#4.
肺移植とは • 重い肺の病気を持つ患者に行われる治療法 1. 現在の医療において、肺移植以外の有効な治療法がない (=内科的治療が尽くされている) 2. 生命の危機が迫っている(2年生存率が50%以下) 3. 肺移植によって元気になることが予測される • 提供者(ドナー)から摘出した肺(片肺もしくは両方)を移 植を受ける人(レシピエント)に移植すること 日本移植学会ホームページより引用
#5.
肺移植の歴史について 1983年 1986年 1987年 世界初の片肺移植 世界初の両肺移植 世界初の生体肺移植 1997年 1998年 2000年 2006年 2008年 日本で臓器移植法施行 日本初の生体肺移植 日本初の脳死肺移植 脳死肺移植が健康保険適応 生体肺移植が健康保険適応
#6.
世界初の肺移植(1983年11月7日) • トロント大学のCooperらによる • 症例は58歳男性(診断:特発性肺線維症) • 右片肺移植 • 免疫抑制剤としてシクロスポリンを使用 Unilateral lung transplantation for pulmonary fibrosis. The Toronto Lung Transplant Group. N Engl J Med 1986; 314:1140-5.
#7.
肺移植には脳死肺移植と生体肺移植がある 脳死肺移植 脳死ドナー レシピエント 通常一人のドナーが 片肺または両肺を提供 生体肺移植 生体ドナー① 生体ドナー② レシピエント 通常二人のドナーが 片方の肺葉(下葉)を提供
#8.
日本における肺移植症例数の推移 100 90 80 70 60 脳死 50 40 30 20 10 生体 0 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 日本移植学会のホームページより引用
#9.
日本臓器移植ネットワーク登録患者 (≒脳死移植を必要とする患者) 2020年の時点で 1. 腎臓 2. 心臓 3. 肺 4. 肝臓 5. 膵臓 6. 小腸 12485 826 396 335 204 5 日本臓器移植ネットワークのホームページより引用
#10.
脳死肺移植レシピエントの適応基準 • 治療に反応しない慢性進行性肺疾患で、肺移植以外に救命法がない • 原則として、両肺移植が55歳未満、片肺移植が60歳未満 • 精神的に安定し、十分な家族サポートが期待できる • 移植後の定期検査と免疫抑制療法の必要性を理解している 日本肺および心肺移植研究会ホームページより引用
#11.
脳死肺移植の適応となりうる疾患名(例) 1. 間質性肺炎 2. 肺気腫 3. 肺リンパ脈管筋腫症(LAM) 4. 肺サルコイドーシス 5. 気管支拡張症 6. 原発性肺高血圧症 7. アイゼンメンジャー症候群 8. その他協議会で承認する進行性肺疾患
#12.
脳死肺移植レシピエントの除外条件 • 肺外に活動性の感染巣が存在 • 他の重要臓器に進行した不可逆的障害が存在 悪性腫瘍、肝疾患(T-bil >2.5 mg/dl)、 腎疾患(Cr >1.5 mg/dl、Ccr <50 ml/min)など • 極めて悪化した栄養状態 • 極端な肥満(BMI >30) • リハビリテーション能力が期待できない 等 日本肺および心肺移植研究会ホームページより引用
#13.
脳死肺移植希望者が、 日本臓器移植ネットワークに登録するまでの流れ 肺移植施設での適応評価 • 東北大学 • 東京大学 • 千葉大学 • 獨協医科大学 • 藤田医科大学 • 名古屋大学 • 京都大学 • 大阪大学 • 岡山大学 • 福岡大学 • 長崎大学 中央肺移植検討委員会で の適応評価 日本臓器移植ネットワークに登録
#14.
脳死ドナー臓器摘出手術 一人の脳死ドナーから複数の臓器摘出を行う 脳死ドナー臓器摘出手術の例 • • • • • • • • 全身ヘパリン化 胸骨正中切開・腹部正中切開 大動脈遮断 心臓摘出 肺摘出 腹部臓器(小腸・肝臓・膵臓・腎臓)摘出 皮膚摘出 眼球摘出
#15.
脳死肺移植レシピエント手術 • アプローチ(体位・切開について) 両肺移植:仰臥位で両側クラムシェル切開 片肺移植:仰臥位で前側方切開、または側臥位で側方切開 • 人工心肺の使用について 症例により使用する • 吻合について(施設により順序は異なる) 気管支吻合→左心房(または肺静脈)吻合→肺動脈吻合
#16.
脳死肺移植と生体肺移植の比較 脳死肺移植 生体肺移植 長い 短い 緊急手術 待機手術 2または3チーム必要 4チーム必要 ドナー肺の大きさ 全肺 下葉のみ ドナー肺の虚血時間 長い 短い ドナー肺の状態 様々 良好 待機期間 緊急手術か待機手術か 手術チーム
#17.
生体肺移植の利点と欠点 ➢利点 • 予定手術 • 虚血時間が短い • 提供肺に傷害がない(外傷、感染、誤嚥など) • 血縁者からの臓器提供は免疫学的に有利 ➢欠点 • 健康なドナーに肺葉切除をしないといけない • レシピエントとドナーのサイズマッチングが時に困難
#18.
生体肺移植レシピエントの適応基準 • 年齢制限は施設によって設定 • 脳死肺移植の適応基準をみたす • 病気の進行が速く、脳死ドナー肺の斡旋を 待つことができない重症患者
#19.
生体肺移植ドナーの適応基準例 • 年齢は20歳以上,60歳以下 • 3親等以内の親戚もしくは配偶者 • 室内気下でPaO2 > 80 mmHg • %FVC, %FEV1 > 85%予測値 • 愛情に基づく自発的な臓器提供であること
#20.
生体肺移植ドナーからの肺葉(下葉)摘出手術 • 後側方切開・第5肋間開胸 • 肺門構造の剥離操作 (レシピエント手術の進行に合わせて) • • • • • 全身ヘパリン化 葉間肺動脈遮断 心嚢内で下肺静脈遮断 肺動脈・肺静脈・気管支の切離 肺動脈・肺静脈・気管支の断端を縫合閉鎖
#21.
生体肺移植レシピエント手術 • アプローチ(体位・切開について) 両肺移植:仰臥位で両側クラムシェル切開 • 人工心肺の使用について ほぼ必ず使用する • 吻合について(施設により順序は異なる) 気管支吻合→肺静脈吻合→肺動脈吻合
#22.
日本および世界の、肺移植後長期生存 5年 10年 世界の 全肺移植 日本の 脳死肺移植 日本の 生体肺移植 5年生存率 55% 72.2% 72.2% 10年生存率 36% 59.9% 59.4% (肺および心肺移植研究会レジストリー 2025)
#23.
肺移植後の免疫抑制について 3剤併用療法を行うことが多い • カルシニューリンインヒビター • タクロリムスまたはサイクロスポリン等を使用 • 主としてT細胞リンパ球を抑制 • 代謝拮抗薬 • ミコフェノール酸モフェティール(MMF)等を使用 • B細胞リンパ球も抑制 • ステロイド • プレドニゾロン等を使用 • 古典的な免疫抑制剤
#24.
日本の肺移植後慢性期の死亡原因 1位:感染症 • 細菌感染症:緑膿菌等を含む • 真菌感染症:ニューモシスチスやアスペルギールスを含む • ウイルス感染症:サイトメガロウイルスを含む 2位:慢性移植肺機能不全 • 閉塞性障害型 • 拘束障害型 その他:悪性腫瘍やリンパ増殖性疾患など (肺および心肺移植研究会レジストリー 2025)
#25.
Take–Home Message 1 肺移植の適応疾患は、内科的治療が尽くされた進行性の良性 疾患であることを知っておこう! 肺移植には脳死ドナーによる肺移植と生体ドナーによる肺移 2 植に分類されることを覚えておこう! 肺移植術後の慢性期合併症として、慢性移植肺機能不全と感 3 染症が重要であることを押さえておこう!