#4.
開放骨折でもまずはABCDE 開放骨折は交通外傷や転落外傷などの高エネルギー外傷が多い まずはJATEC(外傷初期診療ガイドライン)に沿った「救命措置」を! Primary survey で診察すべき生理学的所見 診察項目 対応と判断 A (Airway) 発語・発声の有無、口腔内 気道確保、口腔内吸引、気管挿管 B (Breathing) Primay survey で診察すべき生理学的所見呼吸数、胸郭の挙上、SpO2 C (Circulation) 脈拍、心拍数、血圧 四肢末梢の冷感の有無 創部外の出血 FAST 胸部・骨盤部のレントゲン O2投与、補助換気、気管挿管 D (Dysfunction of CNS) 意識レベル 頭部CT(脳外科へ連絡) E (Exposure and Environment control) 体温 保温 輸血、止血処置 致死的胸部外傷に対する緊急処置 (胸腔ドレナージ、心嚢穿刺) 経カテーテル動脈塞栓術 創外固定 松山幸弘. 脊椎外傷の診断・保存的治療・手術. 2018より抜粋
#5.
四肢外傷で大切なこと 開放骨折が来たときに優先することは何でしょうか? 骨の状態を評価すること? 傷の状態を確認すること? 優先すべきは「血行障害がない」ことを確認すること! 外傷の治療目的は何か? 救命の次は可能な限り 「四肢を温存すること」 (機能を含めて) 血流がなく、壊死した四肢は温存できない
#6.
四肢の血流評価 血管損傷のハードサイン • • • • • 拍動性の出血がある 増大する血腫 血管雑音 末梢脈拍の触知不良 阻血 (感覚異常・麻痺・蒼白・疼痛・脈拍喪失) すぐに血管造影CTで確認を 四肢の虚血許容間は6時間 筋肉の不可逆性の虚血変化が起こる4時間以内の血流再開が望ましい 四肢の血行障害がある場合は可及的速やかに(2時間以内)に手術室へ!
#7.
軟部組織を評価しよう 四肢の血流の評価が終われば次は軟部組織の評価を。 なぜ軟部組織が重要なのか? 壊死組織が残っていると マクロファージが活性 ⇨大量の酸素を消費 ⇨無血野の酸素不足 ⇨感染率UP 骨だけ治しても軟部組織の状態が悪ければ深部感染を引き起こす。 骨折部の再建には手術に耐えられる軟部組織が必須! 軟部組織が感染してしまうと軟部組織の状態はさらに悪くなる 軟部組織の処置 (デブリドマン) を行う必要がある デブリドマンの量は損傷の程度で異なる 適切な軟部組織の評価が必要 次ページのチャートを用いて四肢外傷の評価手順・方法を確認しよう
#8.
四肢の評価の手順チャート 高エネルギー外傷 ハードサインの確認 バイタルの評価 写真があると分かりやすい! デジカメで撮影し、 カルテに残しておこう! 触知 損傷部以遠の血行状態の確認 すぐできること 上肢:橈骨動脈 下肢:足背動脈、後脛骨動脈 Capillary refiling time 異常あり 軟部組織の評価 開放創の大きさ 汚染はあるか 軟部組織の欠損はあるか 骨は露出しているか 血管造影CT Gustilo & Anderson 分類で説明しよう 上記を正確に外傷の担当医、待機の整形外科へ伝えよう (次ページ参照)
#9.
GUSTILO & ANDERSON 分類 該当する一番悪いグレードを採用する (例:創1cm + 高度粉砕=Type Ⅲ) 創の 大きさ Type Ⅰ 1cm以下 Type Ⅱ 1-10cm 汚染度 挫滅 骨折型 軽度 尖った骨片が皮膚を貫通してできる程度 なし 単純 (横・斜・螺旋骨折) 中等度 裂創、筋肉の圧挫 弁状創はなし 軽度 〜中度 粉砕骨折 高度 高度粉砕骨折 不安定型骨折 弁状創や剥脱創、皮膚の欠損 広範な軟部組織の損傷、欠損 骨折部の被覆は可 A 10cm以上 Type Ⅲ 軟部組織損傷 高度 B A+ 骨膜が露出 骨折部の被覆不可 C A+ 修復を要する血管損傷
#10.
評価後の手順 あり 血流障害 血行再建へ なし Ⅰ 軟部組織 Ⅱ・Ⅲ デブリドマン不要 内固定 or 創外固定や直達牽引 Gustilo & Anderson 分類 Gustilo Ⅰは洗浄・デブリドマンを施行なし 5日以内の内固定で感染なし (Yang EC.Eisler J. Clim Orthop Relat Res. 2003) デブリドマン (デブリドマンの手順は次ページ) Type Ⅱ・Ⅲではデブリドマンが1時間遅れると感染率が3%上昇する報告もある 24時間-48後に再評価、デブリドマン
#11.
デブリドマンの手順 原則 • • • • 壊死し、活性を失った組織は徹底的に切除 辺縁から中心に 浅層から深層に 開放創を延長させる(組織損傷は開放創より大きいため) ①ターニケット(駆血)せずに皮膚のデブリドマン 鮮血色の出血が認められるまで切除 ②ターニケットを開始 腐骨があると感染率が 50%上昇する もったいないとか思わず 思い切って切除を ③新鮮な脂肪組織が出るまで皮下脂肪を切除 ④筋肉のデブリドマン Consistency (硬さ) Contractility(収縮性) Color (色調) Capacity and bleed(出血の有無) の4Cで判断 ⑤腐骨になる骨の切除 軟部組織・骨膜の連続性、出血の有無で判断
#12.
ゴールデンタイムとは? 受傷から6時間以内にデブリドマンをすれば感染率を下げられる という都市伝説・・・ 根拠となった論文 Robson M.C. et al. J Surg Res. 1973 受傷5時間で細菌数が×105以上になる、コロニーを形成する Gristina A.G. et al. Orthop Clin North Am. 1991 受傷3時間で「細菌の粘着力Up」⇨骨との結合が強固になる Biofilmに包まれコロニーを形成する 一方、しっかりデブリドマンを行えば感染率に差がない Pollak AN. et al. J Bone Joint Surg Am. 2010 6時間に拘らず、デブリドマンをしっかり行おう! もちろん早ければ早い方がいいのは間違いない!
#13.
デブリドマンの後は軟部組織の保護を 軟部組織の保護に重要なのことは軟部組織の「安定化」 土台となる骨が安定しないと軟部組織が安定しない 骨を安定させよう!! ● 全身状態がいい Gustilo & Anderson Type Ⅰor Ⅱの軟部組織の状態がいいもの 汚染が強い ● デブリドマンを行った上で組織欠損が大きい 全身状態が悪い 創外固定 c いい固定 創外固定のルール 骨折部とピン(a)は近い方が強い ピンとピン(b)は遠い方が強い 骨と創外固定(c)は近い方が強い 内固定 b a ダメな固定
#14.
組織欠損が大きいものはどうするの? 陰圧閉鎖療法(NPWT)を行おう! NPWTがオススメな理由 ① 吸引による力学的な創部縮小効果 ② 吸引の微小な力による細胞増生、肉芽形成促進、組織血流増加、血管新生 ③ 細胞間液、炎症性サイトカインの除去による組織浮腫の軽減 ④ 新たな感染の予防 ⑤ 湿潤環境保持による組織壊死制御の効果 ⑥ 過剰な滲出液の除去で創部の管理が楽になる 注意! NPWTは皮弁などの軟部組織再建の代用にはならない あくまでも一時的な開放創の被覆方法
#15.
抗生剤の投与は? 感染予防のためにも抗生剤は必須です! 受傷時の創部汚染と受傷後の新たに発生する感染の2つがある 受傷時の創部汚染はグラム陽性球菌 74%、グラム陰性桿菌 25% 受傷後の新たに発生する感染はMRSAを含めた院内感染 骨折部をきちんと覆えない場合は受傷後の新たな感染を警戒する必要がある Gustilo & Anderson ⅠとⅡは受傷時の感染対策を Gustilo & Anderson Ⅲは受傷時の感染+受傷後の感染対策 Gustilo & Anderson 抗菌薬 期間 Ⅰ 第1世代 セフェム系 創閉鎖後24時間 Ⅱ 第1世代 セフェム系 創閉鎖後24時間 第1世代 Ⅲ セフェム系 + アミノグリコシド系 軟部組織再建後24時間 土田 芳彦 編著 重度四肢外傷の標準的治療より引用 投与までの時間は可能な限り早く行いましょう!
#16.
コンパートメント症候群 重度四肢外傷の急性期合併症の代表格 外傷や虚血後の再灌流により四肢の筋区画(コンパートメント)内圧が上昇 血流が障害 不可逆性の筋壊死や神経障害が起こる 5Pがある場合は積極的に疑う! 脛骨骨折の 2〜9 %で発症 Pain (疼痛) Paresthesia (感覚異常) Pallor (蒼白) Paralysis (麻痺) Pulselessness (拍動消失) 早期に出現する 上記の2つの次に出現する 最後に出現する 受傷早期に認められる場合は 神経損傷・血管損傷を疑う
#17.
コンパートメント症候群 開放骨折だと筋膜切れてるからコンパートメント内圧は上がらないのでは? Stryker社 Hpより引用 部分的な筋膜の断裂では十分な除圧にならない 閉鎖骨折と開放骨折の発症率は同じ 内圧の確認方法 内圧を測定する専用のキット Stryker社 Intra compartmental pressure monitor system キットがない時は下図を用意しよう 筋膜 皮膚 筋肉 空気 18G 血圧計 生理食塩水 耐圧チューブ シリンジに圧をかけ、矢印が動き出す瞬間の血圧計の圧を確認する コンパートメント内圧が30-45mmHgを超える、拡張期血圧との差が30mmHg以下で危険! 早期に筋膜切開を!!
#18.
症例提示 1 最初に見た症例の評価は? 血流は? 軟部の状態は? 足背動脈は触れていた ハードサインなし 創の大きさ 10cm以上 Ⅲ 汚染度 中等度 Ⅱ 軟部組織損傷 骨膜が露出 Ⅲb 挫滅 高度 Ⅲ 骨折型 粉砕 Ⅲ Gustilo & Anderson 分類 Type Ⅲb
#19.
治療方針 • 血行障害なし 血行再建は不要 • 抗生剤を早期に投与 第1世代 セフェム系 + アミノグリコシド系 • 可能な限り早く手術室でデブリドマン デブリドマンは徹底的に! • 軟部保護を行う必要あり 創外固定とNPWT • 後日、軟部組織の再建と内固定を やるべき事がハッキリすれば 焦らずに対応できるよ!
#20.
治療 軟部組織が足りないところはNPWTを。 創外固定を行い骨を安定化させる 組織がもったいないという判断はNG デブリドマンは徹底的に行う! 後日、内固定+遊離皮弁を行う
#21.
症例提示 2 血流は? 軟部の状態は? 足背動脈は触れていた ハードサインなし 創の大きさ 10cm以上 Ⅲ 汚染度 軽度 Ⅱ 軟部組織損傷 裂創 Ⅱ 挫滅 なし Ⅰ 骨折型 粉砕 Ⅱ Gustilo & Anderson 分類 Type Ⅲ
#22.
治療方針 • 血行障害なし 血行再建は不要 • 抗生剤を早期に投与 第1世代 セフェム系 (+ アミノグリコシド系) • 可能な限り早く手術室でデブリドマン • 軟部保護 • 創外固定とNPWT 後日、軟部組織の再建と内固定 今までの内容を知っていれば上記のように動くが・・・ あれ?案外創部は綺麗だよね? デブリドマンを少しにすれば軟部覆えるんじゃない? なんて考えて創部を閉じてしまうと・・・
#23.
治療 皮膚が壊死し、感染のリスクが高い状態に。 当然、このままでは内固定はできない。 最初のデブリドマン不足が問題! デブリドマン不足は治療期間を長くする! デブリドマンをやり直し、今回は徹底的に施行 感染がないことを確認し、 内固定と軟部組織の再建を施行
#24.
おまけ 〜切断を考えるとき〜 基本的に最初から切断を考えることはしないが・・・ 再建自体が生命に関わる場合・再建が非常に難しい場合は切断も考える Langeの基準 切断の絶対的適応 ① 6時間を超える阻血 ② 再建できない脛骨神経完全断裂 (来てすぐに分かる訳ない・・) 切断の相対的適応 ① 重度多発外傷 ② 同側足部の挫滅 ③ 機能回復に長期を要する(下肢全長1/3以上の骨欠損など) 実際は最初から切断となるより 二次感染や組織壊死範囲の拡大で再建ができず切断に至るケースの方が多い 結局、デブリドマンが大事!
#25.
TAKE HOME MESSAGE 開放骨折の初期対応は以下を覚えておこう • まず血流の評価をしよう • 軟部組織を評価して「徹底的に」デブリドマンをしよう • デブリドマンの後は軟部組織の保護をしよう 参考文献 Orthopedics Vol.22 No.10 開放骨折治療マニュアル 土田 芳彦 編著 重度四肢外傷の標準的治療