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病態生理で迫る臨床推論 

投稿者プロフィール
わかやま

一宮西

132

2

投稿した先生からのメッセージ

症例形式で楽しめる内容となってます。見ていただいて何か得るものがあれば幸いです。

概要

臨床推論の会で研修医の先生と発表した内容です。

興味深い症例となっておりますので楽しんでいただけますと幸いです。患者様からも了承をいただいた上で個人情報は一部変更して添付させていただいております。

投稿された先生へ質問や勉強になったポイントをコメントしてみましょう!

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テキスト全文

#1.

2025/10/10 2025/6/2 63歳女性 全身の皮疹 〜病態生理で紐解く/脱キーワード診断〜 〜〜 一宮西病院 初期研修医1年 浅井佳人 一宮西病院 総合内科 リウマチ膠原病内科 若山 裕人

#2.

【症例】63歳女性 【主訴】 全身の皮疹 【現病歴】 生来健康で入院歴のない56歳女性 X年4月上旬から顔面・四肢・体幹に紅色皮疹が出現し4月21日に 当院皮膚科を紹介受診。生検を施行し”急性痘瘡状苔癬状粃糠疹” 疑いとして外来加療方針となった。X年5月28日から左眼の疼痛、 充血を自覚し眼科受診し、“ぶどう膜炎”と診断された 全身精査目的にX年6月11日に膠原病内科外来紹介受診となった

#3.

【症例】63歳女性 【既存症】 高血圧 【薬歴】 アムロジピン、ステロイド軟膏 【アレルギー】 なし 【生活歴】 喫煙:45歳から15本/日 飲酒:なし ADL自立

#4.

【症例】63歳、女性 【出身地】 長崎県五島列島 【家族歴】 特記事項なし 【海外渡航歴】 なし 【生活歴】 現在事実婚、離婚歴1回、高校生の孫がいる

#5.

現病歴 X/4/上旬 顔面・四肢・体幹部に紅色皮疹出現 X/4/21 当院皮膚科を紹介受診 皮膚生検施行し、“急性痘瘡状苔癬状粃糠疹” として外来加療方針に X/5/末 左眼の疼痛、充血を自覚し眼科受診 “ぶどう膜炎”と診断された X/6/11 全身精査目的にリウマチ膠原病内科 紹介受診

#6.

【身体診察】X/6/11 リウマチ膠原病外来 • 意識清明 • BT 36.5℃、BP 134/86 mmHg、HR 84回/分 SpO2 97%(room air)、RR 16回/分 • 眼:左眼球結膜充血あり • 頭頸部:頸部圧痛なし、リンパ節触知せず、顎は胸につく • 口腔:粘膜疹なし、口内炎なし • 胸部:心雑音なし、呼吸音清、左右差なし • 腹部:平坦、軟、腸雑音30秒間で5回低張な腸雑音聴取 • 鼠径部:リンパ節触知せず • 皮膚:全身に紅色の5-10mm大の丘疹散在、皮膚硬化なし • 四肢:全身関節腫脹なし

#7.

【身体診察】X/6/11 リウマチ膠原病外来 顔面・体幹・四肢に紅色丘疹多発、一部痂疲化し掻痒感を伴う

#8.

【血液検査】X/6/11 リウマチ膠原病外来 WBC Neut Eosin Bas Lymph Mono Hb MCV Plt 7900 /μL 69.9 % % 1.3 % 0.6 21.5 % % 6.7 12.7 g/dL 88.5 fL 38.4万 /μL TP Alb AST ALT ALP LDH BUN Cr Na K Cl Ca CRP 8.2 2.9 19 16 185 138 8.0 0.58 140 3.5 105 9.5 1.63 g/dL g/dL IU/L IU/L IU/L IU/L mEq/L mg/dL mg/L mEq/L mEq/L mg/dL mg/dl

#9.

所見まとめ 入院歴のない63歳女性 2 2か月前からの顔面・四肢・体幹部に紅色丘疹多発 一部痂疲化し掻痒感を伴う 2週間前からの左眼の疼痛、充血→ぶどう膜炎

#10.

鑑別や診断方法は?

#11.

鑑別診断と診断方法は? 入院歴のない56歳女性 2か月前から顔面・四肢・体幹部に紅色丘疹が多発、一部痂疲化し掻痒感を伴う 2週間前からの左眼の疼痛、充血→ぶどう膜炎 X/5/末 X/4/上旬 顔面・四肢・体幹部に掻痒伴う紅斑出現 X/4/21 当院皮膚科を紹介受診 皮膚生検施行し、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹 として外来加療方針に 左眼の疼痛、充血を自覚し眼科受診 “ぶどう膜炎”と診断された X/6/11 全身精査目的にリウマチ膠原病内科 紹介受診

#12.

【考察】ぶどう膜炎に関して ⊃前部 ⊃中間部 ⊃後部 ⊃汎部

#13.

【考察】#2 ぶどう膜炎に関して ⊃前部 ⊃中間部 ⊃後部 ⊃汎部 ⊃感染 ⊃梅毒, 結核, サイトメガロ, HTLV-1 ⊃自己免疫 ⊃サルコイドーシス, ベーチェット病, Vogt-小柳-原田病 ⊃薬剤 ⊃TNF-α阻害薬, 免疫チェックポイント阻害薬, ビスホスホネート製剤等 眼だけでは、感染性か非感染性かを見極めることは眼科医でもほぼ不可能であり、眼以外の情報が診断の鍵になる

#14.

【考察】#2 ぶどう膜炎に関して

#15.

【血液検査】X/6/11 リウマチ膠原病外来 TPHA RPR HIV HTLV-1 淋菌・クラミジア ACE TSH Free T4 FER CCP抗体 RF PR3-ANCA MPO-ANCA 23.3(+) 167.6(+) (-) (-) (-) 11.7 0.82 0.76 105 <0.6 5 <1.0 <1.0

#16.

プロブレムリスト #1 全身性紅色丘疹→梅毒 #2 急性眼充血症→ぶどう膜炎(#1)

#17.

【考察】#2 ぶどう膜炎に関して 梅毒(網膜脈絡炎・網膜血管炎)

#18.

その後の経過① X/5/末 X/4/上旬 顔面・四肢・体幹部に掻痒伴う紅斑出現 X/4/21 当院皮膚科を紹介受診 皮膚生検施行し、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹 として外来加療方針に X/6/17 左眼の疼痛、充血を自覚し眼科受診 “ぶどう膜炎”と診断された X/6/11 全身精査目的にリウマチ膠原病内科 紹介受診 梅毒の診断 外来 後頸部の違和感出現 数回の嘔吐あり

#19.

【神経所見】X/6/17 【脳神経】 視力低下なし、複視なし Ⅱ: 視野狭窄なし、瞳孔 3mm/3mm、左右差なし Ⅲ - Ⅵ : 対光反射両側迅速、眼球運動正常 Ⅶ : 両側頬ふくらませ可能、口すぼめ可能、額のしわ寄せ可能 Ⅸ : カーテン徴候なし Ⅹ - Ⅻ :舌運動可能、パタカ繰り返すこと可能 【運動系】 • Barre徴候陰性、振戦なし • MMT : 三角筋 5/5 胸鎖乳突筋 5/5 上腕二頭筋 5/5 上腕三頭筋 5/5 腸腰筋 5/5 大腿四頭筋 5/5 下腿三頭筋 5/5 • Hoffmann、Babinski陰性、歩行正常

#20.

この時点での対応は?

#21.

この時点での対応は? X/5/末 X/4/上旬 顔面・四肢・体幹部に掻痒伴う紅斑出現 X/4/21 当院皮膚科を紹介受診 皮膚生検施行し、急性痘瘡状苔癬状粃糠疹 として外来加療方針に X/6/17 左眼の疼痛、充血を自覚し眼科受診 “ぶどう膜炎”と診断された X/6/11 全身精査目的にリウマチ膠原病内科 紹介受診 全身の丘疹 →梅毒の診断 外来 後頸部の違和感出現 数回の嘔吐あり

#22.

その後の経過① X/6/17 後頸部の違和感出現 数回の嘔吐あり X/6/18 総合内科入院。PCG1日2400万単位開始 腰椎穿刺施行

#23.

【腰椎穿刺】6/19 初圧 色調 キサントクロミ― 性状 細胞数 単核球% 多型核球% 髄液糖 髄液μTP 髄液Cl 髄液LD 髄液CK 9.5cmH2O 無色 (-) 透明 93 55% 45% 48 79 120 21 <3 RPR TPHA 1未満 320倍

#24.

梅毒の概要 感染性 時期 第1期梅毒 感染後3週後 (潜伏期間:10〜90日) 局所感染 無痛性陰部潰瘍 早期 1-2年以内 第2期梅毒 1期から3〜6週 性行為感染 母子感染 全身症状(多彩) 皮疹・脱毛・リンパ節腫脹 晩期 潜伏梅毒 症状 早期神経梅毒 いづれの時期もありうる 自然経過時間 早期:感染1年以内 無症状 後期:感染1年以降 母子感染 数年以上の経過 なし 後期 数十年後 第3期梅毒 心血管梅毒 ゴム腫 後期神経梅毒 進行麻痺・脊髄癆 N Engl Med 2020; 382: 845-854から改変

#25.

梅毒の概要 第2期梅毒 第1期梅毒 第3期梅毒 Syphilis(Treponema pallodum), Mandell et al, 237, 2865-2892. e8

#26.

神経梅毒の概要 無治療の場合40%が中枢神経に播種、そのうち半数が髄膜炎症状 臨床像は無菌性髄膜炎、脳神経麻痺、認知症、歩行障害等 眼合併症(ぶどう膜炎や網膜炎)では中枢神経合併に注意する 梅毒のどの時期でも生じえる レジデントのための神経診療

#27.

神経梅毒の分類 区分 病型 無症候性神経梅毒 症状・特徴 無症候性髄膜炎 自覚症状はなく、所見は髄液細胞数増加のみ HIV感染者で特に多い 髄膜性・髄膜血管性 頭痛・髄膜刺激症状・脳神経麻痺・視力障害など 髄膜血管梅毒では脳梗塞や脊髄症を伴う 原発感染から1-10年後に発症することが多い 早期 1-2年以内 有症候性神経梅毒 晩期 自然経過時間 進行麻痺 大脳皮質変性型 精神病・うつ病・認知症・誇大妄想・人格変化など 前頭側頭型認知症に類似する 後索・後根障害型 運動失調(Romberg徴候)・Argyll Robertson瞳孔 感覚性歩行障害(stamp and stick歩行)・深部痛・Charcot関節 後期 数十年後 脊髄癆 Neurosyphilis N Engl J Med 2019; 381: 13

#28.

眼梅毒の概要 多くは無症候性神経梅毒の一部として生じるが単独の表現型もある 虹彩毛様体炎(前部ぶどう膜炎)、後部・汎ぶどう膜炎が起こる 強膜上層炎・硝子体炎・網膜炎・視神経乳頭炎・網膜剥離等 鑑別としては結核・関節リウマチ・サルコイドーシス トキソプラズマ症・ヒストプラズマ症・トキソカラ症等 Syphilis(Treponema pallodum), Mandell et al, 237, 2865-2892. e8

#29.

神経梅毒の検査・診断 海外でゴールドスタンダードのVDRL検査は日本ではできない 確立した診断方法が存在せず、個々の症例ごとの判断となる 髄液の炎症所見(細胞数増加・蛋白上昇)は非特異的であるため その他の髄液検査項目と組み合わせて総合的に判断する 治療方法が異なるため、判断に迷うときは神経梅毒として治療する

#30.

神経梅毒の検査・診断 日本で測定できる髄液RPRは髄液VDRLと 比較して特異度が低く使用が難しい 髄液FTA-ABSは感度が高く、除外には有用 髄液トレポネーマ検査(TPHA・FTA-ABS)は 持続的に陽性、治療後も長期に残る 非トレポネーマ抗体: RPR法、VDRL法 トレポネーマ抗体: TPHA法、FTA-ABS法 Neurosyphilis N Engl J Med 2019; 381: 13

#31.

神経梅毒の腰椎穿刺適応 HIV感染関係なく初期梅毒にルーチンの腰椎穿刺は推奨されない 晩期梅毒においてもスクリーニング目的での腰椎穿刺は推奨されない 治療中で血清学的反応不良がある患者では検討する 眼梅毒の30%、耳梅毒の90%が髄液正常であり必須ではない Matthew M Hamill, Khalil G Ghanem, Susan Tuddenham, State-of-the-Art Review: Neurosyphilis, Clinical Infectious Diseases, Volume 78, Issue 5, 15 May 2024, Pages e57–e68

#32.

神経梅毒の腰椎穿刺適応 神経学的徴候や症状があるか? Yes 腰椎穿刺 心血管梅毒or ゴム腫性梅毒? No RPR/VDRLの力価が4倍以 上の持続的上昇があるか? Yes 血清学的反応不良があるか? Yes Yes 腰椎穿刺 再感染か? 再感染か? Yes 病期に応じた治療を行う 病期に応じた治療を行う No 腰椎穿刺を検討 Yes No 初期治療から適切な期間が 経過しているか? Yes RPR/VDRL力価が 1:32を超えているか? Yes ベンジル・ペニシリンG240万単位を 3回投与+腰椎穿刺を検討 No RPR/VDRLをフォロー しながら経過観察 No 臨床的に経過観察 フォローできない時はベンジル・ペニシリンG 240万単位を3回投与 +腰椎穿刺を検討 Matthew M Hamill, Khalil G Ghanem, Susan Tuddenham, State-of-the-Art Review: Neurosyphilis, Clinical Infectious Diseases, Volume 78, Issue 5, 15 May 2024, Pages e57–e68

#33.

梅毒の治療 病期 1期梅毒・2期梅毒・早期潜伏梅毒 後期潜伏梅毒・感染時期不明の潜伏梅毒・ 晩期 3期梅毒 自然経過時間 神経梅毒 治療 PCG 240万単位 1回筋注 PCG 240万単位 1週間開けて計3回筋注 PCG 2400万単位/日 Neurosyphilis N Engl J Med 2019; 381: 1358-1363.

#34.

梅毒の治療 PCGを240万単位一回筋注することで3~4週に わたりトレポネーマ殺菌効果が維持される 病期 1期梅毒・2期梅毒・ 早期潜伏梅毒 後期潜伏梅毒・感染時期不明の 潜伏梅毒・3期梅毒 神経梅毒 治療 PCG 240万単位 1回筋注 PCG 240万単位 1週間開けて計3回筋注 PCG 2400万単位/日 神経症状、眼症状のない早期梅毒ではHIV感染の有無に 関わらず、PCG240万単位1回筋注が推奨 原発・続発・早期潜伏梅毒の患者に過去90日以内に 暴露した者は、血清反応が陰性で感染所見が認められ なくても、推定的あるいは疫学的治療を行う 耳梅毒や眼梅毒はしばしば神経梅毒を伴うため、 腰椎穿刺の結果に関わらず神経梅毒として治療すべき Syphilis(Treponema pallodum), Mandell et al, 237, 2865-2892. e8

#35.

梅毒の治療判定 治療効果判定手段として非トレポネーマの抗体価推移のみ利用可能 治療後1年以内に自動化法で1/2に低下すれば早期梅毒の適切な反応 適切な時期に抗体価低下が認められない場合は神経梅毒の除外目的に 腰椎穿刺を考慮すべき Syphilis(Treponema pallodum), Mandell et al, 237, 2865-2892. e8

#36.

その後の経過① X/6/17 外来 後頸部の違和感出現 数回の嘔吐あり X/6/19 38-39℃の発熱、頭痛・嘔吐あり X/6/18 入院 総合内科入院。PCG1日2400万単位開始 腰椎穿刺施行

#37.

その後の経過① X/6/17 外来 後頸部の違和感出現 数回の嘔吐あり X/6/19 38-39℃の発熱、頭痛・嘔吐あり X/6/18 入院 総合内科入院。PCG1日2400万単位開始 腰椎穿刺施行 X/6/23 皮疹は改善傾向、発熱持続 発熱・頭痛で食事がとれない

#38.

【血液検査】X/6/23 WBC Neut Eosin Bas Lymph Mono Hb MCV Plt 5100 48.0 4.5 1.0 39.0 7.5 13.2 87.3 26.5万 /μL % % % % % g/dL fL /μL TP Alb AST ALT ALP LDH BUN Cr Na K Cl Ca CRP 7.7 2.7 16 12 167 138 6.4 0.55 129 4.2 96 9.5 1.36 g/dL g/dL IU/L IU/L IU/L IU/L mEq/L mg/dL mg/L mEq/L mEq/L mg/dL mg/dl PT 13.3 PT活性 75 PT-INR 1.15 APTT 35.4 % sec

#39.

【尿検査・その他】X/6/23 尿一般 色調 尿比重 尿浸透圧 尿蛋白定性 尿糖定性 尿ウロビリ 尿ケトン 尿潜血定性 淡黄色 1.012 367 (-) (-) Normal (-) (-) 尿沈査 沈査RBC 沈査WBC 沈査扁平 沈査細菌 硝子円柱 尿生化学 U-Na実測値 U-K実測値 U-Cl実測値 U-CRE実測値 1>HPF 1>HPF 1>HPF (-) 1>LPF 103 48.0 98 61.93 血液培養 陰性 尿培養 陰性 COVID 陰性

#40.

プロブレムリスト #1 全身性紅色丘疹→梅毒 #2 急性眼充血症→ぶどう膜炎(#1) #a 発熱症(6/19-)

#41.

鑑別診断と診断方法は?

#42.

鑑別診断と診断方法は? #1 全身性紅色丘疹→梅毒 #2 急性眼充血症→ぶどう膜炎(#1) #a 発熱症(6/19-) X/6/17 外来 後頸部の違和感出現 数回の嘔吐あり X/6/19 38-39℃の発熱、頭痛・嘔吐あり X/6/18 入院 総合内科入院。PCG1日2400万単位開始 腰椎穿刺施行 X/6/23 皮疹は改善傾向、発熱持続 発熱・頭痛で食事がとれない

#43.

この時点での発熱鑑別 1. Jarish-Herxheimer反応 2. 薬剤熱 3. 院内発熱

#44.

発熱鑑別①Jarish-Herxheimer反応 ペニシリンなどの抗生剤投与直後に生じる急性の炎症反応である メカニズムは不明だが30%の患者に起きうる 治療開始後6~8時間以内に出現し、12~24時間程度で自然改善する 敗血症に類似した全身反応で発熱、悪寒、筋肉痛、関節痛を伴う 2期梅毒で特に頻度が高いが、すべてのステージで生じうる Syphilis(Treponema pallidum) Mandell, Doglas and Bennet's Principles and practive of Infectious Disease, 237, 2865-2862. e8

#45.

発熱鑑別②薬剤熱 初回投与後7-10日、再投与では24-72時間以内に発症する 時に好酸球増多や発疹を伴う 多くの場合薬剤中止後24-72時間で解熱する 発熱の主体が炎症性サイトカインで比較的徐脈になることもある

#46.

この時点での発熱鑑別 1. Jarish-Herxheimer反応 通常24時間以内に解消されるため可能性は低い 2. 薬剤熱 投与翌日の発症で可能性は低い 3. 院内発熱 血培、尿培陰性などから可能性は低い

#47.

【頭部造影MRI】X/6/23 とある疾患疑って施行 トルコ鞍内に18×10×14mm大のリング状造影病変あり(赤矢印) 下垂体柄から漏斗部まで造影効果波及あり、視交叉にFLAIR高信号あり(赤丸) 下垂体後葉の高信号は保たれている(青矢印)

#48.

【追加採血6/23】 GH ソマトメジンC LH FSH ACTH 早朝コルチゾール DHEA-S プロラクチン 抗利尿ホルモン TSH Free T3 Free T4 2.93 69 1.00 13.6 5.1 3.52 12 59.0 1.2 0.23 1.99 0.56 ng/ml mlU/ml mlU/ml pg/ml μg/dl μg/dl ng/ml pg/ml μIU/ml pg/ml ng/dl レニン活性 血漿アルドステロン AFP プロゲステロン IgG IgG4 T-SPOT 0.7 ng/ml/hr 27.4 pg/ml 3.7 <0.05 ng/ml 2430 mg/dl 12.1 mg/dl (-)

#49.

迅速ACTH負荷試験(X/6/27) 【負荷試験】3者負荷試験(X/6/30) 負荷前 ACTH 頂値 26.7 9.31 18.4 頂値 >18 μg/dL → 反応あり LH 3.34 17.29 前値5倍 → 反応あり FSH 23.09 43.39 前値1.5倍→ 反応あり TSH 1.61 6.38 頂値 >6μU/mL → 反応あり PRL 44.1 139 前値2倍→ 反応あり ACTH 35.3 90.1 前値2倍 → 反応あり コルチゾール 13.9 17.4 頂値 <18 μg/dL →わずかに低反応 コルチゾール

#50.

診断 検査 低Na血症+頭部造影MRI+負荷試験 症状 持続する発熱・嘔吐 診断:梅毒性下垂体炎+副腎不全+甲状腺機能低下

#51.

発熱鑑別③副腎不全 意欲低下・倦怠感・悪心・嘔吐・食欲低下など非特異的症状が多い 不定愁訴の検索で原因不明の場合、甲状腺機能異常と並んで疑うべき疾患 生理学的検査では低Na血症を85-90%認める 疑った時点で治療開始前のコルチゾールとACTHを測定する 副腎クリーゼが疑われる場合は献体採取後、躊躇なく治療開始する Neurosyphilis N Engl J Med 2019; 381: 1358-1363.

#52.

副腎不全症の診断フローチャート 患者に副腎不全が疑われる微徴・症状がある 倦怠感・吐き気・嘔吐・食欲不振・体重減少・腹痛・筋肉痛・関節痛・色素沈着・起立性低血圧・低Na 循環動態の不安定性評価 循環動態不安定あり すぐに高用量(例: ヒドロコルチゾン100mg IV投与) 循環動態不安定性なし 早朝コルチゾール・ACTH・DHESを評価 コルチゾール 5-10μg/dL コルチゾール<5μg/dL ACTH高値 ACTH正常or低値 DHEAS低値or 基準範囲下限 DHEAS低値or 基準範囲下限 ACTH低値or正常範囲内 DHEAS低値or基準範囲下限 臨床判断 原発性副腎不全 続発性副腎不全or ステロイド性副腎不全 ACTH正常-高値 ACTH正常範囲 DHEAS中-高値 DHEAS正常範囲 早期ホルモン(コルチゾール・ACTH・ DHEAS)を再検orACTH刺激試験を実施 コルチゾール<5μg/dL or 反応不十分 コルチゾール>10μg/dL コルチゾール>10μg/dL or 反応適切 臨床判断 副腎不全の可能性は低い Adrenal Insuffiviency in Adults: A review, endovrinology, JAMA, JAMA network

#53.

副腎不全症の診断フローチャート 患者に副腎不全が疑われる微徴・症状がある 倦怠感・吐き気・嘔吐・食欲不振・体重減少・腹痛・筋肉痛・関節痛・色素沈着・起立性低血圧・低Na 循環動態の不安定性評価 循環動態不安定あり すぐに高用量(例: ヒドロコルチゾン100mg IV投与) 循環動態不安定性なし 早朝コルチゾール・ACTH・DHESを評価 コルチゾール 5-10μg/dL コルチゾール<5μg/dL ACTH高値 ACTH正常or低値 DHEAS低値or 基準範囲下限 DHEAS低値or 基準範囲下限 ACTH低値or正常範囲内 DHEAS低値or基準範囲下限 臨床判断 原発性副腎不全 続発性副腎不全or ステロイド性副腎不全 コルチゾール>10μg/dL ACTH正常-高値 ACTH正常範囲 DHEAS中-高値 DHEAS正常範囲 早期ホルモン(コルチゾール・ACTH・ DHEAS)を再検orACTH刺激試験を実施 コルチゾール<5μg/dL or 反応不十分 コルチゾール>10μg/dL or 反応適切 臨床判断 副腎不全の可能性は低い Adrenal Insuffiviency in Adults: A review, endovrinology, JAMA, JAMA network

#54.

梅毒性下垂体炎の症例報告 • 28歳男性 • 約1年前に性器硬性下疳の既往 • 1か月間持続する頭痛 Bricaire L, et al, The Great Imitator in Endocrinology: A Painful Hypophysitis Mimicking a Pituitary Tumor. J Clin Endocrinol Metab. 2015 Aug;100(8):2837-40. doi: 10.1210/jc.2015-2049. Epub 2015 Jun 1.

#55.

梅毒性下垂体炎の症例報告 CTで下垂体腺腫疑い ACTH刺激テストとメチラポン負荷試験で 下垂体性の副腎機能低下認めた 甲状腺機能低下もあり →経蝶形骨洞手術、病理では下垂体炎 病理で多数の梅毒トレポネーマの存在確認 →梅毒性下垂体炎+副腎不全+甲状腺機能低下 術後1か月でも軽度頭痛継続 診察時に舌の紅色斑と手掌・足底の丘疹あり →梅毒の診断 PCG14日間で頭痛・皮疹改善 ヒドロコルチゾンとレボチロキシン補充で甲状腺 機能は2週間、副腎機能は3か月で改善 Bricaire L, et al, The Great Imitator in Endocrinology: A Painful Hypophysitis Mimicking a Pituitary Tumor. J Clin Endocrinol Metab. 2015 Aug;100(8):2837-40. doi: 10.1210/jc.2015-2049. Epub 2015 Jun 1.

#56.

プロブレムリスト #1 #2 #3 #a #b 全身性紅色丘疹→梅毒 急性眼充血症→ぶどう膜炎(#1) 急性下垂体炎(#1) 発熱症→下垂体性副腎不全(#3) 低Na血症→尿中排泄性低Na血症(#a)

#57.

今回の症例のまとめ 全身性紅色丘疹 眼痛・充血でぶどう膜炎と診断 梅毒と診断しPCG開始 day35 day35 MRIで下垂体炎 →2次性副腎不全 発熱・頭痛・嘔吐出現 day63 day63 コルチゾール補充で副腎不全改善 下垂体腫瘤改善傾向 PCG投与完遂

#58.

今回の症例のまとめ 2400万U/日 ヒドロコルチゾン 20mg 14 15 9 3000mg/日 アモキシシリン 21 頭痛 臨床 症状 頭部MRI (℃) 145 38.5 day35 食事量 day 99 day63 膿瘍径 未検査 内分泌学的検査 63 ~ ~ 7 5 10mg ~ ~ 3 1 30mg ベンジルペニシリン 未検査 (mL) 143 Na 38.4 136 138 142 142 day7 day42 day99 IGF-1 (ng/mL) 69 119 100 LH (mIU/mL) 1.00 16.22 17.69 FSH (mIU/mL) 13.64 43.55 55.29 ACTH (pg/mL) 5.1 20.7 15.6 コルチゾール (μg/dL) 3.52 12.10 7.05 TSH (μIU/mL) 0.23 2.37 1.28 115 35.5 F-T4 (ng/dL) 0.56 0.39 0.91 35 AVP (pg/mL) 1.2 0.5 1.0 140 38 135 37.5 130 37 125 36.5 120 110 36 体温 37.1 37.7 132 127 129 36.7 36.6 36.8 36.6 122 36.7 36.9

#59.

その後の経過 day35 day63

#60.

今回の症例まとめ PCG投与開始 下垂体炎 神経梅毒 局所炎症反応↑↑ 下垂体機能低下

#62.

一宮西病院総合内科・リウマチ膠原病内科 【その後の経過】 • 主に感染症、複数の臓器障害を抱えた複雑症例、リウマチ膠原病疾患、診断不明症例 などを担当。 • 内科医としてのベース作りと並行してリウマチ膠原病の専門性、基本的な感染症診 療を学べる。 • スタッフ4名(リウマチ科・血液内科・循環器・感染症内科出身)、専攻医2名、初期 研修医ローテーション2-5人 • 2チーム制、病棟合計患者数平均50-70人/日 • 提携病院は、亀田総合病院、麻生飯塚病院、東京医療センター、倉敷中央病院、松波総 合病院、帝京大学ちば総合医療センター、豊田地域医療センター、安房地域医療セン ター、栃木医療センター等。希望に合わせて提携先増やしていくことも可能。 • Teamsの学びチャンネルにて毎日論文の情報共有あり • 最近は松波総合病院との合同勉強会等課外活動も開始

#63.

一宮西病院総合内科・リウマチ膠原病内科 【その後の経過】

#64.

一宮西病院総合内科・リウマチ膠原病内科 【その後の経過】 舌咽神経痛 肝膿瘍    ギランバレー症候群  化膿性関節炎  ネフローゼ症候群  カンピロバクター回盲部炎  気道穿孔による縦隔炎  侵襲性肺アスペルギルス症  心臓内MTXリンパ腫  GBS髄膜炎  irAEの副腎不全と関節痛  STSS  仙腸関節炎  C. acnes心内膜炎  腹腔内膿瘍  IgG4関連疾患  側頭動脈炎  血管内リンパ腫  IgA血管炎  ANCA関連血管炎  感染性心内膜炎  眼窩隔壁蜂窩織炎  CMML  ツツガムシ病  リステリア髄膜炎  結節性紅斑  反応性関節炎  SLE 心嚢液貯留  乾癬性関節炎  強皮症 など

#65.

おすすめ松波総合病院総合内科YouTube: 【臨床推論】 症例へのご質問・後期研修希望・質問はFacebookかメールでどうぞ(若山) • ご気軽にご連絡ください。(Email:sss.uni.ub@gmail.com) • 病態生理から考えられるようになりたい若手の先生ぜひおまちしています • 当院の内科専攻医用ホームページです

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