#4.
Polypharmacy とは ➢ 「臨床的に必要とされている量以上に多くの薬剤が処方されている状態」と定義される ➢ はっきりと決まっていないが、薬剤の種類が 5〜6 種類以上 になると、 薬剤有害事象(adverse drug events: ADEs)が増えると報告される ➢ 約 50% の高齢者が Polypharmacy の状態にあるとされる
#5.
Polypharmacy のなにがいけないの? ① ADEs(薬剤有害事象) ➢ 薬物との因果関係ははっきりしないものを含め、薬物を投与された患者に生じた あらゆる好ましくない障害 ➢ ADEs による緊急入院の原因薬剤の 67% は 4 種類 ワーファリン 抗血小板薬 インスリン 経口血糖降下薬
#6.
Polypharmacy のなにがいけないの? ① ADEs(薬剤有害事象) ➢ ADEs の発症率が高い薬剤は以下 第一世代抗ヒスタミン薬(ポララミン、アタラックス P) 長時間作用型 BZ(クアゼパム、ハロキサゾラム、フルラゼパム) スルピリド(抗ドパミン薬) 薬剤性パーキンソニズム アミオダロン 間質性肺炎、無顆粒球症、甲状腺機能亢進 ジゴキシン 中毒で不整脈、消化器症状、視覚障害(黄視)
#7.
Polypharmacy のなにがいけないの? ② PIMs( potentially inappropriate medications ) ➢ まだ有害事象を起こしていないものの、このまま処方を継続すると 今後有害事象を起こす可能性が高いもの ➢ PIMs 検出ツールは以下 STOPP criteria Beers criteria 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015
#8.
PIMs 検出ツール(目を通す!) STOPP CRITERIA 心血管系 中枢神経系・ 精神神経系 消化器系 薬剤 リスクの高い症例 ジゴキシン 腎機能障害を持つ患者に対する 125 μg を超える長期投与 ループ利尿薬 心不全の兆候のない、就下性の足首の浮腫のみがある症例 (通常は圧迫ストッキングがより適切) サイアザイド利尿薬 通風の既往歴がある患者(悪化させる可能性) 血管非選択的 β 遮断薬 COPD 患者(気管支攣縮のリスク) ジルチアゼム/ベラパミル NYHA III 又は IV 度の心不全(心機能を悪化させる可能性) Ca 遮断薬 慢性便秘の患者(悪化させる可能性) ワルファリン 最初の単純型 DVT から 6 ヶ月以上経過している場合 最初の単純型肺塞栓から 12 ヶ月以上経過している場合(有益性が証明されていない) 三環系抗うつ薬 認知症患者(認知機能障害を悪化させる可能性) SSRI 低 Na 血症がある患者 PPI 消化性潰瘍に対して最大用量で 8 週間以上の使用 NSAIDs 中等度から重度の高血圧または心不全 Age Ageing 2015 Mar;44(2):213-8.
#9.
PIMs 検出ツール(目を通す!) START CRITERIA 薬剤 推奨される症例 ワルファリン 慢性の心房細動 アスピリン 慢性の心房細動(ワルファリンが禁忌の場合) 降圧治療 収縮期血圧が常に 160 mmHg 以上 スタチン系 冠動脈、脳血管、末梢血管疾患の既往歴があり、 ADL 自立であり、余命が 5 年以上の場合 ACEI 慢性心不全・急性心筋梗塞後の病態 β 遮断薬 慢性の安定狭心症 ビスホスホネート製剤 副腎皮質ステロイドの維持療法 Ca・ビタミンD 骨粗鬆症(脆弱性骨折、後天性の脊柱後弯症) 抗血小板薬 心血管疾患のリスクが高い糖尿病患者(高血圧、高コレステロール、喫煙歴) Age Ageing 2015 Mar;44(2):213-8.
#10.
Polypharmacy のなにがいけないの? FRIDs(fall-risk-increasing drugs) → 転倒リスクを増加させ、大腿骨骨折 につながる 栄養障害 鎮静薬 降圧薬 抗うつ薬 抗コリン薬 抗精神病薬 抗てんかん薬 BZ系 オピオイド → 薬剤数が多くなると、食物繊維、脂溶性ビタミン、 ミネラルの摂取不足となり、コレステロール、糖分、ナトリウムの摂取増加につながる アドヒアランスの低下 薬剤相互作用 → 5〜9 剤で 50% の相互作用があると言われている Prescribing cascade → 1 つの処方が副作用を介してその他の処方を導くこと
#11.
Prescribing cascade の例 HT に対して ACEI 開始 ACEI による乾性咳嗽 +NSAIDs 痙攣誘発 咳嗽に対してコデイン+LVFX せん妄・CDI メトロニダゾール メトロニダゾール脳症 高齢者の場合 中途半端な結核治療→ 結核をマスク
#12.
有名な副作用 薬剤 副作用リスク NSAIDs Na 貯留作用 → HT → 降圧薬 メトクロプラミド 錐体外路症状 → 抗パーキンソン病薬 NSAIDs、CCB、漢方(特に甘草) 利尿薬でも寛解しない浮腫の原因(※ビタミンB1欠乏も原因となる) NSAIDs、ニコランジル、SSRI 消化管潰瘍リスク(特に NSAIDs は全消化管の出血リスクあり) フロセミド、サイアザイド系 高齢者の痛風の原因 寝たきり患者への エビスタ(ラロキシフェン) 血栓形成してしまう 慢性硬膜下血腫既往患者への 睡眠薬 再発リスクが大きい MMSEが低い認知症患者への 抗認知症薬 『こう』が付くもの 抗菌薬、抗不整脈薬、抗アレルギー薬、抗精神病薬 ✓ ✓ ✓ ✓ 下痢、嘔気、嘔吐 → 食欲不振、体重減少(約2倍起きやすい) 循環器症状:失神、徐脈 神経症状:興奮、易怒性、幻覚、不眠 副作用があるだけ よだれ → 誤嚥性肺炎の原因 薬剤性のQT延長症候群 Heart 2003;89:1363-1372 ジスロマックを投与する前に、低K血症 や QT延長 に気をつけていますか?
#13.
薬剤性パーキンソニズムを起こす薬 Movement Disorders Associated With Antipsychotic Medication in People With Schizophrenia: An Overview of Cochrane Reviews and Meta-Analysis Can J Psychiatry 2018, Vol. 63(11) 730-739 運動障害の出現率 高 高〜中程度 中程度〜低 低 薬 NbN 分類 ハロペリドール D2受容体遮断薬 クロルプロマジン D2 / 5-HT2 受容体遮断薬 L-スルピリド D2受容体遮断薬 ジプラシドン D2 / 5-HT2 受容体遮断薬 アリピプラゾール D2 / 5-HT1A 受容体部分作動薬 ・ 5-HT2A 受容体遮断薬 リスペリドン D2 / 5-HT2A / α2 受容体遮断薬 アミスルプリド D2受容体遮断薬 オランザピン D2 / 5-HT2A 受容体遮断薬 パリペリドン D2 / 5-HT2A / α2 受容体遮断薬 アセナピン D2 / 5-HT2A / α2 受容体遮断薬 クロザピン D2 / 5-HT2A / α2 受容体遮断薬 クエチアピン D2 / 5-HT2A / α2 受容体遮断薬 ・ NA トランスポーター阻害薬
#14.
PPI なら単なる胃薬だし長期服用しても平気? 長期間 PPI を内服していると… 腸管感染症が増える CDI、サルモネラ、カンピロバクターなど LC 患者が 肝性脳症 や 特発性細菌性腹膜炎 をきたしやすくなる → 消化管からのbacterial translocation を介するため 肺炎 が増える → 胃酸抑制により口腔内細菌叢が変化するため 鉄欠乏性貧血 が増える → 鉄を還元できないため Collagenous colitis(膠原線維性大腸炎)の原因となる CMAJ. 2016 JUN 14;188(9):657-62.
#15.
PPI なら単なる胃薬だし長期服用しても平気? 長期間 PPI を内服していると… 小腸出血 をきたしやすくなる PPI は離脱症状で GERD様症状 がでる → 胃酸抑制による feed back が起こり高ガストリン血症によっておきているため 骨折 も増える → 胃酸分泌抑制による Ca 吸収障害 ビタミンB12欠乏症 が増える → 食物からのビタミンB12が遊離しにくくなる 高齢者の四肢しびれは ビタミンB12欠乏を疑え! CMAJ. 2016 JUN 14;188(9):657-62.
#16.
PPI 適正使用について ➢ 以下は、1 項目でも満たせば PPI 予防投与を行うべき 消化性潰瘍の既往歴がある DAPT 中 抗血小板薬と抗凝固薬併用中 ➢ 以下は、2 項目満たせば PPI 予防投与を行うべき 60 歳以上 ステロイド使用中 消化不良もしくは GERD ACCF/ACG/AHA 2008 Expert Consensus Document on Reducing the Gastrointestinal Risks of Antiplatelet Therapy and NSAID Use
#17.
消化管出血リスクの管理 リスクの程度 患者状態 最高リスク (8〜10%) 経腸栄養が不可能な状態の人工呼吸器管理患者 慢性肝疾患 高リスク (4〜8%) 血液凝固障害の疑い 中程度リスクの項目に 2 つ以上該当する 中程度リスク (2〜4%) 経腸栄養が可能な状態の人工呼吸器管理患者 急性腎障害 敗血症 ショック 低リスク (1〜2%) リスク因子のない重症患者 急性肝障害 ステロイドまたは免疫抑制剤の使用 抗凝固薬の使用 悪性腫瘍 男性 予防治療を提案するカットオフ Ye Z et al. BMJ 2020 Jan 6;368:l6722.
#18.
PPI の使用に関する文献 Pantoprazole to Prevent Gastroduodenal Events in Patients Receiving Rivaroxaban and/or Aspirin in a Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial Moayyedi P et al. Gastroenterology 2019 Aug;157(2):403-412. ➢ 安定期の心血管疾患の治療に低用量の抗凝固薬・アスピリンを使用している患者に対して、 日常的に PPI を投与しても、上部消化管イベントを減少させない ➢ 消化管イベントのリスクが高い患者では、胃十二指腸の病変からの出血を減少させる可能性がある Estimates of all cause mortality and cause specific mortality associated with proton pump inhibitors among US veterans: cohort study Xie Y et al. BMJ 2019 May 29;365:l1580. ➢ PPI の投与は、心血管疾患、慢性腎臓病、上部消化管癌による 死亡率のわずかな増加と関連している ➢ PPI の適応がない患者においてもこの傾向が見られ、PPI の使用には注意が必要である
#19.
その他注意したい内服薬 薬剤 注意点 ジギタリス 血中濃度測定可能 至適 1 未満、2.5 以上では中毒必発 テオフィリン 血中濃度測定可能 セレスタミン 1T でデキサメタゾン 0.25mg=プレドニン 2.5mg → 2T で生理的ステロイドを超える!! → 副腎不全 のリスク ピル ー 薬(抗菌薬)を 始める時 には、 治療効果判定の項目を決めて、いつやめる のかを決めておく
#20.
今日からなにを変えたらいい? ➢ 最近の内服薬変更、漢方、サプリメントの聴取 → 過去カルテをコピペ しているだけ?本人に確認している? ➢ 初めて見る、使う薬は必ず用法、用量、副作用を確認する → 腎障害で減量が必要なケースがある ➢ 入院後の持参薬の Do処方 はしない → 内服している理由を説明できないなら、前医に問い合わせると、減薬のいいチャンス になり得る
#21.
症例クイズ① 83F ADL full 独居 CC)倦怠感、食思不振 【現病歴】 1ヶ月前から徐々に ADL 低下。食思不振になり、家族から見てもぼんやりしているので当院受診 【既往歴】 緑内障、骨粗鬆症、HT、HLP 【内服薬】 H 病院より:アルファロール、カンデサルタン、スタチン、アムロジピン S クリニックより:スローケー、ダイアモックス 【現症】 vital stable、明らかな神経学的所見なし
#22.
症例クイズ① 83F ADL full 独居 CC)倦怠感、食思不振 【現病歴】 1ヶ月前から徐々に ADL 低下。食思不振になり、家族から見てもぼんやりしているので当院受診 【既往歴】 緑内障、骨粗鬆症、HT、HLP 【内服薬】 H 病院より:アルファロール、カンデサルタン、スタチン、アムロジピン S クリニックより:スローケー、ダイアモックス 【現症】 vital stable、明らかな神経学的所見なし Ca:14.5
#23.
症例クイズ② 72F ADL full CC)浮遊感 【現病歴】 普段は清掃の仕事をしているが、両上肢のしびれを自覚、近医受診し内服薬を処方されて帰宅。 その後、浮遊感を自覚するため受診 【既往歴】 緑内障、骨粗鬆症、HT、HLP 【内服薬】 リリカ、リマプロストアルファデクス、ランソプラゾール 【現症】 vital stable、身体所見特記事項なし
#24.
症例クイズ② 72F ADL full CC)浮遊感 【現病歴】 普段は清掃の仕事をしているが、両上肢のしびれを自覚、近医受診し内服薬を処方されて帰宅。 その後、浮遊感を自覚するため受診 【既往歴】 緑内障、骨粗鬆症、HT、HLP 【内服薬】 リリカ、リマプロストアルファデクス、ランソプラゾール 【現症】 vital stable、身体所見特記事項なし リリカ → めまい
#25.
Take Home Message ➢ 有名な副作用を知っておく ➢ 最近の処方薬追加、変更を確認する STOPP CRITERIA START CRITERIA ➢ 鑑別疾患の中に、薬剤性を常に考慮 ➢ 知らない処方薬は用法/用量/副作用を調べる(特に入院時と退院時) ➢ 既往歴から内服薬、内服薬から既往歴を 予測する 癖をつける
#26.
Refference ➢ 『くすりのりすく』 著者:上田 剛士 先生(洛和会丸太町病院) ➢ 『ポリファーマシーに困ったら 一番はじめに読む本』 著者:吉田 英人 先生(西伊豆健育会病院) ➢ 『解消!ポリファーマシー 上手な薬の減らし方』