で診断されているか︖の問題がある、腎 炎が多く混在すればイベント少なめ、糖尿病性腎硬化症が多く混在すればイベントが多めになる 腎⽣検所⾒を加えると予後判定の精度が上がる おなじeGFRと尿タンパクでもIFTAやGSの割合で全然違う。 Nephrol Dial Transplant. 2023 Feb 13;38(2):384-395. 移植前や腎予後を判定したいとき いつ頃腎代替療法になるか︖腹膜透析などを検討するときに必要 腎炎を否定したいとき 特に若い場合には重要、いまはADLが良い75歳くらいまでは強い治療オプションがとれる 12
#13.
腎硬化症の治療戦略 ⾎圧の⽬標値の達成が重要 その上で、尿タンパクが最⼤限減るまで、薬を追加していく → 減った尿蛋⽩の分だけイベント↓、腎予後↑ ü ü T2DMならばACEi(ARB)→ SGLT2i → MRA と⼊れる 腎硬化症だとSGLT2阻害薬、MRAまで⼊れるか︖次で深堀り 上記を考えながら、患者ごとに最適化 → 認知症やADLなどで微調整、若い⼈にはより積極的に降圧と臓器保護ある薬剤の投与を⾏う
#14.
腎硬化症SGLT2阻害薬は効くの︖ • 悩ましい︕(研究が組まれていない) • EMPA-Kidney、DAPAーCKDでの腎硬化症群は腎イベントを有意に改善 していない。 • non-proteinuric DKDでeGFR slopeが緩やかになっている(ただし、こ れをBiopsy-Proven Nephrosclerosisとするかは悩ましい) Diabetes Care 2021;44(11):2542–2551 →臨床的には尿タンパクが多い症例ならば⼊れることを検討する 経験上、腎硬化症であっても尿タンパクは20-40%程度減ることが多い
#15.
腎硬化症にMRAは効くの︖ • 悩ましい︕こちらもほとんどデータがないが 現時点では、DKD、HFrEFのデータがほとんど • 主にnon-DMで尿タンパク出ている、論⽂を⾒ると「尿タンパク↓、eGFR slope緩やかになるが⾼K⾎症が増える」傾向。ガイドラインに載せるためには RCTが必要(ただし、研究が⾛っているとは聞いたことはない) • ⾼⾎圧+uACR 30-599mg/gCre(Lancet Diabetes Endocrinol 2014; 2:944–953.) • ⾼⾎圧+UP>0.5g/gCre(J Am Soc Nephrol 2010; 21:936A.) • UPCR>1g( Kidney Int 2006; 70:2116–2123.)(Am J Kidney Dis 2010; 55:671–681.) • Non-DM+up>0.5g/gCre(Hypertens Res 2008; 31:59–67.)(Ren Fail 2009; 31:779–784.) • CKD G2-3+⾼アルドステロン( Sci. Rep. 2020, 10, 16626) • このレビューも参考に(J Hypertens. 2019 Dec;37(12):2307-2324.)
#16.
実践的降圧薬選択⽅法(結局これ) <140/90mmHg を 達成できたか︖ ふらつきなければ <125/75mmHg を ⽬指す ⾼⾎圧 患者 Yes No 1st Line CCB [Ca拮抗薬] 合剤でアドヒアランス↑ → 合剤に移⾏できるものを選ぶのは良いと思う 2 nd Line 3 rd Line サイアザイド (半量) MRA ARB β遮断薬 (ARNIをにらんで) ACEi (コスト重視) ARNI CCB+RAA系+サイアザイドで ⽬標に達しない場合、 ⼀度専⾨医へ紹介した⽅が良い 利尿薬の使い⽅も参考に RAA系を追加するべき患者か︖は常に意識 ・糖尿病、CKD(たんぱく尿)、⼼筋梗塞後、左室肥⼤、⼼不全の既往、⼼機能低下例
#17.
具体的なSGLT2i、MRAの導⼊⽅法 eGFR MRA追加 SGLT2i 導⼊ eGFRが1〜2週間で 10〜20%程度落ちる 「頑張りすぎの腎臓を 休ませてあげたんですよ」 K≦5.0mEq/Lならば導⼊ これをどれだけ続け られるかが⼤事 ⾎圧が3〜5mmHg 下がる印象 体重は⼈による MRAをRAA系⼆剤⽬でaddすると⾼K⾎症が ほぼ必発するため、K吸着薬を使っておく 「次に⼊れた腎臓を守る薬(MRA)があるので 今⽇からKをくっつける薬飲みましょう、 ⾷事はそのままで」と⾔う事が多い ロケルマ追加 1⽇1回のメリットが⼤きい) 実は2〜3⽇に1回でもかなり効く (どうしても値段が気になる⼈に) 時間 症例によっては3ヶ⽉すると 尿タンパクが減ってくる その落ちたGFRが ほとんど変わらない 腎機能がかなりの期間横ばいになる (減った尿タンパクに依存する)
#18.
腎硬化症が増えてきている 透析導⼊の原疾患 1996年 1位 糖尿病関連腎臓病 2位 慢性⽷球体腎炎 3位 腎硬化症 2019年 1位 糖尿病関連腎臓病 2位 腎硬化症 3位 慢性⽷球体腎炎 まあ、ゴミ箱的な診断な訳で、どれだけ本当に腎硬化症か、、という問題はあるにせよ。 悪性腫瘍や⼼⾎管イベントへの治療が良くなったために、最終的にCKDが残ったとい う形は多いので、健診でチェックされたときから治療介⼊が必要
#19.
⾎圧介⼊の基準 ≧160/100mmHg・・・即座に薬物療法 140-159/90-99mmHg・・・薬物療法しつつ⽣活療法(リスクに 応じて) ⼈はあまり努⼒しないので、⽣活習慣よくなって⾎圧下がったら減らしましょうと話す <140/90mmHg・・・リスクに応じて薬物療法か、⽣活習慣の改善 結局、⾼⾎圧治療から漏れた⼈が動脈硬化性病変が進むので、治療から逃がさないことが前提になる。(産業医もこのような観点で 「治療しないと就業制限かけるぞ」くらいの気持ちで治療しないと病気が減らない。
#20.
実は「⾎圧が腎臓に悪い」⽐較的最近 • 昔の本を読むと、腎臓が悪くなる→⾎圧が⾼くなるという疾患 概念として捉えられていた(Goldblattの2K1C) • 1980年代では、腎疾患⇄悪性⾼⾎圧のMalignant Cycleが主な テーマだった(これがchiken-egg-chiken-proof) • 1980年代ころから⾎圧が⾼いと⼼⾎管イベントが多いという 概念が浸透してきた(ちなみに1970年頃から糖尿病性腎症の腎保護に降圧が重要とい う論⽂が出ている。(Scand J Clin Lab Invest. 1976 Jul;36(4):383-8.)このころはRAA系など がまだ使うことができない時代
#21.
⾎圧がCKDの治療対象に • 平均動脈圧とGFRの低下率が直線的な関係があるとわかった AJKD 2000;36-646-661 • このころから尿タンパク(UPCR)以前の尿アルブミン(UACR)の時点から⼼⾎ 管イベントが多いことが判明してきた。(糖尿病だけではなく、⾼⾎圧、⼀般住 ⺠でも) ここを踏まえてCKD診療ガイド2023では「⽇本では世界標準とは異なる」という⽂⾔が出てくる(取りたければとってもいいけれで保険ではだめだよ、 という印象、早期の糖尿病性腎症ならば3ヶ⽉に1回は必須) • ⼼⾎管イベントのサロゲートマーカーであるアルブミン尿を測ることが重要 イベント回避には、⾎糖、⾎圧、脂質、過体重などを改善してアルブミン尿をへらす(禁煙も)
#22.
Strain vessele理論(⻑澤の学位論⽂) Pressure becomes lower ⽪質 低い圧較差 ⽪質表層⽷球体 50 mmHg アルブミン尿が出ている時点で 全⾝の穿通枝が痛んでいる状態である 穿通枝︓太い⾎管→細い⾎管が直接分枝 ・ラクナ梗塞 ・眼動脈 ・⽷球体の傍髄質⽷球体 ⾼い圧較差 髄質 Glomerular hypertension 50 mmHg ⼸状動脈 Strain vessels 傍髄質⽷球体 アルブミンの漏出 Nagasawa T, Ito S, et al.Hypertens Res. 2012;35(10):1024-31 圧格差を減らすために、できるだけ⾎圧を下げる ことが 重要。だから⾎圧にうるさいのです。