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PKPDから考える 周術期予防的抗菌薬のまとめ

投稿者プロフィール
三谷雄己
Award 2023 受賞者

県立広島病院

41,513

154

概要

ルーチン対応となりやすい周術期抗菌薬について

PK/PD理論や血中濃度の観点から学ぶスライドを作成しました。

各症例ごとにテーラーメイドの抗菌薬管理ができるよう、核となる基礎知識を身につけましょう

本スライドの対象者

研修医/専攻医/専門医

投稿された先生へ質問や勉強になったポイントをコメントしてみましょう!

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テキスト全文

周術期予防的抗菌薬の総論と目的

#1.

-

#2.

周術期予防的抗菌薬の総論 ●目的は手術部位感染(SSI)発生率の減少  ・組織中で十分な殺菌作用を示す抗菌薬濃度の維持  ・感染を引き起こさないレベルまで細菌量をコントロール  ※完全な無菌化を目指さない!   ●切開部位・皮膚の消毒・確実な清潔操作  術後管理など多角的なSSI予防策の1つにすぎない 手術部位や症例に応じて テーラーメイドな投与計画を設計 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

抗菌薬選択・投与タイミングの目次

#3.

目次 ①抗菌薬選択 ②投与タイミング ③投与量/投与間隔 引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版

#4.

目次 ①抗菌薬選択 ②投与タイミング ③投与量/投与間隔 引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版

手術別の抗菌薬選択とその理由

#5.

引用)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年. 手術別の術中汚染菌と抗菌薬の選択

#6.

主な抗菌薬① セファゾリン(CEZ) ●基本的には皮膚の常在菌で 皮膚軟部組織感染症の主要な原因菌 黄色ブドウ球菌とレンサ球菌をカバー ●嫌気性菌群の関与がある手術部位(口腔・大腸など) かどうかを考慮しカバーを拡大 ➡CEZ以外の抗菌薬を選択 ※CEZは耐性のない腸内細菌科(大腸菌など)の一部までカバー可能 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#7.

主な抗菌薬② セフメタゾール(CMZ) ●下部消化管手術では腸管内に存在する Bacteroidesや腸内細菌科のカバーが必要 ※CEZとメトロニダゾール(MNZ)の併用も可 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#8.

主な抗菌薬③ スルバクタム/アンピシリン(SBT/ABPC) ●口腔や気管が開放される頭頸部・呼吸器手術では 口腔内の嫌気性菌群 (Peptococcus・Peptostreptococcusなど)もカバー 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

Βラクタム系アレルギーと代替抗菌薬

#9.

Βラクタム系アレルギーの症例は… ●セファゾリンの代替➡クリンダマイシン ・腸内細菌科に無効(上部消化管手術など) ➡ゲンタマイシンなどアミノグリコシドを併用 ・嫌気性菌群へのカバー不十分 ➡メトロニダゾールを検討 ※クリンダマイシンの代わりにグリコペプチドが用いられる場合も 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#10.

鼻腔培養でMが出てます… 【グリコペプチド系抗菌薬追加の適応考慮】 ●MRSA保菌者(鼻腔培養など) ●手術部位からMRSAが検出 ●β-ラクタム薬アレルギー患者 インプラント挿入術などにおいて 同一施設でMRSAによるSSIの集団発生が 認められた場合も検討 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

周術期抗菌薬選択の注意点と目次

#11.

周術期予防的抗菌薬選択の注意点 ●完璧なカバーを目指した広域抗菌薬は避ける ●手術部位から常在細菌以外の細菌が検出 ➡その細菌に活性を有する抗菌薬を選択 ●術前1か月以内に抗菌薬使用歴 ➡抗菌薬耐性獲得の関与も検討 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#12.

目次 ①抗菌薬選択 ②投与タイミング ③投与量/投与間隔 引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版

投与タイミングとVCMの注意点

#13.

投与タイミング ●執刀時点で十分な組織中濃度となるように ●基本的には切開の1時間前以内に投与を開始1) ●フルオロキノロン系・バンコマイシンは 副作用を避けるため120分以内に投与を開始2) 1)日本外科感染症学会 消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン作成委員会. 消化器外科SSI予防のための周術期管理2018. 診断と治療社, 2018; 78-9. 2)Bratzler DW, et al. Am J Health Syst Pharm 2013; 70: 195-283.

#14.

VCM:合併症を考慮して60分以上かけて red neck 症候群 ●VCM急速投与➡ヒスタミン遊離 頸部・顔面・体幹皮膚の発赤や掻痒、低血圧を惹起 ●チオペンタールなどの反応との相互作用として出現 全身麻酔の1時間前には投与終了を ●テトラサイクリンでは生じにくい1) ➡安全性や利便性からこちらを好む医師も多い 1)Hepper DL, et al. Anesth Aanlog 2003;97:1381-95.

#15.

VCM:組織移行性も考慮して60分以上かけて Cmaxに到達した時点は組織濃度と平衡関係が成立する前 引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版

整形外科手術における抗菌薬投与

#16.

整形外科領域の ターニケットを用いた手術の場合… ●駆血により手術部位への動脈血流は阻害 ➡事前に抗菌薬投与を完了させる ●ターニケットを加圧する5-10分前に 抗菌薬の投与を終了することを推奨 引用)Schweizer ML, et al. JAMA 2015; 313: 2162-71.

#17.

目次 ①抗菌薬選択 ②投与タイミング ③投与量/投与間隔 引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版

#18.

引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MSI出版 PK/PD理論を意識した投与計画

抗菌薬の投与量と間隔の考慮

#19.

抗菌薬の投与量 引用)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年. SSI予防目的であるが治療量投与が推奨

#20.

肥満患者の場合… ●肥満症例においては分布容量が大きく 血中濃度が上昇しない可能性あり ●CEZは体重80kg以上では2g 120kg以上では3g投与を推奨 引用)Schweizer ML, et al. JAMA 2015; 313: 2162-71.

#21.

肝腎機能障害がある場合… ●腎・肝障害があっても術前単回投与であれば 抗菌薬の投与量を変更する必要はない 引用)Bratzler DW, et al. Am J Health Syst Pharm 2013; 70: 195-283. ●有効血中濃度の達成に 薬物の代謝・排泄機能は直接関連しない ●腎機能低下がある場合は投与間隔を延長

#22.

抗菌薬の投与間隔 引用)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

血中濃度推移と投与方法の設計

#23.

血中濃度推移のイメージまとめ 体重50kg 腎機能正常 腎機能低下➡投与間隔延長 体重90kg 腎機能正常 体重90kg 1回投与量2g 引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版

#24.

引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版 参考:ワンショットは可能…? ●VCMは副作用の観点から× ●CEZは理論上可能  ➡消失時間は早くなることに注意… ●医療安全の観点からもCPのように決まった  投与方法やタイミングを設計しておくことが大切

周術期抗菌薬の重要なメッセージ

#25.

Take home message ●周術期予防的抗菌薬の目的はSSIの予防! ●手術部位に合わせた周術期抗菌薬選択を! ●アレルギーや腎機能、体重など症例に応じて  周術期投与計画を設計する!


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