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感染症の経過観察の仕方

  • 内科

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  • 感染症
  • 肺炎
  • 治療
  • 経過観察
  • 効果判定
  • 急性腸炎
  • 腎盂腎炎
  • 薬剤熱

58,700

119

2021/11/12
2021/11/25 更新

本スライドの対象者

研修医/専攻医

内容

感染症の治療後の経過観察の仕方です。

感染症に限ったことではありませんが、臨床は治療開始してからが勝負!ですよね。

谷崎隆太郎

市立伊勢総合病院


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感染症の経過観察の仕方

  1. 勝負はこれからだ︕ 市⽴伊勢総合病院 内科・総合診療科 ⾕崎隆太郎

  2. 国⽴国際医療研究センター ⼤曲貴夫先⽣スライドより

  3. ① 患者 ② 臓器 ③ 微⽣物 ④ 治療 ⑤再評価 感染症診療の 考え⽅

  4. 感染症診療の考え⽅ 患者 臓器 微⽣物 治療 再評価 Patient Organ Micro-organism Antibiotics Reassessment

  5. eassessment (評価を繰り返す) 3つの評価ポイントと共に⾒ていきましょう

  6. 患者︓67 歳,男性 主訴︓発熱,咳,痰 例① 現病歴︓2 ⽇前から倦怠感,⾷欲不振あり.本⽇発熱してきたため来院. 既往歴︓糖尿病,⾼⾎圧 内服薬︓メトホルミン 1,000mg/day,アムロジピン 5mg/day 体温 38.4 ℃,⾎圧 148/78mmHg,脈拍 102 回/分, 呼吸 25 回/分,SpO2: 94 % (リザーバー10L) 胸部︓右下肺野背側で吸気初期から coarse crackle 聴取. (他、特記所⾒なし)

  7. 診断︓肺炎球菌肺炎 治療︓アンピシリン 2g 6時間ごとで治療開始

  8. 経過 体温 ABPC 2g q6h 38.5 治療前 酸素流量(L/min) 10 38.4 9.5 38.3 38.2 9 38.1 8.5 38 8 37.9 37.8 7.5 治療開始 WBC Hb Plt CRP 18,900 16.7 15.2 1.7 翌日 16,500 13.0 12.3 18.5 治療翌⽇

  9. 経過 体温 ABPC 2g q6h 38.5 治療前 酸素流量(L/min) 10 38.4 9.5 38.3 38.2 9 38.1 8.5 38 8 37.9 37.8 7.5 治療開始 治療翌⽇ 翌日 WBC 18,900 16,500 確かにグラム染⾊で菌は消えてるけど、まだ熱あるし, Hb 16.7 13.0 CRPとか⾼いし,本当に良くなってるのか・・・︖︖ Plt 15.2 12.3 CRP 1.7 18.5

  10. 評価のポイント① 「局所」の指標と「全⾝」の指標に分けて、 局所の指標から評価する。 何かないかな・・・ 熱とか ⾷欲とか〜 ADLとか CRPとか 局所の指標 全⾝の指標 (臓器特異的な指標) (臓器⾮特異的な指標)

  11. (例)肺炎 全⾝ ⾒た⽬の元気さ 発熱 ⾷欲 意識,脈拍 ADL ⽩⾎球 CRP 局所 呼吸困難 呼吸回数 咳の回数 痰の量・⾊ 呼吸⾳の異常 痰グラム染⾊ PaO2 , SpO2 胸部X線浸潤影

  12. 治療前 4時間後 16時間後

  13. (例)急性腎盂腎炎 全⾝ ⾒た⽬の元気さ 発熱 ⾷欲 意識,脈拍 ADL ⽩⾎球 CRP 局所 背部痛 CVA叩打痛 尿中⽩⾎球数 尿亜硝酸塩 尿グラム染⾊

  14. 治療前 治療翌⽇ 体温38.7℃ 体温38.0℃ 解熱していないのに、 全然⽩⾎球も細菌も いない︕

  15. 治療前 治療翌⽇ でも⾁眼的には 尿混濁あり︕

  16. (例)急性腸炎 全⾝ 局所 ⾒た⽬の元気さ 嘔気 発熱 ⾷欲 意識,脈拍 ADL ⽩⾎球 CRP 嘔吐回数 腹痛 腸蠕動⾳改善 ⾎便 便の性状

  17. (特殊な例)⾎流感染(感染性⼼内膜炎など) 全⾝ ⾒た⽬の元気さ 発熱 ⾷欲 意識,脈拍 ADL ⽩⾎球 CRP 局所 ⾎液培養陰性化 疣贅の縮⼩ 塞栓症状の改善 (Janeway斑点, Roth斑, 粘膜点状出⾎など)

  18. 治療効果判定で⾎液培養陰性化が必要な疾患 (菌⾎症) • ⻩⾊ブドウ球菌菌⾎症 • カンジダ菌⾎症 (⾎管内感染症) • 感染性⼼内膜炎 • 感染性動脈瘤 • ⾎管内グラフト感染 • 化膿性⾎栓性静脈炎 (私⾒) • ⼈⼯物が挿⼊されている⼈の菌⾎症 • カテーテルが抜去できないカテーテル関連⾎流感染症

  19. 連鎖球菌菌⾎症の IE リスクは菌種に よる。 Circulation. 2020;142:720–730

  20. (特殊な例)⾻髄炎、膿瘍など 全⾝ 局所 ⾒た⽬の元気さ (あれば) 発熱 ⾻髄炎部位の痛み、 ⾷欲 ⽪膚の炎症所⾒、 意識,脈拍 創部の浸出液量など ADL ⽩⾎球 CRP 局所の指標がパッとしないので、 ⾚沈 することもある やむなく全⾝の指標のみで評価 膿瘍径の縮⼩

  21. 全⾝の指標がすべて良くなっていれば たいてい患者も良くなっている. ただし,多くの場合に局所の指標の⽅が より迅速で鋭敏である。 (※特にグラム染⾊)

  22. (左) 誤った経験に注意︕ (右) (右) 40 CTRX 体温℃ 酸素 L/min 呼吸回数 /min MEPM (メロペネム) 30 39 38 20 37 10 36 35 0 ⼊院 WBC (/μL) 3800 2⽇⽬ 12500 3⽇⽬ 10020 4⽇⽬ 6800

  23. (左) 誤った経験に注意︕ 体温℃ 体温上昇や⽩⾎球上昇のみに着⽬すると (右) 酸素 L/min 呼吸回数 /min (右) あたかも CTRX が無効で MEPM が奏功したように ⾒えるが・・・︖ CTRX 40 MEPM (メロペネム) 30 39 38 20 37 2⽇⽬の体温上昇,⽩⾎球上昇は状態悪化を⽰唆して10 36 いるのではなく,最初が重症すぎて,低体温になり 35 ⽩⾎球数低下していたものが,適切な治療により, 0 ⼊院 2⽇⽬ 3⽇⽬ 4⽇⽬ むしろ遅れて上昇してきただけなのでは︖︖ WBC (/μL) 3800 12500 10020 6800

  24. 評価のポイント② 「感染症の診断」と「重症度」は分けて考える 感染症の診断 ② 臓器 ③ 微⽣物 ④ 治療 重症度=臓器障害の程度 ●呼吸︓ P/F⽐、呼吸数、 ●循環︓⾎圧(カテコラミン量)、尿量、 ⾎清乳酸値、代謝性アシドーシス ●その他︓意識障害、低体温、急性腎障害、 ⾎清 Bil、PT-INR、⾎⼩板数、⼆次線溶 マーカーなど

  25. こんな報告していませんか︖(受けてませんか︖) 昨⽇の患者さん、どう︖ 熱は横ばいです。 呼吸状態はよいです。 尿は少なめですが まあ安定しています。 それって、 よくなっているの だろうか・・・

  26. 評価のポイント③ 客観的な事実と主観的な解釈を分ける 事実 通常ひとつ 客観的 具体的 ? 解釈 ひとつとは 限らない 主観的 ときに抽象的

  27. 事実 BUN 45 解釈① 脱⽔がありそうです。 mg/dl, Cre 1.5 mg/dl 解釈② 腎障害ありそうです。

  28. その解釈の正しさの証明には客観が必要 報告内容 実は・・・ 呼吸状態が悪いです P/F⽐ 103 → 190(改善) まだノルアド切れません ノルアドレナリン 0.1γ → 0.03γ(改善) 尿は少ないです 尿量 0.5 ml/kg/h → 0.75ml/kg/h(改善) X線で肺炎疑いです 右上肺野に⼀部⽯灰化を伴う粒状影あり ⼼筋梗塞疑いです ○○誘導で、鏡像変化を伴う 1mm 以上の ST 上昇あり

  29. 回診にて 調⼦はどうですか︖ いや、まだだるいし、 咳も出るし、⾷欲も ありません。 患者 医師

  30. 医療者の考える 症状の有無 症状 ある あるけど 少し改善 あるけど だいぶ改善 ほぼ改善 症状 ある ある ある ほぼ改善 患者さんの考える 症状の有無

  31. 「昨⽇と⽐べてどうですか︖」 医療者の考える 「⼊院時と⽐べてどうですか︖」 症状の有無 「1番症状がつらかった時を10段階で10とすると、 今はどれくらいですか︖」 症状 ある あるけど 少し改善 あるけど だいぶ改善 ほぼ改善 という感じで前後を⽐較したり、10段階評価にする ことで、患者の解釈(主観)を客観的に評価できる。 患者さんの考える 症状の有無 症状 ある ある ある ほぼ改善

  32. 患者がよくならない︕

  33. よくならない時は ミスドで泣こう

  34. よくならないと思ったときにまず考えること ① Misdiagnosis: 診断が違う (臓器が違う。微⽣物が違う。そもそも感染症ではない。) ② Drainage and Debridement: ドレナージ、デブリドマンが 必要な病態が隠れている ③ Natural Course: 実は⾃然経過である

  35. よくならないと思ったときにまず考えること ① Misdiagnosis: 診断が違う (臓器が違う。微⽣物が違う。そもそも感染症ではない。) ② Drainage and Debridement: ドレナージ、デブリドマンが 必要な病態が隠れている ③ Natural Course: 実は⾃然経過である

  36. ①臓器が違う例 症状,所⾒ (誤) (正) 発熱、下肢痛 蜂窩織炎︖ 壊死性筋膜炎 発熱、肺浸潤影 肺炎︖ 敗⾎症性塞栓 症状,所⾒ (誤) (正) 急性腎盂腎炎 ⼤腸菌︖ 緑膿菌 誤嚥性肺炎 ⼝腔内常在菌︖ 結核菌 症状,所⾒ (誤) (正) 胸部X線で両側浸潤影 両側肺炎︖ ⼼不全 患者が元気なのに発熱が続く 別の感染症合併︖ 薬剤熱 ②微⽣物が違う例 ③診断が感染症ではない例

  37. CTRX Day 2 Day 3 Day 4 ⼤腸菌による急性腎盂腎炎で⼊院。CTRX で治療開始。 尿グラム染⾊陰性化、尿中⽩⾎球も消失。 患者さんも⾷事全量摂取で元気。 発熱のみ継続・・・

  38. CTRX Day 2 Day 3 ABPC Day 4 Day 5 Day 6 Day 7 Day 8 ⼤腸菌による急性腎盂腎炎で⼊院。CTRX で治療開始。 尿グラム染⾊陰性化、尿中⽩⾎球消失。 患者さんも⾷事全量摂取で元気。 発熱のみ継続・・・ CTRX 薬剤熱を疑い ABPC に変更。 以降、解熱。

  39. 薬剤熱 基本は除外診断︕投与7-10⽇前後での発症が多い Pharmacotherapy 2010;30:57-69 抗腫瘍薬 抗菌薬 中枢神経作動薬 心血管作動薬 中央値 (days) 0.5 6 16 10 平均値 (days) 6 7.8 18.5 44.7 • 熱の高さや重症感,熱型では判断できない。好酸球上昇も頻度は低い。 • 薬剤中止後72時間以内の解熱が多い(平均1.3 1.1日) Ann Intern Med 1987; 106: 728-733

  40. • 抗腫瘍薬 薬剤熱の原因薬剤(例) • 抗菌薬,アシクロビル,アムホテリシンB • ジルチアゼム,ドブタミン,フロセミド,ヘパリン,ヒドロクロロチアジド, メチルドーパ,プロカインアミド,キニジン・キニーネ,トリアムテレン • アザチオプリン,ミコフェノールモフェチル,エベロリムス,シロリムス • イブプロフェン,ナロキセン • カルバマゼピン,フェニトイン • 抗うつ薬(ドキセピン,ノミフェンシン) • アロプリノール,シメチジン,メトクロプラミド,プロピルチオウラシル, プロスタグランジンE2,スルファラジン,テオフィリン,チロキシン, アンフェタミン Pharmacotherapy 2010;30:57-69

  41. Drainage, Debridement 感染症 原因 検査 対処法 細菌性肺炎 膿胸合併 胸部X線、胸部CT 胸腔ドレナージ 腹部単純CT 経⽪的 or 経尿管的に ドレナージ 尿管結⽯による 急性腎盂腎炎 ⽔腎症 腎膿瘍合併 腹部造影CT 胆管閉塞 腹部単純CT 胆道ドレナージ 化膿性脊椎炎 硬膜外膿瘍合併 脊椎MRI ⼿術 or CTガイド下 穿刺ドレナージ 壊死性筋膜炎 筋膜壊死 試験切開、MRI 緊急デブリドマン 急性胆管炎

  42. 肺炎の胸部X線所⾒の経過 • 70歳以上の肺炎患者の異常陰影が改善するのは、3週間以内で 33%、9週間以内で 66%、12週時点で 76%. J Am Geriatr Soc 2004; 52: 224-229 • 重症肺炎では、7⽇⽬の時点で 75% の患者で異常陰影が残存。 (約半分で臨床所⾒は改善) • 28⽇⽬時点でも半分の患者で異常陰影が残存。 Clin Infect Dis 2007; 45: 983-991

  43. 受診当日 治療開始翌日 治療はうまくいっているけど、脱⽔が補正された影響で 浸潤影が悪化したように⾒えることがある。

  44. 急性腎盂腎炎の⾃然経過 • 70⼈の単純性急性腎盂腎炎(合併症なし) • 治療開始から解熱までの時間(平均 34 時間) 治療開始 48 時間後も発熱 26 % 治療開始 72 時間後も発熱 13 % Am J Med 1996;101:277-80 適切な抗菌薬治療を開始後,37.5℃以下に解熱するまで 38.5 時間(中央値) Eur J Clin Microbiol Infect Dis 2019;38:2185-2192

  45. 治療開始 Day 1 Day 2 Day 3 (適切な治療開始後の) 典型的な急性腎盂腎炎の解熱経過

  46. eassessment (評価を繰り返す)

  47. ① 患者 ② 臓器 ③ 微⽣物 ④ 治療 ⑤再評価 感染症診療の 考え⽅

  48. ① 患者 ② 臓器 ③ 微⽣物 ④ 治療 ⑤再評価 感染症診療の 考え⽅

  49. 原因菌のイメージ ⽪膚・軟部組織・⾻・関節も グラム陽性菌(が多い) グラム陽性菌 横隔膜 グラム陰性菌

  50. 感染症病名 細菌が原因となる場合の主な原因菌 髄膜炎 肺炎球菌,髄膜炎菌 (50歳以上,新⽣児,免疫不全ではリステリアも) 咽頭炎 レンサ球菌(A群,C群),Fusobacterium necrophorum, 中⽿炎 肺炎球菌,インフルエンザ菌 副⿐腔炎 肺炎球菌,インフルエンザ菌 肺炎 肺炎球菌,インフルエンザ菌,モラキセラ・カタラーリス 胆嚢炎,胆管炎 ⼤腸菌,Klebsiella pneumoniae,嫌気性菌,腸球菌など 腸炎 カンピロバクター,サルモネラ,ビブリオ,病原性⼤腸菌 腎盂腎炎,前⽴腺炎, ⼤腸菌,Klebsiella pneumoniae,Proteus 属 精巣上体炎 ⾻盤腹膜炎 ⼤腸菌,Klebsiella pneumoniae,Proteus 属 蜂窩織炎、創部感染 ⻩⾊ブドウ球菌,レンサ球菌 化膿性脊椎炎 ⻩⾊ブドウ球菌,⼤腸菌,レンサ球菌,CNS など

  51. 微⽣物から臓器を推定することができます ③ 微⽣物 ② 臓器 例えば⾎液培養 • ⼤腸菌,Klebsiella → 尿路,胆道系 • ブドウ球菌 → カテーテル,⽪膚,筋⾻格系 • レンサ球菌 → 菌⾎症 (IE含む) ,蜂窩織炎、 壊死性筋膜炎など • 腸球菌 → 尿路,胆道系,カテーテル

  52. ① 患者 ② 臓器 ③ 微⽣物 ④ 治療 ⑤再評価 感染症診療の 考え⽅

  53. 治療薬から微⽣物を推定することができます ④ 治療 ③ 微⽣物 • CTRX,ABPC/SBT で良くなった → 緑膿菌や MRSA ではなさそう • VCM で良くなった → グラム陽性菌の何か.グラム陰性菌ではなさそう • MEPM 投与中に状態悪化 → MRSA, Stenotrophomonas maltophilia,真菌など. またはマイコプラズマやレジオネラなどの細胞内寄⽣菌︖

  54. セフトリアキソンがカバーしない菌 Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌) MRSA Enterococcus spp(腸球菌) 耐性 GNR (ESBL 産⽣菌,AmpC 過剰産⽣菌、カルバペネム耐性菌など) Mycoplasma pneumoniae (マイコプラズマ) Chlamydophila pneumoniae (クラミドフィラ) Legionella pneumophila (レジオネラ) Mycobacterium tuberculosis(結核)

  55. まとめ • 治療開始後は、評価を繰り返す。まずは局所の所⾒を評価、 次いで全⾝の所⾒を評価する。感染症診断と重症度は分けて 考える。 • 客観的な事実なのか、主観的な解釈なのかを意識する。 • よくならない時はミスドで泣こう。治療経過から微⽣物が、 微⽣物から臓器が推定できることがある。

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