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PKPDから考える 周術期予防的抗菌薬のまとめ

投稿者プロフィール
三谷雄己
Award 2023 受賞者

県立広島病院

43,279

156

概要

ルーチン対応となりやすい周術期抗菌薬について

PK/PD理論や血中濃度の観点から学ぶスライドを作成しました。

各症例ごとにテーラーメイドの抗菌薬管理ができるよう、核となる基礎知識を身につけましょう

本スライドの対象者

研修医/専攻医/専門医

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テキスト全文

周術期予防的抗菌薬の総論と目的

#1.

-

#2.

周術期予防的抗菌薬の総論 ●目的は手術部位感染(SSI)発生率の減少  ・組織中で十分な殺菌作用を示す抗菌薬濃度の維持  ・感染を引き起こさないレベルまで細菌量をコントロール  ※完全な無菌化を目指さない!   ●切開部位・皮膚の消毒・確実な清潔操作  術後管理など多角的なSSI予防策の1つにすぎない 手術部位や症例に応じて テーラーメイドな投与計画を設計 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

抗菌薬選択・投与タイミングの目次

#3.

目次 ①抗菌薬選択 ②投与タイミング ③投与量/投与間隔 引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版

#4.

目次 ①抗菌薬選択 ②投与タイミング ③投与量/投与間隔 引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版

手術別の抗菌薬選択とその理由

#5.

引用)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年. 手術別の術中汚染菌と抗菌薬の選択

#6.

主な抗菌薬① セファゾリン(CEZ) ●基本的には皮膚の常在菌で 皮膚軟部組織感染症の主要な原因菌 黄色ブドウ球菌とレンサ球菌をカバー ●嫌気性菌群の関与がある手術部位(口腔・大腸など) かどうかを考慮しカバーを拡大 ➡CEZ以外の抗菌薬を選択 ※CEZは耐性のない腸内細菌科(大腸菌など)の一部までカバー可能 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#7.

主な抗菌薬② セフメタゾール(CMZ) ●下部消化管手術では腸管内に存在する Bacteroidesや腸内細菌科のカバーが必要 ※CEZとメトロニダゾール(MNZ)の併用も可 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#8.

主な抗菌薬③ スルバクタム/アンピシリン(SBT/ABPC) ●口腔や気管が開放される頭頸部・呼吸器手術では 口腔内の嫌気性菌群 (Peptococcus・Peptostreptococcusなど)もカバー 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

Βラクタム系アレルギーと代替抗菌薬

#9.

Βラクタム系アレルギーの症例は… ●セファゾリンの代替➡クリンダマイシン ・腸内細菌科に無効(上部消化管手術など) ➡ゲンタマイシンなどアミノグリコシドを併用 ・嫌気性菌群へのカバー不十分 ➡メトロニダゾールを検討 ※クリンダマイシンの代わりにグリコペプチドが用いられる場合も 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#10.

鼻腔培養でMが出てます… 【グリコペプチド系抗菌薬追加の適応考慮】 ●MRSA保菌者(鼻腔培養など) ●手術部位からMRSAが検出 ●β-ラクタム薬アレルギー患者 インプラント挿入術などにおいて 同一施設でMRSAによるSSIの集団発生が 認められた場合も検討 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

周術期抗菌薬選択の注意点と目次

#11.

周術期予防的抗菌薬選択の注意点 ●完璧なカバーを目指した広域抗菌薬は避ける ●手術部位から常在細菌以外の細菌が検出 ➡その細菌に活性を有する抗菌薬を選択 ●術前1か月以内に抗菌薬使用歴 ➡抗菌薬耐性獲得の関与も検討 参考)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

#12.

目次 ①抗菌薬選択 ②投与タイミング ③投与量/投与間隔 引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版

投与タイミングとVCMの注意点

#13.

投与タイミング ●執刀時点で十分な組織中濃度となるように ●基本的には切開の1時間前以内に投与を開始1) ●フルオロキノロン系・バンコマイシンは 副作用を避けるため120分以内に投与を開始2) 1)日本外科感染症学会 消化器外科SSI予防のための周術期管理ガイドライン作成委員会. 消化器外科SSI予防のための周術期管理2018. 診断と治療社, 2018; 78-9. 2)Bratzler DW, et al. Am J Health Syst Pharm 2013; 70: 195-283.

#14.

VCM:合併症を考慮して60分以上かけて red neck 症候群 ●VCM急速投与➡ヒスタミン遊離 頸部・顔面・体幹皮膚の発赤や掻痒、低血圧を惹起 ●チオペンタールなどの反応との相互作用として出現 全身麻酔の1時間前には投与終了を ●テトラサイクリンでは生じにくい1) ➡安全性や利便性からこちらを好む医師も多い 1)Hepper DL, et al. Anesth Aanlog 2003;97:1381-95.

#15.

VCM:組織移行性も考慮して60分以上かけて Cmaxに到達した時点は組織濃度と平衡関係が成立する前 引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版

整形外科手術における抗菌薬投与

#16.

整形外科領域の ターニケットを用いた手術の場合… ●駆血により手術部位への動脈血流は阻害 ➡事前に抗菌薬投与を完了させる ●ターニケットを加圧する5-10分前に 抗菌薬の投与を終了することを推奨 引用)Schweizer ML, et al. JAMA 2015; 313: 2162-71.

#17.

目次 ①抗菌薬選択 ②投与タイミング ③投与量/投与間隔 引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版

#18.

引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MSI出版 PK/PD理論を意識した投与計画

抗菌薬の投与量と間隔の考慮

#19.

抗菌薬の投与量 引用)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年. SSI予防目的であるが治療量投与が推奨

#20.

肥満患者の場合… ●肥満症例においては分布容量が大きく 血中濃度が上昇しない可能性あり ●CEZは体重80kg以上では2g 120kg以上では3g投与を推奨 引用)Schweizer ML, et al. JAMA 2015; 313: 2162-71.

#21.

肝腎機能障害がある場合… ●腎・肝障害があっても術前単回投与であれば 抗菌薬の投与量を変更する必要はない 引用)Bratzler DW, et al. Am J Health Syst Pharm 2013; 70: 195-283. ●有効血中濃度の達成に 薬物の代謝・排泄機能は直接関連しない ●腎機能低下がある場合は投与間隔を延長

#22.

抗菌薬の投与間隔 引用)日本化学療法学会,日本外科感染症学会. 術後感染予防抗菌薬適正使用のための実践ガイドライン. 2016年.

血中濃度推移と投与方法の設計

#23.

血中濃度推移のイメージまとめ 体重50kg 腎機能正常 腎機能低下➡投与間隔延長 体重90kg 腎機能正常 体重90kg 1回投与量2g 引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版

#24.

引用) Life Support and Anesthesia(LiSA) 2022 VOL.29 NO.3 MEDSi出版 参考:ワンショットは可能…? ●VCMは副作用の観点から× ●CEZは理論上可能  ➡消失時間は早くなることに注意… ●医療安全の観点からもCPのように決まった  投与方法やタイミングを設計しておくことが大切

周術期抗菌薬の重要なメッセージ

#25.

Take home message ●周術期予防的抗菌薬の目的はSSIの予防! ●手術部位に合わせた周術期抗菌薬選択を! ●アレルギーや腎機能、体重など症例に応じて  周術期投与計画を設計する!


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