#4.
【 過去30 回まとめ 】 41. PCSK9 阻害薬の1次予防効果 42. 透析患者における魚油補充の心血管イベント予防効果 43 .PSG 睡眠データで全身疾患リスクを予測する AI 基盤モデル 44. 無症候性頸動脈狭窄における内科治療の到達点 45. 虚血性脳卒中における LDL -C低下の意義 46. 心房細動におけるパルスフィールドアブレーションの安全性 47. 心房細動アブレーション成功後の抗擬固療法 48. 心不全における生理的ペーシング総説 49. 妊娠中のスタチン使用と先天奇形リスク 50. 少量の身体活動増加と死亡リスク低下 51. カフェイン入りコーヒーと心房細動再発について 52. モバイルヘルス禁煙支援と結核予後 53. 経口PCSK9 阻害薬エンリシチドの脂質低下効果 54. 左室駆出率が保たれた心筋梗塞後患者における β遮断薬の有効性 55. 無症候性重症ASにおける左室リモデリングと早期 TAVR 56 .ストレス関連性心房細動の発症率と予後 57. 歯周病と動脈硬化性心血管疾患 58. トランスサイレチン型心アミロイドーシス治療と死亡ベネフィット 59. 虚血性脳卒中後の2次予防戦略 60. 高齢癌患者に対するレイヘルスワーカーの介入意義
#5.
【 過去30 回まとめ 】 61. 環境ストレッサーと心血管健康 62. 肥満は「個人の問題」ではない 63. 急性虚血性脳卒中に対するミノサイクリンの有効性 64. 妊娠高血圧症候群と若年女性の早期心血管疾患リスク 65. アルコール飲料摂取と心臓病リスク: AHA ステートメント 66. 不安定プラークと古典的リスク因子の関連 67.DKD 患者における MRA +SGLT2 阻害薬併用( CONFIDENCE 試験) 68. 非心臓手術前にSGLT2 阻害薬は中止すべきか 69. 神経調節性失神予防と着圧ストッキング 70. 体重管理と心血管疾患 71. 心不全患者は専門医外来のほうが予後が良い 72. 大麻使用と心血管疾患 73. 透析患者におけるスピロノラクトンの効果 74. 大気汚染と高血圧:空気清浄機の効果 75. 心エコーによる左室充満圧評価の新アルゴリズム 76. ストーキング被害と心血管疾患発症 77. 薬剤師による心不全管理の有効 性 78. 世界で増加する心不全患者 79. 高齢心筋梗塞患者の心臓リハビリテーションの効果 80. 積極的降圧療法のメタアナリシス
#6.
【 過去30 回まとめ 】 80. 積極的降圧療法のメタアナリシス 81. 大動脈二尖弁に対する TAVR 弁種比較 82. 経口GLP -1受容体作動薬による肥満治療 83. 冠動脈疾患予防における抗血小板薬比較
#7.
収縮機能低下した心不全患者へのジギトキシンの効果 from NEJM DIGIT -HF 試験は、標準治療下におけるジギトキシンの有効性を検証した無作為化二重 盲検試験。対象は心不全( HFrEF )患者 1212 例( LVEF ≤40% かつNYHA III/IV 、または LVEF ≤30% かつII )で、ジギトキシン 0.07mg/ 日(血中濃度 8–18ng/mL 目標)またはプラ セボを投与し、中央値 36 か月追跡。主要複合評価項目(全死亡または心不全入院初回)は ジギトキシン群 39.5% 、プラセボ群 44.1% で、( HR0.82 [ 95%CI 0.69 –0.98 ]、 p=0.031 )と有意に低下。重篤な有害事象はジギトキシン群 4.7% 、プラセボ群 2.8% であ り、安全性は概ね許容範囲内と評価。 古典的薬剤における重要なエビデンスです。現代の標準治療に追加しての有効性であり、 新規性が高いです。ジギタリス製剤は古いエビデンスに基づき「入院抑制が中心」とされ てきましたが、本研究によりよりハードイベント抑制効果が確認されました。平均 72 歳と いう現実的な高齢集団においても有効性と忍容性が示されたことは臨床的意義が大きく、 医療経済的にも価値が高いでしょう。今後は血中濃度管理や患者選択について議論を深め ていきます。 出典: https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2415471
#8.
心疾患予防へのポップアップアプローチ from JACC 本研究は、オーストラリアで地域薬局 311 か所と国際スポーツイベント会場に設置され たセルフ操作型「ポップアップ健康ステーション」を用いた心血管リスクスクリーニング を検討した前向き観察研究。ステーションは血圧自動測定や身長体重計測、生活習慣・既 往歴入力を約 4分で行い、異常値では受診勧告を行う仕組みを備えていた。 7週間で 76,085 人が参加し、 68.9% が未管理のリスク因子を有していた。高血圧は 37.2% 、過体 重・肥満 60.5% 、喫煙 12.1% で、 26% は複数のリスク因子を併存。イベント会場での有病 率は薬局より高く( 79.9% vs 67.7% )、薬局では農村部や平日・日中に高率であった。 参加者満足度は高く、地域やイベントを活用した簡便かつ高効率な集団スクリーニング手 法として有用性が示された。 新たな予防の一手ですね。従来の健診や外来受診ではスクリーニングしにくい層を拾い 上げる点で非常に価値があります。高血圧や肥満、喫煙といった主要リスク因子を短時間 で自己測定でき、医療機関への受診動機づけにつながる仕組みは予防医療の実装に直結し ます。特にイベント会場や非都市部で高い有病率が示されたことは、医療資源の偏在や受 診行動の差を補う具体的戦略となり得ますね 。 出典: https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2025.07.020
#9.
高血圧ガイドライン最新版 AHA/ACC from Circulation 2025 年AHA/ACC 高血圧ガイドラインは、 2017 年版を改訂し、成人の予防・診断・管 理を包括的に提示した。血圧管理を心血管イベント抑制の柱と位置づけ、生活習慣改善か ら薬物療法、在宅測定やチーム医療まで多面的に強調している。 Top Take -Home Messages 1. 高血圧は最重要の修正可能リスク因子で、目標は原則 <130/80 mmHg 。 2. 成人全員にスクリーニングと管理実装を推奨。 3. 多職種チーム医療により服薬遵守・社会的障壁を克服。 4. 血圧分類は正常(<120/80mmHg) 、高値 (120 –129/<80) 、ステージ 1(130 –139/80 –89) 、 ステージ 2( ≥140/90) 。 5. 全ての成人に DASH 食、減塩、運動、体重管理など生活習慣改善を推奨。 6. 薬物治療は140/90 以上、または 130/80 以上+高リスク例で開始。 7. ステージ 2では初期から 2剤配合薬を推奨。 8. 在宅血圧測定と継続介入を重視、カフレス機器は推奨せず。 9. 重症高血圧は外来で迅速に経口薬を導入・強化。 10. 妊娠や施設入所者など特殊状況では柔軟に対応。
#10.
高血圧ガイドライン最新版 AHA/ACC from Circulation これらのメッセージは、患者教育と自己測定を含む包括的アプローチの重要性を示し、血 圧管理を個別化しつつ実臨床へ展開する指針となっている。 だいぶ個別化が進み、患者背景に応じた柔軟な対応が求められる時代になりました。ガ イドラインは生活習慣改善から薬物療法、在宅血圧測定やチーム医療までを統合した包括 的管理の重要性を明確に示し、実臨床での指針として有用ですね。今後は在宅測定やデジ タル機器の進化を活用し、社会的要因への介入も含めた地域全体での実装が鍵となります。 我々も血圧管理の質を高め、予防医療の推進に一層貢献するように進めていきます。 出典: https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIR.0000000000001 356
#11.
コーヒーと心血管系疾患 from EHJ コーヒー摂取と心血管疾患リスクの関係を広範にまとめた総説。観察研究やメタ解析で は、 1〜 4杯/日程度の中等量摂取が高血圧、 2型糖尿病、冠動脈疾患、心不全、不整脈の リスクや全死亡率低下と関連。一方で、未濾過コーヒー(フレンチプレス、トルコ式な ど)は LDL コレステロール上昇を引き起こしやすく、また急性試験では心室性期外収縮が 増加する可能性が報告。フィルターを用いた抽出法や、砂糖・人工甘味料を加えない飲み 方が望ましい。利尿作用や抗酸化作用、腸内細菌叢の変化など、カフェイン以外の成分も 有益に働くとされる。総じて、適量かつフィルターコーヒー中心の摂取が心血管予防的に 有効であり、過剰摂取は避けるべきとの結論。 コーヒーの臨床エビデンスです。嗜好品でありながら、心血管疾患予防に寄与する可能 性が示されました。フィルターコーヒーは高血圧や糖尿病、心不全などのリスクを減らし うる一方、未濾過コーヒーや大量摂取は脂質異常や不整脈を助長する懸念があります。つ まり、その飲み方や種類などへの配慮も必要ですね。患者さんへの指導では、砂糖や甘味 料を控え、フィルター抽出を推奨することがよいですね。実践していきます。 出典: https://academic.oup.com/eurheartj/article/46/36/3546/8193215
#12.
遠隔心臓リハビリテーション ステートメント from EHJ 心臓リハビリテーションの参加率は欧州で 30 〜 40 %にとどまり、交通や時間などの実 務的障壁が主因とされる。近年、在宅型の遠隔心リハ( cardiac telerehabilitation : CTR)が代替・補完手段として注目され、有効性と費用対効果が研究結果として示された。 欧州心臓病学会( ESC)は CTRを認定基準に組み込み、標準化を目的として本声明を発表。 CTRは遠隔通信技術を用い、運動療法、栄養・心理支援、血圧・脂質・体重管理、禁煙指 導など心リハの全要素を在宅で提供するシステム。完全遠隔型とハイブリッド型があり、 従来のセンター型と同等の効果が示唆される。また、専門家と共に基準をしっかりと策定 し、安全性、データ保護、患者個別化を重視する。今後は高齢者やデジタルリテラシー格 差への対応が課題とされた。 遠隔心臓リハビリテーションは、従来の通院型リハビリの課題を解消し、より多くの患 者さんに予防医療を届ける可能性があります。運動指導、栄養管理、心理支援をデジタル で一元化できる点は大きな進歩です。一方で、高齢者や低リテラシー層への導入、継続意 欲の維持、医療者の負担軽減など、課題も残されています。今後はテクノロジーに頼るだ けでなく、患者の生活背景に寄り添った支援体制の構築が鍵となるでしょう。私たちも積 極的に導入を検討していきます。 出典: https://academic.oup.com/eurheartj/article/46/38/3714/8219973
#13.
ステロイド、非ステロイド MRA について ステートメント , from JACC -HF ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬( sMRA :スピロノラクトン、エプレ レノン)は、 HFrEF に対して死亡率低下効果が確立しているが、高カリウム血症や腎障害 などの副作用により使用が制限されている。非ステロイド性 MRA ( nsMRA :フィネレノ ンなど)は、より選択的な受容体結合と心腎での均衡した分布を持ち、副作用が少ないと される。大規模試験では、フィネレノンが糖尿病性腎症および HFmrEF /HFpEF 患者で心 腎イベントを有意に減少。今後、 sMRA との直接比較試験や費用対効果、最適な適応患者 の選定が課題である。 MR モジュレーターやアルドステロン合成酵素阻害薬など新たな治 療薬も検討されており、アルドステロン -MR 軸を標的とした治療戦略の発展が期待される。 nsMRA は大きな可能性を秘めています。高カリウム血症のリスクを抑えつつ心腎保護 効果を示している点は注目です。今後は、既存の sMRA との比較試験により真の優位性を 検証すること、さらに糖尿病や肥満など多因子リスクを抱える患者への適応拡大が重要で す。心腎連関を標的とした治療最適化の流れが一層進むことが期待されます。 出典: https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jchf.2025.102637
#14.
急性心不全に対するエコーでの IVC測定は有用か? from JACC -HF 本研究は,多施設ランダム化比較試験として, ADHF 入院患者に対し,下大静脈( IVC) 超音波測定を加えたガイド付きうっ血除去療法群と,臨床評価のみで行う群を比較した。 主要評価項目は入院時から退院時における NT -proBNP の変化率とした。 388 例を登録し, 主解析対象327 例を評価。群間差は 5.4 %( 95 %CI –9.4 %~22.6 %, P = 0.58 )と有意差 を認めず。安全性イベントは IVC超音波群で数値上少ない傾向。利尿剤量や血液濃縮度も 両群で類似。結論として、 IVC直径超音波評価を加えても,臨床評価のみの治療に比して うっ血をより改善するには至らなかった。 重要な知見です。現場では超音波 IVC径は有用と考えがちですが、 ADHF では体液動態 が複雑で、静脈還流や右心機能の影響も大きいのでしょう。結局、患者の症状、末梢浮腫、 体重変化、 BUN/Cr 比などを総合的に判断する必要があります。過度な除水を避けつつ、 再入院予防のため在宅での体液モニタリング手法等を確立していくことも今後の課題です。 出典: https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jchf.2025.102578
#15.
若年競技アスリートの心臓突然死 from Circulation 若年競技アスリートの心臓突然死( SCD )の死因究明には質の高い剖検が不可欠だが、 米国では検死体制が分断され、専門性・報告様式の不統一や資源不足が課題となっている。 特に心血管病理に精通した医師が限られ、遺伝子検査も 5%未満しか実施されていない。 英国では専門センター集中型の体制により診断精度が向上しており、米国でも地域ネット ワークと標準化プロトコルの整備が求められる。病理定義の統一と遺伝子解析の導入に よって、死因解明と家族の予防的ケアが可能になる。 重要な問題提起です。日本でも若年者の SCDは年間約1500 例と推計されていますが、 司法・行政・病理解剖が分断されており、非犯罪例では病理解剖が行われず死因不明例が 多いのが現状です。剖検率は 5%以下に低下し、多くが臨床医の推定で死因が判断されて います。従来の剖検でも約 3割が原因不明に終わり、心原性突然死の実態把握は十分とは いえません。欧米で進む分子剖検(遺伝子解析)も、日本では制度・倫理・家族対応の整 備が遅れており普及していません。今後は遺伝情報の扱いや同意取得の標準化、医療者教 育、専門センター体制の構築が求められます。 出典: https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCULATIONAHA.1 25.075597
#16.
アディポカイン仮説と HFpEF from JACC 心不全( HFpEF )の病態を「アディポカイン仮説」として説明する総説。内臓脂肪の増 加と生物学的変化により、アディポカイン分泌が異常化し、腎での Na 再吸収増加、全身 炎症、冠微小循環障害、心筋線維化を誘発する。結果として左室充満圧が上昇し、拡張能 が低下する。従来の心筋中心の病態像に対し、脂肪組織 —心臓—腎臓—血管の相互作用を 重視する概念であり、肥満や代謝異常を標的とした治療の新たな方向性を示す。 HFpEF を 全身性代謝疾患として捉える視点が強調されている。 興味深い知見です。 HFpEF を心筋単独の疾患ではなく、内臓脂肪を中心とした全身性の 代謝・炎症疾患として捉える視点は斬新ですね。肥満やインスリン抵抗性に伴うアディポ カイン異常が、微小循環障害や線維化を介して心不全を進展させるという考えは、予防的 介入の方向性を示しています。体重管理や抗炎症・代謝改善療法が今後の治療戦略の鍵と なるでしょう。肥満患者の HFpEF についてより深い議論が出来そうです。 出典: https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2025.06.055
#17.
動脈硬化性疾患の予測:脂質 & 炎症& 遺伝 from EHJ 動脈硬化性疾患の予測において、 LDL -C・ hsCRP ・ Lp (a) の3指標を組み合わせた解析 が有用であることを示した総説。 EPIC -Norfolk および UK Biobank の大規模前向き研究で は、これら 3者の高値が独立して心血管イベントを予測し、併存時にリスクが相加的に上 昇した。スタチン治療中でも予測能は維持され、残余リスクの存在を示唆する。 LDL -Cは 脂質蓄積(脂質)、 hsCRP は慢性炎症、 Lp (a) は酸化リン脂質を介して動脈硬化進展(遺 伝)に関与し、それぞれ異なる経路を反映する。一次予防における一回測定のスクリーニ ングが、個別化予防戦略に有用である可能性が示された。 新たな予防リスク評価の提案です。動脈硬化の多面的リスクを捉える上で極めて有用で す。脂質異常・炎症・遺伝要因という異なる経路を同時に評価でき、特にスタチン治療下 でも残余リスクの把握に役立ちます。今後は一次予防段階での一回スクリーニングとして 活用し、生活習慣介入や個別化治療につなげることが、心血管疾患予防の実効性を高める 鍵になると考えます。我々も臨床の現場での予防治療に生かしていきます。 出典: https://academic.oup.com/eurheartj/article/46/39/3885/8220865
#18.
DOAC 内服の慢性冠症候群患者におけるアスピリンの上乗せ効果 from NEJM AQUATIC 試験は、経口抗凝固薬を継続している慢性冠動脈疾患( CCS)患者に対して、 アスピリン併用が有効かを検証した多施設二重盲検無作為化比較試験。冠動脈ステント留 置後6か月以上経過し、動脈硬化リスクの高い 872 例を対象に、アスピリン 100mg/ 日群と プラセボ群に 1:1 で割り付けた。主要複合エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中、 再血行再建、急性肢虚血など)はアスピリン群 16.9% 、プラセボ群 12.1% で、アスピリン 群のリスクが有意に高かった( HR 1.53, p=0.02 )。全死亡( 13.4% vs 8.4% )および大 出血( 10.2% vs 3.4% )もアスピリン群で増加し、試験は安全性上の懸念から早期終了と なった。結論として、長期抗凝固療法中の CCS患者にアスピリンを追加することは、有効 性を示さずむしろ出血および死亡リスクを増大させた。 アスピリン仮説の終焉でしょうか。 CCS患者での「アスピリン上乗せ効果」の限界を明 確に示されました。長年支持されてきた“アスピリン仮説”は、出血リスクの増加という現 実の前に見直しを迫られています。動脈硬化リスク高い & 冠動脈ステント後であっても、 安定期に入った患者では OAC単剤で十分と考えられ、むしろ安全性が高いといえます。抗 血栓治療は「足し算」ではなく「引き算」で最適化する時代に入りました。 出典: https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2507532
#19.
2025 年AHA 心肺蘇生法ガイドライン from Circulation 最新AHA 心肺蘇生法ガイドラインは、「救命の質向上」を目的に最新エビデンスを体系 化している。成人では、目撃者による即時胸骨圧迫と早期除細動を強調し、蘇生後ケアで は体温管理よりも脳灌流維持と酸素化・血圧の最適化を優先するよう改訂された。小児・ 新生児では呼吸管理の重要性が再評価され、チーム蘇生と教育システムの標準化も推奨さ れた。さらに、 AI 活用による現場判断支援、地域ごとの蘇生率格差の是正、蘇生後リハビ リの包括的支援など、実装科学の視点が加わった点が特徴的。全体として、単なる手技の 更新ではなく、「救命連鎖の最適化」と「ケアの継続性」を重視する包括的な指針となっ ている。 今回のガイドラインは、心肺蘇生の質だけでなく「つなぐ医療」を重視した内容となっ ています。従来の蘇生手技にとどまらず、救命後の心血管・脳機能回復や地域医療体制の 強化を重視しています。循環器医としては、蘇生後ケアの質を高めるため、血圧・酸素化 管理や早期の循環サポートに加え、チーム医療の連携体制を整えることが重要です。教育 と地域全体の対応力を高めることが、最終的な救命率向上につながります。やはり地域を より巻き込んだ地域ごとの救命体制構築が最重要課題でしょう。 出典: https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIR.0000000000001 372
#20.
厳格降圧と生活の質について ESPRIT サブ解析 from JACC ESPRIT 試験の主要解析では、収縮期血圧を 120mmHg 未満に厳格管理することが、 140mmHg 未満を目標とした標準治療群に比べて主要心血管イベントおよび死亡を有意に 減少させることが示された。本事後解析は、その同一集団における生活の質( HRQoL ) への影響を検討したものである。約 1.1 万人を平均 3.4 年間追跡し、 EQ -5D スコアは厳格降 圧群でわずかに上昇( +0.56 )、標準治療群で低下( − 0.50 )し、両群間差は 1.26 ポイン トと統計的に有意であった。標準治療群は、従来の降圧目標である 140mmHg 未満を維持 する群として臨床現場での通常治療を反映しており、厳格治療との比較基準として設定さ れた。結果として、厳格降圧は標準治療と比べても生活の質を損なわず、むしろ軽度に改 善させる傾向を示し、強化降圧の安全性と患者受容性を裏付けた。 厳格な降圧管理が生活の質を向上させることを示した点で興味深いです。強い降圧が患 者の負担につながるという懸念に対し、実際には安全で前向きな効果をもたらす可能性が 示されたのです。特に高リスクや高齢患者においても有害事象の増加はみられず、積極的 な血圧管理の妥当性を支持する結果です。今後は、臓器保護と QOL 向上を両立させた個別 最適な降圧治療が求められますね。当法人でも「積極的降圧治療 < 120」を取り入れて いきます。 出典: https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2025.06.010
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HFrEF患者において腎機能低下が心不全増悪のどの時期で加速するかを、EPHESUS・ EMPHASIS-HF・BARCELONAの計1万人超のデータで検証した研究。心不全入院または心不全死を 経験した群では、eGFRはイベントの1年前から急速に低下し、年あたり約−5~−6 mL/min/1.73m² の下降を示した。一方、イベントのない患者では緩徐な低下にとどまった。イベント後も腎機能低 下は持続するが、1年後には再び緩やかな下降勾配へ移行した。NYHAの悪化も同時期に進行し、 腎機能低下が潜在的うっ血を反映する可能性が示唆された。エプレレノン群ではイベント後の腎 機能低下が抑制されており、MRAの腎保護作用を示唆。eGFRの絶対値ではなくスロープ(傾き) が心不全イベント予測に有用となる可能性が示された。 これまでの報告でも、腎静脈のうっ血と心不全の関係があるように、腎機能低下を見ることは心 不全悪化のサインになります。特にeGFRの絶対値ではなくスロープの変化が心不全悪化の1年前 から動き始める点は、外来診療での大きな助けになります。うっ血のサインをeGFRの微細な変化 から早期に拾い上げ、利尿薬調整やSGLT2阻害薬・MRAなどの最適化を前倒しで行うことが予防 に直結するでしょう。当法人でもこのサインをしっかりと取り入れていきます。
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HFrEF患者において腎機能低下が心不全増悪のどの時期で加速するかを、EPHESUS・ EMPHASIS-HF・BARCELONAの計1万人超のデータで検証した研究。心不全入院または心不全死を 経験した群では、eGFRはイベントの1年前から急速に低下し、年あたり約−5~−6 mL/min/1.73m² の下降を示した。一方、イベントのない患者では緩徐な低下にとどまった。イベント後も腎機能低 下は持続するが、1年後には再び緩やかな下降勾配へ移行した。NYHAの悪化も同時期に進行し、 腎機能低下が潜在的うっ血を反映する可能性が示唆された。エプレレノン群ではイベント後の腎 機能低下が抑制されており、MRAの腎保護作用を示唆。eGFRの絶対値ではなくスロープ(傾き) が心不全イベント予測に有用となる可能性が示された。 これまでの報告でも、腎静脈のうっ血と心不全の関係があるように、腎機能低下を見ることは心 不全悪化のサインになります。特にeGFRの絶対値ではなくスロープの変化が心不全悪化の1年前 から動き始める点は、外来診療での大きな助けになります。うっ血のサインをeGFRの微細な変化 から早期に拾い上げ、利尿薬調整やSGLT2阻害薬・MRAなどの最適化を前倒しで行うことが予防 に直結するでしょう。当法人でもこのサインをしっかりと取り入れていきます。
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≥
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₂ ₂ ₂ ₂
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≤ ≥ https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra2415650
#59.
https://academic.oup.com/eurheartj/article/47/3/318/8239200
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#62.
#63.
#64.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2512686
#65.
https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2025.08.071
#66.
₂ ₂ https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCULATIONAHA.125.0 76421
#67.
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0000000000001390
#68.
https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2025.09.1512
#69.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMcp2415601
#70.
https://jamanetwork.com/journals/jama/articleabstract/2843478
#71.
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCULATIONAHA.125.079034
#72.
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIR.0000000000001395
#73.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0140673625018628
#74.
https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCULATIONAHA.125.078057
#75.
アルコール飲料摂取と心臓病リスク: AHA ステートメント from Circulation アルコール摂取と心血管疾患( CVD )との関連を最新のエビデンスに基づいて包括的に 評価したアメリカ心臓協会の科学的見解。従来、「少量飲酒は冠動脈疾患のリスクを下げ る」とされてきたが、最近の研究では軽度の飲酒であっても脳卒中や高血圧、心房細動、 心不全のリスクが増加することが明らかになっている。特に若年層や女性、高血圧や糖尿 病のある人ではその影響が強い。また、心血管保護効果は他の生活因子(例:食事、運 動)による交絡の可能性が高く、断定できないとされる。したがって、アルコール摂取は 予防的に推奨されるべきではなく、摂取量の削減が望ましい。 これまでの「適量飲酒は心血管に有益である」「百薬の長」とする通説は、見直す必要 がありますね。循環器疾患予防の観点からは、飲酒の是非にとどまらず、生活習慣全体を 包括的に評価し、飲酒機会の削減を含む多面的な介入が求められます。特に高血圧や糖尿 病のある患者には、禁酒または極めて低頻度の飲酒を推奨していく方向になりそうです。 出典: https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIR.0000000000001 341
#76.
不安定プラークと古典的リスクの関連 from JACC 本研究は、急性冠症候群( ACS)患者 1581 名・ 2187 病変を対象に、 OCTを用いてプ ラーク脆弱性と心血管リスク因子の関係を検討。糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙のリ スク因子数が増えるほど、責任病変における脂質プラーク、 thin -cap fibroatheroma 、マ クロファージ、微小血管、コレステロール結晶の出現頻度が有意に上昇し(例:マクロ ファージ 68→87 %)、プラーク破綻も増加( 40→65 %)、逆にプラークびらんは減少し た( 52→31 %)。 2つ以上のリスク因子保有は独立して脆弱性の各所見と関連し、特に STEMI で強く、非責任病変では関連は弱かった。 不安定プラークの可視化が可能になっています。従来の単一因子の管理にとどまらず、 複合的リスクの早期評価と一括介入が求められる結果です。炎症を介してプラーク不安定 化が進行するため、生活習慣是正や抗炎症的介入、禁煙指導、体重管理を含む多面的アプ ローチにより、プラーク安定化と ACS予防を図ることが重要です。当法人でも積極的、包 括的予防アプローチを実践していきます。 出典: https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2025.04.070
#77.
DKD 患者における MRA +SGLT2 阻害薬の早期併用効果 from NEJM 糖尿病合併の慢性腎臓病( CKD )患者において、非ステロイド性ミネラルコルチコイド 受容体拮抗薬フィネレノンと SGLT2 阻害薬エンパグリフロジンの同時投与効果を検証した CONFIDENCE 試験。 ACE阻害薬または ARB をすでに使用中の患者 800 例を、フィネレノ ン単独、エンパグリフロジン単独、両薬併用の 3群に無作為化し 180 日間追跡。主要評価 項目は尿中アルブミン /クレアチニン比( UACR )の変化で、併用群はフィネレノン単独 群より 29 %、エンパグリフロジン単独群より 32 %大きく低下。効果は投与 14 日で 30 %以 上の低下がみられ、 90 日で40 %超に達した。重篤な副作用はまれで、低血圧、急性腎障 害、高カリウム血症による中止はいずれも少数だった。併用による降圧や eGFR 低下は可 逆的で、 30 日後にはほぼ回復した。 心腎保護の新たな選択肢です。 MRA +SGLT2 阻害薬併用は、短期間で強力な蛋白尿低 下を示しました。ただし短期試験であり、心血管・腎イベント抑制の実証は今後の課題で す。実臨床では高カリウム血症や腎機能変動への注意、薬剤費負担を考慮しつつ、適切な 症例選択と長期安全性の確認が重要となりますね。早期介入を常に念頭においた予防医療 を進めることが重要です。 出典: https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2410659
#78.
非心臓手術前にSGLT2 阻害薬は中止すべきか? from Circulation ACC/AHA は非心臓手術周術期における SGLT2 阻害薬( SGLTi )の中止を、心不全患者 にも一律で Class I 推奨として提示したが、その根拠は糖尿病患者の限定的データに基づき、 非糖尿病心不全患者のエビデンスは乏しい。正常血糖糖尿病性ケトアシドーシス ( euglycemic DKA )の発症はまれであり、多くは糖尿病かつインスリン使用例で発生す る。一方、 SGLTi 中止は心不全悪化や入院、体液過負荷リスクを増加させ、手術延期や再 開忘れによる長期的有害事象も懸念される。著者らは、糖尿病合併心不全患者には Class IIa 、非糖尿病心不全患者には Class IIb で中止を考慮とし、 eDKA リスクと心不全悪化リス クを個別に評価した上で、可能な限り 48 時間以内に再開する柔軟な推奨への改訂を提案し ている。 非常に重要な提言です。非糖尿病心不全患者への SGLT2 阻害薬一律中止が不要なリスクを 生む可能性を的確に指摘していますね。 DKA 発症リスクが低い症例まで中止するのは過剰 であり、著者らの示す糖尿病合併例での慎重中止、非糖尿病例での柔軟判断という層別化 は合理的です。心不全イベント抑制と安全性を両立させる戦略として有用であり、今後は 周術期管理に関する前向きデータの蓄積が期待されます。当法人でも議論を進めていきま す。 出典: https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCULATIONAHA.1 25.072732
#79.
神経調節性失神予防における着圧ストッキングの有効性 from JACC COMFORTS -II 試験は、過去 1年に2回以上の神経調節性失神を有する 18 〜 65 歳の患者 266 例を対象に、大腿までの弾性ストッキング( ECS, 25 –30mmHg )と外見同等の偽ス トッキング( ≤10mmHg )を比較した多施設二重盲検ランダム化試験。一次評価項目は失 神再発率と初回再発までの期間で、 12 か月後の再発はECS群29.1 %、偽群 34.8 %と有意差 なし( HR 0.84, p=0.44 )。再発回数や生存解析でも差はなく、多発例や高アドヒアラン ス例でも有効性は示されなかった。一方、 ECS着用中の発作は偽群45 %に対し ECS群33 % と少なく( p=0.021 )、既往発作が多い患者では減少傾向がみられた。 興味深い知見です。骨盤・腹部の静脈プーリング対策はやはり重要です。また、失神予 防には、圧迫療法に加え、水分・塩分摂取の増加、長時間の立位や高温環境の回避ですね。 さらに、前駆症状時の下肢筋収縮やしゃがみ込みなどのフィジカルカウンタープレッ シャー動作が有効とされています。腹部・腰までの圧迫を含む多面的介入と、生活習慣へ の予防行動の組み合わせによる個別化戦略が今後の鍵となりそうです。失神ハイリスクで ある満員電車で通勤するオフィスワーカーにもしっかり伝えていきます。 出典: https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2025.05.049
#80.
体重管理と心血管疾患 ACCステートメント from JACC 米国心臓病学会( ACC)がまとめた肥満に対する内科的体重管理のエキスパートコンセ ンサス。肥満を慢性疾患として捉え、生活習慣介入を基盤に、薬物療法を積極的に組み合 わせる戦略を提示している。特に GLP -1受容体作動薬やGIP/GLP -1二重作動薬などの新 規薬剤が有効であり、心血管疾患リスク低減にも寄与する点が強調されている。患者中心 であることが重要ポイントで、合併症、既往歴、薬剤耐容性を考慮し、体重減少だけでな く長期的な心血管アウトカム改善を目指すべき。プライマリケア医や循環器専門医が、生 活習慣病管理の一環として「体重管理」を積極的に行うことの重要性が示されている。 かなり踏み込んだステートメントです。肥満 /過体重を循環器疾患の治療対象として積 極的に位置づけ、 GLP -1やGIP 作動薬を中心とした薬物療法の有効性を明確に示していま す。一方で高額薬剤であること、長期使用時の安全性データ不足、アクセス格差など課題 も残っています。今後は生活習慣介入と薬剤の適切な組み合わせや、薬物中止後の体重再 増加への対応が重要となりますね。一般内科医療においても、「体重管理」だけでなく肥 満を独立したリスク因子として診療に組み込み、包括的な心臓病予防戦略を実践すべき時 代が到来しています。当法人でも意識改革を進めていきます。 出典: https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2025.05.024
#81.
心不全患者は専門医の外来診療のほうが予後が良い from EHJ 急性心不全に対する診断と治療の進歩を概説している。診断ではバイオマーカーや画像 検査を組み合わせた精度向上が重要とされ、治療は利尿薬中心から血行動態や臓器保護を 意識した多角的アプローチの重要性が強調されている。特に ARNI やSGLT2 阻害薬など新 規薬剤の急性期導入が予後改善に寄与する可能性が示唆され、急性心不全の診療において 専門医は高度な薬物導入やデバイス治療、複雑な病態への対応により予後の改善が期待さ れる。一方で、非専門医は救急や地域での初期対応において重要な役割を担う。両者の連 携による包括的な診療体制が再入院予防と長期予後改善に不可欠とされる。 興味深い知見です。一方で、本邦においては急性心不全患者の多くが高齢者であり、多 疾患併存やフレイルを伴うことが少なくありません。そのため循環器専門医による高度な 薬物導入やデバイス治療の適応判断は重要ですが、地方や夜間救急では非専門医対応が中 心となる現実があります。今後は標準化された診療プロトコルを普及させ、専門医が遠隔 でサポートできる体制や地域連携ネットワークを強化することが不可欠でしょう。さらに 多職種による在宅フォローを組み込み、再入院抑制と生活の質向上を両立させることが展 望されます。我々の日々の遠隔診療などが生かせそうです。 出典: https://academic.oup.com/eurheartj/article/46/31/3050/8126812
#82.
大麻使用と心血管疾患の関連性 from Circulation 冠動脈疾患( CAD )を有する 66 ~68 歳の米国退役軍人4,285 人を対象に、大麻使用と心 血管イベントの関連を検討した前向きコホート研究。約 3.3 年間の追跡で、急性心筋梗塞、 脳卒中、心血管死を含む主要複合エンドポイントの発生率を比較したところ、大麻喫煙者 と非使用者の間に有意差は認めず(調整ハザード比 0.87 、 95%CI 0.61 –1.24 )。喫煙頻度 や大麻使用形態(喫煙、ベイプ、食用など)別の解析でも同様の結果であった。背景には、 対象者の大多数が喫煙歴を持ち、糖尿病や心不全など他のリスク因子が強く影響していた 点が考えられる。大麻使用と心血管イベントとの関連を否定的に示した大規模かつ初の前 向き検討である。 本邦では大麻使用は違法であり、臨床研究も乏しい一方で、若年層での使用拡大が懸念 されている現状があります。喫煙歴や糖尿病、高血圧など既存のリスク因子が依然として 主要課題であることは間違いありませんが、大麻使用が加わることで生活習慣の乱れや薬 物相互作用を介して心血管イベントを悪化させる可能性を認識しておくべきですね。正確 な疫学データの収集と啓発活動を通じ、若年層への早期介入を進めることが重要です。 出典: https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCULATIONAHA.1 24.073193
#83.
維持透析患者へのスピロノラクトンの効果検証 : 2RCTs from LACNET 血液透析患者におけるスピロノラクトンの有効性を検証した大規模 RCTを 2本紹介する。 ALCHEMIST 試験(フランスなど 64 施設)は、心血管リスクを有する透析患者を対象に、ランイン期間で忍容性を確 認後、 25mg/ 日かプラセボに無作為化。主要評価項目(心血管死・非致死性心筋梗塞・脳卒中・心不全 入院など)に差はなく、高カリウム血症も増加しなかった( HR 1.00 )。 ACHIEVE 試験( 12 か国143 施 設)は、 45 歳以上または糖尿病合併透析患者を対象に、 7週間のオープンラベル投与後に無作為化。主要 評価項目は心血管死または心不全入院で、追跡中央値 1.8 年の時点で中間解析により「無益性」と判定さ れ早期終了となった( HR 0.92 )。両試験の結果は一致しており、透析患者におけるスピロノラクトン 25mg/ 日の心血管イベント抑制効果は否定され、日常診療でのルーチン 使用は支持されない結果。 透析患者における心血管予後改善は依然として未解決の課題です。両試験の結果から、日常診療にお ける安易な MRA 使用は控えるべきですね。今後は、非ステロイド性 MRA やアルドステロン合成阻害薬と いった新規薬剤、さらには生活習慣や透析方法の改善を含む包括的戦略の構築が重要となります。予防 医学の観点からも、透析導入前の段階で心血管リスクを管理することの重要性が、ますます高まってい ます。 出典: https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS01406736(25)01198-5/abstract https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS01406736(25)01194-8/abstract
#84.
大気汚染と高血圧への空気清浄機の効果 from JACC 本研究は高速道路近接地域の154 名を対象とした無作為化クロスオーバー試験で、家庭 用HEPA 空気清浄機の血圧への影響を検討。 HEPA は高性能エアフィルターで直径 0.3μm の粒子を 99.97% 以上捕集できる性能を持つ。参加者は 30 歳以上の非喫煙者で、既往に心 血管疾患のない住民。各参加者は HEPA 使用とシャム使用を 1か月間ずつ行い、間に 1か月 のウォッシュアウトを設定。 HEPA 使用により室内 PM2.5 と超微小粒子は有意に減少。主 要解析では全体の血圧では有意差を認めなかったが、収縮期血圧 120mmHg 以上の層にお いては HEPA 使用時に平均− 2.8mmHg 、シャム時に +0.2mmHg であり、両群差 − 3.0mmHg ( p<0.05 )が統計学的に有意であった。結論として、 HEPA 清浄機は高めの 血圧の集団(高血圧予備群)に対し収縮期血圧を有意に低下させ、低レベル大気汚染下で も心血管リスク低減に寄与する可能性が示された。 環境問題を踏まえて、明確に介入した点は意義深いです。高血圧予備群における収縮期 血圧の3mmHg 低下は、長期的に脳卒中や心不全リスクを有意に減少させる効果が期待で きますね。生活習慣改善や薬物治療に加え、空気清浄機のような環境介入を組み合わせる ことで、予防戦略をさらに強化できる可能性があります。特に都市部や交通量の多い地域 では有用性が高く、在宅からの積極的心血管予防の一手となりそうです。 出典: https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2025.06.037
#85.
心エコーでの左室充満圧の評価 from Circulation 本研究は左室充満圧( LVFP )の推定精度を改善する新アルゴリズムを多施設で検証。 カテーテル検査を受けた 951 例を対象に、追加の指標(左房リザーバーストレイン ≤18 %、 左房最大容積指数 >34 mL/m² 、等容弛緩時間 ≤70ms 、肺静脈フロー( S/D比 ≤0.67 )な どを組み合わせた二段階評価を導入。 2016 年ASE/EACVI ガイドラインでは 38 例が判定不 能だったのに対し、新アルゴリズムでは 2例のみで、感度・特異度ともに 86 %、精度 86 % と有意に優れていた。特に LVEF が保たれた群で精度が向上し、ナトリウム利尿ペプチド との併用でさらに識別能が強化された。結論として、本アルゴリズムは判定不能例を大幅 に減らし、心不全評価における実用性を高める可能性が示された。 心エコーがさらに進歩しました。この新アルゴリズムは、「判定不能例」をほぼ解消し、 特にHFpEF 患者に対して有用性が高そうです。非侵襲的に充満圧を正確に評価できれば、 カテーテル検査の必要性を減らし、臨床現場での意思決定を大きく支援します。今後は運 動負荷試験やAI 解析との統合も期待され、 HFpEF 心不全診療において実践的な診断ツール となることが期待されます。 出典: https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCULATIONAHA.1 25.074974
#86.
ストーキング被害は CVD 発症と関係している from Circulation ストーキング被害と心血管疾患リスクの関係を検討した研究。米国の女性 66,270 人を 対象に、ストーキング体験や接近禁止命令の取得と心血管イベント発症との関連を解析し た。結果、ストーキング経験者( n=7,721 )は非経験者に比べ心筋梗塞や脳卒中の発症リ スクが有意に高く( HR 1.41 )、接近禁止命令を申請した群( n=3,686 )ではさらにリス クが上昇していた( HR 1.70 )。著者らは、心理社会的ストレスが交感神経活性化や炎症 反応を介して心血管系に負荷を与える可能性を指摘し、被害者支援の強化と心血管予防の 両面からの介入の必要性を強調している。本研究は、暴力やストレス体験が循環器疾患の リスク因子となりうることを示す重要なエビデンスである。 非常に重要な知見です。従来の血圧や脂質などだけでは捉えきれないリスク要因として、 心理社会的ストレスを重視すべきですね。我々の診療の現場では、生活習慣の指導ととも にメンタルヘルスや社会的背景への配慮を加えることで、より包括的な心血管予防が可能 になりそうです。なかなか難しい問題ですが、暴力被害の早期発見と支援体制の整備が予 防医療に直結するとの認識は確かでしょう。 出典: https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCULATIONAHA.1 24.073592
#87.
薬剤師による心不全管理の有効性 from JACC -HF 米国退役軍人医療システムにおける薬剤師の心不全管理介入を解析した研究。 2017 〜 2021 年に発症した HFrEF 患者104,517 人のうち、診断後 6か月以内に薬剤師介入を受けた のは10.2% で、年次推移では 7.0% から 14.3% へ増加した。薬剤師介入群は、推奨薬物 3剤 ( RAS阻害薬/ARNI 、 β遮断薬、 MRA )の適正使用率が高く( 31% vs 15% 、 P<0.0001 )、各薬剤の使用率も有意に上昇していた( ARNI 23% vs 12% 、 β遮断薬 89% vs 69% 、 MRA 43% vs 25% 、 all P<0.0001 )。調整後解析でも薬剤師介入は最適薬物療 法実施と有意に関連( OR 2.51 、 95%CI 2.39 –2.63 )しており、薬剤師の関与が心不全治 療の質向上に寄与する可能性が示された。 心不全治療の質を高める可能性がありますね。特に、 ARNI やMRA といった使用率が依 然として十分とは言えない薬剤についても、薬剤師の関与で導入が促進されている点は重 要です。今後は、医師と薬剤師含めたコメディカルスタッフの連携をさらに強化し、チー ム医療として心不全患者の薬物治療を最適化していくことが求められます。本邦でも薬剤 師の役割拡大は大きな鍵になるでしょう。 出典: https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jchf.2025.102530
#88.
世界中で心不全患者は増えている from JACC -HF 1990 〜 2021 年にかけて、 20 〜 49 歳の若年成人における心不全症例は世界で 336 万例か ら 614 万例へ増加し、年齢調整有病率も 159.98 から 182.89/10 万人へ上昇した。特に社会 人口学的指数( Sociodemographic Index, SDI )中等度地域での増加が顕著で、平均年間 増加率は0.72% ( 95%CI: 0.70 –0.75 )であった。原因は虚血性心疾患、心筋症・心筋炎、 高血圧性心疾患が主要であり、若年層では心筋症・心筋炎が多く、 40 〜 49 歳では虚血性 と高血圧性心疾患が優勢だった。また薬物使用障害や内分泌・代謝疾患がそれぞれ約 165% 、 153% 増加した。予測では 2035 年まで有病率と障害調整生存年がさらに増加する 見込みであり、地域特性に応じた予防戦略と新興リスク因子管理の重要性が示された。 社会的問題です。若年成人における心不全の増加は、従来の高齢者中心の心不全管理と は異なる新たな課題です。特に心筋症や心筋炎、さらには薬物使用や代謝疾患の関与は深 刻であり、生活習慣や社会背景を含めた幅広い視点での介入が必要です。今後は、地域に 応じた一次予防の強化と早期診断、そして若年層に適した教育や啓発活動を組み合わせる ことが、将来的な心不全負担軽減につながるでしょう。当法人でも未来の若者の心臓を 守っていきます。 出典: https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jchf.2025.102572
#89.
高齢心筋梗塞患者の心臓リハビリテーションの効果 from NEJM 本研究は、心筋梗塞後の高齢患者に対する多領域リハビリ介入を検討したランダム化試 験( PIpELINe 試験)。対象は退院 1か月後に身体機能低下を有する 65 歳以上512 例で、リ スク因子管理・栄養指導・運動療法を含む介入群( 342 例)と通常治療群( 170 例)に 2:1 で割り付け。主要評価項目は 1年以内の心血管死または心血管疾患による非計画入院。結 果、介入群はイベント発生率 12.6 %で対照群 20.6 %より有意に低下し( HR 0.57, 95% CI 0.36 –0.89, P =0.01 )、特に心不全による再入院は 1.5 %対7.1 %と大幅に減少した( HR 0.20, 95% CI 0.07 –0.56, P <0.01 )。死亡率低下は有意差に至らなかったが、身体機能・ 生活の質改善も確認され、包括的リハビリ介入の有用性が示唆された。 納得のいく結果であり、冠動脈疾患に対する包括的リハビリの有効性が示され、今後の 診療指針にも影響を与えるでしょう。今後は、認知機能低下や多疾患併存を有する症例に も適用可能なプログラムの開発が求められます。また、地域包括ケアや在宅医療との連携 を強化し、遠隔モニタリングやデジタルツールを活用した継続的支援を取り入れることで、 再入院抑制やQOL 維持につながることが期待されますね。当法人においても、より積極的 なリハビリプログラム開発を進めます。 出典: https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2502799
#90.
積極的な降圧療法に関するメタアナリシス from LANCET 本研究は収縮期血圧管理において「強化治療」と「標準治療」の利益と害を比較した個 別参加者データの統合解析。 6つの大規模RCT(計 8万220 人)を対象に、強化治療(収縮 期目標120 〜 130 mmHg 未満)と標準治療( 140 〜 150 mmHg 未満)を比較。中央値 3.2 年 の追跡で、強化治療群は主要心血管イベントが有意に減少( HR 0.76 )、絶対リスク低下 1.73 %、 NNT は58 であった。一方で低血圧や腎障害などの有害事象は 1.82 %増加し、 NNH は55 であった。 NNT (治療により 1人が利益を得るために必要な人数)と NNH ( 1人 が害を受けるまでに必要な人数)のバランスを考慮すると、リスクとベネフィットが拮抗 しているが、全体としては利益がわずかに上回ることが示された。腎関連事象を含めても ネットベネフィットは維持され、強化血圧管理は有害事象リスクを伴うが心血管イベント 抑制に有効と結論づけられた。 血圧管理の「 Lower the better 」が裏付けられました。しかしながら、強化降圧療法が 心血管イベントを減らす一方で有害事象の増加も無視できません。そのため薬物治療だけ に依存せず、改めて減塩や体重管理など生活習慣の改善を基盤にする重要性を再認識する べきです。患者さんへの教育やサポートを徹底し、自らの行動変容でリスクを減らすこと が今後ますます求められると考えます。 出典: https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS01406736(25)01391-1/abstract
#91.
大動脈二尖弁に対するカテーテル治療の弁種差について from Circulation 本研究は、大動脈二尖弁狭窄に対する経カテーテル大動脈弁置換術( TAVR )で、バ ルーン拡張型弁( BE-THV )と自己拡張型弁( SE-THV )の成績を比較した多施設観察研 究。対象は 1443 例( BE 860 例、 SE 583 例)で、傾向スコア解析等により 3年間追跡。主 要評価項目である死亡または脳卒中の発生率は両群で差がなかった( 3年: 23.7% vs 26.2% 、 HR 0.99, 95%CI 0.65 –1.51 )。一方、 BE-THV は輪部破裂や平均弁圧較差上昇が 多く、 SE-THV は中等度以上の大動脈弁逆流や追加弁留置が多かった。恒久的ペースメー カー植込みは BE-THV 群で有意に少なかった。弁種別で長期予後に大差はなく、個々の解 剖学的特徴に応じた選択が重要であることが示された。 二尖弁狭窄の新たな治療選択肢です。 TAVR 後の管理では、合併症の特徴に応じた経過 観察が重要になります。特に伝導障害による徐脈やペースメーカー植込みの必要性、大動 脈弁逆流の進行は見逃せません。また、高齢患者ではフレイルや心不全再発に直結するた め、体重変動や呼吸状態の変化に注意し、早期介入につなげることが予後改善に有効です。 出典: https://www.ahajournals.org/doi/full/10.1161/CIRCULATIONAHA.1 24.069323
#92.
肥満に対する経口 GLP -1受容体作動薬の効果 from NEJM 糖尿病を有さない過体重・肥満成人を対象に、経口セマグルチド 25mg の効果を検証し た二重盲検無作為化試験。 71 週間追跡し、主要評価は 64 週時の体重変化と 5%以上減量の 達成率。結果、セマグルチド群は平均 − 13.6 %の減量を示し、プラセボ群( − 2.2 %)と の差は顕著で、 10 %以上や15 %以上の減量も有意に多かった。さらに腹囲や血糖、脂質、 炎症マーカーが改善し、前糖尿病例では多くが正常化した。身体機能スコアも向上し、生 活の質改善に寄与。一方で悪心・嘔吐など消化器症状は増加したが、多くは軽度で一過性。 経口投与で強力な減量効果を示した点は臨床上大きな意義を持ち、生活習慣介入に加えた 新たな選択肢となる可能性が示された。 インパクトが大きいですね。経口製剤が注射製剤と同等の体重減少効果を示し、代謝指 標も改善した点は注目されます。生活習慣介入と併用することで、より現実的かつ持続可 能な肥満治療が期待できます。実臨床においても、経口剤という利便性は治療アドヒアラ ンスの向上につながり、肥満症や生活習慣病の予防戦略に大きく貢献するでしょう。現場 で活かしていくべきエビデンスです。 出典: https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2500969
#93.
冠動脈疾患予防における抗血小板剤の比較 from LANCET 冠動脈疾患既往を有する患者を対象に、クロピドグレル単独療法とアスピリン単独療法 を比較したメタ解析。無作為化比較試験 7件・計 28,982 例( PCI または ACS既往が大多 数)を統合し、中央値 2.3 年、最長 5.5 年追跡。主要複合評価項目(心血管死・心筋梗塞・ 脳卒中)はクロピドグレル群で有意に少なく( HR0.86 )、とくに心筋梗塞と脳卒中抑制 が寄与した。死亡や大出血は両群で差がなく、消化管出血も同等。サブグループ解析では 年齢・糖尿病・腎機能障害などによる効果差は認めず一貫して有効性が示された。クロピ ドグレルはアスピリンと比べて長期単独療法で優越性を示し、安価な汎用薬であることか ら広く臨床応用が期待される。 クロピドグレル単独療法は、実臨床でもアスピリンからのシフトが現実味を帯びていま す。特に心筋梗塞や脳卒中の抑制効果は予後改善に直結し、生活習慣病を背景とする患者 群への1次予防段階での適応拡大が期待されますね。一方で CYP2C19 遺伝子多型や薬剤応 答性の個体差をどう管理するかが課題となり、将来的には遺伝子検査などを取り入れた個 別化医療が求められるでしょう。当法人でも議論していきます。 出典: https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS01406736(25)01562-4/abstract