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糖尿病Case Vol.2の概要と目的
#1. 悪いのは医療者だったかも…? ~学びを深めたCase Vol.2~ ともともクリニック 木村朗子 2023/05/03
#2. 学びを深めたCase集Vol.2 • 糖尿病に関連するcaseを提示します • 患者個人情報はすべて仮のものです • 今回紹介するどのcaseも、 私の学びを深めてくれました 感謝 ×2
25歳女性Dさんの高血糖症例と緩徐進行1型糖尿病
#3. 25歳女性 Dさん 健診で高血糖指摘された 健診でGlu 300mg/dl 指摘されて来院。 口渇あり スポーツ飲料多く飲んでいた 清掃の仕事 体重減少5kg/3ヶ月 当院検査では、HbA1c 15.5%, 尿Ketー Glu/Cペプチド 386mg/dl / 1.5ng/ml ペットボトル症候群かな 体重減少は気になるなあ
#4. 25歳女性 Dさん 健診で高血糖指摘された 抗GAD抗体 2000 U/ml以上
#5. 緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM) 主に自己免疫学的機序により、膵臓にあるインスリン を分泌するβ細胞が破壊され、インスリンが出なくな るため慢性高血糖状態となり、糖尿病を発症 1型糖尿病に含まれるが、急性発症1型糖尿病や劇症1 型糖尿病と違い、ケトアシドーシスに陥るケースは少 なく、2型糖尿病のような発症形式 2型糖尿病と見極めが難しいことがある 治療は、基本的にインスリン治療! 早期からインスリン注射を導入したほうが、SU薬を使用した場合に比べて内因性 インスリン分泌の低下が抑制されるため、SU薬ではなく、早期のインスリン注射 の導入が推奨される
56歳男性Eさんの食欲抑制とSU薬の使用
#6. 56歳男性 Eさん 食欲が抑えられない 職場の健康診断で糖尿病指摘あり。 近医で内服していたが、コントロール 不良のため紹介受診。HbA1c 9% BH 165cm BW 96.9kg↑ BMI 33.5 「この薬、効くから増やしてほしい」 SU薬(グリベンクラミド)追加を希望
#7. 56歳男性 Eさん 食欲が抑えられない 先生なら、 どうしますか? 言われたから仕方ないよね、 グリベンクラミド増量 低血糖がないか、問診する グリベンクラミドは増量、 さらにDPP4阻害薬を追加
#8. 低血糖がないか、問診する SU薬→低血糖→間食増加→体重増加 の悪循環になっていないか要確認 グリベンクラミドは増量、 さらにDPP4阻害薬を追加 SU薬にDPP4阻害薬を加えるときは、 SU薬減量が基本 低血糖に注意
SU薬の種類と使用上の注意点
#10. SU薬 一般名 グリクラジド グリメピリド グリベンクラミド 商品名 グリミクロン® アマリール® オイグルコン® ダオニール® 開始量 10-20mg 1日1回 0.5-1mg 1日1回 朝食前or後 朝食前or後 推奨しない 臨床的最大量 80mg(1日2回) 2mg(1日1回) 推奨しない 添付文書上の 1日最大量 160mg 6mg 10mg 日本臨床74巻 増刊号 新時代の糖尿病(上) 2016
48歳女性Fさんの糖尿病とイライラの関係
#11. 48歳女性 Fさん 糖尿病 イライラして食べてしまう 介護施設で勤務する看護師 糖尿病治療歴5年 父も糖尿病で腎不全となり人工透析となっていた 職場の同僚や介護の必要な家族に対して、 イライラしやすい。 半年ほど前から、 ホットフラッシュや月経不定期、 不眠が出現している。
#12. 48歳女性 Fさん 糖尿病 イライラして食べてしまう HbA1c 8.6% 上昇傾向 BH 165cm BW 75kg BMI 27.5 「イライラすると、ドカ食いしてしまう。 そのあとの自己嫌悪もつらい」 「何で自分だけ…と思ってしまう」 まず、正直な気持ちを聞き出すところから
#13. 48歳女性 Fさん 糖尿病 イライラして食べてしまう 更年期症候群の説明と治療開始 内服)加味逍遥散 (食べる以外の)趣味の時間を作ってもらう ホットフラッシュ消失 入眠がスムーズになった HbA1c 8.0% BW 75.5kg 仕事も家も我慢、食事も我慢じゃ、 続かないよね →我慢しない楽しい時間をどう作るか
#14. 48歳女性 Fさん 糖尿病 イライラして食べてしまう 体重減量の希望が強くある一方で、食欲抑制が 難しいため、GLP-1受容体作動薬自己注射開始 どういうタイミングで、食べる量が増えるのか 振り返り、一緒に考えてみる HbA1c 7.5% BW 74.9kg ドカ食いは、おなかがすいていて、 食べていたわけではなかった・・・。 イライラを発散しようとしていたのかも
糖尿病の5つのタイプと治療の考え方
#15. 糖尿病 5つのタイプ 2型糖尿病は、タイプ別に治療を考えていく時代 traditional The palette model The ANDIS model Diabetes 69, no. 10 : 2086–93.2020
#16. 重症インスリン欠損型 網膜症と神経障害リスク 軽症肥満関連型 重症自己免疫型 主に1型糖尿病 重症インスリン抵抗型 腎障害と脂肪肝リスク 軽症年齢関連型 合併症リスク低い
#17. 48歳女性 Fさん 糖尿病家族歴(父 糖尿病性腎症→血液透析) BMI 27.5 →SIRD(重症インスリン抵抗型)の可能性あり 自ずと、治療目標が決まる (高血圧注意、NAFLD注意 微量アルブミン尿注意) 介護の負担軽減のために 更年期症候群の症状緩和は? 仕事の状況について聞く 一緒に考えられる関係づくり
#18. pearls SPIDDMは初診で疑う(一度は抗GAD抗体測定を) SU薬は重症低血糖や体重増加の原因になる どこまでSU薬を使用せずに血糖コントロールがで きるか、医療者の腕の見せ所 2型糖尿病も同じではない タイプ別に治療を検討すると、目標がみえてくる 予告 糖尿病Case vol.3に続きます!! Coming soon!