テキスト全文
尿路感染疑いの実践的アプローチとその背景
#1. 『尿路感染疑い』の 実践的アプローチ 「尿が汚いのでUTIです」は、今日で終わり。 NMC GIM Ryoma Ouchida
#2. こんなこと、ありませんか? ERを受診した発熱患者の診療に当たった。
各種培養、CTまで撮影して熱源がはっきりしない。
尿は膿尿で汚い。
…んー、尿路感染疑いでセフトリアキソンを投与して入院だ
#3. こんなこと、ありませんか? ERを受診した発熱患者の診療に当たった。
各種培養、CTまで撮影して熱源がはっきりしない。
尿は膿尿で汚い。
…んー、尿路感染疑いでセフトリアキソンを投与して入院だ その後、意識障害が出現。
MRIで多発脳梗塞が見られ
感染性心内膜炎の診断となった…
尿路感染の診断における不安と治療戦略
#4. ここまでなくても… 本当に尿路感染でいいのだろうか?見逃してないよね…?
と不安な気持ちで診療をしている。
もう少し尿路感染の診断に自信を持ちたい… 治療を始めたけど尿培養で有意な菌が出なかった…
この後はどのように診療すればいいのだろうか? 尿路感染の治療で抗菌薬を選んでと言われても…
グラム染色も見てみたけどさっぱり分からない。
#5. ここまでなくても… 本当に尿路感染でいいのだろうか?見逃してないよね…?
と不安な気持ちで診療をしている。
もう少し尿路感染の診断に自信を持ちたい… 治療を始めたけど尿培養で有意な菌が出なかった…
この後はどのように診療すればいいのだろうか? 尿路感染の治療で抗菌薬を選んでと言われても…
グラム染色も見てみたけどさっぱり分からない。 暫定『尿路感染』という状況はcommon
でもそのアプローチを
詳しく学ぶ機会は少なくイメージしにくい
#6. スライドの目的とゴール 『尿路感染疑い』への実践的アプローチを学ぶ!
-除外から迫る診断と治療戦略-
尿路感染にとどまらず『熱源不明』患者において
正しく診療ができるようになる!
尿路感染の蓋然性と除外診断の重要性
#7. ① 本当にUTI??
発熱 + 膿尿 = 尿路感染ではない!
蓋然性を見積もり、経過を知り、除外診断
②他の熱源は?
「はひふへほ+血」と「画像読影」で迫る
③何を、どこまでカバーする?
「余力 × グラム染色 × 曝露」 から考える
④本当に合ってる?
「経過 × 培養結果」で答え合わせ。日々診断を振り返る 最初にまとめ 耐性菌率も含む
#8. 発熱+膿尿/細菌尿 =尿路感染ではない 01 Probability
&Time course
#9. 前提として… 「尿路感染」と表現していますが、主に断りがなければ
腎盂腎炎の診断・治療について考えていくスライドです。
明らかな結石性腎盂腎炎や腎膿瘍は対象ではありません。
膀胱刺激症状が発熱の経過と共に出現した発熱+膿尿・細菌尿は
腎盂腎炎として治療開始検討するので含みません。
ひと通り診察や画像検索を行なったにも関わらず
熱源が明らかではなく膿尿や細菌尿がみられ
尿路感染と暫定診断せざるを得ない悩ましい症例のアプローチ
について実践的な内容を踏まえ考えていきます。
#10. ①発熱+膿尿=尿路感染ではない! どんな本にも書いてあり、どんな先生でもこう言います。
まずはこれを肝に銘じること。
若干語弊というかニュアンスをとらえてほしいのですが
初日には確定しがたいため、このように表現しています。
最終的には確からしい経過を以て診断を行なう 事を理解します。
発熱と膿尿の関係性と診断の難しさ
#11. ①発熱+膿尿=尿路感染ではない! なぜここまで言うのか? 例)77歳男性。1週間持続する発熱と腰痛で受診。
診察と検査では熱源不明。膿尿と細菌尿あり、右CVA叩打痛もあるため
腎盂腎炎疑いでセフトリアキソンを開始。改善なく造影CT撮影すると
右腸腰筋膿瘍(血液培養からMRSAを検出)であった… よく見ると入院時単純CTで映っていた。
例)82歳女性。数日前からの発熱で受診。診察と検査では熱源不明。
膿尿と細菌尿ありセフトリアキソンを開始。血液培養と尿培養から大腸菌を検出。
感受性も良好であり継続していたが、発熱持続。感受性は良好であり継続していたところ
突然心停止し逝去。感染性大動脈瘤破裂であった。
例)65歳男性。2週間持続する発熱で受診。診察と検査では熱源不明。
膿尿があり抗菌薬の内服開始も改善なし。入院しセフトリアキソンでも改善なく
培養から有意な菌検出ないがメロペネムへ変更され相談。近頃大腿部痛と下肢のしびれがあるようで
MPO ANCA陽性となり、顕微鏡的多発血管炎であった。
#12. ①発熱+膿尿=尿路感染ではない! なぜここまで言うのか? 例)77歳男性。1週間持続する発熱と腰痛で受診。
診察と検査では熱源不明。膿尿と細菌尿あり、右CVA叩打痛もあるため
腎盂腎炎疑いでセフトリアキソンを開始。改善なく造影CT撮影すると
右腸腰筋膿瘍(血液培養からMRSAを検出)であった… よく見ると入院時単純CTで写っていた。
例)82歳女性。数日前からの発熱で受診。診察と検査では熱源不明。
膿尿と細菌尿ありセフトリアキソンを開始。血液培養と尿培養から大腸菌を検出。
感受性も良好であり継続していたが、発熱持続。感受性は良好であり継続していたところ
突然心停止し逝去。感染性大動脈瘤破裂であった。
例)65歳男性。2週間持続する発熱で受診。診察と検査では熱源不明。
膿尿があり抗菌薬の内服開始も改善なし。入院しセフトリアキソンでも改善なく
培養から有意な菌検出ないがメロペネムへ変更され相談。近頃大腿部痛と下肢のしびれがあるようで
MPO ANCA陽性となり、顕微鏡的多発血管炎であった。 いずれも暫定尿路感染であったが
入院時画像の読み込み不足や経過の違い、
新たな症状に気付けず診断を誤った。 他疾患の除外をできる限り尽くし
腎盂腎炎の正しい経過を知り逸脱するならば
すぐに修正することが重要!
暫定診断の蓋然性レベルの理解
#13. まずは暫定診断の蓋然性レベルをイメージ 暫定診断の中には
蓋然性にレベルがあると捉える。
まずはこのレベルの見直しから始める。 この場合でも
脊椎炎、胆嚢炎、
尿管結石、虫垂炎、
腸腰筋膿瘍なども
CVA叩打陽性と
なり得る… 普段、暫定尿路感染としている。
これだけではレベルは低いと
認識すべし!
#14. 暫定診断の蓋然性レベルをイメージする 蓋然性レベルを
①~③に分けた上で
イメージを図示すると… 高 低 ③ ② ① これくらい暫定診断においても、蓋然性に違いが出てくるイメージ。
#15. 暫定診断の蓋然性レベルをイメージする となると、CVA叩打が重要な診察 であることが分かると思いますが
自分で診察し叩打痛なしと判断していたけれど
上級医や指導医が診察すると、実は陽性だったという経験ってありませんか?
CVA叩打手技の重要性と診察の工夫
#16. 暫定診断の蓋然性レベルをイメージする 腎盂腎炎診断における特性:陽性尤度比は1.7、陰性尤度比は0.9 患者層(ちゃんと症状を訴えられるかなど)の影響もありうるが
診察手技の違いもあるのではないか?
⇒診察手技の強弱による解釈 を味方にするとさらに鋭敏な指標へ 85.5% 56.7% 72.0% 31.9% JAMA. 2002;287:2701-10. 65歳未満
中央値63歳
65歳以上
中央値82歳 CVA叩打痛の感度 対象 かなり幅がある…
診断を確定にも
除外にもしにくい所見 Sci Rep. 2022;12:5197. Korean J Intern Med. 2015;30:372-83. Korean J Intern Med. 2015;30:372-83. BMC Infect Dis. 2014;14:639.
#17. CVA叩打手技のコツ① 重要なのはCVA叩打「痛」ではなく「違和感のある左右差」 これに尽きます。
『痛いか?』と問われると、我慢強い人や痛みに鈍感な方は
「痛くない」と答え、診察の結果、陰性となってしまいます。
『左右差はあるか?』と問うと、痛くなくても反対側とは
ちょっと違う感じ(違和感)をあぶりだすことができます。
聞き方を工夫してみます。違和感レベルを聞き出すには
何度もしつこいくらい聞いてみます。
#18. CVA叩打手技のコツ② そもそも…いきなりドンドンと叩打している場面をよく見ますが
正常な人でもけっこうCVA叩打手技は痛みを感じるのでやめよう。
(誤った陽性や両側CVA叩打痛あり といった所見になりうる…) 打診程度の
弱めの叩打 だんだん強く… 最後は
まぁまぁ強めの叩打
複数回確かめてみて
左右差をしつこく聞いて
ようやく分かる陽性がある!
逆にここまでして陰性なら
除外的に使えるかも。 ※絶対的に除外はできないが
徹底した手技と確認を行えば
もっと鋭敏な指標になりうる
可能性はあるということ。 すでに左右差があるのであれば
蓋然性を上げることができる
診察手技となる 最初は
#19. +αの所見を確認する CVA叩打陽性となれば、中くらいのレベル。
ある程度蓋然性は高まりますが+α所見があるとより確からしさが強まります。 腎臓の周囲脂肪織濃度が上昇、腎周囲の毛羽立ち。
陽性尤度比1.7と高くなく、あっても確定的ではない。
なくても除外はできない所見。単独だと使いにくい。
でも、CVA叩打手技を先ほどのように見直し徹底し
違和感のある左右差がある患者において
片側PFS陽性であれば、価値はあると思われる。 Int J Gen Med. 2017 May 8:10:137-144. ■PFS:Perirenal Fat Stranding 菌血症発生率は55.2% vs 23.1%
とPFS群が有意に高いという研究もある。 Eur J Clin Microbiol Infect Dis . 2019 Nov;38(11):2185-2192.
腎盂腎炎の診断と経過観察のポイント
#20. +αの所見を確認する CVA叩打陽性となれば、中くらいのレベル。
ある程度蓋然性は高まりますが+α所見があるとより確からしさが強まります。 造影早期(動脈相)に巣状/楔状/斑状の造影不良域 を認める。
造影後期相には正常腎実質同様の造影効果 となる。
※後期相まで造影不良が残存する場合は
急性巣状細菌性腎炎 と称される
[AFBN:acute focal bacterial nephritis]
市中発症UTIで造影CTを施行した患者の
77.2% に見られる最も頻度の高い所見であった。 ■striated nephrogram/focal hypoattenuating areas Emerg Radiol. 2020 Oct;27(5):561-567. Eur J Clin Microbiol Infect Dis . 2016 Nov;35(11):1883-1887. 造影するなら
2相で撮影すると
この所見がわかる。
#21. +αの所見を確認する 血液培養陽性は無症候性細菌尿の有病率が高い集団や
事前の抗菌薬投与歴がある患者など診断が曖昧な症例において、
血液培養陽性は診断確立の一助となりうる。 ■血液培養と尿培養の一致 CVA叩打陽性となれば、中くらいのレベル。
ある程度蓋然性は高まりますが+α所見があるとより確からしさが強まります。 Lancet Infect Dis . 2024 Aug;24(8):e513-e521. N Engl J Med 2018;378:48-59 血液培養と尿培養で同一菌が検出されることは、UTIを強く支持する
#22. 経過を把握する 腎盂腎炎の発熱期間の中央値は34時間
適切な治療48時間後で26%、72時間後で13%が発熱 使用している抗菌薬の効果があるのに
3日以上の発熱が続く場合は何かおかしい!かも Am J Med . 1996 Sep;101(3):277-80. 診断の見直し
膿瘍ではないか?など そもそも
発熱が1週間続くという
プレゼンで受診した時には
尿路感染ではなさそう。
あって膿瘍形成など
合併症を考えるべき。
#23. 中間まとめ 診察や検査で検索したが特定できず
尿所見のみで暫定尿路感染と診断 腎盂腎炎として
正しい経過をたどるか? 強弱を付けたCVA叩打診察、聞き方の工夫
+α:CT所見や培養結果の一致 蓋然性レベルを自己認識する。
レベルを上げられないか? 熱が続くなら
膿瘍などドレナージを要する病態や
違う診断を考えるきっかけとなる! ついに、低レベルのアプローチへ!
(悩んでいるほとんどの場合がこれ)
画像診断と熱源不明の症例へのアプローチ
#25. 蓋然性低レベルの認識とその次へ 低レベルの場合、暫定尿路感染だが
「尿路感染ではないのでは?」という意識を常に持つ はひふへほ+血 画像の読み込み 見落としを減らす2つのcheck項目がこちら
#26. はひふへほ+血 は
ひふ
(ふ)
へ
ほ
血 歯
皮膚
副鼻腔
屁(肛門、前立腺)
骨
血液培養 この暗記法はよく研修医や専攻医が一般診察をした時に
熱源検索という意味では抜けがちな部位などをまとめたもの。 歯性感染、IE
蜂窩織炎
副鼻腔炎
肛門周囲膿瘍、前立腺炎
脊椎炎
菌血症、IE
#27. はひふへほ+血 歯は、健康のバロメーター
・誤嚥性肺炎や膿胸、IEなどの温床となりうる
・齲歯がないか?痛みは?
・痛みがないか舌圧子で押してみる 皮膚は、服をめくり靴下を脱がして全身を観察する!
皮疹や発赤などのcheck
(副鼻腔は、長期経管栄養中には副鼻腔炎になりうる)
肛門周囲は、意外と患者は自分から話してくれない。
男性で尿路感染を疑うならば直腸診は行なうべき!
骨は、脊椎叩打痛を評価。
棘突起を確認し1つずつ揺らし叩く!
#28. はひふへほ+血 血液については、IEを念頭に!!
・精神統一し 心雑音 聴取(聞き逃すな!)
・眼瞼結膜などの点状出血
・Janeway lesion
・Osler’s node
・爪下線状出血 Osler’s node 軟口蓋点状出血 眼瞼結膜点状出血 自験例
#29. はひふへほ+血 Primary bacteremia という
「侵入門戸不明の菌血症」を起こすこともあり
診察しても不明な場合は鑑別に残るため
血液培養は必須! Eur J Clin Microbiol Infect Dis . 2007 Jul;26(7):453-7.
Eur J Clin Microbiol Infect Dis . 2014 Nov;33(11):1973-80. 高齢者の市中発症菌血症[65歳以上、中央値74歳]では
約1/3(34.8%)が尿路由来、約1/3(30.5%)は感染源不明 Int J Infect Dis . 2026 Aug:169:108767. 市中発症菌血症の12~16.2%が侵入門戸不明。
E. coli(約26%)、他のEnterobacteriaceae(22%)、
S. aureus(10~15%) など
#30. 画像の読み込み 恐らく診察やレントゲンでは熱源がはっきりしない場合に
CT撮影に進むと思いますが、造影されていないと
多くの感染症を見逃してしまう… Intern Med . 2015;54(20):2589-93. 単純CT 造影CT 単純CTでは筋腫大の左右差は分かるが膿瘍指摘は困難。
造影でも注意してみないと容易に見落とす事が分かる。 腸腰筋膿瘍において
発症5日以内だと感度が
単純CT 33%、造影CT 50%… 発熱day1から造影CTを撮るか
と言われると悩ましい所ですが…
抗菌薬選択の考え方と医療曝露の影響
#31. 画像の読み込み 肺や腹部臓器はしっかり見ているかもしれないが
筋骨格系の膿瘍 などは意外と見逃されている… 傍脊柱起立筋膿瘍 右肩関節周囲膿瘍 診察の一環で 関節可動痛の有無を忘れない!
CT読影で 筋骨格系の左右差を比較するルーチンを! 先ほどの腸腰筋膿瘍然り、
症状の訴えが乏しいと
見逃しやすい。 BMC Musculoskelet Disord . 2019 Oct 12;20(1):445. Intern Med . 2013;52(12):1417-8.
#32. 中間まとめ 蓋然性が低レベル 造影CT でなければ多くを見逃す。
意識して読影しなければ見逃す。
各種臓器はもちろん隅々まで。
筋骨格系の左右差を見逃さない! 服や靴下を脱がす! 齲歯や痛みのcheck 患者は教えてくれない 棘突起を1つずつ叩打 IEだと思って診察。血培は取っておく ここまでして所見がなければ暫定尿路感染で治療を開始! ※造影CTを撮っていなければ撮るかどうか検討
#34. 抗菌薬選択の考え方 なぜ抗菌薬選びが難しく感じるのか? 様々な変動因子がある中で決めることになる
⇒変動因子 を押さえる と選び方が見える 患者によって、背景 や 重症度 が違う
施設によって、耐性菌率 や 取り扱う基礎疾患 が違う
医師によって、リスクの取り方 や 判断軸 が違う
#35. 抗菌薬選択の考え方 大事なファクター。
どうしても重症であれば広域スペクトラム寄りにはなる。
非重症であればリカバリーできる時間があり狭域を心がける。 重症? 耐性率? 全国的にESBL産生E.coliの割合は2-3割だが
施設によって耐性率は異なる。
⇒アンチバイオグラム を参照する。 医療曝露 「アンチバイオグラム」
各施設毎に検出された
菌の感受性率を集計し
まとめた資料。 3ヶ月以内の抗菌薬使用歴・入院歴・施設入所歴
繰り返す尿路感染、尿道カテーテルあり、解剖学的異常
過去の培養歴(多剤耐性尿路病原体検出の既往) Am Fam Physician. 2020;102(3):173-180. Open Forum Infect Dis . 2019 Jan 3;6(2):ofy357.
#36. 抗菌薬選択の考え方 過去の培養歴も確認を行う! 参考になる。
でも「過去は過去、今は今」グラム染色を怠らぬように。 Clin Infect Dis . 2014 Nov 1;59(9):1265-71.
#37. 抗菌薬選択の考え方 イメージ 施設によって
耐性菌率は異なる 過去の培養や
曝露歴のデータから推測
#38. 抗菌薬選択の考え方 イメージ 降水確率:30%
絶対濡らせない
大事な書類を持参 降水確率:80%
近くのコンビニまで
さっと買い物に行く 降水確率があまり高くなくても
濡れたくないので大きめの傘を持って行く
=耐性菌の可能性は低くても外すと困る状況であれば
スペクトラムは広く取る場合もある。 降水確率が高くても
多少濡れても問題ない、小さい傘でもいい
=耐性菌の可能性は高くてもリカバリーする時間があり
必ずしも超広域抗菌薬じゃなくてもいい。 ざっくりこのようなイメージで捉え
状況に応じてリスクの取り方を考える
#39. 感染症のトライアングル ▸免疫状態
→バリア破綻も含まれる。
尿道カテーテルやステント挿入
閉塞(結石、腫瘍、尿閉・神経因性膀胱)
▸曝露
過去の抗菌薬曝露歴、入院歴
過去の培養結果
▸余力
ショック状態かどうか
他の臓器不全の多数合併があるか ~尿路感染で考える宿主因子~ 暫定尿路感染と言えど、トライアングルを完成させます。
#40. 抗菌薬選択の考え方 市中の尿路感染においては頻度の観点から
いわゆる「PEK」をカバー 大半が
セフトリアキソン
でカバー可能 Clin Infect Dis. 2007;45(3):273. Proteus
E.coli が最多
Klebsiella 太めのGNR ※これから示すスペクトラム図は
あくまで尿路感染に関わるGNRのみ示しています
抗菌薬選択の具体例と治療の流れ
#42. 抗菌薬選択の考え方 もし「PEK」が耐性となる場合はESBLを産生しうる。 ESBL産生の場合は
セフメタゾール
もしくは
メロペネム Proteus
E.coli が最多
Klebsiella 太めのGNR
#43. 抗菌薬選択の考え方 医療曝露 医療曝露が多い場合の選択はけっこう難しい…が
いわゆる「SPACE」はグラム染色の見た目で区別可能。 Serratia
Citrobacter
Enterobacter Acinetobacter Pseudomonas 太めのGNR GNR(球桿菌) 小型 小型で細めのGNR 腸内細菌目細菌 ブドウ糖非発酵菌群 判断が難しければ
細菌検査技師の方に
相談、教えて頂こう!
#44. 抗菌薬選択の考え方 医療曝露 太めのGNRが見えたら、セフェピムは1つの選択肢となる。
小型・細めのGNRが見えた場合、抗緑膿菌作用のある抗菌薬はどう選ぶ…? S・C・E A 抗緑膿菌作用のある抗菌薬 P 抗緑膿菌作用
のある抗菌薬など Clin Infect Dis . 2026 Aug 8:ciag481. セフェピム AmpCというβラクタマーゼを
過剰産生しうるリスクが高い菌。 あるいは、メロペネム =AmpCを過剰産生するまではCTRXでも効果はある ※非重症患者で経験的治療として セフトリアキソン が開始され、効果があれば治療完遂まで使用することも検討自体は可。
#45. 抗緑膿菌作用のある抗菌薬の選び方 他にどんな菌を想定するかによる。
尿路感染症において考慮すべき菌を盛り込んだ表に照らし選択します。 セフタジジム
ピペラシリン
セフェピム
ピペラシリン
/タゾバクタム
メロペネム 嫌気性菌 耐性菌
AmpC|ESBL ※Bacteroidesを想定 グラム染色で小型・細めの
GNR単一なら最もnarrow! 緑膿菌を疑うGNR+GPC chain 尿路感染で嫌気性菌を疑う状況は
稀であり使う場面は限られる。 AmpCを疑う太めのGNRなら選択検討。
緑膿菌を疑うGNRで積極的に
選ぶメリットはあまりないかも。 E.faecalis 太めのGNRが見えた場合に
「PEK」のカバーも捨てがたく
「S・C・E」だけでなくESBLの
カバーもせざるを得ない状況など。 あくまで医療曝露の多い状況の
尿路感染を想定しています。
FNなど特殊な状況は除いています。
#46. 尿路感染で出くわすGPC もちろんGNR以外が原因となることもあるので
どんな菌が出てきやすいか知っておく。 腸球菌は
セフェム系が無効!
#47. 抗菌薬選択の考え方 ちょっとまとめ グラム染色によって考え方が大きく変わる!
抗菌薬選択に関わる検査であり、可能な限り実施を行ないます。 医療曝露多ければ
「SCE」 市中発症であれば
「PEK」 セフトリアキソン セフトリアキソン セフメタゾール メロペネム セフェピム メロペネム 医療曝露が多いと
ESBL産生のPEKも
関連あり、注意。
#48. 抗菌薬選択の考え方 セッティングによっては
グラム染色がどうしても確認できない時や培養結果がすぐ分からない時も…
経過や培養結果を踏まえた論理的な抗菌薬選択が困難。
予測しつつ、ある程度カバー範囲には見切りをつける必要がある。
待てる状況ならば必ずしも広域にはせず、培養結果を見てリカバリーする。
広域となってしまった場合は
・投与前に必ず培養を取ること。
・漫然と続けず、数日以内に培養結果と照らし合わせ修正すること。
狭めで始めた後の経過が微妙な場合は
・効果がなさそうというだけで、広域抗菌薬に変更しないこと。
・変更せざるを得ない場合は培養を全て再検すること。
・感染症のトライアングルの再構築を行うこと。
他の診断(非感染症を含む)の可能性がないか考えをめぐらすこと。
#49. 抗菌薬選択の例 ESBL多めの施設 余力あり 太めのGNR なし PEK想定 SCEは外す
ESBLは外せない SCEも想定だがESBLも多いため悩ましい 余力があるため
どちらかカバー。
培養結果見て修正。 セフメタゾール セフメタゾール セフトリアキソン あり 余力あり セフェピム
ちょっと広域過ぎるか…?
#50. 抗菌薬選択の例 ESBL多めの施設 余力なし 太めのGNR なし あり 余力なし PEK想定 (SCEの心配) SCEを外すかどうか.
余力がないと広域寄りに
なってしまう所はある。 PEKもSCEも想定 初期治療失敗は
許容できない ゾシン® メロペネム 他にも併用療法も検討
βラクタム+アミノグリコシド など セフメタゾール ESBLへの効果は
微妙ではある 狭い選択肢であり
他剤の併用も検討される ショック状態など
#51. 抗菌薬選択の例 余力あり 細めGNRで単一 余力なし セフタジジム 上記を基本にしながらカバーが外れる
可能性を下げるため併用療法も検討。
(βラクタム+アミノグリコシド など)
GPCが見えるなら、VCM追加も検討。 小型で細めのGNR=緑膿菌 想定 GPCも見える 緑膿菌カバーができる
抗菌薬の中で最もnarrow J Antimicrob Chemother . 2015 Nov;70(11):3004-13. ※メロペネム曝露歴があると多剤耐性を誘導しやすい。 余力がないからカルバペネム
という短絡的思考は× グラム染色 GPCの方が明らかに優位に多いとかでなければ
腸球菌を最初からカバーしなくてもいい(後述) カバーするなら
#52. 選択の具体例 ①施設入所の70代男性。2日前からの発熱。
熱源は明らかではなく暫定尿路感染。
蓋然性低レベルではあるが
尿培養ではグラム染色でこんな感じ。
尿路感染らしさはあると判断。
何を選択するか? 例)
市中発症でありPEK想定。
余力はありCTRXを選択。
ただし週末に入るため
ESBL産生の有無は懸念。
当番に培養結果を
確認するよう依頼した。
⇒E.coli
感受性は幸い良好であり
週末はCTRXを継続した。 ②施設入所の80代男性。パーキンソン病、
神経因性膀胱が背景にある。2日前からの
発熱で改善なく受診。熱源明らかではなく
暫定尿路感染。 例)
市中発症でありPEK想定。
多忙のためグラム染色は
すぐにできず。余力はあり
CTRX開始。落ち着いてから
グラム染色をすると
GPC chainが単一に見えた。
ただ、PEKカバーを外す程
グラム染色に自信がなく
腸球菌を想定しVCM追加。
⇒Streptococcus agalactiae
を検出したため、
ビクシリン単剤へ変更。
血培からも同一菌を検出。 ※時々高齢者では
B群溶連菌による
尿路感染を経験します
#53. 選択の具体例 ※腸球菌をカバーするか問題
③ではあえてカバーをしなかったが
腸球菌は定着(colonization)の場合もあり
全例が治療対象とすると過剰治療となりうる。
尿路感染を起こしている患者において
・尿グラム染色/培養で 腸球菌が単一
・尿グラム染色においてGNRと比較し
有意に腸球菌を疑う菌体が多い。
・腸球菌を疑う菌体があり ショック状態
という状況下であれば
腸球菌を治療対象として検討し
それ以外はカバーを外しておいて
経過次第でカバーするか考える という
流れでもよいと思われる(私見)。 ③施設入所の80代女性。SLEでステロイドや
免疫抑制薬内服中。リハビリ転院待ちであるが
尿カテ抜去後に尿閉、溢流性尿失禁の状態となり、
本日発熱。熱源は明らかではなく暫定尿路感染。 例)
院内発症だがGNRは太め。
余力はあり過去の培養で
ESBL産生E.coli検出。
GPC chainも見えるが
尿カテ再挿入し尿閉解除は
できており腸球菌想定の
GPC chainはカバーせず。
CMZのみを選択。
⇒E.coli(ESBL産生)
培養からは他にE.faecalisを
検出。カバーせずとも経過
良好でありCMZのみで治療。 太めの
GNR GPC chain これはGPR…? ※他にLactobacillusというGPRも検出。 ※余力がなければVCMを追加することを検討しますし
GNRカバーについてもCMZにゲンタマイシン併用やMEPM単剤も検討されると思います
#54. 抗菌薬を決めた後 検査の流れを理解すると早期の抗菌薬適正化が可能!
カルテに情報がなくても、細菌検査技師は検査室ですでに菌を同定できている場合も多い。
カルテの結果を待つだけで終わらずに
治療して3日間は技師との綿密なやり取りで答え合わせを!
(特に診断が不安な症例、広域抗菌薬で始めた場合など) この時点で菌名が分かるかも!
菌名が分かれば耐性機序も
分かる場合もあるので確認
#55. 抗菌薬を決めた後のサイクル 経過に違和感を
持てるか?
尿路感染らしさ
と
不明熱的か
どうかを感じる
アンテナを張る IEを念頭に置いた
Top to bottom 盲目的に広域化せず
培養を確実に採取。 一定の経験は必要。意識して身に着けていけるかどうか。
#56. 暫定尿路感染のロードマップ 市中?医療曝露? × グラム染色 感染症のトライアングルは?
-宿主因子(免疫状態・曝露・余力)
-臓器
-病原体 治療の時間経過と培養結果の確認・日々診察 腎盂腎炎らしい? De-escalationや
治療期間の設定
内服移行など検討 トライアングル見直し
培養再検
必要なら造影CT
非感染症の可能性は? 余力があるかどうかが
抗菌薬選択に関与するが
心配なだけで広域にしない
必ず培養を採取!!
#57. 最後にまとめ 「尿路感染疑い」は
診断のゴールではない。
臨床推論のスタートである。