テキスト全文
フィールドの重要性と脳波判読の基礎
#1. フィールドを意識すれば 脳波判読はもっと楽になる
#2. フィールドとは? 脳波検査では、大脳皮質で発生した突発的な電流 (てんかん性異常) を、頭皮上のセンサーで 捉えています。 つまり、隣接した電極に波及 (フィールド) を 認めます。 震源地 (電流源: source) が広がるイメージです。
#3. なぜフィールドが大事? 波形の形だけでは てんかん性異常と それ以外を鑑別することが 難しいケースもある
IFCN基準と電位マップの活用
#4. なぜフィー ルドが大 事 ? IFCN (国際臨床神経生理学会) では、 6つのうち4つ以上で epileptiform (てんかん性異常) の可能性が高いと判断します。 ⑥は電位マップを使って、フィール ドを可視化しています。 つまり、形だけでなくフィールドも 重視されています。 Kural MA, et al. Neurology. 2020;94(20):e2139-e2147. doi:10.1212/WNL.0000000000009439 Greenblatt AS, et al. Epilepsy Behav. 2023;149:109500. doi:10.1016/j.yebeh.2023.109500
#5. フィールドを意識して 判読してみましょう!
#6. 電位マップの表示は、スパイク成分のピークにカーソルをあわせて (緑色の線) 頭のマネキンのボタンを押すと表示できます (日本光電) てんかん性異常は陰性 (negativity) と覚えましょう! 陰性電位 (negativity) 陽性電位 (positivity)
双極誘導による電位分布の確認
#7. 縦の双極誘導 T3で位相反転しているので、左中側頭部に最大陰性電位があり、電位マップでも同様の結果です。 つまり、電流源 (てんかん焦点) は陰性電位と陽性電位を結んだ線上にあり、 陰性から陽性にむかって電流が流れていると推定できます。 F3 C3 Fp1 F7 T3 T5 注: 電位マップは基準がシステムリファレンスなので、ちょっと分布がC3よりになってます
#8. 他のモンタージュ (耳朶, A V , S D )でも 確認しましょう!
#9. 基準電極導出法 (referential montage) 同側耳朶基準 上向きの波形が陰性電位 (negative up!) T3に最大陰性電位があり、周囲の電極 (F7, T5, C3) への波及が確認できます。 F3 C3C3 Fp1 F7 F7 A1 A1 T3T3 T5 注: 電位マップは基準がシステムリファレンスなので、ちょっと分布がC3よりになってます
#10. T3に最大陰性電位があり、周囲の電極 (F7、T5、C3) への波及が確認できます Average (AV) Laplacian (SD) F3 C3 Fp1 F7 T3 A1 T5 注: 電位マップは基準がシステムリファレンスなので、ちょっと分布がC3よりになってます
脳波判読のステップと注意点
#11. 隣接した電極に波及があることを意識しましょう。 波及がない場合は、アーチファクトを考慮する必要が あります。
#12. おすすめ脳波判読ステップ あやしい波形 最大陰性電位の場所をチェック (双極誘導なら位相反転の場所) 広がりをイメージする (例: T3に最大陰性電位なら、その隣のF3, T5, C3にも波及しているはず) 他のモンタージュでも、イメージした電位分布と近いか確認する 分布が矛盾しない てんかん性異常・正常亜型を考慮 波及がない アーチファクトを考慮
効率的なスクリーニング方法
#13. この先の内容は、施設ごとに異なる 場合があります
#14. さらに効率化するために まずは、縦の双極誘導でスクリーニングしましょう! Q. なぜreferential montageではないの? A. 完全に安静を保てる患者なら良いが、そうでない場合はアーチファクトが 多く、判読の効率が悪い (耳朶基準)。 AVやSDも基準を平均化する処理が入るので、正確ではないことがある。
#15. さらに効率化するために まずは、縦の双極誘導でスクリーニングしましょう! 例えば、耳朶にアーチファクトが混入すると その側の電極がすべて汚染される ! 双極誘導なら汚染の被害が少ない
双極誘導の利点と全般性異常の確認
#16. Q. 双極誘導だと異常を見逃す のではないか? A.慣れてくれば見逃さずに スクリーニングできるように なります。 余計な情報 (アーチファクト) が 少ないので、判読が楽になります。 あやしい所見をみたら、 referential montageでも確認 すれば大丈夫です。 双極誘導 耳朶基準
#17. Q. 双極誘導だと全般性異常が わからないのではないか? A.例えば、特発性全般てんかん症候群の てんかん性異常は、両側前頭部に 最大陰性電位をもつことが多く、 その場合は両側前頭部で位相反転します。 Referential montageでも分布を 確認すれば大丈夫です。 双極誘導 耳朶基準
#18. さらに効率化するために こっちをおすすめ! Fp1-A1→Fp2-A2→F3-A1→F4-A2 左右交互の配列よりも (左図) Fp1-A1→F7-A1→T3-A1→T5-A1 まとまった配列をおすすめ! (右図) 隣接した電極への波及がわかりやすい
脳波判読のまとめとアーチファクトの考慮
#19. てんかんの脳波判読は「疑わしきは罰せず」なので 過剰な判読による害を減らすこともできます。
#20. 注意点 電位マップはシステムリファレンスを基準としているので、 C3やC4にノイズが含まれたり、陰性電位の振幅が小さい場合は正確に表示されません。 正常亜型もてんかん性異常と似たような分布を示すことがあります。 AVやSDは基準を平均化する処理が入るので、正確ではないこともあります。
#21. まとめ 縦の双極誘導で位相反転 (最大陰性電位) の場所とその波及を確認します。 様々なモンタージュを用いて、その分布 (最大陰性電位) と波及が 矛盾しないか確認しましょう。 電流発生源の推定と、アーチファクトの鑑別ができるようになります。