#4.
なぜ地域志向のケアが大切か? 地域が健康の社会的決定要因になる 自然環境・平和・気候変動・社会的公正・文化・ ジェンダー規範・政策・社会経済状況 ソーシャルキャピタル・食料・建造環境・医療資源・衛生環境・ 住居環境・職場・学校 個人の繋がり・社会関係・ジェンダー・社会経済的地位・家庭・生活習慣 年齢・遺伝 生物学的な性別 Policies and strategies to promote social equity in health. Background document to WHO- Strategy paper for Europe. 1991 Sep.より改変
#5.
地域診断のプロセス STEP1 基本情報を集める 統計・調査データを集め、整理する STEP2 健康問題の仮説を立てる 情報から仮説を立て、Field Workの準備とする STEP3 ヒアリング・フィールドワーク 住民・地区調査、視診と聞き取り調査をする STEP4 地域アセスメント 集めた情報を分析し、健康課題を特定する STEP5 アクションプラン 健康課題に対して活動計画を立て実行する
#6.
Community as partner model(CAP model) ➢ CAP Modelは地域社会の健康を包括的に 住民と8つのサブシステム 評価し改善するためのフレームワーク ➢ 地域を 8つのサブシステム に分けそれぞれの 問題点や課題を明らかにすることで全体的な 健康課題を特定する ➢ 住民と専門家が協力して、効果的な 健康増進策を策定・実施することが可能に Elizabeth Anderson, Judith McFarlane:Community As Partner: Theory and Practice in Nursing より引用・改変
#7.
Community as partner model アセスメント項目 物理的環境 教育 アセスメント内容 地域の環境が健康に与える影響を評価:空気や水の質、公園や緑地の有無などは? 教育水準や健康教育の普及度を評価:教育が十分に行き渡っているか? 交通と安全 地域の治安や交通インフラの状況を評価:安全性・不便さは? 行政と政治 地域の政策や行政の対応が健康に与える影響を評価:健康に配慮した政策の有無は? レクリエーション 経済 コミュニケーションと情報 保健医療と社会福祉 健康サービスやレクリエーション施設の利用可能性を評価 地域の経済状況を評価:経済的な困難は? 情報の流通やコミュニケーション手段の状況を評価:住民への情報伝達は? 地域の健康および社会サービスの状況を評価
#8.
COPCサイクル(Community-Oriented Primary Care Cycle) ➢ 地域の健康ニーズに基づいたプライマリケアを提供するプロセスで、以下のステップで構成される ➢ 地域サイクルは継続的に繰り返して地域の健康状態を向上させることを目指す ステップ 0 コミュニティの定義 1 健康アセスメント 2 内容 地理的範囲や人口特性、社会経済的条件 健康状態を評価:健康データの収集や住民とのインタビュー 健康問題の優先順位付け 深刻さや影響の範囲、解決可能性で優先順位付け 3 介入計画の策定 4 介入の実施 介入策を実行し必要なリソースを確保する 5 介入の評価 介入策の効果を評価し効果・反応を分析 6 フィードバックと改善 評価結果を基に介入策の改善点を特定 優先順位の高い健康問題に具体的な介入策を計画
#9.
COPCサイクル(Community-Oriented Primary Care Cycle) 優先順位付け 地域診断 コミュニティの 健康問題を特定する 再評価 再度評価を行い、 必要に応じて改善する 特定された問題に 優先順位を付ける 詳細な評価 COPC Cycle 効果判定 選ばれた問題に対する 詳細な評価を行う 実施計画 実施の効果を評価する 実施 計画を実行する 評価結果に基づいて 実施計画を作成する Int J Health Serv. 2003;33(1):85-98
#10.
地域アセスメントの例 アセスメント項目 収集した情報 収集した情報に基づく分析 市街地区から約30km離れている 3自治会が在宅福祉ネットワークを組んでいるが、山間部でアクセスが悪い 過疎高齢化が深刻である 3地区の人口 250名・高齢者数 110名・高齢化率 44%/町全体 高齢化率 35%・町平均より著しく高い 小学校は隣町まで通学する必要があり、通学バスは1日2便のみ 幼稚園は閉鎖されている 教育機関へのアクセスが悪く、子育て世帯にとって大きな負担となっ ている 交通と安全 主要な移動手段は自家用車であるが、高齢者は運転できないため、 週3回のコミュニティバスを利用している。冬季は雪の影響で交通が制限される 交通の不便さが高齢者の日常生活に大きな影響を与えている 行政と政治 自治会は高齢者中心で運営されており、若年層の参加が少ない 地域の決定は主に高齢者によって行われている 自治会の高齢化と若年層の参加不足が、地域の活力低下を招い ている レクリエーション 地域の集会所での活動が中心で、参加者は減少傾向にある 体操クラブや手芸クラブが行われているが、参加者は主に高齢者 レクリエーション活動の多様性が不足しており、若年層の関心を引く 活動が少ない 林業と畑作が主体の地域。林業は季節を問わず忙しい 高齢化が進んでおり、後継者不足が深刻である 若年層の雇用機会が少なく、地域外への流出が多い 物理的環境 教育 経済 コミュニケーション 3自治会とも世帯数が少ないので、個別の状況は把握できている 反面、同居世帯も多く要援護者が隠れている可能性もある 情報 近所が離れているので、日常的な見守りは困難 保健医療と 社会福祉 運転ができない高齢者等は市街地区にある医療機関への受診は通院バスを利用 在宅福祉ネットワークを3自治会で組織している。自治会活動を通して実態把握は行っているが、 ネットワークとして事業を展開できない。担い手は現役世代であり、家業が忙しい 現役世代は子どもを通して隣の圏域との交流があるが、高齢者世代はほとんどなじみのない地区で ある 健診等も市街地区まで来ないと受診できない 日常生活圏域は隣地区と合わせて設定しているが、高齢者にはな じみのない地区である 一人暮らしや高齢
#11.
改善策の例(あくまで例です) アセスメント項目 物理的環境 教育 交通と安全 行政と政治 レクリエーション 改善策 交通インフラの改善 デジタルインフラの強化 通学バスの運行拡充 地域学習支援センターの設置 コミュニティバスの拡充 安全対策の強化 具体的な方策 バスやコミュニティタクシーの運行頻度を増やし、高齢者や交通弱者の移動手段を確保する テレヘルスやオンライン教育のためのインターネット接続環境を整備し、遠隔地でもアクセスできるサービスを提供 通学バスの便数を増やし、通学負担を軽減する 地域内に学習支援センターを設置し、放課後や休日に子供たちが学べる環境を提供する 高齢者向けのコミュニティバスの運行頻度を増やす 冬季の道路除雪や防災対策を強化し、安全な移動を確保する 若年層の参加促進 若年層が参加しやすい自治会活動を企画し、世代間交流を促進する リーダーシップ研修 若年層を対象としたリーダーシップ研修を実施し、自治会の運営をサポートする 多様なプログラムの提供 移動支援 若年層やファミリー向けのレクリエーションプログラムを導入し、参加者の多様化を図る レクリエーション活動への参加を支援するための移動手段を提供する 地元産業の支援 林業や農業の効率化支援、販路拡大支援を行い、若年層の定住を促進する 新規事業の創出 地域資源を活用した新規事業や観光事業を創出し、若年層の雇用機会を増やす コミュニケーション 情報 見守りネットワークの強化 隣人やボランティアによる見守り活動を強化し、要援護者の早期発見と支援を行う 保健医療と 社会福祉 移動診療の導入 経済 デジタル技術の活用 在宅福祉サービスの拡充 高齢者に優しい見守りセンサーやアプリの導入で、日常的な見守りを効率化する 定期的に地域を巡回する移動診療車を導入し、医療アクセスを向上させる 地域ボランティアの育成や、在宅ケアの支援体制を強化し、ネットワークとして機能させる
#12.
地域アセスメントのメリット ニーズの明確化 協力関係の構築 ・地域の健康状態やニーズを具体的に把握 ・地域住民、専門家、行政が協力 ・的確な対策が立てられる ・持続可能な健康改善策の実施 効果的な資源配分 ・限られた資源を必要な分野に集中 ・効率的な問題解決が可能 コミュニティのエンパワーメント ・住民が健康や福祉に積極的に関与 ・コミュニティ全体のエンパワーメント促進 政策立案の基盤 ・データに基づいたエビデンス提供 ・科学的な地域政策の立案と評価
#13.
地域アセスメントのデメリット 時間とコストの負担 ・詳細なアセスメントには多くの時間と資源が必要 ・コストがかかる データの限界 ・収集データが完全でない場合、誤った結論や 不完全な対策のリスク 住民の抵抗 ・プライバシーの懸念や調査協力拒否が データ収集の障害に 実行可能性の課題 ・解決策が見つからない、実行できない場合 偏りのリスク ・偏った情報収集で地域全体の実態反映が不十分
#14.
地域ケアの重要性 ➢ 持続可能性 ・地域志向のケアは持続可能な社会を築く上で不可欠 ・地域コミュニティでの協力と共同作業を奨励し、将来の世代にとっても質の高いケアを保証する ➢ 支援の重要性 ・地域志向のケアは地域の高齢者や障害者など、支援を必要とする人々にとって極めて重要 ・地元コミュニティでの適切なサポートがその人々の生活を向上させる ➢ 地域社会への影響 ・地域志向のケアは地域社会全体にポジティブな影響を及ぼす ・地域住民の健康と幸福感を向上させ、共同体の結束を促進する
#15.
地域ケアの原則 ➢ 地域志向のケアは、包括的で個別に適した ケアを提供することに焦点を当てる ➢ 地元の文化や価値観を尊重し、 地域住民のニーズに合わせたケアを提供する
#16.
地域ケアのエビデンス① 孤独感と医療利用の影響 ✓ 孤独感は高齢者における重大な公衆衛生の懸念事項であり、医師の訪問回数の増加と関連している ✓ 孤独な高齢者に対するターゲットを絞った介入は、医療訪問回数およびコストの減少に寄与する Am J Public Health. 2015 May; 105(5): 1013–1019. 心理社会的グループリハビリテーション ✓ 孤独感は孤独感を抱える高齢者に対する心理社会的グループリハビリテーションは、 主観的健康の改善と医療コストの削減に寄与する ✓ この介入により死亡率も低下した J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2009 Jul;64(7):792-800.
#17.
地域ケアのエビデンス② 介護施設への入所リスク ✓ 孤独孤独感は介護施設への入所リスクの増加と関連している ✓ 孤独感の対策は福祉の向上と施設介護の必要性の低減に寄与する Age Ageing. 2018 Nov 1;47(6):896-900. ソーシャルネットワークサイトの使用 ✓ 孤独SNS利用は高齢者の孤独感を低減し、精神的健康を改善する効果がある ✓ コミュニティ在住の高齢者にとって有益なツール ✓ 社会的つながりを維持する手段として重要 Int J Geriatr Psychiatry. 2015 Sep;30(9):942-9.
#18.
地域医療の社会的課題 ➢ 急速な少子高齢化 → 日本において、高齢者の割合が急速に増加しており、少子化が進展している これにより 地域社会全体の医療ニーズが変化している ➢ 独居高齢者の増加 → 独居高齢者の増加により、健康管理や孤立死のリスク が高まっている 地域医療はこれらの課題に対応する必要がある ➢ 地域共同体の脆弱化 → 地域共同体の結びつきの弱体化 が進み、地域全体の支援体制が重要となっている
#19.
地域志向のプライマリ・ケアの重要性 ➢ 地域包括ケアからの転換 → 日本に地域医療や福祉の提供において、住民自身が主体となり、 支援やケアを受ける側から共同で社会を作り上げていくことが重要である ➢ 地域共生社会の推進 → 従来の地域医療は専門家中心のアプローチであったが、 地域共生社会を実現するためには 包括的な住民参加が必要である ➢ 地域共生のモデル事例 → 地域共生社会の良い事例を参考にし、地域志向のプライマリ・ケアを実践するための 指針とすることが重要である
#20.
地域社会のウェルビーイング ➢ 社会的処方の効果 → 社会的処方は健康だけでなく、地域社会全体のウェルビーイング向上に貢献する ➢ 地域共生の実現 → 地域志向のプライマリ・ケアを実践することで、地域共生社会の実現やウェルビーイング向上に貢献 ➢ ウェルビーイングの要素 → 地域社会のウェルビーイングには健康だけでなく、幸福感や社会的結束、環境への配慮も必要
#21.
地域社会の重要性と未来の展望 ➢ 高齢化 → 地域社会全体の健康向上で 医療費の削減 や 住民の生活の質の向上 に繋がる 特に高齢化社会で地域志向のケアのニーズの高まり ➢ デジタルヘルスの活用 → 遠隔医療やAIを活用した健康管理システムの普及で より効率的な地域への介入 が可能に ➢ コミュニティベースのケアモデルの拡大 → 地域住民が主体となるケアモデルがさらに拡大・地域全体で健康を支える 仕組み ➢ 持続可能な医療システムの構築 →地域資源を最大限に活用し、持続可能な医療システムを構築することで、将来的な医療ニーズに対応
#22.
もはや医療従事者に必須の地域のケア ➢ 地域医療の重要性 → 高齢化と少子化により 地域医療の役割がますます重要に なっている ➢ 地域包括ケアの必要性 → 医療と介護の連携が不可欠であり、地域全体で 高齢者や独居高齢者を支える仕組み が求められる ➢ 医師・医療従事者の役割 → 医師・医療従事者は地域住民の健康を支える重要な存在であり、地域に根ざしたケア が求められる
#23.
まとめ ➢ 地域アセスメントは重要! ・地域の健康状態やニーズを把握し、効率的な資源配分と問題解決を促進 ・住民の積極的な関与によるコミュニティのエンパワーメント ➢ CAPモデルやCOPCサイクルを活用して地域診断しよう! ・地域の健康問題を特定・優先順位付けし、介入計画を策定・実行・評価 ・継続的な改善を通じて地域の健康状態を向上 ➢ 地域ケアで実際に良くなる事例も! ・孤独感対策や心理社会的リハビリテーションが医療コストの削減と福祉向上に寄与 ・介護施設への入所リスク減少とセルフケア促進の重要性