認知症についてじぶんのことばで説明しよう。

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山本 大介

湘南鎌倉総合病院

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認知症診療の入り口で、最低限語れるといい、内容について、自分で説明できるようになるための学習スライドです。

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認知症についてじぶんのことばで説明しよう。

1. Daisuke Yamamoto Department of Neurology, Shonan Kamakura General Hospital Let’s talk about dementia in your own words. 認知症について じぶんのことばで 説明しよう。
2. Introduction 自分の専門外来患者さん、入院患者さんのご家族から認知症について相談された時、どのように反応してあげられるでしょうか。また、どのように対応すべきでしょうか。専門家に紹介するとして、それの持つ意味はどのようなものなのでしょうか。 自分が脳神経の専門家でなくても、認知症についてどれくらい語る「じぶんのことば」を持っていますか?色々なところで解説されている内容ではありますが、本スライドでは認知症について、ある程度自力で語る「じぶんのことば」を持てるようになることを目標としています。 実際にはより複雑なテーマではありますが、極力シンプルに伝えられるよう、記載しています。
3. <どこからが認知症なのか?> 歳をとったらすべての人が認知症なのでしょうか? 大なり小なり、みな「物忘れ」があると思うのですが。
4. どこからが“病的な物忘れ”で どこまでが”生理的な物忘れ”なのか? “病的な物忘れと”して評価するのは以下の条件を参考にします。 病識がない、自覚がない 進行性増悪である 進行が速い 日常生活に支障がある これらの特徴があれば、「病的な物忘れ」として、検討するのがよいと思います。『単語が思い出せないので認知症が心配だ』として相談を受けた場合はどうでしょう。日常生活に支障がなく、病識がある、というレベルでは、生理的な物忘れの範疇、として評価可能な可能性が高いと思われます。
5. 「物忘れについて」 こんな風に自分で 語ることができます。 「脳の細胞は加齢と伴に、進行性に減少します。よって、歳をとればとるほど、脳の機能が落ちるのは当然のことです。よって、生理的な物忘れ、があってしかるべきです。一方、病的な物忘れがあります。御存じの通り、アルツハイマー病(AD)などです。ADでは、病識はないのが特徴ですので、自分で心配しているならまだ大丈夫ですよ。生活に支障をきたすような物忘れや、進行性に目だって悪化する物忘れなら、それは病的な可能性があります。そのような場合に、投薬について相談するようにしましょうか。」
6. <診断について> 認知症の診断についてはどのようなことを 概ね理解しておくべきでしょうか? 検査の必要やその意味は どのように説明できるでしょうか?
7. 認知症の診断について: Treatable Dementiaの 評価をしてもらうこと Majorなテーマではありますが、まずはTreatable dementiaについて評価が必要です。そのために、採血と画像検査は検討されます。 採血で検討:ビタミン欠乏症、甲状腺機能低下症、梅毒 画像で検討:慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症 これらを検査で評価する必要はあるので、専門家に紹介して外来検査を受ける意味はあります。採血検査は一通り、オーダーしてから相談もいいでしょう。
8. 認知症の診断について: いわゆるTreatable Dementiaの 評価をしてもらうこと 採血検査は以下項目を提出して下さい。 血算、ビタミンB12、甲状腺ホルモン、電解質、アンモニア 疑うなら、梅毒検査
9. 「診断について」 こんな風に自分で 語ることができます。 「認知症の評価では、検査は受けた方がいいです。治療可能な認知症、というものが隠れている可能性があります。採血と頭部画像検査です。これは少なくともやる必要がありますよ。」
10. 認知症の診断について:概要 いわずもがな、3大病型はアルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症です。細かい話はこのスライドでは避けますが、入り口ではこの3つの病名を押さえましょう。 1位 アルツハイマー病  :AD 2位 脳血管性認知症   :VD 3位 レビー小体型認知症 :DLB
11. 3病型分類においての シンプルなルール 運動障害がないのがAD  運動障害があるのがVD、DLB 明るい認知症はAD    暗い認知症はVD、DLB この大まかなルールは有用です。 「動きが悪い、悪くない」は大切です。 「雰囲気が明るい、暗い」も参考になります。 これらを知った上で、眺めてみる世界は少し見え方が違うと思います。これだけでも、是非覚えてみて下さい。
12. 「病型について」 こんな風に自分で 語ることができます。 「一番多いのが、アルツハイマー病(AD)です。その他には、脳血管性認知症(脳卒中による認知症)、レビー小体型認知症(パーキンソン病の認知症)があります。明るい・暗い雰囲気や、動きに問題がある・ないで、ある程度区別ができたりします。」
13. アルツハイマー病らしさ について アルツハイマー病(AD)について、まずは理解してみて下さい。 ADの臨床像のポイントを記載します。 ・自分では病識がない(自覚がない) ・一見普通に見える(愛想がいい) ・運動障害は問題ない ・取り繕いがある ・振り向き反応がある
14. アルツハイマー病らしさ について 病識がない:自分で認知症を心配しているなら、まだ大丈夫。と言ってもいいかもしれません。病識がないのが、ADらしさ(病的な認知症)です。   一見普通:見た感じは普通。というのがADらしいです。普通っぽくみえるけど、話してみると、ちぐはぐなコミュニケーションだった時に、このことを思い出してください。脳の機能低下を明らかにしたくない、という気持ちの表れから、愛想よく振る舞う人が多いです。  
15. アルツハイマー病らしさ について 運動障害なし:先述のとおり、運動症状がないのがADらしさです。 取り繕い:「最近のニュースはなんですか?」に、「TVみないからわからない」と答えます。もちろんTVをみてないことなんてないのですが、そういって質問に答える様を取り繕いといいます。自分の能力低下をあらわにしたくない気持ちの表れです。 振り向き反応:質問をすると、家族のほうをその都度振り返って確認を求めるかのような仕草。自分の言動に自信がないことを反映しています。
16. 取り繕いについて 取り繕いについては、その意味を理解して下さい。ADの当事者は、落ちてしまった能力があるものの、周りの人の会話にキャッチアップしようとして、対応してくれています。TVみないからわからないなぁ・・・・なんて言われて、なんでそんなこと言うんだろう?と感じるのは思慮深さに欠けます。自分の脳機能が落ちている様を、あらわにしたくない為の表現です。がんばって、周りに合わせてくれようとしてくれてるんだな、と思慮深く理解してみて下さい。
17. 「ADについて」 こんな風に自分で 語ることができます。 「ADらしさというものがあります。明るいさまであって、一見普通にも見えます。取り繕いや振り向き反応、というったものが特徴です。生活に支障をきたすような物忘れの状況で、これらの特徴がある場合にはADを疑います。」
18. <次は薬について。薬で叶うことは?> 医師ができることの一つは、投薬治療です。 その投薬行為によって、何ができるのか?を 説明できることは重要です。
19. 認知症について、 できる投薬治療について 認知症の症状には、中核症状と周辺症状があります。 中核症状とは、認知機能障害そのものを指します。 周辺症状とは、認知機能障害によっておこる問題行動を指します。   中核症状についての投薬:アセチルコリンエステラーゼ阻害薬 周辺症状についての投薬:向精神病薬・漢方薬(抑肝散)など 薬剤治療については、大まかには上記2つが介入できるアプローチです。
20. 周辺症状についての投薬: BPSDが問題になるとき 認知症による周辺症状(BPSD)が問題になるときには、投薬治療は検討されます。易怒性が強くて生活を成り立たせるのが困難になっている場合、幻覚妄想が強く本人・家族の苦痛が強い場合などにおいて、薬物治療によるメリットが得られることがあります。この場合は積極的に、医療に頼っていいシチュエーションです。
21. 中核症状についての投薬 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬をさします。投薬の意味については、色々と意見があります。ただし、投薬介入は「勧められるものである」として理解されています。患者さん、ご家族への説明のニュアンスとしては、「認知症治療薬について、内服するかしないか?という問いについては、内服したほうがよい」、と言えます。ただし、ポリファーマシーや投薬の副作用の問題などを天秤にかけた上で投薬は検討されます。このニュアンスを説明できる必要があります。
22. 今のところ、 その他に使える薬があるのか? WHOのガイドラインではサプリメントは非推奨、という評価になっています。これも説明できるといいでしょう。 有効性が証明できていない、という状況ですので、サプリメントについてのコメントは、バランスよい栄養摂取の補助として、御自分の判断で摂取されることを判断してもらう、という説明になります
23. 「薬について」 こんな風に自分で かたることができます。 「投薬治療には、中核症状と周辺症状、双方への投薬アプローチがあります。周辺症状に対しては、生活において問題になっている場合には、投薬治療は積極的に検討されるべき内容として理解して下さい。中核症状については、過度な期待はできませんが、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の使用は検討されるものです。飲むか飲まないか?の問いであれば、飲んだ方がよい、という推奨です。これが認知症問題の根本的解決につながる訳ではありません。サプリメントは今のところ、非推奨ではあります。」
24. <予防的には何ができるのか?> 薬以外では何をしたらいいですか? という問いに答える言葉は?
25. 運動、刺激のある生活を そしてバランスのとれた食事 ひどく地味な回答になりますが、WHOの予防ガイドラインで述べられている内容です。運動、刺激ある生活(社会参加)、バランスのとれた食事です。この3点について言及して下さい。 運動は軽い有酸素運動で、ウォーキングが勧められています。一日30分程度、週の半分以上の継続が望ましいです。
26. 「薬以外に自分でできることについて」 こんな風に自分でかたることができます。 「自分でできることは、運動、刺激ある生活、バランスのとれた食事に気をつけることです。 運動は、1日30分程度の有酸素運動として、ウォーキングをお勧めします。 刺激がないと、認知症は進行します。家でぼーっとしているのが最も避けられることです。外に出て、人と交流するような機会を作ることが勧められます。 食事は色々と述べられています。少なくとも、脂っこいもの、塩っ辛いものは避けてください。いろいろな情報が巷にはあふれていますが、やはりバランス良く摂取することが推奨です。」
27. <診断して、薬をだして。それ以外は?> 「診断」によって、当事者の状況を客観的に理解すること。 「薬」でできることの限界を理解すること。 「生活」のアドバイス。 ここから先は?
28. 介護保険の導入 について 認知症の診断を受けてそれをきっかけに、介護保険サービスの導入に至ることが、医療機関を受診して得られる、1つの重要な意味です。 ケアにつながることが、ご本人・ご家族にとって一番役に立つことです。   先述のとおり、家にいて何もしないことは、認知症の進行に関わります。これは避けられるべき状況です。介護保険サービスを導入し、外からの眼に触れる機会を作ること、外出機会をつくることは、認知症の進行抑制に役にたちます。また、ご家族による介護負担の軽減につながります。
29. 「介護保険の導入について」 こんなふうに、 自分で語ることができます。 「認知症の診断をつけることで、介護保険サービスの導入につなげることができます。介護負担軽減になり、ご本人・ご家族にとって役に立ちます。よって、認知症についての相談は、検査や投薬のみでなく、このサービス導入までできることにおいて、意味があります。 ご本人(当事者)にとっても、家にいて何もしていない状況は避けられるべきで、デイサービス・デイケアにいって刺激をうけることは、認知症の進行抑制にも役に立ちますよ。」
30. <まとめ> 「じぶんのことば」で、 認知症について医療機関で相談するメリットを 伝えられるでしょうか?
31. 認知症の評価を受けることには、いくらかのメリットがあります。医者ができることの一つは薬を出すことですが、薬には大きく二つのできることがあります。 一つは、認知症の中核症状(物忘れ)を少しでも進行抑制できる、投薬治療があります。これは顕著な効果があるわけではありませんが、飲むか飲まないか?だったら、飲んだほうがいい、ということになっています。中核症状に対する投薬について、過度な期待は禁物です。 もう一つは、周辺症状に対する投薬です。この場合は、きちんと相談するメリットがありますので、投薬治療の意義は大きいです。周辺症状で悩んでいるなら、是非相談を検討すべきです。
32. 認知症の中には、Treatable dementiaがありますので、きちんと評価は必要です。採血検査、画像検査は検討する必要があります。 運動習慣はメリットが多いので、是非作ってください。 診断と投薬以外には、ケアにつながることが最も重要なテーマです。投薬や診断も大切ですが、その後の生活をどのように送っていけるか、のほうが重要なテーマです。   家でぼーっとしていることは、認知症にとってはよくないことです。介護保険を導入し、デイ・ケア、デイサービスを利用して、少しでも刺激のある生活を、また、介護負担を減らせるようにすることが、実際に役に立つことです。
33. 認知症診療の入り口において、現時点で医療ができることは、「客観的評価を行い、投薬介入を検討すること。また、当事者のその後の生活をケアによる、第3者の眼で見つめられる環境調整を行うこと」と言えます。 「認知症が心配だから受診した」という動機が受診の入り口になると思われますが、私たちが何ができて何ができないのかを理解しておく必要があります。 認知症における医療とケアの入り口で、アウトラインが説明できると、すばらしいと思います。
34. 医師であれば、自分である程度理解して、自分の言葉で語れる必要がある領域があります。認知症はそれにあたる疾患と思われます。「ふんわり」した言葉ではなくて、ある程度自分で納得した、 「じぶんのことば」で説明できると、 自信を持った自分のあるべき医師像にそぐうことだと思われます。 本スライドが皆様の少しでもお役に立てれば幸いです。 TAKE HOME MESSAGE!