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胸膜感染症の概要と病態
#1. 胸膜感染症 胸膜炎/膿胸 改めて病態から考えてみよう!
#2. 2 ABOUT ME 番場 祐基 新潟大学医歯学総合病院 高次救命災害治療センター同 呼吸器・感染症内科 内科医
専門は呼吸器領域と感染症ですが、とりあえずなんでも診る
島🏝️暮らしをきっかけにブログ活動をスタート
ブログ「内科医のジレンマ」同Facebookページ
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note: @md_dilemma
ICU/救命センター・感染症(抗酸菌・真菌・HIV)、呼吸器内科集中治療領域で内科医だからこそできること!を模索中(相談、質問、依頼などはDMでお願いします)
#3. 3 1 2 3 膿胸をいつ疑う? 膿胸の病態と原因微生物同定 胸腔ドレナージ+α 4 外科的介入の適応とタイミング INDEX
膿胸の病態と原因微生物
#4. 4 1 2 3 膿胸をいつ疑う? 膿胸の病態と原因微生物同定 胸腔ドレナージ+α 4 外科的介入の適応とタイミング INDEX
#5. 5 胸水の有無だけでは決まらない 膿胸をいつ疑う? 市中肺炎の約1割に合併
基本的に胸水への介入は不要 胸膜炎・肺炎随伴性胸水 市中肺炎の数%以下
胸腔ドレナージなどの
なんらかの介入が必要 複雑性肺炎随伴胸水/膿胸
#6. 6 胸膜炎 病原体・病態 ウイルス性(コクサッキーBウイルスなど)
細菌(肺炎球菌、マイコプラズマ)
抗酸菌(結核) 感染 膿胸をいつ疑う? 関節リウマチ
SLE
悪性腫瘍 など 非感染 肺塞栓症、気胸、心膜炎などでも、胸膜痛は起こりうる
膿胸の診断と評価方法
#7. 7 非複雑性胸水の原因病原体≒市中肺炎 肺炎の原因病原体 例数(割合) 肺炎球菌 224(36.1%) インフルエンザ菌 25(4.0%) レジオネラ 35(5.6%) 膿胸をいつ疑う? マイコプラズマ 14(2.3%) 成人市中肺炎入院例に合併した非複雑性胸水621例(スペイン、1996-2008年) Eur Respir J 2011 38(5): 1173-1179
#8. 8 いつもの肺炎と異なる経過
胸水評価を追加する手がかり 膿胸をいつ疑う? 胸膜痛
胸水が増加 発熱・炎症反応が
なかなか改善しない 全身炎症が強い
でも、肺炎そのものの重症度とは関連しない Thorax. 2009;64:592–597.
Journal of Clinical Medicine. 2025; 14(5):1739.
#9. 9 穿刺する前にエコー/CTで手掛かりと排液経路を評価
CT診断(感度 62%/特異度90%) 所見 評価する意義 被包化・多房化・ガス像 膿胸らしさだけでなく、
排液できるかどうか 造影効果の増強・肥厚
split pleura sign 膿胸らしさを上げる 肥厚・濃度上昇 周囲への炎症の波及 胸水 胸膜 胸膜外脂肪 膿胸をいつ疑う? J Imaging. 2021;8(1):3.
#10. 10 膿胸をいつ疑う? ○造影効果、split pleura sign PLoS One. 2015;10(6):e0130141. 凸レンズ、周囲の脂肪濃度上昇、 split pleura sign 多房化、周囲の脂肪濃度上昇、ガス像 J Imaging. 2022;8(1):3. J Imaging. 2022;8(3):50.
胸腔ドレナージの適応と方法
#11. 11 膿胸をいつ疑う? ○エコー:隔壁構造を探す。CTよりも隔壁がわかりやすい A:内部エコー/粒状デブリを伴う、隔壁のない複雑な胸水(complex non-septated)
B・C:隔壁を伴う複雑な胸水(complex septated)
D:均一なエコーを呈する胸水(homogeneously echogenic) Diagnostics. 2024;14:1124. 隔壁あり≒膿胸
胸腔穿刺ではなく、ドレナージを選択する!
#12. 12 ドレナージが必要?文脈と性状とpHで評価 ドレナージ必須 明らかな膿性 膿胸をいつ疑う? 原則ドレナージ(すでに慢性膿胸となっている場合を除く) CT所見で膿胸 原則ドレナージ 胸水pH≦7.2 LDH>900IU/Lか、
胸水糖低値、画像所見、臨床所見を合わせて検討 7.2<胸水pH<7.4 直ちにドレナージを行う必要はない 胸水pH≧7.4 ただし、悪性胸水や関節リウマチでもpHは低下する
空気や局所麻酔薬の混入はpHを上げる Am J Respir Crit Care Med. 2008;178(5):483-90.
#13. 13 1 2 3 膿胸をいつ疑う? 膿胸の病態と原因微生物同定 胸腔ドレナージ+α 4 外科的介入の適応とタイミング INDEX
培養検査と病原体同定
#14. 14 培養検査
通常容器に加え、好気・嫌気血液培養ボトルへ接種する 膿胸の病態と原因微生物同定 病原体同定率(53例) Thorax. 2011;66(8):658-62. 通常培養+
血液培養ボトル(事前に検査室と申合せしておくこと!)
+
pH・細胞診など胸水検査用
#15. 15 培養結果が単一菌でも複数菌感染は棄却できない 膿胸の病態と原因微生物同定 Streptococcus anginosus group
嫌気性菌F. nucleatumなど
S .aureus
腸内細菌目細菌 胸水従来培養 複数菌検出79%(TORPIDS)
嫌気性菌検出が最多(7割)
S. anginosus, S. pneumoniae, S. aureus , K. pneumoniae, P. aeruginosa, etc 16SrRNA+NGS Antibiotics (Basel). 2024;13(12):1205.
Lancet Microbe. 2022;3(4):e294-e302.
J Clin Microbiol. 2024;62(12):e0069424.
J Thorac Dis. 2026;18(2):86. 院内発症、医療行為関連では、黄色ブドウ球菌、緑膿菌を含むグラム陰性桿菌が増加
#16. 16 なぜ、S. anginosus groupや
(口腔内)嫌気性菌が多いの? 膿胸の病態と原因微生物同定 ほんとに誤嚥? 肺炎がないことも
多いけど…
膿胸の原因疾患と介入
#17. 17 膿胸の病態と原因微生物同定 胸膜感染症には、肺炎からの連続波及だけでは説明しにくい一群がある 肺炎からの連続波及 口腔由来型で想定する経路 S. intermedius / F. nucleatum 肺実質の感染 臓側胸膜への波及 胸膜腔の感染 歯科・歯周感染 一過性菌血症 胸膜への血行性播種 Clin Infect Dis. 2023;77(10):1361-1371. 肝硬変では、腸管 → bacterial translocation → 菌血症 → 胸膜腔
医療関連菌血症 → 胸膜腔(MRSAや緑膿菌が増える)という経路も十分考えうる
#18. 18 膿胸の病態と原因微生物同定 ・S. intermedius /anginosus group、 F. nucleatum → 歯周炎、歯性感染症がないか、喫煙、歯科介入は?
・グラム陰性桿菌→先行して菌血症を起こすような肝疾患、腹腔内疾患は?
・ブドウ球菌→デバイス感染、心内膜炎は? 口腔内衛生不良、歯性感染症
呼吸器疾患
免疫不全
低栄養
など 原因疾患の検索と介入を考える 血液培養・胸水培養結果から逆算・答え合わせ
#19. 口腔内レンサ球菌+嫌気性菌をカバー 19 膿胸の病態と原因微生物同定→抗菌薬選択 抗菌薬への反応が乏しいときは、感染腔の残存と排液不良も再評価する。
治療反応と残存感染腔、菌血症の有無、遠隔病変の有無を考慮し、治療方針を決める
胸腔内酵素療法の実際
#20. 20 1 2 3 膿胸をいつ疑う? 膿胸の病態と原因微生物同定 胸腔ドレナージ+α 4 外科的介入の適応とタイミング INDEX
#22. 22 胸腔内酵素療法(intrapleural enzyme therapy:IET) 胸腔ドレナージ+α tPA+DNase: 3か月以内の手術紹介↓ 保険適応外 Chest. 2022;162:1384–1392. ウロキナーゼ: 本来は保険適応外だが、国内の実臨床報告あり →現在、入手不能
生理食塩水洗浄の効果と方法
#23. 23 生理食塩水洗浄:IETと同等?やらないよりはマシかも 胸腔ドレナージ+α Eur Respir J. 2015;46:456–463.
BMC Pulm Med. 2026;26:74.
Eur Respir J. 2026;67:2501715.
#24. 24 生理食塩水洗浄:IETと同等?やらないよりはマシかも 胸腔ドレナージ+α Eur Respir J. 2015;46:456–463.
BMC Pulm Med. 2026;26:74.
Eur Respir J. 2026;67:2501715. 投与方法は決まっていない
PIT試験では、生食250ml/60分 ×3/日, 3日間
持続投与という選択肢もある(60〜80 mL/h)が、排液量の監視が必須
#25. 25 生理食塩水洗浄:IETと同等?やらないよりはマシかも 胸腔ドレナージ+α Eur Respir J. 2015;46:456–463.
BMC Pulm Med. 2026;26:74.
Eur Respir J. 2026;67:2501715. Int J Gen Med. 2022;15:8705-8713. 炭酸水素ナトリウムという手もある ⇨日本でもRCTが実施されたところ(BMC Infect Dis. 2025;25(1):580.) 結果待ち
#26. 26 治療的胸腔穿刺 胸腔ドレナージ+α メリット: 入院期間の短縮
胸腔ドレナージ留置に伴う苦痛の回避 疼痛、牽引、閉塞、脱落、患者の行動制限など
異なる膿胸腔にアプローチできる BMC Pulm Med. 2022;22(1):330.
Pneumonia (Nathan). 2025;17(1):13. デメリット:排膿が不十分になる可能性があり、再穿刺が必要かも 安全性・有効性を裏付けるエビデンスが弱い PLoS One. 2014;9(1):e84788. 穿刺液Gram染色陽性、初回排液量 ≥450 mLは失敗と関連 穿刺の度に、合併症リスクがある ハイリスク部位からの穿刺が必要
外科的介入の適応とタイミング
#27. 27 1 2 3 膿胸をいつ疑う? 膿胸の病態と原因微生物同定 胸腔ドレナージ+α 4 外科的介入の適応とタイミング INDEX
#28. 28 外科治療の適応とは? 外科的介入の適応とタイミング 外科治療の目的 感染腔の完全な排膿
隔壁・壊死物質の除去
肺の再膨張、残存死腔の解消
#29. 29 外科治療の適応とは? 外科的介入の適応とタイミング 外科治療の適応 胸腔ドレナージ(+IET)で
感染腔の完全な排膿ができない
隔壁・壊死物質の除去ができない
肺の再膨張、残存死腔の解消が得られない 多房化・隔壁形成があり、ドレナージ困難な腔が残る
感染制御が困難
そもそも外科的介入が必須:瘻孔形成、術後膿胸、肺壊死
#30. 30 外科治療の適応があることと
実際に行うべきかは異なる 外科的介入の適応とタイミング 早期退院に繋がるかというと… Am J Respir Crit Care Med. 2023;208:1305–1315. 膿胸の患者は、1)高齢、2)併存症などにより手術リスクが高いことも多い
→手術適応については、総合的な患者利益を考えて判断する
膿胸の治療戦略とまとめ
#31. 31 ガイドラインを踏まえた提案(理想) 外科的介入の適応とタイミング 抗菌薬 + 画像ガイド下ドレナージ 24 – 48時間を目安に再評価
全身状態・排液経路・残存感染腔 臨床・画像所見が改善
現治療を継続し終了を評価 改善不十分 + 感染腔が残存
閉塞・位置不良を修正/追加排液 利用可能な胸腔内治療
(日本では、洗浄くらいしかない) 呼吸器外科と並行協議
VATSなどの適否を判断 実際手術を行うかはさておき、
3日目には適応の判断/協議
が理想的
遅くとも7日目には判断 Thorax. 2023;78:1143–1156
Eur Respir J. 2023;61:2201062.
#32. 32 ガイドラインを踏まえた提案 外科的介入の適応とタイミング 利用可能な胸腔内治療
(日本では、洗浄くらいしかない) 手術困難なケースや、環境も多い
(呼吸器外科が近くにない、でも転院は困難、など) 長期抗菌薬投与もやむなし(数週間以上かかることも)
背景疾患への介入(血糖コントロールなど)
排液が減るまでとにかく洗浄
適応外申請をして、tPAや炭酸水素ナトリウム胸腔内注入
ドレーンを追加、位置調整
ドレーン留置困難:穿刺可能なら穿刺+洗浄の反復 協力が得られるか、安全に施行できる全身状態かといったことを考える必要はある
#33. 33 1 2 3 いつもの肺炎と違う経過、CT所見から膿胸を見逃さない すべての微生物同定は困難 嫌気性菌を外さない まずは胸腔ドレナージ 生理食塩水洗浄も考慮 4 外科相談は早めに 手術できない場合の戦略を持っておく Take Home Message