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改めて病態から考えてみよう!胸膜感染症 胸膜炎/膿胸

投稿者プロフィール
番場祐基
Award 2023 受賞者

新潟大学医歯学総合病院

986

1

投稿した先生からのメッセージ

胸腔ドレナージのスライドと合わせて読んでいただければ、胸膜感染症、特に膿胸のマネジメント全体が理解できると思います。

案外、まとまった書籍が少ない領域ですので、きっと役立つはず。

概要

本スライドでは、膿胸を疑うポイントやその病態、原因微生物の同定、胸腔ドレナージや外科介入を含むマネジメントについて、エビデンスに基づき解説しています。しかしながら、エビデンスが乏しい領域や、適用が困難な患者さんや状況も多く存在するのがこの領域です。現実的な落とし所についても提案しました。

※本スライドは、ひたちなか総合病院のテレカンファレンスで解説したスライド資料に一部追記・改変を加えたものです。

本スライドの対象者

研修医/専攻医/専門医

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テキスト全文

胸膜感染症の概要と病態

#1.

胸膜感染症 胸膜炎/膿胸 改めて病態から考えてみよう!

#2.

2 ABOUT ME 番場 祐基 新潟大学医歯学総合病院 高次救命災害治療センター同 呼吸器・感染症内科 内科医 専門は呼吸器領域と感染症ですが、とりあえずなんでも診る 島🏝️暮らしをきっかけにブログ活動をスタート ブログ「内科医のジレンマ」同Facebookページ X:@LostphysicianYB note: @md_dilemma ICU/救命センター・感染症(抗酸菌・真菌・HIV)、呼吸器内科集中治療領域で内科医だからこそできること!を模索中(相談、質問、依頼などはDMでお願いします)

#3.

3 1 2 3 膿胸をいつ疑う? 膿胸の病態と原因微生物同定 胸腔ドレナージ+α 4 外科的介入の適応とタイミング INDEX

膿胸の病態と原因微生物

#4.

4 1 2 3 膿胸をいつ疑う? 膿胸の病態と原因微生物同定 胸腔ドレナージ+α 4 外科的介入の適応とタイミング INDEX

#5.

5 胸水の有無だけでは決まらない 膿胸をいつ疑う? 市中肺炎の約1割に合併 基本的に胸水への介入は不要 胸膜炎・肺炎随伴性胸水 市中肺炎の数%以下 胸腔ドレナージなどの なんらかの介入が必要 複雑性肺炎随伴胸水/膿胸

#6.

6 胸膜炎 病原体・病態 ウイルス性(コクサッキーBウイルスなど) 細菌(肺炎球菌、マイコプラズマ) 抗酸菌(結核) 感染 膿胸をいつ疑う? 関節リウマチ SLE 悪性腫瘍 など 非感染 肺塞栓症、気胸、心膜炎などでも、胸膜痛は起こりうる

膿胸の診断と評価方法

#7.

7 非複雑性胸水の原因病原体≒市中肺炎 肺炎の原因病原体 例数(割合) 肺炎球菌 224(36.1%) インフルエンザ菌 25(4.0%) レジオネラ 35(5.6%) 膿胸をいつ疑う? マイコプラズマ 14(2.3%) 成人市中肺炎入院例に合併した非複雑性胸水621例(スペイン、1996-2008年) Eur Respir J 2011 38(5): 1173-1179

#8.

8 いつもの肺炎と異なる経過 胸水評価を追加する手がかり 膿胸をいつ疑う? 胸膜痛 胸水が増加 発熱・炎症反応が なかなか改善しない 全身炎症が強い でも、肺炎そのものの重症度とは関連しない Thorax. 2009;64:592–597. Journal of Clinical Medicine. 2025; 14(5):1739.

#9.

9 穿刺する前にエコー/CTで手掛かりと排液経路を評価 CT診断(感度 62%/特異度90%) 所見 評価する意義 被包化・多房化・ガス像 膿胸らしさだけでなく、 排液できるかどうか 造影効果の増強・肥厚 split pleura sign 膿胸らしさを上げる 肥厚・濃度上昇 周囲への炎症の波及 胸水 胸膜 胸膜外脂肪 膿胸をいつ疑う? J Imaging. 2021;8(1):3.

#10.

10 膿胸をいつ疑う? ○造影効果、split pleura sign PLoS One. 2015;10(6):e0130141. 凸レンズ、周囲の脂肪濃度上昇、 split pleura sign 多房化、周囲の脂肪濃度上昇、ガス像 J Imaging. 2022;8(1):3. J Imaging. 2022;8(3):50.

胸腔ドレナージの適応と方法

#11.

11 膿胸をいつ疑う? ○エコー:隔壁構造を探す。CTよりも隔壁がわかりやすい A:内部エコー/粒状デブリを伴う、隔壁のない複雑な胸水(complex non-septated) B・C:隔壁を伴う複雑な胸水(complex septated) D:均一なエコーを呈する胸水(homogeneously echogenic) Diagnostics. 2024;14:1124. 隔壁あり≒膿胸 胸腔穿刺ではなく、ドレナージを選択する!

#12.

12 ドレナージが必要?文脈と性状とpHで評価 ドレナージ必須 明らかな膿性 膿胸をいつ疑う? 原則ドレナージ(すでに慢性膿胸となっている場合を除く) CT所見で膿胸 原則ドレナージ 胸水pH≦7.2 LDH>900IU/Lか、 胸水糖低値、画像所見、臨床所見を合わせて検討 7.2<胸水pH<7.4 直ちにドレナージを行う必要はない 胸水pH≧7.4 ただし、悪性胸水や関節リウマチでもpHは低下する 空気や局所麻酔薬の混入はpHを上げる Am J Respir Crit Care Med. 2008;178(5):483-90. 

#13.

13 1 2 3 膿胸をいつ疑う? 膿胸の病態と原因微生物同定 胸腔ドレナージ+α 4 外科的介入の適応とタイミング INDEX

培養検査と病原体同定

#14.

14 培養検査 通常容器に加え、好気・嫌気血液培養ボトルへ接種する 膿胸の病態と原因微生物同定 病原体同定率(53例) Thorax. 2011;66(8):658-62. 通常培養+ 血液培養ボトル(事前に検査室と申合せしておくこと!) + pH・細胞診など胸水検査用

#15.

15 培養結果が単一菌でも複数菌感染は棄却できない 膿胸の病態と原因微生物同定 Streptococcus anginosus group 嫌気性菌F. nucleatumなど S .aureus 腸内細菌目細菌 胸水従来培養 複数菌検出79%(TORPIDS) 嫌気性菌検出が最多(7割) S. anginosus, S. pneumoniae, S. aureus , K. pneumoniae, P. aeruginosa, etc 16SrRNA+NGS Antibiotics (Basel). 2024;13(12):1205. Lancet Microbe. 2022;3(4):e294-e302. J Clin Microbiol. 2024;62(12):e0069424. J Thorac Dis. 2026;18(2):86.      院内発症、医療行為関連では、黄色ブドウ球菌、緑膿菌を含むグラム陰性桿菌が増加

#16.

16 なぜ、S. anginosus groupや (口腔内)嫌気性菌が多いの? 膿胸の病態と原因微生物同定 ほんとに誤嚥? 肺炎がないことも 多いけど…

膿胸の原因疾患と介入

#17.

17 膿胸の病態と原因微生物同定 胸膜感染症には、肺炎からの連続波及だけでは説明しにくい一群がある 肺炎からの連続波及 口腔由来型で想定する経路 S. intermedius / F. nucleatum 肺実質の感染 臓側胸膜への波及 胸膜腔の感染 歯科・歯周感染 一過性菌血症 胸膜への血行性播種 Clin Infect Dis. 2023;77(10):1361-1371. 肝硬変では、腸管 → bacterial translocation → 菌血症 → 胸膜腔 医療関連菌血症 → 胸膜腔(MRSAや緑膿菌が増える)という経路も十分考えうる

#18.

18 膿胸の病態と原因微生物同定 ・S. intermedius /anginosus group、 F. nucleatum → 歯周炎、歯性感染症がないか、喫煙、歯科介入は? ・グラム陰性桿菌→先行して菌血症を起こすような肝疾患、腹腔内疾患は? ・ブドウ球菌→デバイス感染、心内膜炎は? 口腔内衛生不良、歯性感染症 呼吸器疾患 免疫不全 低栄養 など 原因疾患の検索と介入を考える 血液培養・胸水培養結果から逆算・答え合わせ

#19.

口腔内レンサ球菌+嫌気性菌をカバー 19 膿胸の病態と原因微生物同定→抗菌薬選択 抗菌薬への反応が乏しいときは、感染腔の残存と排液不良も再評価する。 治療反応と残存感染腔、菌血症の有無、遠隔病変の有無を考慮し、治療方針を決める

胸腔内酵素療法の実際

#20.

20 1 2 3 膿胸をいつ疑う? 膿胸の病態と原因微生物同定 胸腔ドレナージ+α 4 外科的介入の適応とタイミング INDEX

#21.

21 小径ドレーン(≦14Fr)を基本とする太径と臨床転帰は関連せず  ただし、洗浄が想定されるなら初めからダブルルーメンを選択 胸腔ドレナージ+α Chest. 2010;137(3):536-43. https://slide.antaa.jp/article/view/7d789dd0a0b34b03 穿刺法についてはこちら

#22.

22 胸腔内酵素療法(intrapleural enzyme therapy:IET) 胸腔ドレナージ+α tPA+DNase: 3か月以内の手術紹介↓ 保険適応外 Chest. 2022;162:1384–1392. ウロキナーゼ: 本来は保険適応外だが、国内の実臨床報告あり →現在、入手不能

生理食塩水洗浄の効果と方法

#23.

23 生理食塩水洗浄:IETと同等?やらないよりはマシかも 胸腔ドレナージ+α Eur Respir J. 2015;46:456–463. BMC Pulm Med. 2026;26:74. Eur Respir J. 2026;67:2501715.

#24.

24 生理食塩水洗浄:IETと同等?やらないよりはマシかも 胸腔ドレナージ+α Eur Respir J. 2015;46:456–463. BMC Pulm Med. 2026;26:74. Eur Respir J. 2026;67:2501715. 投与方法は決まっていない PIT試験では、生食250ml/60分 ×3/日, 3日間 持続投与という選択肢もある(60〜80 mL/h)が、排液量の監視が必須

#25.

25 生理食塩水洗浄:IETと同等?やらないよりはマシかも 胸腔ドレナージ+α Eur Respir J. 2015;46:456–463. BMC Pulm Med. 2026;26:74. Eur Respir J. 2026;67:2501715. Int J Gen Med. 2022;15:8705-8713. 炭酸水素ナトリウムという手もある ⇨日本でもRCTが実施されたところ(BMC Infect Dis. 2025;25(1):580.) 結果待ち

#26.

26 治療的胸腔穿刺 胸腔ドレナージ+α メリット: 入院期間の短縮      胸腔ドレナージ留置に伴う苦痛の回避   疼痛、牽引、閉塞、脱落、患者の行動制限など     異なる膿胸腔にアプローチできる BMC Pulm Med. 2022;22(1):330. Pneumonia (Nathan). 2025;17(1):13. デメリット:排膿が不十分になる可能性があり、再穿刺が必要かも   安全性・有効性を裏付けるエビデンスが弱い PLoS One. 2014;9(1):e84788. 穿刺液Gram染色陽性、初回排液量 ≥450 mLは失敗と関連 穿刺の度に、合併症リスクがある ハイリスク部位からの穿刺が必要

外科的介入の適応とタイミング

#27.

27 1 2 3 膿胸をいつ疑う? 膿胸の病態と原因微生物同定 胸腔ドレナージ+α 4 外科的介入の適応とタイミング INDEX

#28.

28 外科治療の適応とは? 外科的介入の適応とタイミング 外科治療の目的 感染腔の完全な排膿 隔壁・壊死物質の除去 肺の再膨張、残存死腔の解消

#29.

29 外科治療の適応とは? 外科的介入の適応とタイミング 外科治療の適応 胸腔ドレナージ(+IET)で 感染腔の完全な排膿ができない 隔壁・壊死物質の除去ができない 肺の再膨張、残存死腔の解消が得られない 多房化・隔壁形成があり、ドレナージ困難な腔が残る 感染制御が困難 そもそも外科的介入が必須:瘻孔形成、術後膿胸、肺壊死

#30.

30 外科治療の適応があることと 実際に行うべきかは異なる 外科的介入の適応とタイミング 早期退院に繋がるかというと… Am J Respir Crit Care Med. 2023;208:1305–1315. 膿胸の患者は、1)高齢、2)併存症などにより手術リスクが高いことも多い →手術適応については、総合的な患者利益を考えて判断する

膿胸の治療戦略とまとめ

#31.

31 ガイドラインを踏まえた提案(理想) 外科的介入の適応とタイミング 抗菌薬 + 画像ガイド下ドレナージ 24 – 48時間を目安に再評価 全身状態・排液経路・残存感染腔 臨床・画像所見が改善 現治療を継続し終了を評価 改善不十分 + 感染腔が残存 閉塞・位置不良を修正/追加排液 利用可能な胸腔内治療 (日本では、洗浄くらいしかない) 呼吸器外科と並行協議 VATSなどの適否を判断 実際手術を行うかはさておき、 3日目には適応の判断/協議 が理想的 遅くとも7日目には判断 Thorax. 2023;78:1143–1156 Eur Respir J. 2023;61:2201062.

#32.

32 ガイドラインを踏まえた提案 外科的介入の適応とタイミング 利用可能な胸腔内治療 (日本では、洗浄くらいしかない) 手術困難なケースや、環境も多い (呼吸器外科が近くにない、でも転院は困難、など) 長期抗菌薬投与もやむなし(数週間以上かかることも) 背景疾患への介入(血糖コントロールなど) 排液が減るまでとにかく洗浄 適応外申請をして、tPAや炭酸水素ナトリウム胸腔内注入 ドレーンを追加、位置調整 ドレーン留置困難:穿刺可能なら穿刺+洗浄の反復 協力が得られるか、安全に施行できる全身状態かといったことを考える必要はある

#33.

33 1 2 3 いつもの肺炎と違う経過、CT所見から膿胸を見逃さない すべての微生物同定は困難 嫌気性菌を外さない まずは胸腔ドレナージ 生理食塩水洗浄も考慮 4 外科相談は早めに 手術できない場合の戦略を持っておく Take Home Message

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